枯れゆく緑樹

作者:流水清風

 それはまるで、翼の生えた森が空中を飛行しているかのようだった。
 広大な海上にあっては、苔生した緑の小石程度にも思えただろう。しかし、近づいて来るにつれ、その緑が群生する植物であることが見て取れる。異様に巨大な植物だが。
 それの動きに合わせ、木々の枝が揺れ、緑葉がざわめく。さしずめ、生きた森とでも言うように。
 北海道の沿岸部に到達したそれは、迷いなく最寄りの市街地へと向かう。
 飛来した巨大植物塊は、デウスエクスの中でも最強の種とされるドラゴンであった。様々な巨大植物の塊とでもいうべき緑色の竜、緑樹竜スンロンこそが動く島の正体だ。
 注意深くスンロンを観察すれば、身体を構成する植物が所々枯れていることが分かる。その動きも、苦しみ鈍っていると感じられるだろう。
 もっとも、手近な市街地へ踏み込んだスンロンを悠長に観察できる者などいなかった。
 スンロンは人間の頭部ほどもある大きさの種を大量に高速でばら撒き、巨木そのものが鋭利な棘と化したかのような爪を振るい、街を破壊し人々を殺戮する。
 酸鼻を極める惨状が繰り広げられるも、人々はそれに抗う術は持たず、ただ蹂躙されるだけであった。
 
「ケルベロスの諸君、一大事だ!」
 ヘリポートに吹き付ける風にも負けない声音で、ザイフリート王子はケルベロス達へ呼び掛ける。
「北海道の沿岸部に、ドラゴンが飛来する。非常に危険な事態だ」
 ザイフリート王子が観た予知では、緑樹竜スンロンなる1体のドラゴンが北海道の沿岸部に現れ、市街地は大惨事となった。
「これを防ぐことが出来るのは、お前達ケルベロスだけだ。至急、現地へと向かってもらいたい」
 この予知を覆すには、ケルベロスが緑樹竜スンロンを迎撃するしかない。
 予め襲撃される市街の人々に警告し避難するという方法も考えられるが、それでは予知の内容と異なる事態に至ってしまう可能性が危惧されてしまう。そしてそれ以上に、避難中に襲われる危険性が高い。
「市街地の沿岸側入り口で迎撃すれば、市街への被害は最小限で喰い止められるだろう。人々には市街の逆側に集まってもらえば、戦いに巻き込む心配もないだろうからな」
 現実的な方法は、そうした戦いに巻き込む恐れのない場所に一時的に集まってもらう事だろう。そうすれば、最悪どれだけ街を破壊されても人々が集まっている場所さえ守れば人的被害は出さずに済むはずだ。
 もちろん、ケルベロスが敗北しない限りにおいては、だが。
「本来ドラゴンは1体だけでも凄まじい戦闘能力を有している種だ。だが、常命化によって瀕死の状態となっている。十分に勝算はあるだろう」
 緑樹竜スンロンは戦闘能力そのものは健在だが、深刻な傷を負っているに等しい。
「だが、油断は禁物だ。敵の目的は、己の命を賭して人々に恐怖と憎悪を植え付けることにある。それによって、竜十字島に残った仲間が常命化することを防ごうというのだ。仲間のため不退転の覚悟で戦いに赴くとは、敵ながら見上げた心意気だな」
 武人として、ザイフリート王子は敵に一角の敬意を抱かずにはいられなかったのだろう。
「だが、無辜の民人への虐殺など許せるはずがない。手負いの竜を討ち、誉を得ると共に人々を守り抜いてくれ」
 ケルベロス達に激励の言葉を掛けながら、ザイフリート王子はヘリオンへの搭乗を促すのだった。


参加者
殻戮堂・三十六式(祓い屋は斯く語りき・e01219)
来栖・カノン(夢路・e01328)
伏見・万(万獣の檻・e02075)
リーズレット・ヴィッセンシャフト(最後のワンダーランド・e02234)
ガナッシュ・ランカース(マスター番長・e02563)
四条・玲斗(町の小さな薬剤師さん・e19273)
鍔鳴・奏(弱モフリスト・e25076)

■リプレイ

●緑樹竜
 ズシン、と。遠い地鳴りがケルベロス達の耳に届く。巨大な存在が一歩一歩少しずつ近づいていた。
「おいでなすったか。緑樹竜とか言ったか、どれ程のものだろうな」
 街の沿岸側入り口に集ったケルベロスの1人、鍔鳴・奏(弱モフリスト・e25076)は、ボクスドラゴンのモラと共に迫り来る敵へと視線を向ける。
「ドラゴンというだけで大物だ。強敵と思って間違いないだろう」
 緊迫したリーズレット・ヴィッセンシャフト(最後のワンダーランド・e02234)の口調とは裏腹に、頭に乗ったボクスドラゴンの響はのんびりとしている。
「手負いと聞くが、死を覚悟した相手ほど怖いものはないからのう」
 ヘリオライダーの予知によって、敵は弱った状態だと知らされている。しかし、それ故に敵は万全の状態、或いはそれ以上であると認識し、ガナッシュ・ランカース(マスター番長・e02563)は全力で迎え撃つべく身構えていた。
 そして、敵はケルベロス達の前にその姿を現した。
 まるで移動する森とでも表現するべき容姿。種々様々な植物が密集しつつも生い茂る緑の塊こそは、緑樹竜スンロンである。
「来やがれブロッコリー野郎。切り刻んで食ってやらァ」
 その威容を目にしても、伏見・万(万獣の檻・e02075)は臆することなく大胆不敵な態度を崩さない。敵の姿に対する嘲りを口にする余裕すらあった。
「ルコったら、なんだか興奮してるね。仲間ってことはないだろうし……何か思ってたりするのかなあ?」
 来栖・カノン(夢路・e01328)が使役するルコは、草花の属性を有するボクスドラゴンだ。ある意味では、緑樹竜に近いと言えるのかも知れない。
 そのためか、何やらきゅいきゅいと鳴いている。威嚇なのだろうか。
 ルコの鳴き声に触発されたのか、モラと響も吠え始めた。巨大な敵に果敢に立ち向かおうとするその様は、頼もしくも愛らしい。
「ふむ……。田吾作、あなたも緑樹竜とやらに何か言いたい事はあるでしょうか?」
 ボクスドラゴン達の姿に、マリオン・オウィディウス(響拳・e15881)はミミックの田吾作に問い掛けた。だが、当の田吾作は直前までマリオンが腰を降ろしていた状態のまま特に反応はない。使役主の無表情さを反映したかのようだ。
「この巨体を食い止めるか。難儀な事だ」
 気怠そうに敵を見据える殻戮堂・三十六式(祓い屋は斯く語りき・e01219)は、その言動とは裏腹に瞳には強い意志の光が宿っている。その身を防護壁として、これより先へは進ませないという、鋼鉄の決意が。
「ドラゴンを相手取るのはこれが二度目。……やはり、あの時の怪我を嫌でも思い出すわね」
 緑樹竜がこうして侵攻する遠因となった城ケ島での戦い。四条・玲斗(町の小さな薬剤師さん・e19273)にとってはケルベロスとして参戦した初陣であり、苦い記憶が刻まれた戦いでもある。
 だが、あの時に比べて玲斗は成長している。味方も敵も、置かれた状況も違う。ならば、結果も異なるはずだ。
 それぞれの覚悟や決意を胸に、ケルベロス達は緑樹竜へと挑み掛る。
 背後に多くの人々の命運を担って。

●衝突
 破壊と殺戮を目論見、市街地へ踏み入ろうとする緑樹竜と、それを全力で阻まんとするケルベロス達。両者は、市街地の入り口でぶつかり合った。
「ここから先は遠慮してもらおう。人々の生活の場を踏み躙ろうなど、言語道断だ」
 リーズレットが放ったエネルギーの矢が、戦端を開いた。次いで、主に遅れを取るまいと響がブレスを放射する。
 それを意に介さず、街へさらなる一歩を進めようとする緑樹竜。
「お前の相手は俺達だ、これ以上街に進ませるわけにはいかない」
 三十六式の炎を纏った蹴りが、その侵攻を押し留める。
「田吾作。皆さんの防衛と敵の足止め、いい感じに任せます」
 サラリとサーヴァントに無茶振りをするマリオンだが、それは信頼の顕れなのだろう。緑樹竜に噛み付く田吾作の姿は、懸命に主の期待に応えようとしているように見えなくもない。
「私の役割は、文字通りあなたを妨害することよ。折角だから、私自身の成長をこの戦いで計らせてもらおうかしら」
 玲斗は敵の行動を妨害し、それによって仲間を守るという役割を己に課している。投射した対デウスエクス用のウイルスカプセルによって緑樹竜の治癒を阻害すれば、結果として仲間が被る損害を抑えることができるはずだ。
 そうして目論見通りの結果を出すことが出来れば、自分自身が成長したと認められる。仲間を、多くの人々を守るという決意は、思い上がりなどではないのだと。
「ルコ、一緒に頑張ろうね。ここから先は、通さないんだよ」
 緑樹竜の表面に並び立つ樹木の数本を粉砕するカノンの蹴りの威力に、緑樹竜の動きが鈍る。封印箱に入って体当たりを敢行したルコもまた、主の意思を体現しているかのようだ。
 砕けた樹木の幹や枝葉が降り注ぐ中、それらの隙間を縫うようにしてガナッシュは緑樹竜の眼前に堂々と佇んでいる。
「わし等は見えぬが、ぬしはどんなトラウマを見るんじゃろうのう?」
 ガナッシュの手にしたナイフの刀身が怪しく光り、緑樹竜の精神の奥深くからかつて経験したトラウマを映し出す。緑樹竜の心的外傷はケルベロス達には知り得ないが、かつて戦った強敵の記憶といったところだろうか?
 ケルベロスが攻撃を行う度に、その影響で緑樹竜の表面に茂る植物群から花弁や葉が舞い散る。それらに混じって輝くのは、奏が放出したオウガ粒子だ。
「死に掛けのドラゴン。俺達と戦って貰うよ」
 戦闘において、直接的な攻撃だけが勝敗を決する要素ではない。敵を不利な状況に追い込み、また味方を有利な状態にする。そうした補助行為が趨勢を定める要因となる場合も多い。
 そういった点を考慮してか、奏は自身がそうしているように、モラには最前で味方を守るカノンに属性の注入を行わせていた。
「よく燃えそうじゃねェかと思ったが、ブロッコリー野郎に火を付けるたァ、殻戮堂やるじゃねえか。俺からも足しといてやるか」
 万の炎を纏った蹴りが炸裂し、緑樹竜の樹木を包む炎が激しさを増す。
 ケルベロス達の攻撃は、衰弱したとはいえ巨体を誇る緑樹竜を打ち倒すにはまだまだ足りないようだ。だからと言って、ケルベロス達の意気は些かなりとも衰えはしない。
 誰1人として、この戦いを楽観している者などいないのだから。

●拮抗
 ケルベロス達の攻勢を受け、緑樹竜は目的達成の前にこの敵は無視できない存在だと痛感したのだろう。
 大気を震わせる咆哮を上げ、樹木と同等の大きさを誇る棘がいくつも生えた爪を振りかぶった。
「移動じゃない、攻撃ね」
「来るぞ、構えるんだ!」
 緑樹竜の動きは巨体に似合わぬ素早さであり、それが攻撃のための動作だと見て取れたのは敵の動きに注目していた玲斗と奏、そして万だけであった。
「ランカース、狙われてるぞ!」
 咄嗟に警告した万だが、振り下ろされた爪を避けるにはもう間に合わない。
「……痛いね。これ、被れたりしないかな?」
 激痛を覚悟したガナッシュだったが、緑樹竜の爪が引き裂いたのは、瞬時に庇ったカノンであった。
 樹木の中には触れると肌が被れてしまうような物もある。それを心配できる程度には、カノンにはまだ余裕があるようだ。
「回復はお任せを。存分に」
 淡々と光の盾を具現化しカノンを治癒すると共に防護するマリオンは、冷静沈着そのものだ。それが、仲間達には頼もしく映る。
「恩に着る。やられた分は、しっかりとやり返してやらねばのう」
 お返しとばかりに、ガナッシュはジグザグに変形した刃で樹木ごと緑樹竜の体表を切り刻む。
「頼もしい味方がいる。ならば俺は攻撃に専念するか」
 それぞれの役割を果たすことで、8人と4体はまるで1つの意思を共有する強大な存在であるかのようになれる。それこそ、ドラゴンにも比肩する程の。
 流星の煌めきと重力を宿した跳び蹴りを叩き込む三十六式は、さしずめケルベロス側の牙と言えるだろうか。緑樹竜の爪に勝るとも劣らない鋭さの。
「地獄の番犬の守り、突破できるなどと思わないことだ」
 投擲し戻ってきた鎌を掴むリーズレットは、凛々しい立ち振る舞いで堅守を宣言する。本人なりに格好良さを追求した結果の決めポーズであった。
 緑樹竜の大爪にも戦線を崩すことなく攻勢を緩めないケルベロス達だが、緑樹竜は巨大な種子をガトリングガンのように掃射し抗う。
 攻防は一進一退の様相を呈しており、戦況は今のところ五分五分であった。

●風穴
 互いに決定打を欠いたまま、戦いは継続していた。
 もし緑樹竜が万全の状態であったのなら、消耗戦となりケルベロス達の敗北は必至であっただろう。
「何だか伐採してる気分じゃのう。しかし、これではキリがないわい」
 チェーンソー剣で緑樹竜を刈るガナッシュは、やや辟易した声を漏らす。
 ケルベロス達の度重なる攻撃を受けても未だに倒れない緑樹竜は、本当に弱っているのかと疑わずにはいられない。
「こうもしつこいと、根負けしないって言い切れる自信ないよ」
 弱気な発言とは裏腹に、カノンは2本のチェーンソー剣を水平に横薙ぎにし摩擦によって生じた炎を伴う斬撃を浴びせる。
 けれどその傷は、緑樹竜を覆う植物が繁茂し塞がれてしまった。同時に、樹木や草花を燃やす炎も消えてしまう。
 これでは敵より先にこちらが力尽きてしまうかも知れないと、ケルベロス達は危機感を抱かずにはいられなかった。
 硬直した状況を打ち破るには、突破口を開く必要がある。けれど、闇雲に動いては連携が崩れ敗北に繋がってしまいかねない。
「やれやれ、大した執念だ。俺も覚悟しなければならないか……」
 ある種の諦観を込めた呟きを口にする三十六式は、この戦いに勝つためには何らかの犠牲を払わなければならないと考えていた。だとすれば、それは自分自身であろうかと。
 熱い決意が冷たいものに変わろうとしていたのは、三十六式だけではない。背後に控える多くの人々の命と生活の場は、ケルベロス達が守らなければ無惨に蹂躙されてしまう。
 正攻法で緑樹竜を止められなければ、守るべきものの為に己を失う覚悟はある。
 少しずつではあるが、ケルベロス達に悲壮な雰囲気が漂い始めた。そんな時だった。
 何らかの弱点がないかと敵を仔細に探っていたリーズレットは、敵の癖のようなものに気付いた。
「皆、こいつは炎を嫌っているんだ。炎を纏わせれば、その対処で後手に回るはずだ!」
 当初からケルベロス達は痛手を与えるために炎を付与する類の攻撃を多用していた。しかし戦術的にそれだけでは不足であるために他の攻撃も併用していた。そのために確信に至るのが遅れたが、何度も敵が治癒を行っては付与しての繰り返しの果てに、間違いはないと断言できたのだった。
「なるほど、そりゃあブロッコリー野郎らしいじゃねえかよ」
 言われてみればその通りだと得心し、万はこれで幾度目になるか自分でも分からなくなった炎を纏う蹴りを繰り出す。
「ジャマーらしく動きますか、と。……此処で絶対に倒す」
 敵に大量の不利な状態を付与することは、奏の役割だ。それが勝利に直結する見通しが立ったのなら、全力で遂行するだけだ。
「なら私は、燃やし易くしますね。光以て、現れよ」
 自身は炎を付加する術を持たない玲斗だが、味方の援護ならば可能だ。
 玲斗の光りの術式は、対象の知覚を強化し普段であれば感じることが出来ない何かを感知し自身の技を最大限に活かせるようになる。通常よりも、より多くの炎を燃え盛らせるようになるだろう。
 炎を主体とした戦法に切り替えたケルベロス達の目論見は功を奏し、緑樹竜は炎を嫌い消去のため攻撃の機会が目に見えて減っていた。
 とは言え、緑樹竜の攻撃がその威力を減じているということはない。ここまでの攻防によってケルベロス達も傷が蓄積しており、次の一手で誰かが倒れても不思議ではない。
「勝機が見えた今こそが正念場です。田吾作、いい働きですよ」
 今や緑樹竜の攻撃対象は炎の使い手に絞られている。その1人である奏を狙った爪を身代わりとなって庇った田吾作を労うものの、マリオンの癒しは他のメンバーに充てざるを得ない状況であった。冷酷な判断だが、そうでなければ掴み掛けた勝利を手放してしまいかねないのだ。

●討伐
 燃やし、斬り裂き、ケルベロス達はより激しく緑樹竜を攻め立てる。
「そろそろくたばりな。テメェにくれてやるモンは、ひとッつもねェんだよ」
 自身も満身創痍の在り様だが、万の攻撃の鋭さは僅かばかりの翳りもない。
「諦めろ。お前の命運は、ここに来た時点で決まっていたということだ」
 万に続く三十六式の攻撃に、緑樹竜の巨体が大きく傾いた。
 遂に倒れるかと思われた緑樹竜だが、ぎりぎりで身体を支え強引に爪を振るう。
 もはや見る陰もなくボロボロになった爪だが、直撃したガナッシュもまた耐えられる状態ではなかった。
「まだじゃ! このマスター番長ガナッシュ・ランカース。この程度では倒れん!!」
 限界を越えた身体を支えたのは、敵よりも先に倒れはしないという不屈の魂に他ならない。
 それが緑樹竜の最後の抵抗だったのだろう。張り詰めていた糸が切れたかのように、巨体が地面を揺るがし倒れ伏した。
 凄まじい戦いの結末としてはあまりにもあっけない幕切れに、ケルベロス達はすぐにはその結果を受け入れられなかった。段々と消失していく緑樹竜の身体を見て、ようやく自分達は勝利したのだと理解する。
「街が少し壊されたが、十分直せるだろう。私は街の人達に脅威が去ったと告げて来よう」
 颯爽とした足取りで街の人達の元へと向かうリーズレット。本人はこれ以上ないくらいに格好良いと思っているが、如何せん頭上の響がそれを上回る可愛らしさであったりする。
「ルコったら元気いっぱいだね。勝ち誇ってるのかな?」
 きゅい! っと力強く鳴き声を上げるルコは、どこか誇らしげだ。緑樹竜に勝ったと胸を張っているのだろうか。
「モラもよく頑張ったね。大健闘だったよ」
 親しい者にだけ向ける口調の奏に褒められたモラも、大きな鳴き声で応えた。どうやら、ケルベロス達よりもボクスドラゴンの方が元気が残っているようだ。
「疲れました。田吾作、よろしく」
 マリオンに腰掛けにされた田吾作の視線の先には、主に労われるボクスドラゴンの姿があった。それが羨望の眼差しなのかどうかは、田吾作にしか分からない。
「誰1人欠けることのない勝利。私は成長できているようね」
 巨大な敵に打ち勝ったという事実は、玲斗の胸に残り続けていた初陣での苦い記憶を打ち消してくれるだろう。
 ドラゴン勢力の脅威は、依然として健在だ。けれど、この戦いはケルベロスが完全な勝利を収めた。未来に希望を抱くに足る結果と言えるだろう。

作者:流水清風 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年2月28日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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