鬼を斬る

作者:宮内ゆう

●おむすび暗躍
 ミス・バタフライの前に2人の螺旋忍軍が跪いていた。いま、新しい指令を受けているのだ。
「あなたたちに与える使命は、このおにぎり屋です。この店主と接触し、仕事内容を確認し、可能ならば習得した後、殺害するのです」
「ひとつ、よろしいですか」
「なにか?」
 螺旋忍軍の片割れが、質問を投げかける。
「おにぎり屋などはさして珍しくもないような気がするのですが」
「そうですね、ただのおにぎり屋ならば」
「ただ者ではない、と」
 ミス・バタフライの言葉に螺旋忍軍がにやりと笑う。
「承知いたしました。その使命、必ずや全うしてみせましょう!」
 この事件がどのような事態に結びつくのか、いっぱしの螺旋忍軍には想像もつかない。だが、だからこそ、期待に応えるべく彼等は頭を深く下げたのだった。
 
●かあちゃんの味
 またも、ミス・バタフライの暗躍を巡り事件が動き出していた。それを水限・千咲(斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る・e22183)が予見した。
「それで、オニを斬ればいいんですねっ」
 なのに当の本人がいちばん話通じていない。
 仲間たちから再三おにぎりは斬るものではないと説明されているにもかかわらず、その返答は一貫している。
「わかりました、斬ります!」
 わかってない。
 ため息をついたヘリオライダーの茶太は、ひとまず説明をすることにした。
「ええと、またミス・バタフライがらみの事件です」
 珍しい職業の人間に接触し、技術を盗み殺害する。事件としては局地的で小さいものだが、これが巡り巡って大きな事件へと繋がってしまうらしい。そうなる前に阻止せよというのが、今回の目的である。
「それで、今回の対象はおにぎり屋さんなんですが」
 おにぎり屋。
 決して多いとは言わないが、そこまで珍しいものでもない。
 では、何が違うのか。
「おばちゃんがひとりで切り盛りしてるお店で、なんとすべてのおにぎりをひとりで握っているみたいですよ」
 つまり、すべてが手作り。それも注文を受けてから握る完全受注スタイルだ。
 ひいては、母ちゃんの味が堪能できると近所では評判になっているようだ。
「チェーン店はよく見かけますけど、個人経営ですべて手作りというのはそうそうないでしょうね」
 ちなみに具は各種取りそろえているが、持ち込みも対応しているらしい。頼めばおにぎりに入れてくれるという、融通も利く。
 いってみれば、おにぎり屋という職業だから、というわけでなく、おにぎりを作るスペシャリストだから狙われたということなのだろう。
「今回の敵ですが、事前におばちゃんを避難させるとその動向が掴めなくなるので、それはできません。かといって何もしなければおばちゃんが直接狙われてしまいます」
 おばちゃんの安全を取れば敵を倒せず、敵を倒そうとすればおばちゃんが危険にさらされる。この何ともしがたいジレンマを解決する方法はただひとつ。
「事前におばちゃんに接触して技術を学び、おにぎりマイスターになることです!」
 そうすれば、螺旋忍軍はおばちゃんではなく、技術を持つケルベロスから技術を奪おうとするだろう。
 まあ、マイスターとは言ったが、実際にはおばちゃんにある程度認められるおにぎりが作れるようになれば大丈夫だろう。
 おにぎりを作り、その技術を磨き、螺旋忍軍をおびき寄せ、倒す。
 流れとしてはそんなところだ
「敵の螺旋忍軍については、道化師風の男と、サーカスの団員風の男ですね」
 この2人、どちらもジャグリングが得意のようで、ボールをお手玉のように扱っている。
「その気になれば、おにぎりでお手玉も……可能……ッ!」
 侮れない敵になりそうだ。
 ちなみにボールの中には刃が仕込んであるもよう。要は螺旋手裏剣と同じだ。
「あと、場所ですが、店は狭いので戦いにむきません。店の裏が路地裏になっていて人目につかないのでちょうどいいと思いますよ」
 あとは、上手く敵を騙して隙を作れば奇襲なども可能だろう。
「小さい事件、とは言いましたがそれでも人が殺されてしまう事件です」
 そんな悲劇を放っておくわけにもいかない。
「おばちゃんを救うためにも、どうかよろしくお願いします」
 そう言って頭を下げた茶太は、もう一言追加した。
「あと、はっきり言っておきますが、おにぎりと鬼を斬ることは全く関係ありません」
 当然のことなのに、その説明は大変重要なことであった。


参加者
ラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)
エルトベーレ・スプリンガー(朽ちた鍵束・e01207)
ダレン・カーティス(自堕落系刀剣士・e01435)
鎧塚・纏(アンフィットエモーション・e03001)
ディートヘルム・ベルネット(銀色の魔物・e04532)
八朔・楪葉(雲遊萍寄・e04542)
華輪・灯(幻灯の鳥・e04881)
水限・千咲(斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る・e22183)

■リプレイ

●ぼくらのマイスター
 おばちゃんに話を通したケルベロスたちはおにぎり作りを学ぶことになった。
 しかし、その技術の習得は並々ならぬものではない。立ちはだかる強大な壁に水限・千咲(斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る・e22183)はただただ項垂れるしかなかった。
「おに斬りって斬って成形しているんじゃないんですか……!?」
「違うって説明されてたじゃねーか!?」
 またここから説明しなければいけないのかとダレン・カーティス(自堕落系刀剣士・e01435)が彼女の肩を揺さぶった。
「そんな……ではいったいどうしたら……」
「刀置け。頼むから、置け」
 でも刀を手放そうとはしないので、刀を奪い取ろうとしてみる。当然抵抗される。
「いやっ! そんな、無理矢理……ひどいっやめてくだああっ……」
「あれ、なんかこれ字面的に俺やばくね?」
「ああああっ、ダレンちゃんが浮気ッ! それどころか女の子を襲ってるううぅぅぅ」
 しかも(未来の)妻である鎧塚・纏(アンフィットエモーション・e03001)の目の前で。せっかく自前のエプロンで可愛らしく着飾ったのというのに。
「いやまて、誤解だ! 見りゃ明らかだろ!」
「くすんくすん」
「泣いてんじゃないのよおおおおお!!」
「ごああっ、あちっあちゃちゃ、ほわっちゃぁー!」
 纏の手元にあった、十分に握れていなくて緩い感じの白米がダレンの顔面に直撃、いい感じに飛び散り顔全体をカバーした。おかげでカンフーっぽい言動になってる。
「この変態! 悪魔! 鬼ッ!」
「鬼……?」
 ぴくりと千咲が反応した。刀を片手に。
「わかりましたっ、私は私に出来ることを! とりあえずそこのオニを斬ります!」
「あ、ちょ、俺は鬼じゃねええええ!」
 がしゃーん、どしゃーん。
 後ろから聞こえる騒音には全く動じずに八朔・楪葉(雲遊萍寄・e04542)とディートヘルム・ベルネット(銀色の魔物・e04532)はおにぎりを握っていた。
「相変わらず賑やかですね」
「こういうのもワビサビだろ。心静かに楽しむもんだぜ」
「そんなことばかり言ってるから、日本人だって言われるんですよ。あとその格好」
 びしっと指摘されたディートヘルムは、いつものシャツに割烹着と三角巾という出で立ちだった。なぜかおばちゃんに着ろといわれたのである。
「ああいいねぇ。もういつでも店を継いでもらってもいいよ」
「なんでだよ!?」
 まだマスターしたわけでもないのに気が早すぎる。
 というわけで、3個のおにぎりが彼等の前に並べられたわけだが、楪葉は首をかしげた。
「私は三角形成出来てますけど塩加減がいまいちでしょうか。ディートさんのはちょっと力が入りすぎですね、寄ってます。3つ目のこれがいちばん綺麗なんですけど」
 ちらりと作った張本人に目をやる。ミミックのリリさんがせっせと米をかき集めてた。
「一体どうやって握っているのでしょう」
 同時に苦労していそうなリリさんにちょっとこみ上げてくるものがあったりする。
 なお、その主であり以前生焼けドーナツで痛い目を見たラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)はぐでぐでしているようで慎重だった。
 ツナマヨ乗っけた山盛りごはんをもりもり食べてその炊き加減を確かめる。
「……ぃける」
 気だるげな目はすごく自信に満ちていた。
「おにぎりとは心ですっ!」
 いつになく華輪・灯(幻灯の鳥・e04881)は気合いが入っている様子だ。
 心、想い。であれば何がために誰がために握るのか。
「決まっていますッ、それは親友のためッ!! ぎゃー、熱ゥい!」
 プレゼントにもらった彩り塩。これを使って最高のおにぎりを。
 大量のおにぎりが作られ、そして片っ端からぼろぼろと崩れていった。
「何故ですか! 滅ぶ定め!?」
 がっくりする親友の肩にエルトベーレ・スプリンガー(朽ちた鍵束・e01207)がそっと手を添えた。
「ええと、大丈夫ですよ。美味しそうなチャーハン? ですッ」
「いやチャーハンじゃないし、炒めてないし、さすがにそこまでパラパラじゃないし、そもそもその疑問符なんですかー!」
「ジャンバラヤ?」
「黄色くないって! それよりベーレは何をつくって……はッ、これはドーナツ!」
 バターで焼いた明太子をふんだんに使ったリング型おにぎり。
「あまり語ることはありませんが……伯父さんの塩むすびの優しい味、不思議と同じ味にならないんですよね。だから私は思ったんです」
 ぐっと拳を握ると、ファミリアのカイさんは退屈そうにあくびした。
「そうだ、ドーナツ型にしよう。ドーナツは世界を救います!」
「端折りすぎてさっぱり分からない!」
「欲望に忠実に作りました!」
「OK、理解しました!」
 こうしてお互いの絆を深め合う灯とエルトベーレ。親友とはいいものである。
 だが、遮るようにリヒトさんがエルトベーレの頭を突っついてきた。
「あいたっ、なんですか? え、おにぎりはいいからドーナツよこせ? でもこれは……」
 言い淀んでいるとハイルさんまでいいからよこせと睨み付けてきた。
 持参したドーナツを差し出した。

●来訪者はお客さん
 当日、なんやかんやで十分な技術を習得できたかどうかはいまいち疑問だが、おばちゃんが店を任せてくれたので、ケルベロスで店を切り盛りすることにした。
 ラトゥーニがそろそろ店のメニュー全種類を制覇しようと言ったところで、いかにも螺旋忍軍の2人組が来たのだが、他の客と同じく注文をしたので泳がせておくことにした。
 だが、しばらくしてそのひとりが言った。
「このおにぎりを作ったのは誰だあ!」
「俺だ」
 威圧するかの如くディートヘルムが前に出た。でもほんとはリリさんが作ったのだけど、接客させるわけにはいかない。
「なんだよ、何か不満か?」
「弟子入りさせて下さい」
 素直だった。
 というわけで螺旋忍軍2名を裏にご案内。裏口から出た路地裏は、割とズタズタだった。
「くそっ、まだ追って来やがる……!」
「みぃつけたぁ~」
「ぐおっ!」
 よろめいて壁に手をついたダレンの横でゴミ箱が爆ぜた。否、両断された。見事な切れ味に満足いった様子で千咲は笑った。
「ふふっ、どこへ逃げようっていうんですか。あ、それとも鬼ごっこでしょうか」
「鬼が逃げる鬼ごっことか聞いたことねえ!」
 言ってる間にも路地にあるものがぶった斬られていく様子を見て螺旋忍軍たちは唖然とするしかなかった。
「何ここ、戦場?」
「あっ、おにぎりの修行中だから気にしないでね、ちょっと気を抜くと死ぬけど」
「死ぬの!?」
 へらへらと言ってのける纏に驚くが、まぁ納得の光景でもある。
「まあ、初心者はまずうさぎ跳びからかしらね!」
 ファミリアのハイルさんが見事なうさぎ跳びを見せていた。もともとうさぎだけど。
「いやなんでうさぎ跳び」
 疑問を呈する螺旋忍軍にエルトベーレがやたら自信ありげに胸を張った。
「ふふふー」
 ぴょん。
「うさぎ跳びも出来ないでおにぎりマイスターをめざすなんてー」
 ぴょん。
「ぐ、ぜえはあ、そんな、ことで、はあはあ、えふう」
 ぴょんばたん。
 うさぎの主はうさぎ跳び3回で力尽きた。
「ベーレ! しっかり!」
 慌てて灯が駆け寄って抱き起こす。
「こんなになるまで無茶をして」
「……私に、出来る、精一杯を……」
「くっ、あなたの想いは受け取りました。わたしが最高のおにぎりを完成させます!」
「ふふっ、さすが灯ちゃん……私の、最強の、しんゆ……」
 かくり。
「ベーレえええええ!」
「いやなにこれ」
「もう気にしないで下さい」
 遠い目をして楪葉がいった。付き合いきれないとばかりにウイングキャットのアナスタシアさんも首を振った。
「とりあえず、おにぎりは体力勝負なので、これを持ってうさぎ跳びを始めて下さい」
「あ、はい」
 積んであった米俵を示す。うっかり腰をやるとまずいので自分では持ち上げない楪葉さん20歳。
 勢いに流されるまま螺旋忍軍の2人が米俵を持ち上げる。
 その瞬間、その場の全員の視線が2人に集中した。
「ぉむすびぉぃしぃもぐもぐ」
 ラトゥーニ以外。

●ただいま最前線
 音を聞きつけたディートヘルムの目つきが変わった。
「始まったか。じゃあちょっくら……」
「おっとどこ行こうってんだい」
 だが席を立とうとしたところで、おばちゃんに捕まった。
「え、そりゃ戦場に」
「アンタの戦場は、今ここだよ。そう、おにぎり屋としてのね!」
「なんでだああああ!」
 店は無情にも昼のピークタイムに突入していた。

 所変わって路地裏、螺旋忍軍の顔面に箱もといリリさんが直撃していた。
「ごっぱあああああ!」
 高めから右に曲がりつつ落ちてくる軌道、まさにシンカー。いつ投げたラトゥーニ。両手が塞がっているこの男にはどうにも出来なかった。
 慌てて起き上がろうとするも、駆け抜けていくリヒトさんやカイさんに足下をすくわれ上手く身動きが取れない。なお、エルトベーレはまだ起き上がってこない。
「おっとそこまでだぜ」
 もうダレンが螺旋忍軍に距離を詰めていた。戦闘前から満身創痍だけど。
「やっぱり俺はツナマヨだと思うんだよ。万人ウケする人気の味、スター役はやはり大事なポジションだぜ」
 紫電を纏わせた太刀を一閃。
「そう、俺のように!」
「ダレンちゃんのそういうとこ好きよー」
 ひらひら舞う妖精を呼び寄せ、もうこのまま力押しの所存。
「おいで、妖精」
 持っている米俵さえ支えきれないようになり、螺旋忍軍がへたる。
「私が言うのもなんですけど、素直すぎませんか」
 余裕の電撃で楪葉が螺旋忍軍を締め上げる。まともに身動きを取れないところから連撃をうけてあっという間に満身創痍である。
「あとはお願いします」
「はいっ、隙ありー!」
「いえ今さら隙とか関係なくありません?」
 突っ込みにも動じず、任された灯はゾディアックソードでばっこんばっこん螺旋忍軍を叩き始めた。なんか使い方間違ってないかって顔をアナスタシアさんがしてるけど気にしない。
 度重なる攻撃の前に、螺旋忍軍が力尽きたところで、灯は満面のドヤ顔をして見せた。
「なんかもー、とにかくわたしの勝ちです!」
 圧倒的な戦力差で瞬く間に相方がやられてしまった。これはかなわんと、もう1人の螺旋忍軍が踵を返した。そうして逃げようとしたところで、見てはならないものを見た。
「どこ行くんですか。あなたも鬼ですか。鬼ですね、斬りますよ、ねえ、斬って良いですよね」
 どこまでも続くような千咲の眩しい笑顔に吸い込まれそうになりながら、螺旋忍軍は思った。
 死んだ。

●次なる戦場
 アナスタシアさんの前にねこまんまと書かれた器が置かれ、なんか盛られてる。解せぬと言う顔をしてた。
「というわけで旦那が遊んでくれません、欲求不満です、ぷんぷん」
「それ俺に言われても困んだけどな?」
 なんでか纏の愚痴を受ける羽目になってるディートヘルムはただただ困っている。
 なおダレンは相変わらず千咲に鬼扱いされて追いかけ回されている。なんかもうイギリスはどうとか、ツナマヨが云々とか言ってる場合じゃない。
「あぎゃー、修行にかこつけてあーんとかいちゃつきたかったァーッ!」
「鬼さん! いい加減に斬られて下さい! この斬り干し大根おに斬りのように!」
「なんでお前のおにぎり完成してんだァァァ!!」
 このまま放っておくと路地裏が細切れになりかねない。まあ放っておこう。
 それよりこちらの問題である。
「えー、冷たーい。あんなに激しく身体を重ねた仲なのにー」
「ちょ」
 纏が余計なこと言い始めたのでディートヘルムが固まった。楪葉がめっちゃ怪訝な目でこっち見てる。
「え、ディートさん。いったい何を……」
「いやまてユズ、誤解だ! おい、ちゃんと説明しろ!」
「えーっと、あのときはわたしが上でー、ディートちゃんは抵抗も出来なくてなすがままー」
「言い方! 言い方ぁ!!」
「ディートさん、見損ないました……」
「ちょま、行くな、おおおぉぉぉい!!」
 すすすすー、と距離をとっていく楪葉に追いつける自信はなかった。
「いやぁ、若いってのはいいねぇ」
 おばちゃんが茶をすすって、楽しそうに言った。
 でもそろそろダレンの命が風前の灯火なので、誰か助けた方がいい。
 とはいえそんなことは関係ない灯とエルトベーレが真剣な顔で向き合ってた。
「それでベーレ、聞きたいことがあります」
「はいです」
「これはなんでしょう」
「ドーナツです」
「天才か」
 おにぎりを作っていたはずなのに、いつの間にかドーナツが完成していた。
 何を言っているか以下略。
 本来のエルトベーレは料理も上手なはずなのに、割と良く欲望をこじらせておかしなことになってる。
「……灯こそ、すごぃ」
「あー! 言わないで、ほんと言わないで!」
 唐突に顔を出したラトゥーニにめちゃくちゃ顔を背ける。
「ぉにぎりから……チャーハン、天才」
「錬金術じゃないから、あぁーっ!」
 いずれ灯の手にかかれば、おにぎりからパエリアを作ることさえ可能かもしれない。
「真心を込めれば白米もチャーハンになる。やっぱり心ってすごいものなんですね」
「なんかいい感じに話まとめようとしてますけど、だいぶ違いますからね!?」
 今回の一件からも学んだことは多いようで、千咲はうんうんと頷いた。
「はい、分かっていますっ。私もみなさんに負けないように心を込めて斬ります!」
「それは果たして、分かってるのかしらねぇ」
 疑問は尽きないがそれ以上突っ込みも出来ない様子で纏は呟いた。
「つまり……」
 チャーハンを食べきって、残ったグリンピースをリリさんに流し込んでラトゥーニが言う。
「ゎたしたちのたたかぃ、はこれから、だー……」
「そうだな、今も向かうべき戦場が俺たちにはある」
「え、どこなの?」
 聞き返す纏に、腕を組んだままディートヘルムは頷いた。
「夕方のピークタイム、だぜ」
 誰もが沈黙した。そして思い知った。
 彼こそが、もっともおにぎりマイスターに近づいた者であったと。

作者:宮内ゆう 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年2月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 4/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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