●冬の落ち武者影刺して
夜の帳が落ちた深夜の頃。
小学生位の子供が、灯の消えた学校へと向かっていた。
当然、こんな深夜の時間は学校の人もみんな帰り、校門も閉まっているのだが……小さい身体で柵を乗り越え、学校の中へ。
「へへ……これくらいちょろいちょろい。さー、どこにいるのかなー、くびのないおちむしゃ!」
と声を上げて、真っ暗な学校の中を歩く少年。
……暫し歩いて行くも、当然、何も無い。
「ちぇー。なんだよー、なーんにもねーじゃん」
と舌打ちをした、その瞬間。
『ガタッ!』
と、背後の方で音が響く。
心臓が飛び出そうになりつつも、振り返る少年……と、そこには。
『……ふふ』
と、その手の鍵を、心臓に突き立てた、第五の魔女・アウゲイアス。
鍵に貫かれた少年は、そのまま、其の場で崩れ墜ちる。そして……。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
と言うと共に……その傍らに、首のない、刀を持ったボロボロの鎧を着た、落ち武者を産み出す。
そしてその落ち武者に指示を与え……落ち武者は、学校を出て、町に向かうのであった。
「ケルベロスの皆さん、集まってくれたッスね! それじゃ早速ッスけど、説明させて貰うッスよ!」
と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロスへの挨拶を早々に、早速。
「今回は、不思議な物事に強い興味を持ち、実際に自分で調査を行おうとしている人がドリームイーターに襲われてしまう事件が発生したんッスよ」
「この興味を奪ったドリームイーターは、既に姿を消してしまっている様ッスけど、奪われた興味を元に、現実かした怪物型ドリームイーターにより事件を起こそうとしている様ッス」
「そこでケルベロスの皆さんには、怪物型ドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターを撃破してきて欲しいんッスよ。このドリームイーターを倒す事が出来れば、興味を奪われた被害者も目を覚ましてくれる筈ッスからね!」
と言うと、更にダンテは。
「今回現れるのは、顔の無い、両手に刀を備えたタイプの落ち武者のドリームイーターの様ッス」
「このドリームイーターは一体ッスけど、双刀装備という、かなり攻撃力が高いドリームイーターの様ッス。攻撃手段も刀による斬撃ッスからね!」
「ちなみにこのドリームイーター、人間を見つけると、自分が何物なのか、というのを問いかけてくる様ッス。正しく対応できなければ、その人を殺そうとしてくる様ッスから注意が必要ッス」
「又、ドリームイーターの性質なのか、自分の事を信じていたり、噂している人がいると、その人の所に引き寄せられる性質がある様ッスから、上手く誘き出す事が出来れば、有利に戦えると思うッスよ!」
最後にダンテは。
「何に興味を持つか持たないかなんて、人それぞれだと思うッス。でも、知的好奇心を持つのは良いことだと想うんッスよ! その興味を利用し、バケモノを産み出すだなんて絶対許せないッスよ! ケルベロスの皆さん、宜しく頼むッス!!」
と、拳を振り上げ、皆を送り出すのであった。
参加者 | |
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ヒルデガルト・ミラー(確率変動・e02577) |
山田・ビート(コスプレ刀剣士・e05625) |
クロード・リガルディ(行雲流水・e13438) |
磯野・小東子(球に願いを・e16878) |
ヒューリー・トリッパー(笑みを浮かべ何を成す・e17972) |
詠沫・雫(メロウ・e27940) |
リィナ・アイリス(もふもふになりたいもふもふ・e28939) |
雨宮・利香(黒刀と黒雷の黒淫魔・e35140) |
●夢の合間
第五の魔女、アウゲイアス。
彼女が創り出したのは、小学生の興味の感情を元にした、ドリームイーター。
ぼろぼろの鎧に身を包んだ、首の無い落ち武者が、学校傍の街へ現れる……それを、退治為てきて欲しい、というダンテの話。
「……んー……これ……『興味』じゃなく『驚き』だったら、夜中に落ち武者の亡霊がー、なんてのだとホイホイ引っかかるんでしょうけどね」
とヒルデガルト・ミラー(確率変動・e02577)が苦笑すると、磯野・小東子(球に願いを・e16878)とクロード・リガルディ(行雲流水・e13438)、山田・ビート(コスプレ刀剣士・e05625)も。
「まぁ怪談話を真に受けて、夜の学校に忍び込むとかは、実に小学生らしい話だもんねぇ」
「そうだな……少年の好奇心と言うのは、尽きる事はあまり無さそうだからな……ドリームイーター達にとっては、格好の獲物なのかもしれないな……」
「ええ。刀を使う落ち武者の姿を下ドリームイーターですか。私も刀を使う者として今回の件には興味があります。機会があればお手合わせして頂きたいものですね」
そして、雨宮・利香(黒刀と黒雷の黒淫魔・e35140)とリィナ・アイリス(もふもふになりたいもふもふ・e28939)らも。
「まあ、他人の知的好奇心にちょっかいを出すなんてドリームイーターもサイテーだね……早いところやっつけないと?」
「……うん……今回戦うのは……顔のない、落ち武者さんかぁ……落ち武者さん、見るの初めてだけど……怖く無いと、いいの……」
「うんうん。そうだね。それにしても、刀を持った首無しのドリームイーターねぇ……さぞかし立派な刀を持ってるのかなぁ?」
「……ん? ……落ち武者さんだから……装備は……ぼろぼろじゃないかな……? 刀も……鎧も……」
「あぁ……それもそっか……ははは」
利香が頬を掻きながら苦笑し、リィナもほんわかと微笑んで。
「……落ち武者さん……うまく、引き付けられると、いいなぁ……みんなのこと、守りたいし……私達が、引き付けられないと、依頼に、支障が出ちゃうもんね……」
「そうだね。リィナちゃん、頼りにしてるよ?」
利香の言葉に顔を一層赤らめるリィナ……でも、こくっ、と頷く。
そんな二人の言葉を聞き届けながら、小東子、ヒューリー・トリッパー(笑みを浮かべ何を成す・e17972)、詠沫・雫(メロウ・e27940)が。
「そうだねぇ。ま、仕方ないか。困った子供を助ける為に、一肌脱ごうか、いくら?」
「ええ。はてさて、お化け退治と洒落込みますかっ!」
「そうですね……」
と皆も頷き、そしてケルベロス達は学校の傍らへと向かうのであった。
●闇の夢に
そしてケルベロス達は、ドリームイーターの徘徊する街を歩く。
薄暗闇が広がり、何処か不気味な雰囲気が漂う空間。
「……これは中々……不気味な空間ですね……」
と、不敵な笑みを浮かべるヒューリーに、こくこく、と頷くリィナ、利香。
「……うん……本当……何かが出て来そうな……そんな……感じがするの……」
「曲がった所から、オバケがぐわーっ、って感じだね」
ちょっと怖がりながら、笑う二人。
と、歩きつつも、周囲に一般人がいないかどうかを確認し、居れば此処から避難する様に。
「……逃げろ」
と、クロードが一声掛けていく。
そして……暫し歩いていると、ケルベロス達の方へ近づく影。
影を誘う様に。
「そういえばみんな知ってる? 季節外れの怪談なんだけどさ……出るんだって……首の無い、血まみれ武者の、アレが……ね」
と小東子がどこかおどろおどろしく、仲間達に声を掛ける。
それに。
「ああ、聞いた事がありますね。冬も冬なのに、夏には良く聞く血まみれ武者が出るんでしたよね」
「そうそう。でもさぁ、本当に出るのかねぇ……? ちょっと疑問だよ」
と小東子、ビート二人の噂話に、他の仲間達も頷いたり、誇張したり。
……そんなケルベロス達の所に、とうとう現れる……落ち武者ドリームイーター。
『……クククク……』
不気味な笑みを浮かべるドリームイーター。
そして……ケルベロス達の背後に付くと。
『……ワタシは……ダレだ……?』
と問いかける。
そんなドリームイーターの言葉に、利香や雫、ヒルデガルトらが。
「誰か、って……落ち武者だね」
「ええ……落ち武者、ですね」
「落ち武者風の亡霊……に見えるけど、モザイクがあるからドリームイーターかな?」
そんな答えの一方、ヒューリー、リィナが。
「あなたがなにものですかって? そうですねぇ、デュラハンとか、顔なしとかですかぁ?」
「うん……顔無し……ゾンビ……?」
と、わざと間違いを答える。
『……違うぅ、ちがうぞぉぉ』
と、その誤答に何処か嬉しそうなドリームイーター。
しかしその間に、クロードが殺界形成を使い、周囲から更に一般人を引き離す細工を行う。
又、更に小東子も。
「ねえ、いくら。あいつは何だと思う? あたしは絵に描いたような落ち武者の幽霊だと思うんだけどねぇ」
『変態』
といくらのディスプレイには『変態』と表示させつつ、自分は正答。
……流石に、変態という答えには、少し怒りを覚えたようで……落ち武者、一気に臨戦態勢。
先手の攻撃、刀を構え、抜き身のままに斬り抜く。
その攻撃、咄嗟に身を呈し、攻撃を受けるいくら……自分自身へ応援動画でヒールする……が、一撃を全部回復する迄には至らない。
「これは……一撃が痛い様だねぇ……」
と小東子が言うと、ビートが。
「大丈夫。なんとかなるさ」
と、微笑みながら、彼もその刀を構える……他の仲間達も、戦闘態勢をとり、それぞれのポジションへ。
「守って下さる皆さんには御世話かけます。お願いします」
「そうだね。それじゃ、ディフェンダーのみなさん、後は宜しくね!」
とヒルデガルトと利香はそういいつつ、まず利香はライトニングシールドをディフェンダー陣三人に掛ける。
ジャマー効果で、一気に盾アップを3倍で付与すると、続くスナイパーのクロード、小東子が。
「二刀流とは厄介だな……大ダメージを受けぬ様に気をつけねばな」
「そうだね! いくら、頑張るんだよ!」
小東子の言葉に凶器を振って応えるいくら。取りあえず、雫と雫のボクスドラゴン、メルが。
「回復役、務めてみせます。共に回復役、頑張りましょうね」
こくりと頷くメル。雫がブレイブマインを前衛陣に掛けて壊アップを付与しつつ、メルが属性インストールでいくらを更に回復。
そして後衛陣の行動が一巡した所で、前衛陣が動く。
「みなさんの強化を貰いましたから……全力で行きますよ!」
とビートの号令一下ヒルデガルトとビートで連携攻撃。
「お互いに刀と刀……同じ武器を使う相手ね。貴方がイーターでなければもっとちゃんと戦えたのに、残念だわ」
「そうですね……でも、人に仇なそうとするなら放ってはおけません。私の刀と貴方の刀、どちらが上か試させていただきましょうか。斬れ味なら私の刀も負けていませんよ」
と言いながら月光斬とスターゲイザーの連携攻撃を叩き込んで行く。
又、ヒューリーとリィナも。
「……ん……落ち武者さん、やっぱり、強いね……でも、私だって、負けないよ……?」
「そうですね……さあ、一気に行きますよっ!」
ケイオスランサーで毒を付与する一方、ヒューリーはサイコフォースを、敵の刀めがけて一閃。
……流石に武器への一撃で、武器が壊れるような事は無いが、確実に、敵の体力を削り行く。
そして、次の刻。
ドリームイーターは、刀の二閃を左から、右からと、いくらに叩きつけていく。
かなり強烈な一撃だが……いくらはどうにか耐える。
勿論、その体力減を補う様に、雫とメルが。
「大丈夫ですか? ……すぐ、回復します」
と雫も気力溜めにグラビティを変えて、体力回復の量を増やす。
その一方、利香はハートクエイクアローで催眠を付与する一方、クロードはドレインスラッシュ、小東子が斉天截拳撃で連続的に攻撃を叩き込み、バッドステータスも増やしていく。
……確実に、少しずつバッドステータスに苦しむドリームイーター。
そして弱ったところに。
「ビートさん……前を、お願いします」
「判りました。宜しくお願いしますね」
と短く声を掛け合い、ビートが真っ正面から接近、全身全霊の力での月光斬で斬り付けていくと、一方ヒルデガルトは大回り。
ヒューリー、リィナの二人も、ヒルデガルトを補助する様、雷刃突、螺旋氷縛波で攻撃を叩き込む。
そして……最後の最後に、ヒルデガルトは、ドリームイーターの背後へと回り込む。
「背中、がら空きです!」
と、二刀斬空閃を背後から叩き込む事で、一気に大ダメージを叩き込んで行く。
一刀が、多少折れ曲がり、攻撃力は少し減少したと言える。
勿論、決して油断は出来ない状況ではあるが……ドリームイーターの攻撃をかいくぐり、反撃を叩き込んで行く。
……そんなドリームイーターとの戦闘、開始から十数分。
ケルベロス達の猛攻により、二刀の一つは最早使えない程にぼろぼろになっており……攻撃力は大幅に減少していた。
「……そろそろ頃合いの様ですね。ならば……降魔真拳……やり返してもらいますよっ!!」
と威勢良くヒューリーが言うと、接近、胴体を狙った降魔真拳。
それに続き、リィナもペトリフィケイションを叩き込む。
そしてヒルデガルトが二刀斬空閃を穿つと、ビートも。
「凍える風を刃に纏え! 霊刀解放!」
と風氷秘刃の、氷と風の一閃をその身に穿つと……ドリームイーターは胴体を真っ二つにされ……その場に崩れ墜ちるのであった。
●夢から醒めて
そして、ドリームイーターを倒したケルベロス達……。
「……ふぅ……どうにか、無事に終わった様ですね……」
と息を吐きつつ、安堵を覚えるヒルデガルト。
そして目前で消え行くドリームイーターを眺めながら。
「では、落ち武者さん……さようなら……」
とヒューリーも、死したドリームイーターに弔いの言葉を捧げる。
そして……完全にその姿が消え失せた後。
「……うん。みんな無事だね、リィナちゃん、お疲れ様♪」
「……うん……お疲れ様……だね……」
利香がリィナとハイタッチし、くすくすっ、と笑い合う。
そして、一通り終わった所で、戦闘の痕跡をヒールグラビティで早々にヒールを行う。
当然ヒールを掛けると……元々のを補完する様に、ちょっとばかしファンシーな形になっていってしまう。
「……こうやってヒールしたものの形が変ってくのを見るのはさ、怪談よりも不思議な気もするよね……」
と小東子が遠い目をしていると、ヒルデガルトが。
「そうですね……あ、いくらさん。怪我、大丈夫ですか?」
と、ディフェンダーで身体を張ってくれたいくらに声を掛ける。
いくらは凶器をぶんぶんと振り回すが……所々、顔の描かれた所のガラスがわれていたり。
「あらあら……ちょっと傷が。ふふ……それじゃ治してあげますね」
とヒルデガルトは言うと、いくらに視線を合わせるようにして……ヒールグラビティで回復。
「はい、これで終わり……っと」
と、そのガラス割れていた所に、可愛いにゃんこ柄の絆創膏をぺたっと貼り付けてあげる。
「あらあら……可愛いにゃんこ柄だねぇ。いくら、ほら、ありがとうは?」
小東子の言葉に、ぺこっ、と頭を下げるいくら……その動き方が、なんだか可愛い。
勿論、ヒルデガルトは他のディフェンダー陣も回復していく。
……そして一通り回復が終わった後で、少年の所にも向かい、少年の手当。
そして一通り、回復が終わった所で。
「さて、と……しかし、ありきたりな落ち武者じゃなくて、ひょっとこ踊りの幽霊でも出れば、もっとインパクトがあったかもね」
と言うと、それにビート、雫が。
「ひょっとこ踊り、ですか……まぁ確かに、そんな踊りをする亡霊が現れたら、ちょっと怖いですね……」
「ええ……でも、敵として現れるのなら……倒さないといけませんしね……」
そしてクロードも。
「……まぁ、何だ……こんなドリームイーターはイヤだ、とか出て来そうだな……」
と肩を竦める。
ともあれ……ケルベロス達は依頼を完遂した訳で……少年を安全な所まで運ぶと共に、学校を後にするのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年2月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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