狩りが得意な忘れん坊

作者:白鳥美鳥

●狩りが得意な忘れん坊
 啓太は双眼鏡とデジタルビデオカメラを片手に青空を見上げる。
「巨大なモズ、やっぱり見てみたいよね。……大きすぎてモズだと分からないと意味が無いから、映像で確認できるように、きちんと撮影しなくちゃ」
 歩いていくのは大きな川の河辺。
「獲物は魚らしいって話なんだけど……大きいから本当の所はどうなんだろうな。……もしかして、犬とか猫とかもいけちゃうのかな……。それは流石にエグイかも……」
 そう言いながらも好奇心を隠せない表情だ。
 そんな啓太の前に第五の魔女・アウゲイアスが現れる。そして、手にしている鍵で彼の心臓を一突きにした。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 意識を失い、崩れ落ちていく啓太。そして、その傍には1メートルはあるモズが現れたのだった。

●ヘリオライダーより
「狩りの得意な鳥って多いよね。小さいハンターで有名なのはモズかな」
 デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、そう言って事件の概要を離し始める。
「不思議な物事に強い『興味』を持って、実際に自分で調査を行おうとしている人がドリームイーターに襲われて『興味』を奪われる事件が起きてしまったみたいなんだ。『興味』を奪ったドリームイーターは既に姿を消しているみたいなんだけど、その奪われた『興味』を元にして現実化したドリームイーターが事件を起こそうとしているみたいで……被害が出る前に、みんなに倒して欲しい。このドリームイーターを倒す事が出来れば『興味』を奪われてしまった人も目を覚ましてくれると思うよ」
 デュアルは続けて今回の事件の説明を始めた。
「今回のドリームイーターは巨大なモズの姿をしている。現れる場所は河原で、場所も結構広いから戦闘をするには十分な広さだと思う。相手はドリームイーターとはいえ鳥だから、鳥目らしくて昼間にしか現れない。後、常に『飛行状態』だ。それに留意してほしいな。それで、このドリームイーターなんだけど、『自分は何者?』みたいな問いかけをしてきて、正しく対応できなければ殺してしまう。だけど、このドリームイーターは自分の事を信じていたり、噂をしている人が居ると、その人の方に引き寄せられる性質があるんだ。だから、それを利用すれば有利に戦えるんじゃないかな?」
 デュアルは最後にケルベロス達に激励の言葉を送る。
「モズって小さい鳥だけど、狩りの名人だ。それが大きいんだから、実際、餌として何を狙うかは分からないよね? 勿論、人間も例外じゃないんじゃないかな。だから、被害が出ると大変なんだ。でも、みんななら倒してくれると信じているよ。頑張って来てね。応援しているから!」


参加者
ユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)
ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)
源・那岐(疾風の舞剣士・e01215)
夜陣・碧人(幼竜の守歌・e05022)
フォン・エンペリウス(生粋の動物好き・e07703)
ラズリア・クレイン(蒼晶のラケシス・e19050)
愛澤・心恋(夢幻の煌き・e34053)
速水・紅牙(ロンリードッグ・e34113)

■リプレイ

●狩りが得意な忘れん坊
 場所は大きな川のある川辺。そこにケルベロス達は集結していた。
 温かい日差しも有り気持ちのいい今日は、川辺にも人が集まっていて、まずは避難誘導から始める事になった。
「みんな、私達はケルベロスよ」
「これから戦闘が起きます。安全の為に、ここから離れて下さい」
 周囲に声をかけるユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)と夜陣・碧人(幼竜の守歌・e05022)。
 更に、碧人と源・那岐(疾風の舞剣士・e01215)は、殺界形成を使って人を遠ざけた。
 川辺にいた人達も避難を終え、下準備は完了する。後は、ドリームイーターを招きよせるだけだ。
 話を切り出し始めるのは那岐。
「モズですか。森で狩り暮らしをしていた私に取って馴染み深い鳥ですね」
「モズさんって可愛いですよね。つぶらな瞳が愛らしくて」
 ラズリア・クレイン(蒼晶のラケシス・e19050)も、そう続ける。
 大きさはどうかと思うけれど、那岐もラズリアも、大きな鳥と戦える事にわくわくしていたりするのだ。
「モズかあ。凶鳥なんて言われているけど、カワイイよねえ……」
 そう言う碧人に、彼が溺愛しているボクスドラゴンのフレアはどこか不満そうだ。
「――あ、フレアの方が可愛いからね? だから不貞腐れないの」
 慌てて碧人は、可愛くて仕方が無いフレアを可愛い可愛いと撫でてあげて、フレアもご機嫌を取り戻したようだ。
「アタシ、モズの事、図書館で調べて来たんだ!」
 速水・紅牙(ロンリードッグ・e34113)は、計測野帳に纏めてきたモズについての話を始める。
「まず、他の鳥の鳴き真似が得意だ! それから、2月は繁殖の時期だな! 昔はモズが鳴く夜は死人が出るって言われていたり、海外では「屠殺人の鳥」だの「絞め殺す天使」だのロクでもない名前で呼ばれてたり……それからそれから……」
「中々の言われ様だな。モズか~モズっていうと確か「モズの早贄」が有名なアレだよな」
「……モズのハヤニエって有名だけど、あれやったの忘れちゃうことあるのね……意外過ぎる事実だわ……」
 ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)とユスティーナが相槌を打つ。
「しかし、3メートルでしょう? ……普通のサイズのモズだって近くで見ればかわいいだけじゃないものなのに、すごい威圧感ありそうよね。ちょっと見てみたくはあるけれど、知っているものは知っているサイズで現れてほしいものだわ」
「巨大なモズとか何かのB級映画の怪物として出てきそうな感じだなおい……」
「やっぱりでかくても忘れっぽい鳥頭なのでしょうかねぇ……。でも、大きいと上手く飛べるのでしょうかね? そもそも、狩りの獲物が全然変わる事には違和感は……ないのでしょうねぇ、鳥頭でしょうし」
 ユスティーナとムギの話に、愛澤・心恋(夢幻の煌き・e34053)が話を乗せる。
「……でもまあそれはそれとして、巨大な鳥とか食べたら美味いのかちょっと気になるぞ……」
 ムギがそう言った所で、巨大な羽ばたく音が聞こえ、ケルベロスは何者かの大きな影に飲まれる。
「鳥頭とか失礼なのよー!」
 巨体のモズのドリームイーターから発せられた第一声は、可愛らしい声色による抗議だった。
「確かに忘れちゃう事もあるけど! でもそれは狩りが多いせいもあるし……それに、戻ってきても誰かに食べられちゃってたりもするんだもん! 鳥は馬鹿みたいな言い方しないで欲しいの! それに、この大きさだと獲物も大きくないとお腹一杯にならないのよ!」
 そう抗議してから、今度はムギの方に視線を向ける。
「それに……私を食べるとか……!! 食べるとか酷いのー!!」
 巨鳥は泣きそうな声を上げながら、ケルベロス達の上をぐるぐると飛び回る。
「……何か色々と思うけど……ちゃんと聞いておくの。……私は誰だと思う?」
 半ば泣きそうな状態だが、問いに関してはこのドリームイーターにとっては大切な事らしい。
 何だか思った以上に可愛らしいので、ラズリアは若干顔が綻ぶ。勿論、容赦はしないけれど。そして、答えるべきものは。
「貴方はモズ。ちょっと忘れん坊のハンターさんです」
「それでもって、B級映画の怪物」
 ムギの付け足した答えに、巨大モズのドリームイーターは泣き叫んだ。
「お姉さんが言ってることは合ってるけど、お兄さんのは酷すぎるのよー!!」
 こうして、ドリームイーターとの戦いは幕を開けた。

●巨大モズ型ドリームイーター
「怪物じゃないもんー!」
 飛びかかってくる巨大モズ。それを、ムギは日々鍛え上げている自慢の筋肉で受け止めた。が、流石に大きい。重量というより、姿が大きい。抑えるのに必死にならざるを得ない。
「ムギ、直ぐに回復するわ」
 ユスティーナは、オーラを放ってムギを回復する。
 牽制を兼ねた那岐のオーラによる弾丸が撃ち放たれる。続けて碧人も攻撃に移ろうとしたのだが……。
「これは……厳しそうですね」
 先の那岐の攻撃は当たったが、命中力が厳しそうだと悟る。まずは、オウガ粒子を放ち、那岐と自分の集中力を高めていった。
(「ん、可愛い顔しているけど……あんなに大きいとちょっと怖い感じもするの」)
 フォン・エンペリウス(生粋の動物好き・e07703)は、ドリームイーターを見上げながら、そう思う。
 フォンはドリームイーターへ狙いを定めると、矢を撃ち放つ。しかし、それも綺麗に回避されてしまった。友達の猛禽類から狩猟技術を学んでいるフォンだが、それでも厳しいようだ。フォンの大切な友人であるボクスドラゴンのクルルと碧人のフレアは、ムギに向かって飛んでいくと属性インストールで護りを固めていった。
 ラズリアはドラゴニックハンマーを砲撃形態に変える。上手く当たる事を願って砲弾を放つが、巨鳥は旋回をしながらかわしてしまった。仲間の状態も考えると、巨大とはいえ、相手はやはり鳥。素早い。
「飛び回る相手というのは……非常に厄介です」
 心恋もラズリアと同様に砲弾を放つが、同様に素早い身のこなしでかわされてしまう。一方、テレビウムのメロディはムギに応援動画による回復に努めた。
「みんな、支援するぜ!」
 紅牙は、攻撃に苦戦しているフォン達にオウガ粒子を放って支援に回る。これで戦況が少しでも変わる事を願わずにはいられない。
 巨鳥は大空を旋回して加速しつつ勢いをつける。そして、そのスピードを乗せて、回復の要であるユスティーナを狙って来た。それを、心恋とメロディが共に庇いに入る。
「大丈夫ですか?」
「ええ、ありがとう。直ぐに回復するわ」
 庇われたユスティーナは直ぐに聖光のセレナーデを歌い上げ、彼女の傷を癒していく。その間を使って、ムギは那岐達に爆破効果による士気の向上で攻撃力を高めていった。
 那岐はケルベロスチェインをドリームイーターへと向かって放つ。鎖は巨鳥の身体を捕らえて縛り上げた。そして、碧人の撃ち放った竜砲弾が叩き込まれる。フレアは心恋へと属性インストールによる回復に向かった。
「ん、今度こそ当てるの」
 先程は当たらなかったが、貰った支援と命中率の高さの方を重視する形でフォンはドラゴニックハンマーを変形させる。そして、巨鳥に向かって砲弾を撃ち放った。完全に当たったとは言えなかったが、翼にはある程度のダメージが入っている。クルルの方は、心恋の回復に向かい、護りをしっかりと固めていった。
「……鳥さんを燃やすのはちょっと気が引けますが」
 ラズリアは渦巻く炎を蹴り放つ。それは、ドリームイーターを捕らえ燃え上がらせた。
「もう一回、支援、いくぜ!」
 紅牙は、オウガ粒子を放ってラズリア達の命中率を更に高めていく。要の攻撃陣の攻撃が当たらなければ、勝機は遠のいていくのだから。
「そう簡単にはいかないのよ~? 眠れ、眠れ、ね~む~る~の~」
 そんな事を言いながら大空を独特の飛び方をして舞い踊るドリームイーター。その動きはラズリアの意識を奪おうとしていく。
「やらせるかよ!!!」
 そんなラズリアをムギが庇う。
「マキシマム様……ありがとうございます」
 頼りにしているムギの行動に、ラズリアは感謝した。
「ムギ、回復するわ」
 直ぐにユスティーナの回復が入る。
 那岐はドラゴニックハンマーを変形させると、ドリームイーターへと向かって撃ち放つ。それに続いて碧人が攻撃態勢に入った。
「鳥って光の感受性が強いんでしたよね? じゃあ、うちの子の輝きには耐えられるかな?」
 碧人はフレアの陽属性を一時的に鹵獲すると、それを光弾にして撃ち放つ。それはドリームイーターを捕らえた。攻撃を受けたものの飛び回っている相手からは光の効果に関しては良く分からないのが残念だ。太陽の光も重なっているから、こちらからは分かりにくいのかもしれない。一方、フレアはクルルと共にムギの回復へと向かっていった。
 フォンは再び弓を引き、狙いを定めると巨鳥を捕らえ、貫く。続けてラズリアも凍てつく弾丸を撃ち放った。
「更に追加だぜ!」
 紅牙はオウガ粒子をフォン達に重ねていく。念には念を入れ、確実性を重視した。
「狙った獲物は逃がさないの!」
「この程度で狩れると思うな、俺の筋肉を舐めるなよ……」
 急降下してくる巨大なモズをムギは自慢の筋肉を使って受け止める。しかし、やはり大きいものは大きい。相手は怒ったがB級映画の怪物並みである事は確かだと思った。
「どんな暗闇でも、心に宿した光がある限り歩もう。魂が唄う限り」
 ユスティーナの歌声が、ムギの傷を癒していく。その間に、那岐は漆黒の弾丸を、碧人は竜砲弾をドリームイーターへと撃ち込んだ。
「フォン様、同時に狙いましょう」
「ん、分かったの」
 ラズリアの提案にフォンは頷く。そして、ラズリアは渦巻く炎を蹴りだし、フォンは竜砲弾を放った。強力な二人の攻撃が間髪をおかずに命中していく。これには、流石のドリームイーターもたまらなかったらしく、飛び回っているスピードが確実に落ちて来ていた。その動きが鈍って来たところを心恋も竜砲弾を撃ち放ち更に遅くさせていく。フレア、クルル、メロディはムギへと回復に向かっていった。
「ファイトだ!」
 紅牙もムギへと満月に似た光球を放って回復を重ねる。
 一方の巨大なモズのドリームイーターも、ふらふらになって飛んでいる。加速力も落ちているようだ。それでも。
「狩人は最期まで狩人なのよ!」
 狙うのはフォン。しかし、それを心恋とメロディが庇った。
「攻撃、宜しくお願いしますね」
「ん、ありがとう、頑張るの」
 心恋にお礼を言うと、フォンは矢をつがえる。そして、弓を引いてドリームイーターへ命中させた。
 その間に、心恋をユスティーナがオーラを使って回復していく。
「狩るのはお前じゃない、この俺だ!!!」
 ムギは全身の筋肉を使って渾身の力で振り下ろす。そして、それによって生まれた超高密度の巨大な空気の刃がドリームイーターを斬り裂いた。
「さて披露するのは我が戦舞の一つ。躍動の風!!」
 那岐は戦舞を舞う。それは空色の風を起こし、ドリームイーターを斬りつける。更に碧人の放つ炎の龍が包み込んで燃やしていった。
「始原の楽園を崩壊させし蒼光の弓矢よ。我が求めるは力なり。混沌を破壊せし星となりて敵を討て!」
 ラズリアは輝く弓矢を召還する。そして、流星群のように輝く矢が巨鳥を貫く。その一撃を受けたドリームイーターは幾多の羽根に変わって空に吸い込まれるように消えていった。

●柔らかな陽射しの中で
 戦いが終わった川辺は、何事も無かったように、柔らかな陽射しと川の音が聞こえる。
「お茶とクッキー持って来たのですよ。皆さまも如何ですか?」
 ラズリアは用意してきた紅茶とクッキーを皆に渡していく。
「戦いの後の甘いものは疲れが癒えるな!」
「ん、凄く美味しいの」
 紅牙とフォンは美味しそうにクッキーを頬張っている。
「……ええ、本当に美味しい」
 無理をしつつ戦っているユスティーナも、甘いクッキーに癒される思いだ。
「紅茶もお菓子も美味しいです」
「ありがとうございます、ラズリアさん」
「喜んで戴けて、こちらこそ嬉しいです」
 那岐、心恋の感謝の言葉にラズリアも微笑む。
「陽射しも良いし、昼寝も良いな」
 そう言ってムギは寝っころがった。ぽかぽか温かくて気持ちが良い。
「アタシも寝っころがろー!」
 紅牙も、転がって思いっきり手足を伸ばした。
 碧人は紅茶を戴きながら空を仰いでいる。
「あ、モズがいます!」
「モズ!?」
 碧人の言葉に、慌てて皆が空を見上げる。飛んでいるのは小さな本物のモズ。先程の巨大な鳥を見ていたので、元々小さいのにより小さく見える。
 そんなモズに、普段から鳥と仲が良いフレアが飛んでいき誘っているようだ。それに碧人の動物の友の力も加わって、モズがのんびりしているケルベロス達の所に降りていく。そして、フレアの頭の上にちょんと乗った。
「ふふ、本物はやはり可愛らしいですね」
「ん、仲良くしようね」
 微笑むラズリアとフォン。那岐は森にいた頃から良く見てきた鳥に、故郷を思い出す気持ちも重なる。
 ほのぼのとした気持ちになる、柔らかな陽射しの午後の一時だった――。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年2月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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