●嗚咽
彼女は血が嫌いだ。
自分の腕にうっすらと浮かぶ青、怪我をした時に現れる赤、生きている以上目にしなくてはならない血――入院した以上、自分の腕の点滴は時折この嫌悪の源を見せつける。
「もうやだ、もうやだ、もうやだ、もうやだぁ!」
先ほど暴れた汚した腕についた僅かな血を水道水で洗い流す。夕暮れの水道場にじゃばじゃばと大量の流れる水の音で、足音はすっかり消されていた。
だからこそ、あっさりと背後から心臓を穿たれる。
「あはは、私のモザイクは晴れないけど、あなたの『嫌悪』する気持ちもわからなくはないな」
――でも、その対象はちょっと幼稚じゃない?
心臓を貫いた者がからかい言葉の後で巨大な鍵を引き抜くと、女の膝が崩れ落ちた。後には水音とその影から現れた巨大な何かだ。
それは血の滴る肉の塊だった。
グネグネと捏ね繰り回した肉塊は、緩慢な動きのままとふとふと血を吐きながら進み始める。心音に似た音は、新たに生まれた夢喰いの誕生を祝っている様だった。
●ブラッドクラウンの穢れ
水の滴りが起こる時、僅かに押し返る水滴がある。それは美しい弧を描き、先に灯る水泡が飾りとなった王冠に見えるという。
「それが血液で出来ていたとしても、君らは美しいと思えるか」
誰かの血潮を無駄だとは思わない。けれどもそれが怖い――『嫌悪』を持つ者もいるだろう。その『嫌悪』が夢喰いの暗躍に利用されたのだと、ギュスターヴ・ドイズ(黒願のヘリオライダー・en0112)は告げた。
「血の嫌悪によって生み出されたのは異形のドリームイーターだ。君らにはこれを撃破してもらいたい」
単独で得物を求めて移動している為に、この一体を倒してしまえば『嫌悪』を奪われた被害者も目を覚ますだろう。
現場は山間の小さな町で、被害者の入院する病院で起こる。ドリームイーターは人の寄り付かない裏口から外へ出ようとしており、病院の裏庭が戦場となるだろう。
「病院の裏庭といっても荒れており、そのまま行けば山へ入る。夕方ともなれば人の立ち寄りは無いだろうから人払いは不要だ」
障害物と言えるのは木枠などが積み上げられた病院の廃棄物だ。遠近に二つあり、身を隠すにはちょうど良い。待ち伏せ作戦に使えそうだが、山中の森で迎え撃つ作戦もある。この場合はおびき寄せに囮が必要だ。
「待ち伏せ策かおびき寄せ策か。前者では有効な奇襲のタイミングを、後者では囮の工夫と、森の中でどう迎え撃つかが必要だ。詳しい内容は君らに任せよう」
もちろん、策はケルベロス達の判断で決定する。
いずれの場合もドリームイーターの特性である『血の臭いに誘われる』点が鍵となるだろう。病院内では消毒液の臭いで消されていたが、外に出ればこの特性で行き先を決めるのだ。
「敵の攻撃対象はその緩慢さからひとりが関の山だが一撃が重い。また、危うくなると君らから血を啜り、傷を癒そうとするだろう」
捏ね繰り回した肉塊に血を吸われるのは、ロマンチックなものではない。ぞっとする程の醜怪な――。
その先を紡ごうとしてギュスターヴは首を振る。嫌悪を増す物事なぞ、そうそう長くは話したくはない。だが、それは自身を危険から遠ざける為に必要な感情だ。
「生きる為に必要な感情を奪うのは傲慢だ。それが好ましくない感情だとして、私達は失う訳にはいかん」
願うのは赤き王冠の奪還。
ひとりの娘の寂しい嫌悪を、愛しく抱きしめる為に。
「君らは希望だ。よろしく頼む」
告げた黒龍は静かに息を吐いた。
参加者 | |
---|---|
鬼屋敷・ハクア(雪やこんこ・e00632) |
古鐘・るり(安楽椅子の魔女・e01248) |
月海・汐音(紅心サクシード・e01276) |
キース・クレイノア(送り屋・e01393) |
阿守・真尋(アンビギュアス・e03410) |
リィ・ディドルディドル(悪の嚢・e03674) |
セリア・ディヴィニティ(揺らぐ蒼炎・e24288) |
香良洲・釧(望蜀・e26639) |
●餌
入り陽の鮮やかさに瞬きをする。
痛みを覚えた眼を開くと、鬼屋敷・ハクア(雪やこんこ・e00632)は自身のサーヴァントであるボクスドラゴンのドラゴンくんと共に静かに手を合わせて擦った。甘くじんと痺れるのは、指先に血が通うからだろう。
暦の上では桃始めて笑うと春を迎えたとはいえ、夕暮れの空気はまだ冷たい。ハクアは積み上げられた木箱の影から顔を覗かせると、ぽっかりと開いた入り口を見遣った。明暗に分かれた場所に浮かぶ夕赤は、脳裏に鮮血を思わせ肌の泡立てを呼び起こす。
(「少しだけわかる気がするかも」)
血の怖さも、痛みも。
そうして目を伏せた彼女に、阿守・真尋(アンビギュアス・e03410)は一瞥を投げると、手近に控えたライドキャリバーの背を撫でた。自身のサーヴァントであるダジリタのボディに沿って指を走らせれば、陽の色を吸い込んで色濃くなった様がよくわかる。吸われた色は彼女の中に眠る漆黒とは違い、これから対峙する存在に似ていた。
血は恐ろしい。
そんな被害者の怯えは血が必要以上に消えれば、自分でいられなくなると判っているからこそだろう。それは過ぎたる困りものだが、人間である以上仕方がない。
胸元に預けた端末へ手を当て、一呼吸する真尋の隣では、体育座りをしたキース・クレイノア(送り屋・e01393)が自身のサーヴァントであるシャーマンズゴーストの魚さんに向かって、しいと人差し指を立てていた。
「じっとしてて」
主の言葉に魚さんはこくんと大きく頭を振る。その顔に張り付いた面を、セリア・ディヴィニティ(揺らぐ蒼炎・e24288)は不思議そうに見ていたが、不意に弾かれた様に視線を移した。
青い瞳が見据えたのは赤い血だまりを生み出す肉塊――夢喰いである。
心音に似た音と進む様にセリアの瞳に灯る地獄の焔が揺れた。血に対する恐れは無いつもりだが、間近で見るには少々醜悪に過ぎる。そんな穢れを振り撒く存在は、被害女性の嫌悪と恐怖であり、或いは死の具現とすら言ってよい代物なのだろう。
その嫌悪はわからない訳でもない。
理解を巡らせた月海・汐音(紅心サクシード・e01276)は、森側の木箱の影から覗きながら、出現した肉塊を確認すると違和感を抱く。
(「あの姿は嫌悪の顕れ、かしらね…」)
当の肉塊は器用に触手を使って移動し、ケルベロス達が身を潜める木箱の間を進んでいく。まずはこのまま相手をやり過ごす――筈だった。
唐突に各々の肌がぞわりと泡立ったのだ。それは病院側の木箱に注がれた肉塊からの気配が生み出すもので。動きを止めた夢喰いに汐音は思わず手を握る。彼女と同じ森側の木箱に隠れていた古鐘・るり(安楽椅子の魔女・e01248)もまた、その様子に緊張の色を表した。
それは病院側の木箱の影に隠れた仲間達にも渡っている。さっと周囲へ視線を投げたキースは、その綻びに気が付くと唇を噛んだ。
彼らの隠れた木箱の端からそれぞれの体が少し見えていたのである。確かに木箱などの積み上げられた廃棄物は、話に聞いていた通りに身を隠すにはちょうど良かったが、四名と三体のサーヴァントが一度に隠れるには狭かったのだ。
「気付かれた……?」
小声で呟いた真尋は胸元を握ると、指の腹が僅かに汗ばんだ事を自覚する。その間に夢喰いは自分達の木箱へ近づき、止まった。
途端、恐ろしく素早く身を反転させると、無数の触手を生み出して森の方へと進んでいく。突然の事に呆気にとられた一同だったが、るりが発した言葉が現実へと引き戻した。
「追いましょう、気付かれないように」
そう早い動きではないが、見失う訳にはいかない。ケルベロス達は当初の予定通りに距離を目算しながら、蠢く肉塊の後を追った。
●傷
その決断は誤りではなかった。
裏庭での事情を伝えた香良洲・釧(望蜀・e26639)は、改めてリィ・ディドルディドル(悪の嚢・e03674)の姿を見ると、こっそりと息を吐く。同じドラゴニアンであるこの少女は、釧から伝えられた敵の異変を聞くと迷い無く自分の腕を切ったのである。
つつ、と流れる自身の血と切り開けた輸血パックの血は、リィの体を赤と黒に染め上げている。伏した眼に赤い木漏れ陽を受ける彼女の眉根は僅かに歪んでいた。
無理もない、彼女自身は血を見慣れており痛みにも抵抗はないが、浴びるとなれば気持ちのいいものではない。ましてや、独特の粘着性に不快感があるのは当たり前だ。
それこそ嫌悪――禍々しいまでの血に染まっているのに、恐れではなく僅かに美しい。普通とは異なる想いを覚えたのは夕暮れという逢魔時の見せた夢だろうか。
そんな思考を遮ったのはノイズ交じりの真尋の声だった。
『あと少しで接触するわ』
「わかった」
釧が短く答え、リィへと声を掛ければその瞳が薄らと開く。得物を構え、脅威が来るであろう方向へ視線を向けると静かに呼吸音だけを手繰る様に聞いた。
鼻を衝く血鉄の臭いと、昼間の陽気から解放された土の匂いが僅かに上る中で赤い何かが視界に映った。
それは肉を引き摺りながら血を撒き散らす肉塊。
「なるほど、嫌悪の具現に相応しい醜悪な面構えね」
ドラゴニアンの少女がそう告げると、釧は口元を歪めた。だが、すぐに笑みの形を作り、己の手中にある得物へ力を籠める。いくら醜い外面だろうが所詮はドリームイーターだ。ケルベロスである以上、恐れる事は無い。
「ぎりぎりまで、引き寄せろ」
「仕方ないわね。イド、用意するわよ」
主人の声に小さな唸り声で答えたのはリィのサーヴァント・ボクスドラゴンのイドだ。やがて全貌を現した肉塊は、血の臭いを濃く感じたのか触手を増やすとリィへと向かう速度を速めた。その浅ましい様子に滴る鮮血が加われば、自ずと不快感が込み上がる。
「鏡でも見ているみたいで反吐が出るわ――いいのよ、来なさいバケモノ。軽く捻ってあげる」
吐き捨てた少女の言葉に、眼前の赤い肉塊は獲物――血を纏う彼女へと肉薄する。足りぬものを求める手として伸びた触手が、一斉に増えた瞬間、天へ広がるとリィの上空を覆う。
囮を飲み込もうとしている。
それは役割の者がカウンターを用意していない以上、先制を許すものである。新たな血が辺りに散ると、そう思った。
だが現実は違う。
視界を埋めたのは金の糸――その中に斬撃から生まれた返り血が夕日の花と咲いた。開花を促した汐音が急いでその場を譲ると、次いで飛来したのは稲妻を帯びた高速のひと突きだ。
「リィ、無事よね?」
「もちろんよ」
ハクアの問いに答えた声は心なし明るい。やがてサーヴァント達を始めとする癒し手が戦場へと力を渡らせると、ほっとしたのか真尋の顔が緩んだ。彼女の手が地面へと触れた途端、周囲に猟犬の鎖が生まれ、守りの魔法陣を編み上げていく。その上にキースの生んだ黄金の果実が光り輝くと、最前線に位置した仲間達へ加護が渡った。その光を手に遊ばせると、セリアは己が胸に当てて小さく笑う。
「間に合ったわね」
「ええ、でもタイミングにひやひやしたわ」
「それは良かった」
間合いを取ったリィと軽口を紡いだ揺らぐ蒼炎は、己が身を地獄の炎で守ると眼前で蠢く夢喰いへと視線を向けた。血を吹きつつもおどろおどろしく伸びる触手から、相手が十分に動ける事を教えてくる。
無事に合流を果たした仲間に、るりは安堵の息を吐くとすぐに夢喰いへと向き直る。
「……被害者の嫌悪する感情も判らなくはないけど。このままにしておくわけにはいかないわ」
素早く告げた少女の身が鮮やかに躍った。安楽椅子の魔女が呼び起こすのは、神の振るう神槍の紛い物。
「消えて終わりよ……ジャッジメント!!」
どう、と空気を打つ音が弾けると少女が創った玩具は強かに敵を穿つ。肉塊へ深々と刺さった槍は血に塗れ、だがすぐに消えた。牽制と放たれた一撃だが、それでも触手はばらリと解け、ケルベロス――否、『囮』へと手を伸ばす。
ドリームイーターが追い縋ったのは『囮』の価値だった。
血に塗れた娘は、かの嫌悪が求めるに最高の存在だったのだ。
だからこそ、執拗に肉塊が蠢く。
それは戦況を揺らす陽炎であるが如く。
●血
灰の尾が風を切った。
数歩下がって避けた攻撃に、にぃと口元を歪めると釧は己が拳を握る。
「そらっ!」
鋼の鬼と化した彼の一撃が肉を抉ると、赤々と煌めく陽に光を散らした。紅玉と見紛う分散だが、それが醜悪で嫌悪に塗れる存在であると思えば滑稽だ。故に精々この身の糧として、喰らわせて貰おう意気込める。
青年の角と同じ灰白色の翼へ木漏れ日の赤が落ちていた。そこに降るのは僅かな鮮血――その様にるりは小さく鼻を鳴らす。
体液の中でも血は不浄なものだ。怪我や死を連想させる以上、嫌悪感を持つのも当然だろう。寧ろ血が大好きだなんて言う奴こそ異常者で、危ない感じがする。それでも身体に血が流れているのはどうしようもない事実であり、それを嫌ってどうするというのだ。
飛び退いたケルベロスを追う様に、真尋は眉根を寄せた。中々な見た目をしているが、被害者が出ている以上、怯む訳にはいかない。それに血への『嫌悪』――人として持ち得る『恐れ』に付け込むだなんて許せない。
その想いを表す様に解き放たれた猟犬縛鎖は、素早く肉片の一部を捕らえると容赦なく締め上げていく。その一瞬後に飛び出した汐音は、己が手に緋色の刃を生み出すと、燃えるままに軌跡を描いた。
「アトロ……シアスッ!」
それは暴虐ノ緋キ刃――一息に切り落とされた肉塊の身は、ぎちぎちとおかしな音を響かせる。
それはもしかすると夢喰いの悲鳴だったのかもしれない。
肉の千切れ擦れる異音に不快感を表す間に、瞬く間に盛り上がった肉片は触手を伸ばしてケルベロス達へと迫った。その先にはやはりリィの姿がある。
「しつこい」
身を翻し回避を試みるも、それには些か遅かった。それでも、そんな主を守る様に飛び出したのは白面のボクスドラゴンだ。代わりに触手へ捕らえられると、ぎぃと鋭い悲鳴を上げる。次いでその身から血が滴ると、肉塊の色味が艶やかに蘇えり乱暴に放り捨てられる。
囮役が引き続き狙われる事は計算の内だった。だが、その血を自らに纏った事で必要以上の執着を生んだのだ。その結果、彼女への攻撃回数は増え、それを庇いに入る盾役の負担は大きくなったのである。囮策をその後も活かすならば、より攻撃手を増やした方が引き付け役としての効果が出ただろう。
光へと還る自身の半身の姿に、一瞬の虚ろがリィの感情を支配する。その隙を肉塊は喰らおうと口を開けた。
だが。
「前向いて」
キースの言葉の後で光が灯る。渡った癒しが自身の傷を消すと、ドラゴニアンの娘は弾かれた様に顔を上げて降魔の一撃を解き放った。
また、耳障りな音がする。
カウンターとばかりに決まった一撃の後で、疲弊した前衛の前に現れたのは小さな光だ。五つの光雪が彼らを包むとこしょこしょとお話する様にケルベロス達の身を回る。それはハクアの導く小さき者の囁き声――彼女の碧眼が穏やかに夢喰いを望むと、ふと言葉が唇に乗った。
「嫌だよね。怖いよね」
それは生み出された『嫌悪』への痛み。血が持つ負のイメージは目を逸らしたくなる程に溶ける時もある。だが、それではいけない。何故ならその感情を得る事も生きているという証だから。
その事実をセリアもまた感じている。周囲にへばり付いた赤は、間もなく沈む夕日よりも黒々と冷え始めていた。その空恐ろしさに『死』を嗅ぎ取る。それはまるで、自分達ヴァルキュリアが数多対面した情事なのかもしれないが――尤も、血を恐れていては戦士として在ることは出来ない。
金糸を耳に掛け直したセリアは、改めて得物を持つ手に力をかけるとくるりと回した。
「そろそろ幕引きにしてしまいましょう。お前は此処にあるべきものではないのだから」
それはもう幕引きを促すもので。
セリアは力強く地を蹴り飛ばすと、光の翼と共に戦場を舞った。
●輪
光が煌めいた直後に風穴が開いた。
その瞬間、飛来したのはるりの編み上げた力――生と死の境界線から招来したおぞましき触手が夢喰いの肉へと殺到する。
肉塊の紡ぐ音がひと際大きくなった。
そうして始まる肉体の崩壊だったが、それでもなお触手は肉を盛り上がらせ空へと広がった。最後の足掻きとばかりの動きに、釧はにやりとその手に朧な白い炎を宿らせる。
「……全て灰になると良い」
傍若無人に暴れた血の冠を戴く夢喰いは、彼が持つ忘却の炎に巻かれていく。解き放たれた空蝉の火は白蓮の様に燃え咲くと、瞬く間に肉塊を灰へと変えた。その色は仄かに赤黒い色を帯びていた。
やがてその灰が崩れると、汐音が小さく息を吐く。
「終わりね、これで」
同時に一同の口からも安堵の息が漏れ、場を満たしていた緊張の空気が弛緩する。その中ですぐに走ったのはハクアだった。すぐさま囮役のリィに駆け寄ると、その傷の具合を確認する。同じ様に真尋が彼女の身を案じれば、大丈夫との声が返った。しばらくすれば彼女の半身も戻ってくるだろう。それまでは、しばし休息を――。
「もう日が沈むな」
不意にキースが告げた言葉に、ケルベロス達の視線が木々の上へと向かう。その視線の先には赤みを消した空があった。暮れ終わる群青には、もはや血の様な凄みは薄い。
だが、暗く淋しいと感じるのは、それが黄泉路の先の様に感じる色合いだからだろうか。
セリアの目にひとつの光が落ちると瞬きが起こり、誰かが星だと告げた。
とろとろと漏れていた夕の光はもうない。ただ見えるのは僅かに散った灰が、まだ冷たい風に吹き散らされていく姿のみ。
きっとこのまま嫌悪し続けた夢の宿主へと帰るのだろう。その先に見える人の行く道がどうなっていくのかはこれから被害者である彼女が決めて行く事だ。
「冷えるわね、春先なのに」
そう呟くと夜気が足を撫でた気がする。
嫌悪の戻る様は、少し淋しく、それでも美しいと思った。
作者:深水つぐら |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年3月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 0
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