朽ちかけた竜の槍

作者:青葉桂都

●死兵、飛来する
 ドラゴンは太平洋から上陸し、まだ雪に覆われている広い田園地帯の上を飛び始めた。
 そこが北海道という名の大地であることは、ドラゴンにとっては意味はなかったし、興味もないようだ。
 なぜなら、もうすぐ常命化によって死ぬことがわかっていたからだ。
「どこだ……どこだ、人間ども!」
 道東に広がる大地を睨みつけるように見ていたドラゴンは、ほどなく行く先に小さな町があるのを発見した。
 そこがなんという町で、どれだけの人が住んでいるかなどドラゴンには関係なかった。
 ただ、道端に停まった車から買い物袋を手にした女性が降りたのが見えた瞬間、ドラゴンは全力で市街地へと向かっていた。
「行くぞ! ここが我の、ファンティヤージの死に場所だ! 皆のために、憎悪と恐怖を奴らにもたらしてみせようぞ!」
 空中で長い尻尾を大きく振り回す。
 その先端はまるで槍の穂先のように尖っており、弧を描く小さな刃がくっついていた。
 腰を抜かした女性にあらがう術はなく、彼女の体は無惨に引き裂かれた。

●ヘリオライダーからの依頼
 集まったケルベロスたちに、石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)はドラゴン勢力が動き出していることを告げた。
「常命化が進み、死を迎えようとしているドラゴンが町を襲おうとしているのです」
 狙われるのは北海道。十勝平野にある小さな町の1つだ。農業や酪農が主な産業となっている田舎町で、市街地から南へ向かうとやがて太平洋に出る位置にある。
 放置しておけば敵はグラビティ・チェインを得てしまうばかりか、襲われた人々の憎悪と恐怖によって竜十字島のドラゴンたちが死ぬまでの時間が長引いてしまう。
「そうさせないためにも、皆さんにはどうか人々を守っていただきたいのです」
 ヘリオンで向かえば避難活動を行う時間はありそうだが、近隣の町に避難させるなど大規模な移動を行うとドラゴンが進路を変えてしまうかもしれない。
 町の外には農地が海の近くまで広がっており、見通しも悪くはない。
「それよりは、学校や公共施設と言った大きな建物に避難させ、そこをドラゴンから守るほうがいいでしょう」
 そうすれば、敗北しない限り、犠牲者は出なくてすむはずだ。
 さて具体的な避難所についてだが、校舎の南側に校庭がある学校へ住民を集めるよう手配しているという。
 そこならば、敵を校庭で迎え撃つことができるからだ。
「敵の戦闘力についてですが、ドラゴンは尻尾の先端が槍状になっており、それを用いて戦うようです」
 おそらくは槍を喰らったことがあるのだろう。
 まずは尻尾を自在に操って無数の突きを繰り出してくる攻撃。連続攻撃で高いダメージを与えてくるようだ。もっとも警戒すべき攻撃だろう。
 他に高速回転させて穂先で薙ぎ払う範囲攻撃も可能だ。激しい攻撃を受けると足が止まってしまう可能性もある。
 ドラゴンらしくブレスを吐くこともできる。雷のブレスもまた範囲攻撃であり、受けると体が麻痺してしまうという。
「攻撃力をはじめ能力は非常に高いものの、どうやら死に瀕しているため体力は大きく下がっているようです」
 この場にいるケルベロスたちが力を合わせれば削り切れるはずだと芹架は言った。
 なお、死に瀕していることは本人もわかっており、決して撤退することはない。死ぬまで戦い続けて少しでも恐怖と憎悪をもたらそうとするはずだ。
「このような無茶な行動に出るということは、ドラゴンも困った状態になってきているということなのかもしれません」
 説明を終えた芹架は最後に言った。
「ですが、だからこそ敵の目論見を確実にくじく必要があるでしょう」
 よろしくお願いしますと、芹架は頭を下げた。


参加者
月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132)
流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984)
ルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994)
モンジュ・アカザネ(双刃・e04831)
タクティ・ハーロット(重力喰水晶・e06699)
メイリーン・ウォン(見習い竜召喚士・e14711)
西院・織櫻(櫻鬼・e18663)
ティ・ヌ(ウサギの狙撃手・e19467)

■リプレイ

●竜が来る町
 北海道のとある小さな町に、ケルベロスたちは集まっていた。
「瀕死の奴ほど何しでかすかわかんないから厄介だよね~。校舎に避難している人たちに被害が出ないように、俺たちは負けない戦いをしなくっちゃね」
 軽い口調で語るのは、黒豹の少年だった。
 ルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994)はまだ雪の消えない北海道の寒さに、ちょっと震えながら人々が避難している校舎に視線を向けた。
 校舎から2人のケルベロスが急ぎ足で出てくる。
「避難は無事に終わってるみたいだぜ」
 オルトロスのリキを連れた、月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132)が告げた。
「校庭側にはなるべく近づかないように頼んでおきました。気休めかもしれませんが」
 西院・織櫻(櫻鬼・e18663)は仲間たちに話しながら、隠れ場所がないか校庭を素早く見回している。
「ドラゴン……戦竜艦以来の相対だけど気は抜けないんだぜ」
 タクティ・ハーロット(重力喰水晶・e06699)は緑の瞳で空を見上げた。
 過去に交戦したドラゴンのことを思い出しているようだ。戦艦竜との戦いは海中だったが、今度の竜は空から来る。
「例え定命化で死んでしまうとしても絶対に虐殺を完了させるわけにはいかねーしなぁ……。負けるわけにはいかないんだぜ」
「定命化か……永遠なんて、言うほど良いものでもないのにね?」
 気合を入れるタクティの言葉に、朔耶が物憂げに呟いた。
「ドラゴン勢力による被害を少しでも減らすこと。それだけがワタシに出来る償いアル」
 幼い少女の過去に何があったのか、メイリーン・ウォン(見習い竜召喚士・e14711)は小さな体に決意をにじませ、拳を握りしめる。
 空の彼方に小さな影が見えた。見る間にそれは大きくなっていく。
「来やがったぜー、デカブツが」
 流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984)が得物を構え直す。
 ドラゴンはケルベロスたちを目指して、まっすぐに飛んできた。他に彼が狙うべき者は町にいないのだから、当然のことだ。
 すでに織櫻は倉庫の陰に身を隠していた。
「今回の敵はとても強いから、怪我をしないように気をつけてね。……行くよ、プリンケプス!」
 同じく隠れているティ・ヌ(ウサギの狙撃手・e19467)は、かたわらにいたボクスドラゴンに声をかける。
「――よかろう。このファンティヤージの最期の敵は貴様らだ。ケルベロスを血祭りにあげ、逃げ出した者どもに憎悪と恐怖を与えてくれよう!」
 竜は槍と化した尻尾を振り回す。
「最期だかなんだか知らねぇが、こっちはいい迷惑だ。悪いが、ここで打ち止めさせてもらうぜ!」
 モンジュ・アカザネ(双刃・e04831)が斬霊刀の切っ先を竜へと向ける。
「やってみるがいい、ケルベロス!」
 尻尾を振り回しながらファンティヤージは校庭に降り立ち、雪煙が舞った。

●竜の鋭い槍
 敵を迎え撃つべく前衛たちは前進し、中衛や後衛は散開する。
 回転する尻尾の動きはますます早まっていき、目にも止まらぬ速度となってケルベロスたちに襲いかかった。
 敵に接近していた清和やルア、タクティ、それに倉庫の影から飛び出してきた織櫻もが槍によって薙ぎ払われる。
「くそっ、いきなりやってくれるぜ」
 モンジュは打ち倒された仲間たちの姿に歯噛みする。
 皆仲良く無事で帰還するのが彼のモットーであったが、さすがはドラゴン。容易くは帰してくれそうもない。
「ミミックも、みんなをかばいながら隙を見て攻撃して欲しいんだぜ!」
 跳ね起きたタクティが、サーヴァントに指示を出しつつ、ひるむことなくオウガ粒子をばらまいて支援するのが見えた。
 朔耶も攻性植物から黄金の果実を生み出して力を与えている。
 狙いすましたティの鎖がドラゴンの目を強く打った。
 立ち上がったルア、そして清和も果敢に敵へと向かう。
「行くぜデカブツー! その眼に焼き付けろ、必殺フォートレススラーッシュ!!」
 おそらくはグラビティによって生み出された物なのだろう。どこからともなく飛んできたパーツが清和に合体し、彼をドラゴンに劣らぬ巨体へ変身させる。
 ローラーダッシュで接近し、大剣を振り下ろす。
 攻撃を終えて元の姿に戻っていく清和と入れ替わりに、ドラゴニックパワーを噴射するルアのハンマーも敵をとらえた。
「大事なシヲンが待ってるから。絶対に帰るから、待っててね……」
 ルアがここにいない誰かに呼びかけながらドラゴンを見据えている。
「とりあえずは無事ってとこだな。けど、やっぱり短期決戦で行かなきゃやばそうだ」
 簡単に決めさせてくれる相手ではないのだろうが、モンジュにできることはとにかく攻撃を集中させていくことだけだ。
 回復はメイリーンがゾディアックソードで星座を描いているのが見える。彼女のボクスドラゴンもタクティに属性をインストールしていた。
「ここはワタシたちが守り通して見せるネ。決してお前達の思い通りにはさせないアル!」
 宣言しながら、メイリーンが校舎から離れる方向に敵から距離を取ってみせる。
「蒼を抱きし我が魂。鎮めの唄にて討ち払わん……!」
 精神を高め、自分自身から生まれた忌み刀に集中する。
 雪を蹴って一気に踏み込むと、我流の霊剣術により刀に蒼い光が宿った。
 最早手放したくとも手放せぬその刃が竜の鱗を切り裂き、返す刀で二撃目も振るう。
 けれど、ドラゴンはケルベロスの攻撃などものともせずに雷撃のブレスを後衛に向かって吐き出した。
「リキ、皆を守りながら、あいつを止めてくれ」
 朔耶はオルトロスのリキに指示すると、自分もドラゴンの動きを止めに行く。
 御業を操り、半透明の獣を作り出す。
 背に翼の生えた獣は竜に向けて雷を放った。
 さらにリキが突撃をかけて、口にくわえた霊剣で鱗を切り裂く。
 ひるんだ敵を、織櫻が空の霊気をまとった斬霊刀で薙ぎ払い、雷でできた傷を斬り広げていた。
 槍の尻尾を振り上げたドラゴンは、織櫻に向けて振り下ろした。
 かばった清和が連撃を喰らって、一歩、二歩後ずさる。
「まだまだ弱らせ方が足りないみたいだな。がんばろうぜ、リキ」
 多少弱体化させてもなお厳しい攻撃が、ケルベロスたちを攻め立てる。
 タクティは後衛に向けて放たれた雷撃のブレスから、メイリーンをかばった。
「ありがとアル! すぐに回復するアルヨ!」
「よろしく頼むんだぜ。やっぱりドラゴンの攻撃はちょっときついんだぜ……」
 仲間をかばって攻撃に身をさらすタクティや清和は特に威力をよくわかっていた。
 仲間のためにという必死さが、力となっているのか。
 メイリーンがリングから盾を作り出して守ってくれた。回復できないダメージは残り続けるが、いくらか体が楽になった。
 タクティは校庭を蹴って、攻撃する仲間たちに加わる。
「まあ、命を掛けて仲間の為に行動するってのは一種の敬意を抱くんだけどなぁ」
 リングを内蔵した手甲から剣を伸ばして、敵を切り裂く。
 反撃は、今度ははっきりとタクティを狙っていた。
 胸に一撃をくらった。
 そう認識した次の瞬間、巨大な槍が全身へ雨のごとく降り注ぐ。
「……それでも、憎悪と恐怖を……集めるという目的じゃあ、阻止するに限るんだぜ!」
 砕けそうになった両膝をしっかりとつかみ、奥歯を噛み締めて、タクティはギリギリのところで倒れるのをこらえた。
 目の前にピンク色の少女が飛び込んできた。
 ティはドラゴンの至近距離まで近づいて、ケルベロスチェインを操る。
 隠れて狙っていたのは最初のみ。その後は、後衛から速度を生かして接近と離脱を繰り返しながら、攻撃を繰り返していた。
 すでにティの動きは敵に認識されているだろう。だが、狙い澄ました攻撃は、見えていてもそうたやすくはかわせない。
「遅いですね。それでもドラゴンですか?」
 ケルベロスチェインを絡みつかせて、敵の足を止める。
「黙れ、小娘が!」
 ドラゴンに生まれた隙をついて、プリンケプスがブレスを放射しつつ敵の側面を飛び抜ける。
 息のあった連携が、ドラゴンの足をさらに鈍らせた。
(「そろそろ足止めは十分ですね……」)
 挑発してはいるが、ティはドラゴンの攻撃が侮れないことをわかっている。早期決着を目指すため、なるべくならば攻撃に集中したい。
 装着しているアームドフォートを敵に向け、ティは距離を取りつつ狙いをつけた。

●老竜の最期
 敵の足は鈍り、鱗は傷ついている。強敵であるが、その回避力や防御力は目に見えて減退しているのがケルベロスたちにはわかった。
 竜はまだ倒れようとはしなかった。
 尻尾の槍から、ミミックが織櫻をかばった。
 転がっていく箱がどうにか立ち上がれたのは、朔耶の御業が敵を縛っていたおかげか。だが、それでも二度耐えられる威力ではない。
「死に体と言えど流石はドラゴン。何より死を覚悟した者は恐ろしい」
 織櫻は2振りの斬霊刀を両手で構えた。1つはかつて愛刀、もう1つは形見。
 恐ろしいと言いつつ、彼は恐怖を覚えてはいなかった。体が傷つくことを織櫻は気にしない。敵が強ければ強いほど、彼の刃は磨かれるのだから。
「私も死力を尽くし貴方を斬ります。その血肉を啜り糧とすれば、我が刃は更に鋭くなるでしょう」
 桜と瑠璃の象嵌が施された刀を彼は一気に降り抜く。
 霊体のみを切り裂く衝撃波が剣閃から飛ぶ。衝撃波見た目にはわからぬ傷をつけながらドラゴンの巨体を通り抜けていった。
 ケルベロスたちの攻撃を喰らいながら、ドラゴンが再び尻尾の槍を振り上げる。
「タクティ、気をつけろ! 連撃が来るぞ!」
 ルアはとっさに狙われている仲間へと叫んでいた。
 警告されたタクティが身をよじり、かすめただけでどうにか回避する。
「なんとかかわせたぜ。助かったんだぜ」
「気にするなよ。なんでもやるだけやってみるもんだな」
 動きを見続けていたおかげ……ということもあるが、それ以上に先ほどと同じ動きの繰り返しであったからだろう。
 焦っていたわけではあるまい。ただ、竜はおそらくこちらに必殺の槍を喰らって耐えられるだけの体力が残っている者がいないと判断したのだ。
 ルア自身、ブレスや薙ぎ払う尻尾で傷ついていて必殺の連撃には耐えられない。
「どっちが先に相手を倒しきれるかの勝負ってとこか。けど、最後まで諦めないよ」
 黒豹の少年は拳を固める。
 タクティが左腕のハンマーガントレットを加速させて叩きつける。
「諦めるってキライだから!」
 吼えるように告げてルアは怒りの感情を生み出した。肉体と精神の破壊衝動を高めながら一気に接近。
 叩き込んだ拳は、竜の鱗を貫いて痛打を与えた。
 もはや竜は必殺の威力を持つ槍の連撃しか使う気がないようだった。
 単調なぶん、攻撃は見切りやすいはずだ。だが、その上で……敵のほうがまだ早い。何度もかわせるものではない。
 主である朔哉をかばい、リキが倒れる。
「リキ!」
 サーヴァントに声をかけながら、朔耶がフクロウの使い魔を飛ばして反撃する。
 清和は再び合体パーツをグラビティで作り出す。
 気を引く力を持つ技は使えないが、せめて目立つ技で気を引こうとしているのだ。
「さあ、来んかい! どうせ誰かが食らわなきゃならないなら……おっちゃんが食らったるわーっ!」
「よかろう。ならば、貴様が死出の道連れだ!」
 ケルベロスの攻撃を食らいながら、竜は清和に向けて突っ込んでくる。
 飛び退いて槍の穂先を回避しようとする。だが、それよりも槍のほうが早かった。
 肩口を槍が貫き、動きが止まった瞬間に清和の全身に槍が降り注ぐ。ハンマーとバールを交差させて身を護ろうとするが、鋭い穂先はすり抜けて清和を傷つけていた。
 そして、最後の一閃が彼を校庭に縫い止める。
「……流星の旦那!」
「後は……よろしくな……」
 忌み刀を振るうモンジュの姿が見えた。彼に、そして他の仲間たちに呼びかけながら、清和は動きを止めた。
 メイリーンは倒れた仲間を見て、こぼれそうになった涙をぬぐう。
「これ以上、誰も傷つけさせないアル!」
 校舎の中にいる人々はもちろんケルベロスの仲間たちにも、ドラゴンによる被害は出したくなかった。ドラゴンによる被害を減らすことが、彼女にとっては贖罪だからだ。
 一撃一殺を狙うあの動きは、もはや敵が瀕死でゆっくり削っていっている時間がないことを示している。
 回復に努めていたメイリーンとクロノだが、攻撃に加わるべき時だ。
 モンジュの蹴りが敵を切り裂き、織櫻が影の弾丸を放つ。
 攻撃する仲間たちに続いて、メイリーンも攻撃のために術を発動させる。
「無限の時を経て、今こそ来たれ! 時空の龍よ我が意のままに時を歪めよ!! 『タイムリバース』」
 時の龍因子の封印を一時的に解いたメイリーンの体が成長する。
 龍の体に刻む傷は、彼がいつか受けた傷。時を歪めて負傷した状態に近づけたのだ。
 クロノも時の属性のブレスでドラゴンの体力を削っていく。
 龍の一撃がタクティのミミックを打ち倒す。それが敵の、最後の攻撃となった。
 朔耶の御業が敵を締め上げ、タクティが電光石火の蹴りを叩き込む。
「まだだ!」
 揺らいだファンティヤージが体勢を立て直そうとした。
 だが、その体へと質量弾が飛び込み、鱗の内部で炸裂する。
 ティの狙撃だ。
「いまコロスから逃げんなよ!!」
 そして、ルアの拳が敵を深く貫いた。
「ここ……までか……。皆……すまない……」
 彼方にいる仲間への謝罪の言葉を口にした竜が、断末魔の叫びと共に倒れた。
「死ぬ気で戦うのは俺たちも同じ。いや、守るものがあるからそれ以上だね」
 ルアの言葉を聞き、そして竜は目を閉じた。

●竜が残したもの
 戦場が静かになったことに気づいだのだろう校舎の中にいた人々が顔を出した。
「大丈夫です。竜は私たちが倒しました。もう、恐怖を感じる必要はありません!」
 まだ怯えの見える人々をフォローするべく、ティが呼びかけた。
 ケルベロスたちの勝利に歓声が上がった。
「流星の旦那、勝てたぜ。今、手当てしてやるからな」
 モンジュが倒れたままの清和を助け起こす。
「一般人に被害が出なくてよかったアル」
 メイリーンが胸をなでおろしていた。
「どんなものだって終わりがあるよ。楽しい時間も辛く悲しい事も……ね」
 もはや動かぬ竜に近づき、朔耶が声をかける。
 死体を探り始めたのは、彼女自身の宿敵であるドラゴンにつながるものや、その他なにか手がかりがないかと考えたからだ。
 タクティも竜に近づき、尻尾に手をかける。
「なあ、これもらってもいいか?」
 槍を手に、朔哉へ問いかける。
「こいつは仲間のために戦ったんだぜ。だから、忘れないでいてやりたいんだぜ」
 虐殺は認めるわけにはいかない。
 だが、仲間を生かしたいというは想いは否定できない。
 ケルベロスたちもまた、誰かを守るために戦っているのだから。

作者:青葉桂都 重傷:流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月3日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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