欲して掴んでそのあとは

作者:ヒサ

「……そう、解ったわ」
 少女めいた声が不満げに低く落ちた。が、それはすぐに気を取り直したようトーンを上げる。
「でも、最後に一暴れしても良いでしょう? あなたにとっても不都合は無いわよね。
 ──ええ、勿論よ。不覚は取らないわ」
 そして。華奢な少女を思わせる見目のダモクレスは、規模の大きなとある女子校を訪れた。陽が傾く頃には、下校する生徒が門をくぐる。それをダモクレスは片端から殺して行った。細い体躯に釣り合わぬ無骨な腕を振るい、己を血色に染めながら。無論騒ぎになったが、駆けつけた教員達や部外者も区別無く屠った。
「全部、貰うわ。ずっと我慢していたんだもの。あなた達の血も、肉も、骨も、声も、熱も、鼓動も、未来も──全部、頂戴」
 ぐしゃり、また一つヒトであったものを握りつぶしてダモクレスは、色濃い恐怖と夥しい血に彩られた門前で楽しげに笑んだ。

「『コマンダー・レジーナ』の配下がまた一体、事件を起こすみたい」
 事前に地球へ送り込まれ潜伏していた配下達は、指揮官の着任に合わせ一時撤退を命じられたという。だが、すぐに引き上げずに事件を起こす者達が複数確認されていた。
 今回捕捉した個体は大量のグラビティ・チェインを欲して大きな女子校を襲うのだとヘリオライダーは言い、その阻止をケルベロス達へ依頼した。
「日が沈む少し前の、丁度、部活動を終えた生徒さん達が帰る頃ね。街中に建っている学校だけど裏手はすぐ近くが山で、殆どのひとが正門から帰るらしくて、そこを狙われるみたい」
 正門のすぐ外には公道が走り、それを渡った先は住宅街。偶然通り掛かったり異変に気付いたりした住民達も巻き添えになる。周囲の家屋等にも被害が出るだろう。
「正門を入ると、前庭になっているの。整えられているし広さもあるから、そちらに敵を押し込んだ方が、障害物とかの事を考えても戦い易いでしょうけれど、そうすると、どう学校のひと達を巻き込まないかが問題になりそうよ。急いで行っても着けるのは部活動の最中になるでしょうし、広い敷地内のあちこちに人が散らばっているし……部活動に熱心な学校みたいで、教職員のひと達も沢山駆り出されてるようだから、誰かを捉まえて協力を頼むのも手間が掛かるでしょうし、校内放送で、と出来ても校舎外のひと達には聞こえない可能性もあるし……」
 敵を待ち伏せて迎え撃つ事は可能だが、事前準備に割ける時間はそう多くは無い、と仁那が眉を寄せた。着いてすぐに生徒達を帰してしまうと、敵の被害そのものは防げない。敵が現れるまでは生徒達に校内に居て貰う必要があり、下校時刻となっても正門周辺が部活動中同様に無人のままであれば敵は敷地内に入って来るだろう。
 学内の者達には分担して通達するなり、前庭周辺で対応するなり、やりようは幾らでもあろうが、その効率が悪くては被害を抑えきれない可能性も出てくる。前庭からは運動場や校舎など、あちこち幾つも道が繋がっており、庭の隅に木が植えられている為に見通しもやや悪い。不測の事態があっても対応出来るよう備えておく事が望ましい。
「……あとは、敵なのだけれど。ごく低空を飛び回って腕で攻撃して来るタイプみたい。攻撃力と機動力が高いようよ。地上で包囲出来ればまず取り逃がしたりはしないと思うけれど、力ずくで突破しようとして来る事はあるかもしれないわ」
 そちらも気をつけて、と仁那は目を伏せた。


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
メルティア・サーゲイト(去らない老兵・e00750)
キソラ・ライゼ(空の破片・e02771)
ジエロ・アクアリオ(星導・e03190)
神咲・刹那(終わりの白狼・e03622)
悪路・儘鉄(我道闊歩の怪獣王・e04904)
真木・梔子(勿忘蜘蛛・e05497)
サフィール・アルフライラ(千夜の伽星・e15381)

■リプレイ


「間に合ったようでございますわねぇー」
 遠く、少女達の声が聞こえる。各々部活動に励んでいるのだろう。急いだ甲斐あって未だ事は起こっていないと判り、フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)がほっと息を吐いた。
 前庭内には今のところ人影は無い。その奥、庭木の向こうに、何かの用具を運んでいるらしき運動着の生徒達をサフィール・アルフライラ(千夜の伽星・e15381)が見つけ対応へ向かう。
「すまない、少し良いだろうか」
 少女達を呼び止めて彼女は、自分達がケルベロスである事、この付近が危険である事などの説明を始めた。その間に彼女達の脇を会釈して通り過ぎたキソラ・ライゼ(空の破片・e02771)と真木・梔子(勿忘蜘蛛・e05497)は、校舎内へ繋がる玄関口を目指す。
「──大丈夫だ。貴方達皆を、私達が必ず護る」
 事情を説明し、異常事態を報されおののく民間人を宥めつつ対処法を伝え、更に情報拡散の協力依頼、となると、どうしても手間取る。ゆえ、フラッタリーとジエロ・アクアリオ(星導・e03190)もまた周囲の警戒に回る事にした。他は動かず残り、敵の襲来を警戒し前庭及びその周辺に潜む。
「近くでどなたかを見かけた際にはお願いするね」
「ええ、お任せ下さい」
「済まない、後を頼む」
「承知致しましたわぁー」
 手近にもう生徒らの姿は見えないが、見通しの都合で視界に入らないだけかもしれないし、後々通り掛からないとも限らない。サフィールが二人と入れ替わりに正門方面へ戻り警戒に加わる。生徒達に見せていた笑顔を消して冷たい気を放つ。空気が張り詰めると共に近くの鳥が飛び立ち、辺りが静寂に包まれる。
 敵影を確認してから動くよりは、とメルティア・サーゲイト(去らない老兵・e00750)は、門を斜めから捉え得る位置の樹木の陰で武装を展開し待機する。置物めいて静止し気配を殺す姿に危うさは無かったが、彼女の得意とする戦術が機動力を重視しないものである為もあり、傍に神咲・刹那(終わりの白狼・e03622)が護衛を兼ねて潜んだ。

 時折見掛ける生徒に事情を説明しつつ玄関口へ辿り着き、そこに進入禁止のテープを貼ってのち屋内へ入った二名は、職員室が施錠されている事を確認し、予測の範疇ではあれど、と顔を見合わせた。
「他に人が集まる場所といいますと……」
「部活で使ってそなのは……音楽室とか?」
「被服室ならば近そうですが」
「んじゃそっから行こか」
 上方に設置されていた案内板を見、廊下を早足で歩く。
「……お仕事で無く来たいトコだったケド」
「生徒も先生もお仕事で来るのでは?」
「父兄とかだとそればっかでもナイかな」
 廊下に人影を見ぬまま目的地に着いた。一声掛けて扉を開けると、ミシンの稼働音が耳を塞いだ。
「──失礼します!」
 ゆえ、梔子が声を張り上げる。室内が静寂と疑問符に支配されるまでに要した時間はごく僅か。顧問と思しき教員が用向きを尋ねて来たので二人は何度目か、事情を説明した。場の空気が動揺と困惑に塗り替えられるのを見、キソラが改めて口を開く。
「大丈夫、絶対に食い止める。だから落ち着いてくれ」
 その為にも皆の協力が要るのだと、彼は丁寧に訴える。年若い少女達の姿は彼に、護るべき者達を思い起こさせたがゆえに、その声には自然と熱が灯った。
「……私、友達に電話してみます。図書館に居る筈だから」
「じゃあ私は体育館に報せて来るね。今日バレー部が使うって聞いたし」
「なら私は武道館へ」
「ああ、では体育館と武道館は避難所として解放して欲しいとも頼んで貰えますか」
「解りました」
「グラウンド誰か一緒に行こー」
 やがて少女達はその真摯さに応え、己に出来る事を探した。裏門の間近にある建物の名が出たところで梔子が依頼を沿え、少女達の様子に安堵したキソラは傍の教師に、放送が届く範囲への対応を要請する。
 これで大体はカバー出来る筈だとの保証も得、二人はその補佐に回るべく廊下へ出た。近い位置から情報が回り始めたようで、室内からはざわめきが洩れ聞こえていた。

「うっかり近付くとー、死んでしまいますのでー。ご協力をお願い致しますのー」
 前庭と各建物を繋ぐ道で。おっとり穏やかにフラッタリーは、時折通り掛かる生徒達を震え上がらせていた。その効果に不足は無く、元々頻繁では無かった通行人も滅多に見掛けなくなって来た頃、彼女達へ呼び掛け急ぎ足で近付いてくる男性の姿があった。
「すみません、学外の方がお困りのようだと生徒達から報告がありまして。白髪で色黒の男性と黒髪で色白の女性との事で、失礼ながら……」
「ふむ」
 自分達は学校関係者を見つけ次第声を掛け素性を明かしている筈である。だが生徒達が一方的に自分達を見れば不審者の可能性も考えるだろう。加え、教師だと名告った相手が報せを受けた時刻を訊けば、自分達が敷地内に入ってまもなくの頃。得心行って頷くジエロの視界の隅で銀髪が揺れた。
「それは驚かせてしまいすまなかったね。私達はケルベロスなのだよ」
 ともあれ好都合と教師を捉まえる。この後デウスエクスの襲撃がある事、対応する準備もある事、敷地内の者達が不用意に動くと危険である事と皆の協力が必要である事及びその詳細を、既に幾度も繰り返した為もあり彼は手早く説明し。
「──という事で、被害を拡げぬため、ご協力願えるかな」
「手伝いの者も校舎内にお邪魔しておりますわぁー。今でしたら他の先生方とも連携して頂けるかとー」
 つつがなく協力を取り付けたところで、下校時刻が近い事を報せる鐘が鳴った。


「環境情報取得完了。砲身荷電開始──」
 初めに黒い姿を視認したのはメルティア。印加と共に熱と音が生じる。
「──設定及び演算終了」
 発射。精密な射撃が標的を襲う。されど隠密性が減じていたためだろうか、反応した敵は門をくぐった身を僅かに退くと腕を振るい銃弾を叩き落とした。
「退かせはしないよ」
 それへの対応は背後からジエロが。黒翼を広げ敵の後ろへ回り込んだ彼は氷雪の力を淡く爆ぜさせ少女を模した小柄な体を敷地内へ押し戻した。地に下りた彼はついでに、鉄柵で作られた門扉を閉める──敵がその気になれば無いも同然の遮蔽物だろうが、何もしないよりは良いだろう。
 その傍ら、前方へよろめく事となった敵を迎撃したのは悪路・儘鉄(我道闊歩の怪獣王・e04904)。現場が現場であるがために少々居づらい、と上空で待機していた彼だが、自陣の初動に応じて敵の眼前へ舞い降りたのだ。
「オッサンと力比べと行こうかい」
 そのまま相手に組み付くようにして機腕による攻撃行動を抑え込む。抗い暴れる敵が頭突きを繰り出して来、彼の視界には星が散ったが、仲間達の戦闘態勢が整う間くらいは保ちそうだ。
「──確認します」
 拮抗したその間隙。次撃の準備と並行し、メルティアが敵を見据え口を開いた。
「貴方の個体名はルルティア、ですか?」
 彼女の演算は、探し求めていた対象と眼前の敵との一致の度合いを、約七分の一と弾き出した。敵は虚を突かれたように一度目を瞬いた後、笑みの形に表情を変えた。
「私はルルティア。私は『強欲』。私は全てを欲する一。あなたは……私の敵」
「……そうですか」
 対するメルティアの声は平坦なもの。過去最高の適合率はしかしあまりに低い。相手の言葉、その最後の一文に関しては異論も無い。ゆえ彼女はそれ以上を語らず換装を継続する。
 応酬の合間を縫うようサフィールが影を撃つ。仲間の強化に専念する方法を選ぶ事も出来たが、手早い決着を求めての事だろう。
「──では」
 手にした携帯電話の操作を終えたフラッタリーの、柔和な笑みがなりを潜めた。見開いた金瞳に敵の姿を映し、晒した額に傷を燃やし、弧を描くままの唇が薄く開いた先に覗く白歯は、獲物を見定めた獣の牙めいた。
「参リマセウ」
 拘束から逃れた敵の動きを再度阻むべく動いた仲間の陰から、フラッタリーの獄炎が迸る。纏わり付くそれを引きちぎるかのように敵の腕が眼前の刹那へ拳を向け、咄嗟に身を退く彼女の前に儘鉄が割り込み護りきる。受けた衝撃は備えていたとはいえ軽んじられるものでは無く、崩れる姿勢からなんとか蹴り技に繋げた。
「クリュ」
 ジエロは前線へ送った小竜へ仲間の援護を任せる。やはり敵の動きを制限する必要があろうと判断し、彼自身は水術を応用し周囲の大気への干渉を紡ぎ、音を介し敵の意識を揺さぶりに掛かった。サフィールが急ぎ治癒を為す中、反撃とばかり刹那が壇手による拘束術を敵へと放つ。
「──メインガトリングアクティブ」
 より得意とするのはこれであると、老兵が微かに目を細めた。二丁の機銃を同時に展開し、大量の弾丸を撃ち放つ。仲間の位置及び移動を計算しつくした上で、敵の逃げ場だけを塞ぎ弾幕を形成する。

 校舎脇を回り前庭方面へ続く道を塞ぐようテープを巡らせた。あまり時間を掛けていられない為もあり、要所だけを封鎖して回り人の足が避難所へ向くよう仕向け、此処が最後の筈だった。
「……こんなトコ?」
「後は学内に残っている人達を外へ出せれば、でしょうか」
 辺りを見渡し梔子が小さく頷く。既に交戦の報せは受け取っていた。念を入れ誘導経路と避難の様子を再確認してのちは、生徒達を未だ此処へ留めおく事への心配が残った。それを許す気は無いけれど、万一が起きては、との懸念もある。
 僅かの間だけ迷い。キソラは携帯電話を取り出して、作業の最中に得た情報の一つである、避難所付近で指揮を執る教員が持つ電話の番号を入力する。自分達が見聞き出来る範囲で混乱は起きていない、ゆえ、後は彼らに託すべきとの判断だった。


 飛び回る敵を包囲し、体で止めるようにしながら戦いを続けた。敵の戦意はごく高く、邪魔をするならばその相手を破れば良いと攻撃を続けて来る為、被害を拡げぬ事そのものは易しかった──競り負けなければ、との条件はつくけれど。
 軋り歪む知覚に抗い切れずに敵が駆ける。此度標的と定めた相手であるジエロへ至る道程が長いものであると彼女の認識が追いつくより先に、その動線上にフラッタリーが割り込んだ。
「許ス筈ガ御座イマsEンノ」
 大剣が爪を受け止め弾く。ギイと擦れる音は敵の不服を示すかのよう。見据えて笑んだ金瞳が、嗜虐に似た色を映す。
 射手達はその業に依って囮を兼ねた。無論、宙を滑る凶器が届くより先に前衛達が凌ぐ。彼女が平静を取り戻し得た際は真っ当に戦術とその巨腕を振るうものの、盾役を交え三つ重ねた呪詛を小竜が補強した為もあり、敵の勢いを抑える助けとなっていた。
 此方の人数が未だ足りぬゆえもあるが、それを除いても火力制御自体は不十分だった。敵の攻撃はやはり重く。その機動力は此方を翻弄し、機会を得れど活かしきれぬ事も多々。それらを先の術が補う形だ。
 動き続ける敵の足元を儘鉄の竜尾が払い、鈍ったところへ刹那が蹴り技を見舞い推力を削る。状況は易しいものでは無かったけれど、少しずつ手を積み重ねて行った。
(「慣れて来たのもあるでしょうが、彼女の速度自体も落ちている筈です。追いつけますもの──」)
「──逃がしません」
 蹴り抜いた後、重心を御して再度標的を視界に捉える。敵も隙を晒すような真似はしなかったけれど、間を置かぬ『次』を警戒して束の間滞空した彼女を、側方からメルティアの銃撃が襲った。
「悪ぃ、遅くなった」
「皆さん、大丈夫ですか?」
「やはり前衛の負担が大きいな。長くは支えきれない可能性もある」
「そか、アリガト」
 梔子がメルティアを援護するよう鎖を放つ。皆の様子に目を配り懸命に治癒を続けているサフィールの言を聞いてキソラは、手伝って来る、と前へ走る。
 その勢いを活かす如く敵が迎撃に加速する。回避を、と彼が試みるより早く、正面に立ち塞がった儘鉄がその身で敵を抑え込むよう攻撃を受け止めた。
「させ、て、たまるかよ……!」
 儘鉄にとって仲間は家族。敬うべき母が居て、護るべき息子や娘が居て、であれば盾であり抜く事こそ己が役目。
 だが、ぎちりと胴を食む鋼手がもたらす熱が、過ぎる痛みゆえと理解する頃には、彼の体は意思に従う力を失くしていた。彼から敵を引き剥がすように立て続けに爆破が起こった事で、継いで貰ったのだとだけ、判った。
「てめぇにゃあ、やれないヨ」
「足掻クト云ウナラバ、手折ッテ差シ上ゲマセウ」
 縄を、鎖を、罠の如く巡らせて。足を切り羽を裂き捕らえるべく戦って。それでも殺意で以て抗う鳥を檻で囲った。
「逃がしはしません……!」
 敵の殺意と欲望が向かう先を思えば、捨て置ける筈も無く。気配を殺して距離を詰めた刹那が標的へ連撃を加える。打ちのめされ、それでも腕を振り回した敵の爪が、彼女の脚から腹にかけてを深々裂いた。
「く、っ……」
「──……!」
 間近へ迫り有効打を与えた代償とでもいうのか、凛とした白い姿が血の尾を引いて石畳に伏した。治癒を試みる猶予すら得られなかったサフィールが仲間を案じ白い顔をして、けれど青い瞳は状況を分析する冷静さを残し、攻撃の術を紡ぐ指と声に戦意を燃やす。
「すみま……せん」
 血溜まりの中でそれでも仲間を案じる掠れた声を聞いた。これ以上を許してはいけない。
「戀獄の章、第八節──」
 炎が揺れる。祈りを照らし輝きを強めるのは、真空を纏い振るわれる大剣。爆ぜる機構に怯まず呪縛を刻み行くのは、杖から変じた蛇と、それを追う形で為された小竜の水術。
「──吹き遊べ」
 敵が棒立ちになったその時を、風が追った。踏み込み身を屈めた梔子が、背から生じさせた蜘蛛脚で敵を貫く。
 贄とするかのよう幾本も突き刺して、それから。ほんの一瞬、彼女は動きを止めた。同じ思いを抱いたキソラが顧みたのは、淡々と銃器を扱い続けていたメルティア。
「……どうする」
 どう問うべきかも少々悩み、曖昧に投げ掛けた。だが応じる彼女は平静を保ったまま、
「そのまま破壊を。彼女は『彼女』ではあり得ませんし──ガトリング、セットOK」
 仲間の次撃よりやや早く準備を終え、二丁の銃が変わらぬ正確さで火を噴いた。派手な連射音の中、銃弾と入れ替わるように退いた梔子は、暫しその様を見ていたものの、やがて負傷者を案じ手当へ向かった。
 銃撃が止んだのは、敵であったものが鉄くずの域まで破壊され尽くした後の事。
「対象の沈黙を確認しました」
 静かな声がそれだけを告げた。

作者:ヒサ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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