口が災いの元

作者:雨乃香

 夕暮れ時の繁華街。
 ずらりと並ぶたくさんの飲食店から、食欲をそそるにおいが競うように漂い、道行く人々の胃袋を掴んでは店内へといざなっていく。
「はぁ、いいにおい……」
 足を止め、思わず呟くスーツ姿の女性は、いけないと頭を振って、ぐっとこぶしを握る。
「だめだめ、まだろくに噂を調べられてないんだから」
 往来の中、立ち止まり一人喋る彼女を周りの人々は奇異の視線でみつめながらも声をかける事はなく、過ぎ去っていく。
「繁華街の残飯を漁る二口女の怪、なんとしてもものにして見せるわ!」
 女性が決意を新たにすると共にぐぅとおなかの虫が鳴り、顔を伏せ、彼女は逃げるように路地裏へと駆け込んだ。
「いや、うん……こっちが目撃情報あった場所だから……逃げたわけじゃないから……」
 だれにともなくいいわけをしつつ、彼女は印のついた地図を眺めながら薄暗い路地裏を歩いていく。
「お、もしかしてこれはビンゴ、かしら? ゴミ箱の中身が漁られて――」
 興奮し、スーツが汚れるのも気にせず周囲を念入りに調べ始めた彼女はその背後に迫る影に気付かない。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 通りの喧騒も届かない路地裏のダストシュートの前、女性は力なく倒れ、意識を失った。

「目は口ほどにものをいうと、古来からいいますが。口は一つに目は二つ。では口が二つならやはりお口のほうがおしゃべりになると考えてよいのでしょうかね?」
 うまい活用方はと聞かれるとなかなか思い浮かびませんが、とニア・シャッテン(サキュバスのヘリオライダー・en0089)は軽い口調で続けながら、やってきたケルベロス達に笑みを向ける。
「さほどメジャーでない妖怪ではありますが、そんな口を二つ持つ、二口女、という妖怪がおりましてですね、その噂への興味が奪われ、二口女が実体化してしまったようです」
 是非ともどれほどのおしゃべりさんなのか、体験してきていただきたいですね? と茶化しながらもニアはその噂について、語りだす。
「飲食店の立ち並ぶ繁華街の路地裏にその二口女は現れては、残飯を漁ってまわっているとか。その際後頭部にある、もう一つの口が下品にみっともなく食事をする様を見られるのが堪らなく恥ずかしいらしく、目撃者までもをその口で食べてしまうのだとか」
 同じ女性としては残飯漁ってるところ見られるほうが相当キツイものがあるきがしますが、とニアは一人不思議そうに呟く。
「逃げるためには彼女の好物の和菓子を放り投げると、犬のように追っかけていって時間を稼げるのだとか……逆に誘き出すのにもつかえるかもしれませんね?
 戦闘に関してですが、相当な悪食らしくなんにでも喰らいついて攻撃を仕掛けてくるみたいです。見た目に反してタフなようなので、長期戦を覚悟しておいてください」
 必要ならお茶請けの和菓子、もっていきますか? とお饅頭を差し出してニアは笑いつつ、話を締めくくる。
「二口女の話にもいろいろバリエーションがあり、妖怪と断じるには少々語弊がありますが、まぁ血まで噂になり、こうして実体化してしまったら元ネタがなんだろうと、何かしら差異があろうと、些細なもんだいです。人に危害を加える可能性があるデウスエクスは速やかに排除してしまいましょう」


参加者
月見里・一太(咬殺・e02692)
奏真・一十(あくがれ百景・e03433)
ミザール・ロバード(ハゲタカ・e03468)
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)
円谷・円(デッドリバイバル・e07301)
一羽・歌彼方(黄金の吶喊士・e24556)
ハートレス・ゼロ(復讐の炎・e29646)
ノア・モンターク(月曜は雨・e34726)

■リプレイ


 ご飯時にはまだほんの少し早い夕暮れ時。
 近頃は少しずつ日も長くなり、この時間帯はまだ明るく、繁華街に点る明かりもまだ控えめだ。
 しかし、あたりに漂う美味しそうな様々な食べ物のにおいの方は一切の自重無く、あたりを歩く人々の胃袋を掴み、お店の中へと客を取り込んでいく。
 そんな賑やかな雑踏の中、一際甘く美味しそうなにおいを振り撒く一団があった。
 ここに来るまでの間に各々どこかで和菓子を買ってきたのか、彼等はそれらを手に人ごみの中を器用に歩いていく。
「有名店の和菓子は、噂に違わぬおいしさですなぁー」
 個包装された最中を頬張り、円谷・円(デッドリバイバル・e07301)は感激したように頬に手を当てその美味しさにほぅと溜息まで吐いてみせる。
「それ程美味しいのであるか、僕等も今からでも買いに戻るべきか?」
 円に酷く感化されたのか、興味深そうにその様子を眺めながら奏真・一十(あくがれ百景・e03433)は隣を飛ぶボクスドラゴン、サキミにそう声をかけ、きらりと輝く尾の先でぺしりと額を叩かれる。
「他にも羊羹とか、どら焼きとかもあるよ。お一ついかがー?」
 どこからともなく和菓子を取り出す円から、一十はいくつかそれを受け取って、サキミとともにゆっくりと味わい始める。
「どら焼きって普通に美味いよな、某番組のイメージが強いが……」
 そのやり取りに横を歩く月見里・一太(咬殺・e02692)は円のチョイスに共感しつつ、自前で買っていたどら焼きを口に運ぶ。普段は人の姿で過ごしているせいか、獣人姿での彼の食事はどこかゆっくりとしている。
「あれ程の勢いで、バカみたいな量を食う気にはさすがになれないけどな」
「ですよね、いくら美味しくともそんなに食べられませんよねぇ……」
 最後のひとかけを口に放り込み口にする一太に対し、一羽・歌彼方(黄金の吶喊士・e24556)はどこか含みのあるような言い方をしながら、ですが、と、もったいぶりながらさらに続ける。
「何でも最近このあたりに、どんなものでもたくさんものすごい勢いで食べてしまう、悪食な方が現れるのだとか」
「ふむ、それはなかなかに興味深い話だのう」
 歌彼方の言葉に、円から分けてもらった和菓子を口にしていたウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)はその口元の付け髭が汚れていないかなでるように確認しつつ続きを聞きたげに顔をあげた。
「ああ、その話俺も聞いたことがあるよ。何でも頭の後ろに口がある女の人、なんだってねぇ。噂によると、こんな、繁華街の路地裏で、残飯を漁っているらしい」
 ややもったいぶってから続きを口にしようとしていた歌彼方の事に気づいていないノア・モンターク(月曜は雨・e34726)が、ウィゼにそう教えた通り、気づけば彼等は繁華街の雑踏から徐々に離れ、人気のない路地裏の方へと歩を進めていた。
「ほう、口が二つとな。普通に食事をするなら両手で一つの口で食べるが、口が二つだと両方で食べるのかのう?」
 俄然知的好奇心が刺激されたのかウィゼは、しきりに首を捻ったり頷いたりしながら、自分の思考へと没頭していく。
「人の形をとるなら食う物もそれっぽくして欲しいが……まぁ、食い応えだけはありそうだ!!」
 それに対して、ミザール・ロバード(ハゲタカ・e03468)もまた、別のベクトルで興味を抱いているらしく、その鋭い瞳をぎらつかせぜひ手合わせをしたいとでも言いたげに、拳を握たり開いたりをくりかえしている。
「昔から二口女というやつは饅頭が好きだったそうだし、会いたいなら用意してみればいいんじゃないのか?」
 そんな噂話に盛り上がる仲間達と比べるとやや、冷めたような無愛想な態度を見せつつも、ハートレス・ゼロ(復讐の炎・e29646)がそう助言を投げかけると、待っていましたとばかりに歌彼方が口を開く。
「ところで実は此処に! その二口女さんが大好きだという饅頭があったりするんですが!」
 大きな声で、そう宣言しつつ掲げるように取り出したそれは、丁寧に包装された桐箱のいかにも高級そうな饅頭だ。
 それを見た仲間達の反応は様々であり、驚く者もいれば、しげしげと観察する者、あるいは興味なさげに路地を伺う者と千差万別だ。
「……さて、おいでませとなりますか?」
 コホンと咳払いを一つ、落ち着きを取り戻した彼女が箱を開き蓋でパタパタとそれを仰げば、異臭漂う路地裏にも、甘い香りがふわりと広がった。


 するとどうしたことか、入り組んだ路地の先から、ビンや缶が跳ねるような音、あるいは、猫や犬の威嚇するよう泣き声が聞こえた後、奇妙なものが彼等の前へと現れる。
 それは最初、黒く蠢く不気味な何かであった。
 近づくにつれ、彼等はそれが物凄い速さで近づいてくる髪の毛であると認識する。だらりと垂れ、ゆれる長い髪の毛の他に、細長く纏められた触手のような髪の毛がまるで蜘蛛の脚のように蠢いてその本体を運んでいた。
 さらに目を凝らしてみればその髪の毛の塊の中央には、大きく裂けた口があり、その後ろにはどうやら女性が引きずられているのが見て取れた。まさに噂に違わぬ二口女の出現に、一同の視線は自然とそちらへと引き寄せられる。
 周囲の物を蹴散らしながら進んできたそれは、歌彼方の前に止まると、歩くのに使ってていたのとは別の髪の毛を伸ばし、唖然とする彼女の手から桐箱を奪いとると、そのまま後頭部の口へとそれを投げ入れ、箱ごと大きな音を立てて租借しはじめる。
「え、えっとぉ……あんまり見ないで貰えるとぉ……」
 その異様な光景とは程遠そうな弱々しい、か細い声。
 どうやら、それは本来の口から発せられているようであったが、そんな頼みごとをされたところで、この目の前の光景から目を放せというのは無理な相談であろう。
 まして、彼等はまさにこの二口女に用があって、人払いまでしながらこのような辺鄙な場所へとやってきたのだから、そのような言葉を鵜呑みになどする筈も無い。
「ほほう、意外にも答えは片方の口で食事をし、片方の口で喋るのじゃな。てっきり食欲に支配され、両方の口で貪るのかと思ったのじゃが……」
 驚きその様子を眺めるウィゼ。
「あの、あの、あまり、見られると恥ずかしくて……」
 その小さな体をめがけ、突如二口女の黒髪が伸び上がり、彼女めがけ振り下ろされる。
「殺さないといけなくなっちゃうので……」
 恋バナに花を咲かせる少女の如く頬を染め、身をくねらせながら、そう口にし、実行に移すギャップはまりにもかけ離れすぎていたが、そんなことにいちいち突っ込みを入れている場合でもない。
「どのような姿をしているかと思えば……なかなかどうして、人の姿を保っているのであるな」
 ウィゼめがけ振るわれたその一撃は彼女に届くことはなく、一十の手に握られた、鍵のような形状をした剣に防がれていた。
「だ、だからそんなまじまじと見ないでくださいってば!」
 緊張感の無いその恥ずかしげな様子から次々と繰り出される無数の髪の槍。言動だけとってみれば恥ずかしげな乙女であるが、その行動とあわせてみれば、まさに狂気以外の何ものでもない。
 しかし、この場に集まったのもただの人々などではない、この二口女を討伐すべく出向いてきたケルベロスの一団にすれば、その奇妙な光景は物珍しくはあれど、恐怖を覚えるには値しない。
 一十が髪の毛を切り、打ち払い、凌ぎ切って見せれば、さすがに二口女の方もなにかがおかしいと思ったのか、その動きを止める。
「あなた達、普通の人じゃありませんね……?」
「大正解、ですー」
 緩やかに微笑んで返す円はウイングキャットの蓬莱を従え、一歩前へ。
「番犬様の御成りだ、大人しく終われよ道化」
 補足するように、ナイフを構え一太がそう宣言すると、二口女は相変わらず後頭部を向けたまま、ぞくり、と体を震わせる。
「あらあら……やだ私ったら、そんなに有名になってしまったの。恥ずかしい……でも、ケルベロスって食べたこと無いから……きっと私、我慢できないわ」
 前の口が喋り、後ろの口がだらしなく開き、涎を滴らせ異臭を放つ息を吐く。その好奇心旺盛な食欲から戦うことを決めた敵に対し、既にケルベロス達は臨戦態勢。
「オレの地獄に付き合ってもらおうか」
 ハートレスの宣言とともに、その体が炎に包まれ、漆黒の甲冑がその体を包み込む。彼が地を蹴るのと同時、二口女も髪の毛を伸縮させ、行動に打って出る。


 狭く人の立ち入ることのない路地裏は、瞬く間に戦場へと変転する。
 獣の如くビルの壁面を蹴り、上方からの奇襲をかける一太と同時に、どちらが正面とも取れぬ敵に対し、真っ向から一十が仕掛ける。
 行く手を遮るように展開される髪の毛ごと切り裂く一十の一撃が二口女の本体とも言える少女の背中を切り裂き、続く一太の蹴りがその体を踏み潰す用に上方から突き刺さる。
 情けない声を上げ、潰されたかえるのように叩きつけられる彼女の体。
 それとはまるで別の生き物のように蠢く髪の毛と後頭部の口は、その体を振り回す勢いで這い擦り、一十めがけて大きく口を開いて飛び掛る。
 先程の攻撃に少なからずダメージを受けていた彼の周りを治療するために、ウィゼが飛ばしていたドローンすらもその口の中に収めつつ、鋭い歯が一十の肩口に沈み込み、そこから溢れ出る血を二口女は音を立てて啜る。
「貰った」
 そうして動きを止めた敵を狙う事は容易い。敵との距離を一瞬で縮めたハートレスの振るう無骨な剣が、先ほど一十のつけた傷口をなぞるように一閃。
 痛覚は共有しているのか、後ろの口から言葉とも取れぬ叫びを発しながら二口女は口を離し、たまらず距離を取る。
「ご馳走してあげます、私のとっておき!」
 槍を回し正面へと構えなおした歌彼方は、逃がさないとばかりに光の翼の出力を上げ敵へと追いすがる。
 その口から歌を紡ぎ、繰り出される攻撃は舞のように、二口女の体を穿ち、貫く。
 強烈な連撃に体中に傷をこさえた本体、しかし髪の毛と後頭部の口はまだまだ元気な用で何事も無かったかのように蠢き、怒りをあらわにしているようだ。
「そんなに痛くされると、お腹、空いちゃいます……」
 間の抜けたぐぅと腹の虫がなる音。それを発したのが目の前の異形でなければ多少の可愛らしさもあったかもしれないが、お腹を空かせた彼女にとって、今一番のご馳走は目の前のケルベロス達だ。
 万が一にもそんな相手をかわいいなどと思えるはずも無い。
「近づかせない、から……」
 その思いをそのまま行動に移すように、蓬莱の背後から円は三日月形の鱗を投擲し敵の動きを牽制しようとするが、あろうことか二口女はその攻撃に後頭部に開いた大きな口でばくりと喰らいつき、租借し、飲み込んでしまった。
「やれやれ、ちょいとお行儀がよろしくないねえ」
 その様子に呆れたようにノアは呟きながらも焦ることはなく、ゆったりと詠唱をはじめ、ミザールの援護へと回る。
「その支援、ありがたく利用させて貰おうか!」
 脳の活性化されたミザールの紡ぐ竜語の詠唱は普段よりもさらに正確に早く、そして普段より力強い竜の幻影を作り上げる。
 二口女は、それを食べた。
 悪食、などという範疇に収まらない。口に収まるのであれば、何だって食べて見せるとでも言わんばかりのその旺盛な食欲は、その身を内から焦がすことになる。
 飲み込まれた竜の幻影は、その内で炎となり内側から二口女の体を焼き尽くさんばかりに燃え上がる。
 髪の毛の焦げる嫌なにおい。動きを止めたその体。
 あっけない幕切れ、そう思ったケルベロス達の前でそれは炎に包まれながらもゆらりと立ち上がる。
 一太は嘆息し武器を構えなおし、焦げ付く地面やビルの壁面に舌打ちを一つ。
「大人しく死んでりゃいいものを……」
 本心からの呟きを零しつつ、速やかに敵を打ち倒すべく彼は走る。


 事前に彼等が聞き及んでいた通り、それは酷くタフであった。
 周囲のモノを分別なく喰らい、再生する体。それはゴミであったり、戦闘の最中崩れた建物の残骸であったり、あるいはケルベロス達の血であったり。
 それはありとあらゆるものを喰らい、糧とし、ケルベロス達の度重なる攻撃で受けた傷を治癒し、戦いという名の食事を続行する。
「生き汚い醜い奴だ」
 敵の下から切り下がりながら、サーヴァントのサイレントイレブンと共に離脱しつつ呟くハートレス。
「食い意地が張っているって言う方が、正しいんじゃないの、この場合」
 そこに追いすがるように降り注ぐ髪の毛の槍を防ぐように、ノアが黒鎖を走らせ防壁を展開しつつ、マイペースに返す。
 その攻撃が通らないと悟ると、すぐさま敵は直接目の前の敵を喰らおうと二口女は文字通り牙を剥き、
「糧となるのはてめえの方だ!! ブラッド・ドレイン!!」
 対抗するように放たれたミザールの魔力の波動が、二口女の体から血液を生命の力へと変換し奪いつくす。
 いかに治癒を繰り返す敵といえど、際限なく再生を繰り返せるわけではない。癒しきれない傷や、あるいは燃え盛る炎を消しきることも困難であり、いずれその体力は底をつく。
 長く戦いを続けているケルベロスの側もそれは同様であるが、元より数が違う。仲間を庇い、攻撃を肩代わり、敵を挑発し、ひきつける。それにより彼等のダメージは分散し、負担も軽減される。
 加えて、サーヴァントであるサイレントイレブン、蓬莱とミサキ、さらにはウィゼとノアのサポートもあり、ケルベロスの側には殆どダメージらしいダメージは無い状態だ。
 少しずつ蓄積した差は今や目に見えるほどの大きな差となり、二口女にも遂に終わりの時が近づいていた。
 一十が攻撃をいなし、すかさず体勢を崩した敵へ一太の放った一撃が、魂ではなく、その熱を喰らう。柔軟に伸縮していた髪の毛の動きは鈍り、衝撃を受けるたびにそれは砕け散り、もはや再生することもかなわない。
 たまらず地に落ちた瓦礫を喰らう二口女に対し、ウィゼがウイルスカプセルを放り投げる。
「これの効き目はどうじゃろうかの?」
 喰らえども喰らえども、もはやその体に活力は戻らない、いくら食べようとも満たされることの無いそれは、目の前のケルベロス達からもはや目を逸らし、ただ食べることだけに集中する。
「さすがにこうなっちゃうとかわいそう、だねー」
 哀れむように呟きながらも、円はその体に紫電を纏う槍をつきたて、逃げられないようにその体を地へと縫いとめる。
 その頭上から無慈悲に降り下ろされる、歌彼方の一刀。
 唸りを上げるチェーンソーの刃が傷つき凍てついたその体を脳天から両断する。
「ラストオーダー、味はどうでした?」
 彼女が最後に口にしたコンクリートの味など、誰も知る由はなく、さらさらとその体はモザイクへととけて消えていった。

作者:雨乃香 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。