●お医者様でも
朝。
青柳実羽は、いつものトーストとベーコンエッグという朝食を前に、浮かない顔でいた。
食欲が無い。
昨日の夜から何も食べる気がしない。
実羽の脳裡によぎるのは、昨日初めて言葉を交わした先輩の顔。
(「岩山先輩……」)
先輩の事を考えるだけで、胸がきゅうっと締めつけられる。
彼の面影を思い浮かべるだけで、息が苦しくなる。
もう実羽の胸は岩山先輩でいっぱいで、ご飯も喉を通らない。
完全な恋の病であった。
だが、実羽の恋の病が普通と違っていたのは、『あの人を想うと食事も喉を通らない』という熱を上げた比喩が、比喩でなくなった事だ。
食事だけではない。飲み物も何一つ飲める気がしない。
実羽は、好きだった筈のコーンポタージュスープを前に、眉根を寄せた。
朝食抜きで学校へ行く訳にはいかない。剣道部の朝練をこなして授業を受けて昼まで——到底身体が保たないだろう。
意を決して一口啜る。
「げほっ!?」
即座に咳込んで全部吐いてしまった。
「スープが無理でもせめてパン……卵だけでも」
実羽は必死の形相になってバタートーストとベーコンエッグを頬張ったが。
「げほっごほっ、おぇええええっ! げほげほげほん!」
それらも全て吐き出そうとして、咳が止まらなくなって、遂には。
「……大丈夫? 実羽、まさか食中毒とかじゃ……」
心配した母親が救急車を呼ぶ事態にまで至ったのだった。
●草津の湯でも
「本日、日本各地の病院から原因不明の病気についての連絡がありました」
集まったケルベロス達を前に、困惑した様子で小檻・かけら(洟嫁ヘリオライダー・en0031)が説明を始める。
「この病気は、誰かに純粋な恋をしている人がかかるらしく、その症状は『胸がドキドキして、食べ物も飲み物も喉を通らない』というものであります……」
これは決して比喩表現でなく、本当に水も飲めない状態で、無理矢理飲もうとすると激しく咳込み吐き出してしまうそうな。
病院に運ばれた患者達は、点滴を受ける事で命の危機は脱したが、未だ治療方法は全く判明していないという。
「この病気の症状を聞いた星宮・莉央(夢飼・e01286)殿達が調査なさったところ、原因は『恋の病』という病魔である事が判明したであります」
そう告げて、深々と頭を下げるかけら。
「この病魔を倒し、恋の病に冒されてしまった方々を助けて差し上げてくださいませ。どうか宜しくお願い致します」
戦場は、患者が運び込まれた病魔と戦闘可能な病室となる。
「ウィッチドクターの方がいらっしゃったら、患者さんから病魔を引き離して戦闘へ持ち込む事が出来るであります」
もしも病室へ向かうケルベロスの中にウィッチドクターがいなかったとしても、事前に病院へ連絡しておけば、医療機関のウィッチドクターが手伝いに来てくれるので問題ない。
「病魔『恋の病』は、手にした弓を引いて、バレットストームやハートクエイクアローに似た攻撃を射掛けてくるであります」
また、『告白クルエルティー』という敏捷性に満ちた魔法攻撃も行ってくる。ダメージが高く遠くの相手にも命中するのが特徴だ。
「この病気は、病気の苦しみがトラウマになって、恋をするのを怖がるようになる可能性が高いでありますが……」
心配そうに言うかけら。
「もし可能ならば、被害者の方がこの病気の影響で恋に臆病にならなくて済むように、上手くフォローして差し上げてくださいね」
そう頼み込んで、説明を締め括り微笑んだのだった。
参加者 | |
---|---|
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414) |
トリスタン・ブラッグ(ラスティウェッジ・e01246) |
貴石・連(砂礫降る・e01343) |
ラズ・ルビス(祈り夢見た・e02565) |
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716) |
ニルス・カムブラン(暫定メイドさん・e10666) |
妹島・宴(彼岸の契り・e16219) |
二階堂・燐(鬼火振るい・e33243) |
●
病室。
青柳実羽は、ケルベロス達の面会へ応じられる程度に意識もはっきりしていた。
「……青柳様。大丈夫、ですよ。すぐ元の生活に、戻れますからね」
ラズ・ルビス(祈り夢見た・e02565)が、調度品をせっせと外へ運びながら声をかける。
「お願いします」
力なく言う青柳へ微笑み返すラズは、緑の髪と瞳が真面目そうな雰囲気を感じさせるレプリカントの少女。
丁寧な口調が無表情と相俟って素っ気ない印象を与えがちであるものの、その実、他者の命を第一に考えて行動する、大変心優しい元ダモクレスだ。
「意識ある? これから悪い病気を祓い落とすからね」
貴石・連(砂礫降る・e01343)も、ベッドへ向かって屈託ない笑顔を見せた。
肩で切り揃えた焦げ茶の髪と、茶色く円らな瞳の可愛らしい現役女子高生の連。
女らしさもあるが全体的にボーイッシュな雰囲気で、身に着けた騎師甲冑『銀貨千枚』も白銀と青のコントラストが爽やか、連のさばさばした性格の表れかのようだ。
「恋の病かぁ。あたしも恋が成就するまでは毎日ドキドキで不安でいっぱいだったなぁ」
その明るい物言いは皆を和ませ、恐らく身に染みついているだろう他人への気配りも実に洗練された、とても心根の優しい少女である。
「だけど、それは本当は楽しい時間。病魔なんかにいじられるなんて許せることじゃないよ」
連自身、今は可愛い恋人との愛を育み、恋の辛苦を知る乙女であるからか、
「乙女の特権を踏みにじるなんて許せない!」
恋の病へ憤る思いは、仲間同様激しい。
「恋の病ですか……私にはこの拳で解決するしかできそうにありませんね」
トリスタン・ブラッグ(ラスティウェッジ・e01246)はベッドの側へ立ち、いつ病魔が姿を現しても青柳を守れるようにと神経を張っている。
逆立った赤い髪と眼光鋭い金の瞳、厳つい顔貌から恐ろしそうなイメージを持たれがちな男性。
さりとて、強面な見た目に反し、実のところは非常に大人しい性格のトリスタン。慣れない子育てに奮闘する良いお父さんである。
「草津の湯でもお医者様でも、恋の病はなんとやらとは聞いたがなぁ……」
その傍ら、水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)は、やる気のなさそうな風情でつっ立っていた。
白い癖っ毛と藍色の三白眼、そして愛用の帽子が印象的な茫洋とした青年。
左腕を地獄化したブレイズキャリバーで、ビルのオーナーにありながら骨董商の見習いを副業としている。
性格はゲーム好きかつ無気力だが、大切な恋人の前ではなかなかに能動的な様子も見せるようになってきた鬼人。
微笑ましい限りである。
「恋煩いが、こんな形で人の命を脅かすなんて……」
ニルス・カムブラン(暫定メイドさん・e10666)は、内心の驚きを抑えきれず、哀しそうに洩らす。
「病魔の除去もメンタルケアも等しく誠意をもって当たらせていただきます」
焦げ茶のポニーテールと赤いリボンが可愛らしい、ドワーフにしては表情もスタイルも大人びているメイドさんだ。
(「私がケルベロスでなければ、或いはこの方と同じ被害者になっていたかも知れませんですし……」)
最近は年頃らしい物思いが増える傍ら、鶏の着ぐるみで愛らしさも増していたりする。
「純粋な恋、ねえ……悲しいかな、大人になるにつれて、忘れていってしまいがちな気持ちではあるけど……」
二階堂・燐(鬼火振るい・e33243)は、今まさに恋で身を細らせている少女を目の当たりにして、ついつい自分と引き比べてか深い溜め息をつく。
楽しい冗談や面白い掛け合いを好む反面、その高い社交性からか自然と他人を気遣える優しさも持ち合わせた青年だ。
「だからこそ、今その真っ只中に在る青柳さんの恋路と青春、こんな形で潰えさせるわけにはいかないぜ。大人として!」
燐はビシッと断言して、先頃刃を交えて絆を深めた親友へと向き直る。
「じゃあ、宴くん。よろしく頼むぜ」
妹島・宴(彼岸の契り・e16219)が、真剣な面持ちをして頷いた。
「ウィッチドクターとしての力を揮う初めての依頼が恋の病、か」
同じウィッチドクターであるラズも、病魔を己の手で喚び出したいという宴の申し出を快諾してくれた。
病に苦しむ人を解放できるウィッチドクターである事へ誇りを持つと共に、自分へ大切な役割を気持ち良く任せてくれた仲間達への感謝も抱いて、宴は黒衣の誘い手に袖を通した。
「恋を糧にしているサキュバスにとって、捨て置けない病魔ですよ……ね」
病魔が蝕む患部——青柳の場合は喉と胃へ手を当て——文字通りの手当てをして、宴は精神を集中。
「さぁ、姿を見せなさい」
己がグラビティを餌に病魔を引きつけんと力込めれば、次第に青柳の体へ妖艶な美女のシルエットが浮き上がってきた。
桃色の翼を生やし、蠱惑的な衣装を纏ってハートの矢を弓に引くこの美女こそ、病魔『恋の病』である。
「病魔の召喚って初めて見るのよね……こんな風に出るんだ……」
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)は、目の前で起こった光景へ感慨を覚えて、その整った面差しに興奮の色をのぼせる。
長い黒髪を一纏めにし、灰色の吸い込まれそうに魅力的な瞳を持つ鎧装騎兵の少女。
基本的に明るく真面目な性格で思慮深く、どことなく大人びた物腰にも見受けられるかぐら。
とはいえ、年相応に多感なのか、日々様々に考え試行錯誤を繰り返しているそうな。
●
恋の病は、言葉もなくただ相手を魅了するかの如く意味深な微笑を浮かべて、容赦なくエネルギーの矢を放った。
「生憎、私の意識はすっかり娘に占められていましてね」
意識を蝕む催眠へ親子愛にて気持ちだけでも対抗しようと、トリスタンが青柳のベッドを庇いつつ嘯く。
「さて、治療開始ってな。人の恋路を邪魔する奴は、地獄の犬に蹴られるのが常識なんでね」
無銘刀を抜き払い空をも絶つ斬撃を見舞う鬼人。
「とにかく、元気になってもらわないとね」
かぐらは小型治療無人機を展開、前衛の守りを固めつつトリスタンの傷も癒した。
「人の恋路を邪魔する者はナントカに蹴られる、ってね」
燐は宴の落雷のタイミングに合わせて青い炎揺らぐ白刃を一太刀、裂傷を斬り拡げる。
「……病魔。看護師として……こうした力技でしか助けになれないことは、大変悔しく思います」
流星の煌めき宿した重い飛び蹴りをぶちかますのはラズ。
「殲の一文字心に抱きて、いざ参る!」
連は電光石火の蹴りを繰り出し、恋の病の下腹部を貫いた。
幾ら口や下腹から血を流そうと、不気味に沈黙を保ったまま、矢を射掛けて桃色の魔力を放出する恋の病。
その度にかぐらやトリスタン、トライザヴォーガーのディフェンダー勢が、仲間や青柳の代わりに苦痛を引き受けた。
「苦しいのは、最初だけですから……我慢、してくださいね?」
戦闘中の宴は、雷の壁を用意し忘れたり抗体投与を持ちながら潤いの風を起こさんとしたりと、挙措を失っていたが、常々メディックの準備を怠らずにいたのが不幸中の幸い。
今も様々な毒や呪いに対する抗体を精製、前衛陣に投与する事で濃い催眠を洗い流し、彼らの怪我も治した。
「恋の病……ずっと黙っているのはどうしてなのでしょう?」
と、訝しみながらバスターライフルの照準を定めるのはニルス。
一気に体温を奪う凍結光線を発射、恋の病のしなやかな肢体をみるみるうちに凍てつかせる。
トライザヴォーガーは激しくスピンして、奴のすらりとした足先を轢き潰している。
「恋……青柳さんを長く苦しめる為には、下手に助言になりそうな言葉が邪魔だから? ……まさかね」
かぐらは精神を極限まで集中、恋の病の脇腹を一切手を触れずに爆破させた。
「我流剣術『鬼砕き』、食らいやがれ!」
鬼人は越後守国儔を引き抜くと、刹那の内に左から切り上げて右に薙ぎ払うや袈裟懸けへ、流れるように刃を返す。
最後にその三撃の刃筋が重なる中心を刺突でぶち抜き、恋の病へ耐え難い激痛を与えた。
「うおおおおおおっ!」
忌まわしき沼の巨人から奪い取った力を腕に宿し、まるで全ての迷いをぶつけるかのように殴りかかるトリスタン。
振るう拳は、毎夜1人ずつ食らうとされる邪悪な巨人の如く確実に、恋の病の下腹へ減り込み、勢いの乗った破砕音を立てた。
「けれど……それでも、私にできることがあるのなら、精一杯、努めさせていただきます」
ラズは素早い手捌きでメスを操り、恋の病の身体へ手術を施す。
それは病魔を呼び寄せる為の印を刻む外法で、印残る限り、対象の体を癒えぬ病にて蝕み続ける。
恋の病もしたたかに身体を鞭打つ病へもがき苦しんだ。
「もう誰も、自分の気持ちに苦しむことのないように……おやすみよ」
と、鬼門大通天の刀身を恋の病の胸へ深々と突き立てるのは燐。
そのまま宝刀の霊力を一息に解き放ち、青白く揺らめく鬼火で奴の身の内から灼き尽くした。
「我が前に塞がりしもの、地の呪いをその身に受けよ!」
連は結晶化させた拳に渾身の力を乗せ、恋の病へ打ち込む。
その格闘術は傷口周辺から石化を起こし、後々まで治癒を阻害する物だが。
体力を大幅に削られていた恋の病には、連の一撃こそがトドメとなって、貴石化した肉体が粉々に破砕され、宙へ融けていった。
「実羽だっけ? 気分はどう?」
振り返って尋ねる連へ、病人も細々と、
「喉のつかえがとれたような……お腹も楽に」
「ただ道が交わったあたしが言うのもなんだけどさ、恋に臆病にならないでね。こんなの質の悪い病魔のせいだから」
日本で、いえ世界で、一日に何組のカップルが成立してると思う?
明るく諭す連の声を、青柳は力ない様子ながら真剣に聞く。
「恋心は苦しいものですが、でも……病魔の醸す苦しみとは全く違うものです」
先輩を見かけるだけで胸が高鳴って、心臓がぎゅってなるあの感じ……気持ちよかったでしょう?
「うー、って身悶えてベッドを転げたくなる様な、誰かを好きだって思う、たまんない気持ち」
宴も青柳を力づけつつ、恋愛沙汰が好きな性分故か、その声は楽しそうに熱を帯びていく。
「恋って楽しいですよ。もっと仲良くなりたいって思いませんか」
怖くないですから……ね。ゆっくり、進んでいきましょう?
物慣れた調子で語る宴。そこへ燐も言葉を被せた。
「身に覚えがあるだろ? なんかこう、無駄に部活やら居残り勉強やらやってさ、遅くまでその人のことを待って……『あ、偶然だね』的なさ! すごく、ドキドキしなかったか?」
こちらは燐自身の充実した学生生活が偲ばれるようで、大層含蓄がある。
「誰かを想う気持ちから、人は優しさの一歩を踏み出すんだ……青柳さん、どうか、怖がらないで。それは、とても美しいことなんだから」
思いやりある燐の声へ続けて宴も、
「ぼくもずっと片想いだったんです。でも、想い続けていれば、いい事ありますよ」
誠実そうな男達の説得に、青柳の気分が浮上する。
「わたし自身まだ恋愛経験が無いから何とも言えないのだけど……」
かぐらは、ふっと遠い目をしながらも、にっこりと見る者を安心させる笑顔で言い募る。
「ケルベロスでも経験のない事を経験しようとしてる青柳さんはすごいと思うし、応援するわ」
大丈夫、きっとうまくいくって。
かぐらの穏やかな声が、青柳にもそうかもしれないと希望を与えた。
「病苦が恋の妨げになってしまうというのでしたら、スーパーなドクターさんを始め凄腕の医療チームが何時でも迅速に病魔をけちょんけちょんにしますので大丈夫なのですっ」
そう自信満々に断じるニルスだが。
「それに……貴女より私の方がきっと臆病なのです」
自分も何か屈託があるのか、丸い緑の瞳を切なげに揺らした。
「だって病魔に苦しんでいなくても一歩を踏み出せないでいるのですから……貴女を見ていて私はダメだなって思ったんです」
お互いに勇気を出して、大切な一歩踏み出してみましょうね。
ひし、と青柳の手を取って、ニルスは誓う。
真剣な眼に射抜かれ、青柳も体のだるさを忘れて息を呑んだ。
「青柳様……どうか、恋を怖がらないであげて下さい」
ラズは優しく言い添える。
「病ではない、正しい恋は、苦しいけれど、でも、あたたかくて。切ないけれど、でも、求めてしまう……素敵な、ものなのですから」
歌うふうな弁舌は、恋が大層清らかな物のように説く。
「大丈夫、貴女の気持ちは、決して貴女を裏切ったりはしません。だから貴女も、気持ちを押し込めないで」
その恋は、他ならぬ貴女のためにあるのですから……ね?
自然と青柳が頷くのを見て、連もにこりと笑う。
「岩山先輩だって支えてくれる人を待ち望んでると思うよ——ここは勇気を出して告白しちゃいなって。きっと上手くいく」
あたしもね、一目惚れした相手と暗中模索しながら恋人になれた。実羽もそうなってほしいな。
心から他人の幸せを願える連の本心が、青柳の目に生気を呼び戻す。
「上手くは言えませんが当たって砕けるもよし、ダメなら思い切り友人達と騒いで次に行きましょう」
ずっと無表情の内に聞き耳を立てていたトリスタンも、丁寧に助言。
「男は大抵、特にスポーツに打ち込んでいる男ほど鈍感です。行くなら思い切り正面からがおすすめですよ」
己が過去を振り返りつつ語るトリスタンのアドバイスは、天啓のように青柳へ染み入った。
「まぁ、恋愛について語れる人間でもないが……一番なのは、その恋の結果をどう受け止めるかだな」
すると、今まで病室のヒールに励んでいた鬼人も、人心地ついたのか口を挟む。
「勇気を振り絞って自分から一歩、相手の心の中に踏み込まなきゃ、恋も始まらないと思うぜ?」
首にかけた木のロザリオを手の中で弄びつつ語る顔は幸せそうで。
「俺みたいな朴念仁でも好きだといってくれる人が居るんだ。それに、一度や二度、断られたからって諦めんな。隙あらば、相手の心に自分を刻んでやりな」
鬼人の気負わないようでいて力の篭った発破にも、いたく勇気づけられた青柳。
「皆さん、有難うございます……私……告白したい、きっと勇気を出します……」
ラズのコーンポタージュやニルスのプリンを食べながら、恋愛へ積極的な姿勢を微かに示すのだった。
彼女らの用意した食事は胃の負担を抑え、淡い恋のような優しい甘さをしている。
「……んで? 青柳さんの想い人ってのはどんな人なんだい? 写真とかある? お兄さんにも見せてくれよ!」
青柳の回復を喜んだ燐は、友達みたいな気易さで矢継ぎ早に問うも、
「はい、この人です!」
スマホを見せられて硬直する。
「……あ、うん……いいんじゃないかな……つよそうね……」
画面には、どう見ても殺気を放つゴリラにしか見えない、毛深く人相の悪い大男が写っていた。
作者:質種剰 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年3月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 6
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