恋の病魔事件~バレンタイン作戦!

作者:洗井落雲

●バレンタイン作戦
 それは、何処にでもある、小さな勇気の物語。
 天野ひかりは何処にでもいる普通の女の子。
 容姿は取り立てて目立つところはない。
 成績も中の中。
 クラスでも地味すぎず目立ち過ぎない。
 性格は――少々大人しめかもしれない。
 そんな普通の彼女だが、いや、普通だからこそ、だろうか、好きな相手がいる。
 季節は丁度バレンタイン。普通な彼女は、バレンタインのチョコレートに想いをのせて、普通とは言え精一杯の勇気をだして、手作りのチョコレートを用意した。
 決戦は二月十四日。名付けてバレンタイン作戦。

 これは、普通ではない、ある病気の物語。
 恋の病につける薬なし、恋する乙女、食べ物が喉を通らなく事も有る。
 いやいや、それはいくらなんでも気の迷い。お腹が減れば、ご飯は食べるし、喉が渇けば水だって飲む。
 だが、本当に、何も喉が通らなくなってしまったら?
 天野ひかりはつい先日から、何一つ、口にするものを飲み込めなくなってしまった。
 無理にモノを飲み込もうとしても、喉を通らずに吐き出してしまうのである。
 彼女は1日ですっかり憔悴し、2日めには病院に担ぎ込まれた。
 命は点滴でつなぐことは出来た。だが病名も治療法は不明のまま。
 日に日に衰弱していく少女を前に、家族も医師も、ただ見守る事しかできなかったのである――。

●恋の病の特効薬
「恋の病、だそうだ」
 アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)は集まったケルベロス達にそう言った。
 ケルベロス達が困惑の表情を見せるのへ、
「いや、冗談などではないぞ。『恋の病』という病魔が、この事件の原因なのさ」
 ヒゲを撫でながら、答えた。
 本日、日本各地の病院から、原因不明の病気についての連絡があった。
 なんでも『胸がドキドキして食べ物も飲み物も喉を通らなくなる』という症状を持つこの病は、『誰かに純粋な恋をしている人物のみがかかる』らしい。
 この症状は冗談などではなく、食べ物はもちろん、水すら『飲みこめない』という状態におちいり、無理矢理飲みこもうとしても、激しくせき込んで吐いてしまうという。
 栄養も水分も取れない以上、衰弱して死ぬしかなくなってしまう。不幸中の幸い、患者は点滴で命を繋ぐことは出来たものの、治療法は判明していなかった。
「アイオーニオン・クリュスタッロス(凍傷ソーダライト・e10107)達の調査により、件の病魔の存在が発覚したわけだ。君たちには、この病魔を倒し、患者を救ってもらいたい」
 患者は、既に病魔と戦闘可能な病室に運んである。ウィッチドクターがいれば、患者から病魔を引き離し、戦闘を行うことが可能だ。
 もし作戦の参加メンバーにウィッチドクターがいない場合、事前に病院に連絡しておけば、医療機関のウィッチドクターが手伝いに来てくれるだろう。
 なお、恋の病の病魔の戦闘能力は、さほど高くはないだろう、との事だ。
「問題は、だ。この病気にかかった人間は、この病の苦しみがトラウマになって、恋する事に恐怖感を抱いてしまうかもしれない、という事だ。もしよかったら、戦闘後にきちんとフォローしてやってくれないか? 病魔はキューピッドのような姿をした悪魔だが、君たちが実際にキューピッドになってやるのも面白いだろう」
 と、言いつつ、アーサーはケルベロス達を送り出すのであった。


参加者
ルトゥナ・プリマヴェーラ(慈恵の魔女・e00057)
ミライ・トリカラード(朝焼けの猟犬・e00193)
九道・十至(七天八刀・e01587)
山之祢・紅旗(ヤマネコ・e04556)
アトリ・カシュタール(空忘れの旅鳥・e11587)
神山・太一(かたる狼少年・e18779)
アリアンナ・アヴィータ(日陰のハミングバード・e32950)
明星・舞鈴(神装銃士ディオスガンナー・e33789)

■リプレイ

●恋の病魔とバトルオペレーション
 病院へ到着したケルベロス達は、医師たちに隔離病棟へと案内された。
 そこは青白い蛍光灯の光が照らす広めの部屋で、中心に少女――患者である、天野ひかりが横たわるベッドが一つ。
 まるで手術室のようだ、とケルベロス達は思った。とは言え、その感想は間違いではない。これから行うのは、紛れもない『手術』であるからだ。
「Ms.アトリ、全員準備は完了だ。いつでも行ける」
 九道・十至(七天八刀・e01587)は、ベッドの手すりに手をかけながら、アトリ・カシュタール(空忘れの旅鳥・e11587)へと告げる。
 ベッドの上では、すっかりやつれた様子のひかりが、不安げにケルベロス達を見つめている。
「大丈夫、大丈夫だ、お嬢さん。すぐに終わるさ。俺たちはこの手の事件の専門家だからな」
 不器用にウインク一つ、十至が告げる。
「それじゃ……始めるよ」
 と、アトリ。ライトニングロッドを、かつん、と床に立てる。同時に瞳を閉じた。
 静かな『手術室』に張り詰めたような緊張感が漂う。数十秒……いや、それよりも短い時間だったかもしれない。病魔を摘出するため、グラビティを集中させていたアトリが目を見開いた。
「恋する女の子の邪魔立てなんて、ケルベロスに蹴られてしまえだよ……!」
 言葉と同時に、再び、ロッドを床に、かつん、と突き立てた。と、どうだろうか。ひかりの輪郭に重なるように、ぼんやりと、天使の様な少女の姿が浮かぶ。
 かつん、と三度ロッドを突き立てる。それが合図になったように、ひかりから少女が飛び出した。姿ははっきりと見える。勝気な瞳は不機嫌そうにケルベロス達を見つめる。彼女こそ恋の病、摘出された病魔の姿だ!
「出たわね……ちゃちゃっとゲームクリアといきましょうか、勿論ノーコンティニューで!」
 明星・舞鈴(神装銃士ディオスガンナー・e33789)が叫び、バトルベルト……ウェスタンドライバーへとカードを挿入。電信音が響くや、次の瞬間には戦闘用の姿へとチェンジ。
「九道くん、ひかりちゃんを頼むよぉ」
 山之祢・紅旗(ヤマネコ・e04556)が、ベッド付近で待機していた十至へと告げる。十至は頷くと、
「ほら、どいた、どいた! お姫様のお通りだ!」
 キャスター付きのベッドごと、ひかりを『手術室』の外へと運び出す。
 病魔はそれに気づき、ひかりを追おうとするが、
「はい、キミはここまで!」
「悪い病魔はここで通行止め、ですよ!」
 ミライ・トリカラード(朝焼けの猟犬・e00193)と、神山・太一(かたる狼少年・e18779)がそれを制した。
 唸り声でもあげそうな顔で二人を睨みつける病魔。
「何も悪くない、子に憑りついて、悪さをする、なんて……許せま、せん……!」
 アリアンナ・アヴィータ(日陰のハミングバード・e32950)の言葉に、彼女のナノナノも同意する様に飛び回る。
「……やっぱり貴女、見覚えがあるわね」
 ルトゥナ・プリマヴェーラ(慈恵の魔女・e00057)は、自身の身長よりも大きな鎌を携えながら、病魔に向かって呟く。
 病魔からの反応はない。ただ、引きずり出された事への怒りの瞳でケルベロス達を見返すのみである。
「まぁ、良いわ。貴女の素性については後回し。今は、ひかりちゃんを助けなきゃ、ね」
 ルトゥナが優雅な動作で鎌を振るう。
 それが、戦いの始まりを告げる合図となった。

「貴女の動き、止めさせてもらうわ」
 ルトゥナが放った御業が、病魔をわしづかみにする。捕らえられた病魔はもがき、それから逃れようとする。
「援護、します……!」
 その隙をついたアリアンナが地面に守護星座を描く。星座より放たれた光は中衛のケルベロス達へ降り注ぐ。ナノナノは病魔へと攻撃。ハート光線が病魔にダメージを与える。
「てっくん、やるよ! 僕達で悪い病魔をセイバイ、するんだ!」
 太一と彼のテレビウム、『てっくん』が息の合った連携を見せる。太一が放つ爆発に合わせ、てっくんの凶器攻撃がさく裂。
「かならず、護るから……! 皆、全力で戦って……!」
 アトリが雷の壁で仲間たちをフォロー。その雷の壁をまとい、
「OK、OK。オッサンも少しは頑張るか」
 十至が刀、『四天』を構え、駆ける。一息に接近し、解き放たれた刃は、病魔の翼を切り裂き、羽を散らせる。
「よーし、じゃあボクも! まずは援護からだね!」
 ミライが守護星座を描く。その光は後衛のケルベロス達の守護となる。
「自分を傷つける様な恋の病は勘弁願いたいねぇ。さて、ガンガン行こうか」
 のんびりとしつつも、動作は疾風のごとく。紅旗が駆けた。オーラをまとった拳を病魔に叩き込む。
「終わりよ、偽キューピッドさん!」
 舞鈴が炎を放ち、病魔を炎に包んだ。
 もちろん、病魔も黙ってやられているわけではない。解き放たれた病魔は、手にしたハート型の弓矢で、ケルベロス達に狙いを定める。弦を引き絞り、アリアンナに向けて矢を放つ。一見すれば玩具のように見えるそれは、人を殺すに十分すぎる威力を持ったものである。
「…………っ!」
 息をのみつつ、アリアンナは武器を構えた。高速で迫る矢を剣で受ける。衝撃で腕が痺れる。
「アリアンナちゃん、大丈夫?」
 心配げに、ルトゥナが言う。
 アリアンナは頷き、ぺこり、と頭を下げた。
 ケルベロス達の猛攻は続く。
 ルトゥナの放つドラゴンの幻影が病魔を炎に包む。たまらず逃げ出した病魔を、アリアンナの心を射抜く矢が狙う。
「目には目を……矢には、矢、です……!」
 その矢を追う様に、ナノナノが飛ぶ。尖った尻尾で追撃の一撃をチクリ。2人の攻撃を受けた病魔は着地。その隙をついて、太一の銃弾が病魔を襲う。
「『ヘタナテッポウモカズウチャアタル』、ですっけ? ……それなら僕のは上手だから、もっともっと当たりますね!」
 有言実行、高速で放たれた銃弾は病魔の武器に命中。てっくんも負けじとフラッシュを放ち、太一と共に攻撃を行う。
 一方、あくまで護りに専念しているアトリは、治癒の雨を以て仲間を浄化。仲間の後押しを続ける。ケルベロス達の防御は完全だ。十至は病魔の動きを読み、一瞬、動きを止めた所へ四天による突きを放つ。その攻撃に、大きく動きを止めた病魔へ、ミライはケルベロスチェイン、『Dead or Alive』に炎をまとわせ、叩きつけた。
 喘ぐ病魔へ、紅旗は大鎌で切り掛かる。続き、舞鈴もガトリングガンをぶっ放す。ダメージを受け続けた病魔は苦悶の表情を浮かべつつ、再びケルベロス達を睨みつけ、矢をつがえた。上空に向けて発射。矢は空中で発光すると、複数に分裂。まるで雨のように後衛のケルベロス達に叩きつけられる。
「こんなダメージじゃ雑魚敵も倒せないわよ!」
 攻撃を受けてなお、舞鈴は強気に笑う。太一、アトリらも深刻なダメージを受けたわけではない。
 短い攻防の果て、病魔は完全に圧倒されていった。もとより戦闘能力はあまり高くはないと予知されていた存在である。百戦錬磨、精鋭である8人のケルベロス達の障害となるには、力不足が過ぎた。
「誰もが陥る恋の病。だけれど、貴女は普通のそれとは違うわ」
 ルトゥナが呟き、その大きな鎌を構える。
「恋は甘く、切なく……苦しい物。でも、本当に体を苦しめるものであってはいけないわ。さようなら、病魔さん」
 優雅な動作で、鎌を振りかぶり、放った。回転しながら病魔へと飛来する大鎌は、病魔の身体を中心から真っ二つに割くと、そのままルトゥナの元へと帰ってる。
 二つに引き裂かれた自身の身体を、信じられないモノでも見るように見つめてから、病魔はケルベロス達に視線を移した。悔しげに顔をゆがめると、そのまま光の粒となり、消滅していく。
 病魔、退治完了。ケルベロス達の手術は、ここに幕を下ろしたのだった。

●バレンタイン作戦、再開
「恋の病……だったんですか?」
「ええ……思い当たるわよね?」
 ルトゥナの言葉に、ひかりは頷いた。
 戦闘後の『手術室』。戦闘の痕跡はケルベロス達によってヒールされている。外へと退避させられていたひかりを、室内へ戻し、一息ついた所で、ケルベロス達は、今回の病状の原因を説明した。
「恋の病……という事は、恋をするたびに、こうなる可能性があるって言う事なんですか……?」
 ひかりの言葉に、ケルベロス達は答えを返せなかった。恋の病魔がなぜ発生したのか、それすらも結局のところは不明なのだ。大丈夫だとも、そうだともいう事は出来ない。
 ひかりは、ケルベロスたちの沈黙を肯定と受け取ったようだった。
「……そんな……こんなに苦しくって、辛い目に合うなんて……そんなの……」
「でも……でも! 悪い病魔は、僕達の手でセイバイ、しちゃいました! だから、元気だしてください!」
 太一が、精一杯、元気づけるように、言った。
「……確かに、貴女は、苦しい思いをした。けど、全てが苦しいだけだったわけじゃぁないでしょう?」
 優しく、諭すように。ルトゥナが言う。
「貴女が最初に抱いた気持ちは、ずっと温かかったはず。とても幸せで、優しくて……その気持ち、今でも、残っているかしら?」
 ルトゥナの言葉に、ひかりは胸に手を当てた。恐怖の底に封印されていまった、気持ちを、恋したあの時の気持ちを思い出すように。
「……えっと。好きな人がすぐ側にいて、その気持ちが言えるってことは、すごく幸せ、だと思うんです。だから、コウカイとかが無いように、しっかり伝えてあげてください、その気持ち」
 負けないで、という想いを乗せて。自身の思いつく精一杯の言葉で、太一はひかりを励ます。
「そう! 誰かを想うのって、本当はすごく暖かいことなんだよ!」
 太一に続いて、ミライが言葉を続ける。
「そりゃあ、切なくなる時だってあるよ? でもそれは、今回の病魔みたいにただ苦しいだけじゃなくて、その人のことをつい目で追っちゃったりして、それでその人が笑ってるところを見ると、こっちまで笑顔になれるんだ! ボクはその、恋とかした事はない……と思う。でも、ボクにだってそれは分かるんだ」
 言葉の通り、誰かを思い浮かべたのか、ミライも精一杯の笑顔を浮かべる。
「それは、素敵な事なんだよ。こんな事であきらめちゃもったいないくらいに。だから、キミも、一緒に笑顔になってほしいんだ。誰だって笑顔が一番似合うんだから!」
「あなたが大好きな人、どんな人なのかな……?」
 アトリが続ける。思い出してみて、思い浮かべてみて、と。
「人を思うことは苦しいし、怖いこともある、よね。きっとそれは……普通のことだよ。私だってそうだったんだよ」
 と、手にした紫竜の花を、ひかりに見せた。それは、彼女の大切な人との絆。彼女の勇気を奮い立たせるお守り。
「……人を思う事は凄く素敵な気持ちだと思う。もし、あなたが病魔を恐れるのなら、全力で支えるし、もし、また病魔に倒れても……何度でも、何度でも……必ず助け出すから……! だから……あなたの想いを、消してしまわないで……!」
「そーよ。病魔は何度だって、アタシ達がやっつけてあげる。……ねぇ、アンタがどういう思いをしてたのかなんてアタシには分かんないんだけどさ。それってちょっと苦しいくらいで諦めていいもんなの?」
 舞鈴が言った。些か言葉はキツイものではあったが、その内に秘める優しさは本物だ。
「苦しいなら乗り越えりゃいいんじゃん。アタシたちがやったみたいにさ。ビビッて及び腰になっても何も変わんないわよ? さっきアトリさんも言ったけど、もしアンタが倒れても、何度だって助けに来るわ。それは絶対。だから」
 びしっといきましょ、びしっと。そう言って、優しく、ひかりの肩に触れる。
「あー、なんだ。オッサンは……誰かに純粋な恋なんてしたのは、もう何十年も前の話だからな。お前さんを励ます言葉ってのも、そう、すぐには出てこないんだが……」
 手をあごにやり、しばし悩んでから、十至が言う。
「恋する事が怖い……ってのはまぁ、そういう時期があってもいいんじゃねぇの? 人生は長いんだからな。でも、こういうのは多分、いつか克服しなくちゃぁダメだ。特に、本当は好きで好きでたまらない相手がいるのに、それを怖いって言って諦めちまうなら……早く克服した方がいいと、オッサンは思うがね」
 頭をかきつつ、十至は、
「なんならいっそ俺と恋してみるか? オトナの恋愛ってヤツを見せてやれるぜ?」
 などと茶化すように言う。
「あら……ご生憎様。ひかりちゃんにはちゃんとお相手がいるのよ?」
 くすくすと笑いながら、ルトゥナが言う。
「そういうのダメですよ! リャクダツアイ、って奴です!」
 太一が真面目な顔でダメ出しをする。
「お、おいおい! 冗談、冗談だって!」
 困った顔の十至。
「さて、あっちのおじさんの言葉はちょっと忘れておいてねぇ」
 と、紅旗。ひでぇな、と抗議の声を上げる十至を無視しつつ、
「……お嬢さん、恋する事が怖いかい? 不安かい? じゃあ、傷心の乙女にケルベロスのおじさんが魔法の飴をあげよう」
 と言って、手渡したのは、レモン味のキャンディだ。
「これを口に入れたらゆっくり目を閉じて、飴を転がしながら大好きな人を思い浮かべてごらん? きっと、心臓の辺りがドキドキしちゃうから」
 まだ、物を口に含むのが怖いのだろう。ひかりは、飴を口にする事を躊躇した。紅旗は安心させるように、頷く。目を閉じ、意を決して、ひかりは飴を口にした。
「……甘酸っぱくて……なんだか……」
 ひかりが呟く。でも、その先は、言葉にならなかった。
「この時期ですから、きっと、バレンタインチョコ、渡そうとしてたんです、よね」
 アリアンナが言った。ひかりが頷く。
「ちゃんと思いを伝えようとする、勇気がある……それだけで、すばらし、思います」
 どこか、諦観の色をにじませながら、アリアンナが言う。それは、ある意味で、自身に向けた言葉なのかもしれなかった。
「……病魔は倒しました、から……次は、ひかりさんの思うよに、動く番です。もうだいじょぶ、ですよ」
 アリアンナの言葉に――ケルベロス達全員の言葉に。
「私――」
 ひかりは。
「私……いいんでしょうか。恋をして、あの人に、好きだって伝えても……」
 泣きながら、尋ねる。
 ケルベロス達は、励ますように、肯定する様に、応援する様に……それぞれの想いを乗せて頷いた。
 それを見て、ひかりは、大声で泣きだしたのだった。

 おそらく――、とケルベロス達は思う。
 彼女のバレンタイン作戦は、小さな勇気の物語は、再び動き出すだろう。
 そしてその先に待っているのは、とても幸せな結末に違いないのだと。
 ハッピー・バレンタイン。
 ケルベロス達の誰かが、そう呟いた。

作者:洗井落雲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 0
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