シャイターンの選定

作者:沙羅衝

 ドゴッ! ドゥン!!
 ここは大阪市の京橋駅前にある百貨店。そこで今まさに、建物が破壊されていっていた。
 何処からとも無く、グラビティの炎が繰り出され、炎が上がっていく。
「皆さん! 落ち着いてください!!」
 叫ぶ店員。しかし、気軽にショッピングを楽しむべく到着した百貨店で、いきなりの攻撃を受けたのだ。客がパニックになるのは必至であった。
「おい! どけや!!」
「ちょっと、押さんとって! 痛い!」
 出口付近の自動ドア近辺で、口論が起きる。
「どんくさいねん、おばはん。はよ、どけや!!」
 一人の中年の男性が、人々を押しのけ、我先にと人ごみに突っ込み、無理やり出口に抜けていった。
 ドン! バリン!!
 しかし、そこへ更なる攻撃が建物を襲うと、その男性へとガラスの破片が降り注いだ。
「ぐああああ! 痛い!!」
 男性の頭や顔、肩からは鮮血が噴出し、大声で叫び声を上げる。
 その男性の前に、背は高いが線の細い一人の男が現れた。
「ほう……感心感心。キサマ、良いぞ!」
「誰か知らんが、助けてくれ……」
 中年の男性が、余りの痛さに、助けを請う。
「そして、この期に及んで命乞い……。その身勝手さ、素晴らしい。キサマに力を与えてやろう。喜べ!」
 その男は、手から炎を作り出し、中年の男性に放つ。
「ぎゃああああ……」
 断末魔の悲鳴を上げる男性は、燃え上がる炎で燃やし尽くされ、息絶えた。
「……残念。ハズレだったか。まあいい、他だ」
 そしてその男、シャイターンは次なる目標を見定める為、更に建物を破壊していった。

 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)が、ケルベロス達の前で依頼の説明を開始していた。隣には、リコス・レマルゴス(ヴァルキュリアの降魔拳士・en0175)が無言で控えていた。
「皆、よう聞いてや。大阪市の百貨店で、エインヘリアルを生み出そうとするシャイターンが、事件を起こそうとしてるんや。本来やったら、ヴァルキュリアがそう言う仕事しとったんやけど、ほら、うちらの仲間になったやんか」
 絹はそう言って、少し難しい顔をしているリコスを見る。どうやらリコスはこの事件については、何としても解決したいと思っているようだ。絹はまたケルベロス達に顔を向け、口を開く。
「今回のシャイターンは、多くの一般人が居る建物を壊して、その事故で死にかけた人間を殺して、その人をエインヘリアルにしようとしてるみたいや。事件が起こる建物は予知できてるんやけど、事前に避難とかさせてしもたら、事件そのものが別の場所になってしまうから、みんなにはその事件が起きてから動いてもらうことになる。でも、事前に避難は出来へんけど、潜伏しとくとかは出来る。予め行動を決めておけるから、どうするかは皆で決めておいてな。例えば、スムーズな避難経路の確認とか、事件が起きてからの誘導。それに、崩壊してくる建物を、崩壊と同時にヒールで止める、とかな。そんで、シャイターンがおる所に行って、倒して欲しい」
 絹は一息つき、更に詳細を話す。リコスは、まだ難しい顔をしているようだ。
「今のところ、人的被害は出てへんけど、最初に、出入り口で中年の男性の所に現れるみたいや。その人が最初に襲われると予知できた。上手いことやれば、その人が襲われる前に止めに入れると思うわ。でも、さっきも言うたけど、事件を起こさせへんと、そのシャイターンは出て来ぉへん。その中年の男性は、逃げる人たちを押しのけて、我先に逃げようとしてるから、出入り口付近で潜伏しておくのがええかもしれんな」
 成る程、と考えるケルベロス達。まずは人々のパニックを起こさせない誘導方法と、襲われる対象の男性の見極めが肝心なようだ。
「んでや、このシャイターンやねんけど、炎の攻撃をメインとして、催眠でこっちを操ってくるで。ヒールもするみたいやから、その辺の作戦も抜かりないようにな」
 絹はそう付け加えると、リコスに前を促す。
「魂の選定は、我々ヴァルキュリアの仕事だった。個人的な感情なのだが、選定の方法といい、少々思うところはある。どうしても止めたいのだ。宜しく頼む」
 リコスが頭を下げると、ケルベロス達は力強く頷くのであった。


参加者
カルディア・スタウロス(炎鎖の天蠍・e01084)
ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)
クラム・クロウチ(幻想は響かない・e03458)
黒住・舞彩(我竜拳士・e04871)
鷹野・慶(業障・e08354)
小花衣・雅(星謐・e22451)
フレック・ヴィクター(武器を鳴らす者・e24378)
ルカ・フルミネ(レプリカントの刀剣士・e29392)

■リプレイ

●賑わう百貨店にて
『非常口が裏側にある。誘導を行う者は、そちらも考慮してくれ』
 鷹野・慶(業障・e08354)が、少し左足を引きずるような動きで、百貨店内の陳列棚を移動し、非常階段入り口の壁に寄りかかりながら、携帯電話で連絡を行う。彼の足元にはウイングキャットの『ユキ』が、周りを見渡すように静かに人々の行方を確認している。
 ケルベロス達は絹の話から、まず事が起こった際に人々の誘導をスムーズに行う為の避難経路を確認していた。
『了解。こっちは警備員に説明をした所だ。協力してくれるそうだ。ああ、きちんと出入り口付近以外と伝えた。少々心苦しいがな』
 慶の連絡に、クラム・クロウチ(幻想は響かない・e03458)が返す。彼は警備員の詰め所にいた。
「じゃあ、首尾よく頼むぜ」
 携帯電話を懐に入れながら、目の前の警備員にそう言い、そこを出て行った。
 現状、買い物を楽しんでいる一般人は、ケルベロスの出現がこれから起こることなど微塵も想像していないようだ。ひょっとしたら、既にデウスエクスが出現する日常に、少し慣れているのかもしれなかった。それでも心折れることなく、むしろ現状を楽しむかのように笑って過ごす人もいる。
『こちら地下の食料品売り場です。この時間はここが一番人が多いようです』
 カルディア・スタウロス(炎鎖の天蠍・e01084)が、地下食料品売り場のエスカレーター横で、人々の様子を見ながら連絡を行う。
 現在、午前11時30分。昼食時である為人々が行き交い、店員が呼び込みをかける。あたり一面を良い香りが漂う。
 カルディアの横をフレック・ヴィクター(武器を鳴らす者・e24378)とリコス・レマルゴス(ヴァルキュリアの降魔拳士・en0175)が通り過ぎ、エスカレーターに乗る。彼女達は、目だけを合わし頷きあう。
「リコス、どう思う?」
「……ああ。ヤツラの事だな。正直気に食わない、な」
「あたしも」
 二人のヴァルキュリアはそう言いながら、百貨店の地図を片手に、1階に上がっていく。そのまま百貨店の出入り口向かう。そこには黒住・舞彩(我竜拳士・e04871)がいた。彼女はファミリアの鶏、『メイ』をぬいぐるみとして子供の客に紹介している。
「リコス、フレック。ご苦労さま。状況は順調よ。あと、知り合いの何人かに手伝ってもらいに来て貰っているわ。頼りになる人たちだから、大丈夫よ」
 舞彩がそう言って、目線だけをエレベーター前にいる九石・纏に移す。絹の話によると、他のケルベロスもサポートに来てくれているとの事だった。
「では、こちらは対象の見極め……ですかね」
 ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)が、何食わぬ顔で、彼女達の横に座る。ウィッカはそれだけ言うと、注意深く周囲を見る。ふと、柱の影にいる小花衣・雅(星謐・e22451)と目が合った。雅は足元にいるウイングキャットの『アステル』を触りながら、何事か考えているようであった。
 ケルベロス達は、絹の予知から外れない様に、事が起きるのを待った。肝心なのは事件を起こし、シャイターンを出現させる事である。
「あれ? そういえばあれ、なんだっけ?」
 ルカ・フルミネ(レプリカントの刀剣士・e29392)が、出入り口から少しの所にあるベンチに座って片目を閉じ、何やら検索を始めた。その時、ドーンという爆発音が、響き渡った。
「キャー!」
 突然の爆発音と、強い揺れ。辺りから悲鳴が上がる。
「ななななにごとー!? あ、敵か」
 ルカは自分も驚き、何をしに来たのかを思い出した。
 立て続けに起こる爆発音。天井から、破片が降り注ぐ。準備していた者やサポートのケルベロス達が、破片が降り注ぐ前にヒールを使ってそれを押さえる。そのおかげで、一般人に怪我は出なかった。だが、辺りはパニックになっていた。人々が建物から脱出しようと、一気に押し寄せる。
 そして、目標の声が響き渡った。
「おい! どけや!!」
 ケルベロス達が見ると、中年の男性が、我先にと人だかりを押しのけて、一人だけ前に進もうとしていた。

●予知
「ちょっと、押さんとって! 痛い!」
 出口付近の自動ドア近辺で、口論が起きる。それは、絹の予知と全く同じものであった。カルディアはそれを見て、他の出口のほうへ向かう。
「目標、補足です」
 ウィッカが、その男性を確認して更に様子を伺う。
「俺達はケルベロス、避難経路は確保してある。崩壊はヒールで食い止めるから、慌てずに動け」」
 慶が凛とした風を使い、問題ないと判断した一般人にそう声をかけた為、それ以上出入り口に押し寄せる人は出ない。
「はい、そここっち!」
「こっちだ」
 それに気付いた赤峰・葉流とガイ・リキドウが、速やかに誘導を行う。そして、カイ・ロストパーツがミミックの『匣水』と共に、慶達が指定した避難経路へと導き、護衛する。
「お兄さん、そっちじゃないわ。こっちよー」
 デスマーチ・ラビットが違う道を進もうとしている男性にラブフェロモンで誘う。
「みなさんがどれだけ早く戦いに合流するかの勝負です。ボクの力、お貸しします!」
 そして、ティクリコティク・キロがリコスにそう言って、現場を動きまわった。
「助かる。宜しく頼む」
 リコスがそう言って頭を下げると、いよいよ、目標の男性が、人ごみを抜け出た。
「さあ、皆こっちよ。安心して、私達はケルベロス。避難の誘導を行うわ」
 鶏のパーカーを被った舞彩が指で纏を指し、雅も割り込みヴォイスで誘導を支援する。
 ドン! バリン!!
 大きな爆発音が響き、ガラスが飛び散る。店の内側に飛んできたそれをルカがヒールで止める。当然、外側はそのままだ。すると、そのガラスの破片が、我先にと無理矢理抜けていった先ほどの中年の男性に降り注いだ。
「ぐああああ! 痛い!!」
 絹の予知通り、彼は頭から血を流し、悲鳴を上げた。
 ケルベロス達は自分勝手な人間ではあるが、傷つくのを放置することに、若干の抵抗があった。
 勝手な男性だが、一般人であることには代わりはない。
 作戦のために利用している事を感じ、いささかの罪悪感を覚えた。
 ケルベロス達が見守っていると、背は高いが線の細い一人の男が現れた。シャイターンだ。
「誰か知らんが、助けてくれ……」
 中年の男性が、余りの痛さに助けを請う。その様子を見て、ケルベロス達は一気に出入り口を抜ける。速やかな誘導のおかげで、出入り口付近の混乱が無くなった為、スムーズに外へ出ることに成功する。
「そして、この期に及んで命乞い……。その身勝手さ、素晴らしい。キサマに力を与えてやろう。喜べ!」
 シャイターンが、炎を作り出し、男性に投げつけた。
 ボウッ!
 その瞬間、舞彩がその男性と入れ替わり、シャイターンの炎を受けた。その炎は、舞彩の身体を覆っていくが、気にした様子もない。そして、割り込みヴォイスを使って語りかける。
「こういうのはね。馬鹿って言うのよ。それを良いだなんて、貴方はそれ以上の馬鹿、かしらね?」
「チッ。ケルベロスか。面倒なヤツラが来たもんだ」
 シャイターンはそう言って、少し下がる。
「っしゃー! もう好きにはさせないからなー!」
 そこへ、ルカのミサイルが降り注ぎ、雅がグラインドファイアを放ち、前へ出る。それらの攻撃を、シャイターンは避ける、が、
 ドウゥ!
 突如上空から竜砲弾とブレスが討ち放たれ、シャイターンを直撃する。
 クラムとボクスドラゴンの『クエレ』と共に上階から飛び降り、攻撃を放ったのだ。
 ウィッカとカルディアが、メンバーへとゾディアックソードからの守護の力を付与させる。
「やぁご同輩。少しばかりやり方が下手じゃないかしら。こんなやり方……こんな選定で……勇者は見つかる筈はないわ。
 そして、フレックとリコスが前に出る。
「だって……『勇気』も無いもの」

●勇者
「ハッ! 『勇者』ねぇ……。では、お前たちがその、『勇者』とやらになれば良いではないか? クックック」
 シャイターンは嘲笑しながら生きた蛇を召喚し、それを喰らう。すると、クラムの攻撃で受けた傷が癒え、身体の周りをグラビティの盾で包む。
「何が、可笑しい?」
 リコスが声を押し殺し、分身の術を前衛へと施す。
「キサマらヴァルキュリアが勇者勇者と言うから、選定が遅れ、結局はケルベロスの軍門に下った。要するに失敗したのだ。オレから言わせてもらえば、何が『勇者』だ」
「あたし達にとって勇者の選定はもっと……気高い物だった。英雄を迎え導き助けるのは、あたし等にとって誇りでもあった。それを馬鹿にするなっ!」
 フレックがそう言いながら、雷の霊力を帯びた突きを放つ。
「その通り、馬鹿ではないか!? クハハハ……」
 シャイターンはその攻撃を避けつつ、声を上げて嘲笑する。
「同族の妖精達を滅ぼしたエインヘリアルにつくとは、シャイターンには妖精種族の誇りも何もないのですね。ここで引導を渡して差し上げましょう」
 ウィッカが半透明の「御業」を慶に施す。
「まあ、何だっていい。面倒くせぇ」
 慶がブラックスライムの黒鶫を放ち、シャイターンの足に纏わり付かせ、ウィッカの「御業」がそのグラビティの盾を打ち消す。
「しかし、碌に選定できねえ能無しじゃあヴァルキュリアの代わりにはなれねえよ。諦めたらどうだ?」
 慶は逆に罵る。
「ククク、キサマ。見込みあるんじゃないのか?」
 シャイターンは雅の電光石火の蹴りと舞彩の鉄塊剣の大きな一撃を避けながら、言葉を続ける。
「もういい、黙れ」
 クラムが威圧感の在る声を放ち始め、
『――耳を塞いでも無駄だ。内側に留まり籠れ、停滞の歌』
 絶望と嘆きを込めた歌を浴びせる。すると、幾つもの氷が発生していく。
『シビれろ! なんならその翼に引火しろぉ!』
 そして、ルカの電撃が追い討ちをかけた。
 ケルベロス達の攻撃は徐々にその効果を発揮していった。シャイターンは、回復を行いながらも炎を放ってくるが、ウィッカとアステルの回復、そして、カルディアのスターサンクチュアリによって、体勢を整える。しかし、シャイターンはその嘲笑を止めない。
「お前たち自身が殴りあうというのも、素晴らしい」
 両手にグラビティを集めたシャイターンが、蜃気楼の幻影を前衛のメンバーへと放った。舞彩とカルディアはそれを避けるが、雅、フレックとルカへとその力が飛ぶ。
「フレックさん!」
「させません!」
 雅はその攻撃を受けながらも、フレックを庇い、カルディアがルカの攻撃を受け持つ。
「さあ、殴り合え! 泣き叫べ! 命乞いをしろ! フハハハハハ!」
 フラフラと立ち上がる雅とカルディアを見て、シャイターンは嗤う。
「気に入らねェ……」
 クラムがその二人の様子を見て呟き、ドラゴニックハンマーを構える。
「……余計な事を、思い出させやがッて!!」

●逞しさの中に
 クラムの砲撃が、シャイターンを直撃する。
「命乞いをするのは、テメェだ……。私をイライラさせるな!!」
 カルディアが気合の咆哮をあげ、シャイターンの幻影の力を打ち砕く。
「貴方の与える災厄は全て私が打ち消して見せます!! 貴方の攻撃は全て対策済みですよ」
 そして、ウィッカと避難誘導が終わったサポートメンバーが雅へとヒールを即座に行う。
『驕り無き強者に打ち勝つ術。それは、一人では無いということ。貴方も力を貸してくれる?ドラゴンスレイヤー!』
『シビれろっ!』
 舞彩がシャイターンの傷口を狙い、氷を増大させ、ルカが更に追撃をかける。
『じっとしてろよ。絡まったら困るだろ?』
 そして、慶が魔力の帯を靡かせる。
『じゃじゃじゃじゃーん』
 更に葉流の攻撃を合図に、サポートしていたケルベロスから、グラビティの攻撃が降り注いだ。
「英雄を迎え導き助けるのはあたし等にとって誇りでもあった」
 フレックが言いながら進み出る。
「……でもあんた達にとってはどうなの? あんたらにとって……勇者ってなんなの?」」
「偽善者にもなり切れないキサマらが何を言う……」
「なんだと?」
 その言葉に、リコスが低い声で尋ねる。シャイターンは、よろけながらも口を開く。
「一つ講釈を垂れてやろう。欲望こそが、真の力だ。それに従うコイツのようなヤツこそが、力を持つに相応しい」
 シャイターンはそう言いながら、タールの瞳を向け口の端を上げる。
「オレだったら、さっきの男のようなクズを助ければ、周りから賛同が得やすい事を考える。そうする事によって、自分の地位を高める事が容易くなる。そこまで考えて欲しいものだ」
「それを偽善と言うのだッ!」
 クラムが反論を言う。しかし、シャイターンは意に介そうともしない。
「心外だな。偽善、大いに結構じゃないか。そう言っているのだ。他人をも押しのけて、自分の価値を高めろ。何が悪い! もっと自分に素直になったらどうだ? フハハハハ!」
「……それは、駄目よ」
 回復した雅が言う。だが、それを手で制し、刀を抜くフレック。
「確かに、欲望に従うのがよさそうね。……人がそれを偽善というなら、それでも構わない。私は、この地球に住む人々を、貴方達デウスエクスの勝手にはさせたく無い。だから、私は私の欲望に従い、お前を、倒す!」
「ほざけ……」
 フレックの力が魔剣『空亡』に伝わり、
『ソラナキ…唯一あたしを認めあたしが認めた魔剣よ…今こそその力を解放し…我が敵に示せ…時さえ刻むその刃を…!』
 一瞬にして、シャイターンを切り裂いた。
「うざったい……ヤツラだ」
 その一撃に、シャイターンは消滅していったのだった。

 戦闘が終わり、ケルベロス達が無事を避難していた客に告げると、直ぐに店は活気を取り戻した。
 建物にヒールを行った雅は、空を仰ぎ祈祷を行う。
「オジサンも、これに懲りたら、もう少し周りの事考えたほうが良いんじゃないかなー」
 目標とされた男性にヒールを行ったルカ。
「ワシはワシや。せやけど、嬢ちゃんに免じて、ちょっと考えるわ」
 すると、以外と殊勝な反応をする男性。
「あたし達は……きっと勇敢な者がこのまま終わるのが納得できなかったのかもね……」
「そうかもしれない。だが、物事は進んでいる。我々の選択が間違っていたかどうかは、後の者が決めるさ。さあ、土産でも買おう」
「そうね。以外とそれが近道かもね!」
 フレックとリコスはそう言って百貨店へと消えていった。

 百貨店はまた、いつもの表情を取り戻し、何事も無かったかのように賑わう。ケルベロス達は、その逞しさに目を細めた。
 シャイターン。価値観の違う敵であったが、デウスエクスはそれぞれの価値観で動いている。
 勿論、ケルベロス達も。
 どの未来が正解なのかは分からない。分かっているのは、目の前で笑っている人々を救えたという事実なのだ。
 ケルベロス達は、その事をかみ締めた。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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