ちいさなてのひら

作者:森高兼

 ある閑静な住宅街の公園にて、子供たちはボール遊びをしていた。母親たちに見守られながら無邪気に戯れる光景は微笑ましいものだ。
 弾んだボールが頭上を越え、それを追いかけていく子供。夢中になっていて、母親たちが呼び止める声は届かない。意外に遠くまで転がって車道に飛び出た。普段は交通量の多くない路地を運悪く走っていた車が迫る……。
 運転手はブレーキをかけてハンドルを切るも、間に合わずに子供をはねてしまった。近くの電柱に衝突し、やっと車が停止する。運転手が軽傷で済んだのは、エアバッグと比較的遅いスピードだったおかげだ。
 それでも軽々とはね飛ばされ、か弱い子供はその際に後頭部を打ちつけていた。早く病院に運べば、どうにか助かるだろう。
 子供が朦朧とした意識で、空から来る人影に手を伸ばそうとする。母親が駆けつけてくると思ったのだ。
 しかし、人影の正体は魔空回廊から出現したヴァルキュリアだった。まだ幼い上に意識が朦朧としており、空から来ることを変だと考えなくとも仕方ないだろう。
 ヴァルキュリアが手を払うように、ゾディアックソードを一振りした。それだけで子供の命を斬り捨てられ、母親の悲痛な叫びが響いてくる。己が使命のために慈悲は無い。
 子供の小さな手はアスファルトに力なく倒れ……体から魂のような青白い塊が抜き出された。
 塊が光り輝き、人型に変わっていく。無垢なる子供の魂から、新たなるエインヘリアルが生み出されたのだった。
 死の気配濃くなる所にヴァルキュリアあり。そして、予知の報告ある所に集うケルベロスあり。
「子供が危なっかしいのは仕方ないかもしれないけどね」
 エレオノーラ・ウィンダム(剥がれ落ちし翼の欠片・e03503)は息をついた。以前にヴァルキュリアを倒した時から、子供が狙われる予知を聞かされるケースもあるのではと思っていたからだ。
 黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)が大袈裟に頷く。
「交通事故も大変っすけど。ヴァルキュリアに襲われるのは、もっとシャレにならないっすね!」
 母親を心配させることが多そうな子供のようだが、もしエレオノーラに外せない用件が入ったとしても、集まったケルベロスたちが放っておかないだろう。
「子供がエインヘリアルにされるのを阻止して、それからヴァルキュリアの討伐もお願いするっすよ!」
 ケルベロスたちに目標を示したダンテが、現場周辺の状況について説明を始める。
「現場は予知の通り、公園の側っす。現れるヴァルキュリアは飛行する一体だけっすけど。地上に降りてくることはないから、接近して攻撃することは無理っすよ! 予知の状況なら狙ってくるのは子供優先で、公園の皆さんと一緒にどう避難させるかが問題っすね」
 子供が最初に道路側で倒れている以上、近くの住宅に一旦避難させるのが妥当か。その際、頭部を怪我していることが心配ならば、ヒールをかけられる者が駆けつけるようにするとよい。
「子供の避難が完了次第、ヴァルキュリアは皆さんを倒すことに集中してくるっすよ!」
 公園の中心に遊具は置かれておらず、戦闘の邪魔になるようなものはないようだ。
「今回のヴァルキュリアはゾディアックソードを使ってくるっす。皆さんにかかる強化と敵にかける呪力、どっちにも対策できる武器だから要注意っすね!」
 ダンテは最後にケルベロスたちへと尊敬の眼差しを向けてきた。
「子供が本当に手を伸ばすべきなのは、駆けつけてくれるケルベロスの皆さんに対してっす! よろしくお願いするっすよ!」


参加者
ナユタ・カーマイン(オラトリオの刀剣士・e02808)
エレオノーラ・ウィンダム(剥がれ落ちし翼の欠片・e03503)
ルルティア・ビリジアナ(マイペースバーサーカー・e05659)
八重樫・悠莉(小学五年生の鎧装騎兵・e08242)
神寅・闇號虎(ダークダストクルセイダー・e09010)
月神・鎌夜(悦楽と享楽に殉ずる者・e11464)
朽木・紫(未だ檻の中・e13095)
雨水・朧(己を知らぬ剣鬼・e15388)

■リプレイ

●空から来る者
 ヴァルキュリアを待たなければならないもどかしさは、何とも言えない気分だ。
「そろそろ、ですかね」
「次に車が通る時だろうな」
 ナユタ・カーマイン(オラトリオの刀剣士・e02808)と雨水・朧(己を知らぬ剣鬼・e15388)は即座に行動できそうな丁字路を確保していた。
 皆と待機しながら、月神・鎌夜(悦楽と享楽に殉ずる者・e11464)が舌打ちする。
「死神といいヴァルキュリアといい薄気味の悪い……」
 ヴァルキュリアには、助かる余地のある者を標的する性質の悪さもあると言えるだろう。
 子を失う親の気持ちを理解しろと言うつもりも、相手がどんな事情を抱えていようと蛮行を見過ごすつもりもないが。
 八重樫・悠莉(小学五年生の鎧装騎兵・e08242)が嘆息する。
「ヴァルキュリア達にも困ったものだよね?」
「勝手な都合で小さな命が奪われるなんて……ダメです。だから……そんな悲劇、ヒネリつぶしてやります」
 表情は変化させなかったものの、ルルティア・ビリジアナ(マイペースバーサーカー・e05659)は瞳の奥に闘志を燃やしていた。守りたい少女が傍におり、子供が一方的に傷つけられるような悲劇を見たくないと強く感じている。
 ケルベロスたちとしては地上戦に持ち込みたいと思っていた。だが予知で明言された以上、今回のヴァルキュリアは何があっても空を飛び続ける。それならば、撃破後に消滅しない限りは最終的に地へと落とすまで。
 とはいえ、エレオノーラ・ウィンダム(剥がれ落ちし翼の欠片・e03503)は若干気負い気味だ。
「絶対に食い止めるわよ!」
 子供が手を伸ばす敵の特徴を踏まえ、片翼は歪ながらも翼を広げている。
 ついに例の車が丁字路をカーブしていき、その先の公園で事故発生。間もなく、上空に現れた魔空回廊からヴァルキュリアが出てきて、事故に慌てる悲鳴から恐怖に満ちた悲鳴に一変した。
 意識のはっきりしていない男の子が……上空のヴァルキュリアに手を伸ばす。
 ケルベロスたちは瞬時に動き出した。

●繋がる命
 男の子は今にも気を失いそうな容体で、エレオノーラの手をつかんだ。
 エレオノーラが頭を打った男の子を慎重に抱きかかえる。
「ここは一旦任せるわね!」
「あ、わたあめみたいなネコさんだ」
 主を象徴する花を右耳に携えた、純白のウイングキャット『フェンリル』が子供たちを通じて親たちも落ち着かせた。
 速やかに避難誘導できるように、朽木・紫(未だ檻の中・e13095)が殺界を形成する。
「避難開始だよ……」
 ぽつりと言った紫から発せられる気に反応し、軽傷の運転手も車から降りてきた。
 鎌夜がオーラを収束しながら、戦場を見渡せそうな場所まで駆けた。男の子を狙おうとする気配を感じ取り、オーラの弾丸を放ってヴァルキュリアを挑発。
「ヴァルキュリアなんて名乗ってる割に、子供を殺すのが仕事なのか? あぁ、それとも子供を殺す事しか能が無いのか?」
「……庇われてしまいそうね」
 ヴァルキュリアは冷静に邪魔者と認識したようだ。剣から乙女座のオーラを飛ばし、鎌夜を凍てつかせてくる。
「よう、少年の命を奪いに来るのは通行料がいるぜ。テメエの命で払っていきな」
 口火は切られており、朧は攻撃を最大の防御とするために精神集中した。サイコフォースの発動でヴァルキュリアを攻撃し、振り返ることなくエレオノーラに一声かける。
「こっから先はこの身に代えても通しゃしねえッ! 頼むぜ、そいつを」
「じゃじゃ馬。お前の相手は、俺達だ」
 凍結光線は回避されたが、神寅・闇號虎(ダークダストクルセイダー・e09010)は二人に続いてヴァルキュリアに声を上げた。ディフェンダーにとって重要なことは……誰かを庇えるかどうかだろう。
 ナユタが時間凍結の弾丸を精製しながら、悠莉の主砲をくらった空中のヴァルキュリアに呼びかける。
「飛行されているのは面倒なので下に降りてくれませんかね!?」
 もちろん、ヴァルキュリアが降下してくることはありえない。だが刀剣マニアにして剣バカのナユタであり、こちらから飛んでも肉迫できない剣の使い手に、文句の一つも言わずにはいられなかったのだ。
 殺界を抜けようとする一般人たちの後を追い、エレオノーラは戦場を離れた。避難完了するまでは、七人だけで持ち堪えることになる。
(「お前達、ヴァルキュリアが狩って良い命など一つもないよ……」)
 初対面のヴァルキュリアに掛ける言葉など、紫は元より持ち合わせていなかった。眼差しは鋭く、淡々とケルベロスチェインを展開していく。
(「……小さな命なら、尚の事」)
 鎖は念動力によって操られ、前衛の者たちを守護する魔法陣が道路に描かれた。
「無駄よ」
 ヴァルキュリアが乙女座の重力を剣に乗せ、重たい一撃で鎌夜の呪的防御を砕いてくる。
 朧がヴァルキュリアの足を氷結させ、魔法陣の恩恵を受けたままの闇號虎は、バスターライフルから魔法光線を撃ち出して威圧感を与えた。
「その程度で魂を選別? 笑わせるな。貴様が一から出直して来い、ひよっこ」
 ヴァルキュリアから睨み返されたが、一般人たちの姿は完全に見受けられなくなったようだ。
 悠莉がアームドフォートからドローンの群れを発進させる。
「可愛い私が声援を送ったよ♪」
 後々に鎌夜が隊列を移るにせよ、全員が揃うまではディフェンダーを担う彼の守りを再度固めておいて損はない。
「治癒は私がします」
 前線で溜めていたオーラを、ルルティアは凍てつかされていた鎌夜に迸らせた。彼が氷に蝕まれることは防ぎ、回復の足りない分が紫のオーラで補われる。
 その頃、エレオノーラは男の子に気力を注いでいた。効果があったことを確認し、母親に抱っこさせる。
「良かった、ユース……」
「大丈夫? もう飛び出しはしちゃだめだよ」
 一般人は殺界の影響によって各自避難するので、エレオノーラが踵を返した。
 円らな瞳で、じっと見つめてきていたユース。地獄化したエレオノーラの右の翼を怖がってもいなかった。ただ純粋に、『天使さん』が助けてくれたと思っていたのだろう。
「おねえちゃんたちありがとー」
 ケルベロスたちの声は、おぼろげながらも伝わっていたようだ。ユースの言葉と共に母親たちの想いも預かり、それに背を押されたように駆け出した。

●繋がる想い
 七人がヴァルキュリアを引きつけることは充分に達成されている。おかげで一般人の避難は済んだと言っても、目的を果たしたわけではない。
 紫は己が役割を全うするため、ヴァルキュリアにケルベロスチェインの鎖を伸ばした。
「…………」
 猟犬を喰らいつかせるように鎖を幾重も巻きつかせ、あくまで黙々と締め上げる。援護を切り上げ、ジャマーの本分を果たすことにしたのだ。
 牽制自体は続行であり、鎌夜が裂帛の叫びを轟かせて傷を癒す。
「そら、テメェの死に様で踊ってみせなァ!」
「お前達が踊りなさい」
 ヴァルキュリアは住宅の屋根に乙女座を描き、星座から溢れた光で傷を治療してきた。呪的攻撃にも対応されたからには、以降付与した呪力が台無しになってしまう場面もあるだろう。
(「今向かっている頃か」)
 もうじきエレオノーラが合流するはずだと考えた朧が、自身に幻影を纏わせる。
 闇號虎は今度こそ凍結光線を浴びせた。
 エレオノーラの合流を見越し、悠莉もアームドフォートの主砲をヴァルキュリアに一斉発射する。狙撃手としての基本を忘れずに塀の角から狙い撃ち、全身に伝播する衝撃をくらわせてドヤ顔だ。
「あ、エレオノーラお姉ちゃん達だよ」
 エレオノーラが戦線復帰し、ユースたちから預かってきた気持ちを彼女の口から伝える。
「皆が貴方達にもお礼を言っていたわ」
 羽ばたいて清浄なる風を起こしてくれたディフェンダーのフェンリルと入れ替わりに、鎌夜がスナイパーとなれる位置へと移っていく。
「仕方ないわね……」
 ヴァルキュリアは眉根をひそめながら呟いてきた。鎌夜の後退と一般人の避難、どちらに対しての意味か判別はできないが。身体の痺れと鎖を振り払った上で、朧に乙女座のオーラを飛ばしてくる。
 闇號虎が朧の正面に立ち、鉄塊剣を盾代わりに威力を半減させてオーラを掻き消した。
「貴様は見えない籠の中の鳥。大人しく死ね……」
「俺がきっちり仕留めてやるぜ」
 朧の宣言に期待し、再びヴァルキュリアを魔法光線で威圧してやる。バスタービームの命中率が一番高く、先程フロストレーザーを被弾させられたのは僥倖だった。
 ルルティアが天空から無数の刀剣を、悠莉が凍結光線をヴァルキュリアに見舞っていく。
 攻撃を仕かけながらでも、ナユタは駄目元でヴァルキュリアに聞いてみたいことがあった。
「貴方達は死にかけの人を無差別に狙っているように思うけど、生み出されるエインヘリアルの強さに影響はないのか?」
 やはり予想通り、沈黙のヴァルキュリア。口数が少ないからというわけではないだろう。
 エレオノーラがオーロラの光で前衛陣を包み込み、鎌夜の癒せる傷全部と闇號虎の左腕に張られていた氷を融かし、メディックとして貢献する。
「姫もいるらしいけれど、その人とニーベルングの指環っていうものとの関連性は?」
 ナユタに語ろうとしなかったように、ヴァルキュリアからの回答は一切無かった。同種のデウスエクスとの戦いには慣れてきても……いまだ謎は多い。
 二人の質問を受け流したヴァルキュリアは、乙女座のオーラでナユタに冷気を浴びせてきた。そんな敵の腕に、朧が氷結の螺旋を投げつける。
 回復しきれていない傷を癒そうと、闇號虎が地獄の炎弾をヴァルキュリアに放った。
「天が許そうと、この地の虎が、貴様を許しはしない。弱者にしか手を出せぬ己を呪って逝け」
 炎が喰らっていくヴァルキュリアの生命力を自らの力に換え、助けを求める者を守らんとする魂を奮い立たせる。
 皆がそれぞれのポジションで最大限の力を発揮していき、鎌夜はヴァルキュリアの『トラウマ』を出現させた。
「このような、まやかしなど……!」
 ヴァルキュリアが乙女座の加護によって、『トラウマ』を即行消滅させる。現時点の運を使い果たし、それ以外には作用しなかったらしい。それを意に介さず、ルルティアに重力の一撃を繰り出してきた。
 悠莉は人前だと猫被りするが、ルルティア。
「ルルティア!」
「平気です」
 守護の魔方陣も壊されておらず、ルルティアはハッキリと答えた。
 ヴァルキュリアに至っては複数の呪力に加え、全体的に氷結状態となっている。
 朧とて一発のオーラや一太刀程度ならば、仮に先程くらっていたとしても涼しいものだった。
「我慢強さだけはある奴だぜ」
 無論容赦はせず、氷結状態に追い打ちをかけようとヴァルキュリアに螺旋の力を放出する。
 ルルティアがヴァルキュリアを見上げたまま、後方の悠莉に声をかける。
「私は本当に平気です」
「本当?」
 背中を見せていても、大好きな悠莉を想う心が隠れることなんてなかった。彼女も信じてくれて、天空に数え切れない刀剣を召喚し、剣諸共ヴァルキュリアの全身を切り刻んだ。

●日常を照らすもの
 悠莉のフロストレーザーは乙女座のオーラで相殺された。
 両者のグラビティのぶつかり合いが、図らずも畳みかけようという合図となる。
 苛烈な攻撃も命中しなければ意味がなく、攻撃の瞬間を捉えていようと避けられなければ……それも意味がない。
「逃しませんってば!」
 ナユタは見切られていながらも勢いで、ヴァルキュリアに時間を凍結させる弾丸を叩き込んだ。
 知人の顔を思い浮かべた鎌夜が、薄笑いしながら両手に滾らせた地獄の炎で二本の槍を形成する。
「この俺が狙撃手の真似事とは……サボっちゃいられないってな? その魂に刻んで逝けや。これがインドラの炎って奴だァ!」
 雷のごとき速度で射出された炎槍が戦場を貫き、ヴァルキュリアに着弾すると爆炎が撒き散らされた。炎に覆われてもヴァルキュリアの氷結した部位はそのままだ。
「止め、任せるよ……」
 仕上げに今一度、紫はケルベロスチェインの鎖を瀕死のヴァルキュリアに絡みつかせた。
「私は、こんなところ、で……!」
 ヴァルキュリアが真上から朧に強襲し、剣を振り下ろして朧の呪的防御を粉砕させてくる。
「そんなもんくれてやるよ」
 過去の記憶が欠落しており、だからこそ思い出の大切さと重みは人一倍身に沁みている朧。思い出というものに憧れてすらいた。これからいっぱいの思い出を作るユースの未来、それを奪おうとする奴を許すことだけは……絶対できない。
 朧に静かな怒りを示されたヴァルキュリアが、彼からのグラビティに備えようとしてきた。だが紫の積み重ねてきた呪縛の一つが抵抗を阻み、もう躱せないことを悟らせる。
「……ッ」
「思い出は、奪わせねえ!」
 怒号を響き渡らせ、朧は呪縛されたヴァルキュリアに激烈な爆破をくらわせた。
 それが決定打となり、ヴァルキュリアが落ちてくる。敵の亡骸は虚空で消滅していった。
「お疲れ様ね」
 エレオノーラが周囲を見回してみる。修理が急がれる箇所はなさそうだ。
 戦場になった区間も辿って公園まで戻ってみたが。紫の殺界が解かれていても、さすがに公園にいる者はまだいなかった。子供たちの笑い声が聞こえるようになるのは、後日のことだろう。
 フードを被って無表情の紫は、人がやってきても一歩引いていられる地点にいた。私事から密かに、僅かに落胆中。基本的に表情変化が乏しく、幸い誰にも気づかれていない。
 鎌夜がぼやく。
「ディフェンダーや避難誘導は、俺の性に合わなかったな。先に帰るぜ」
 未成年者もいるため、あえて一杯やりに行くことは明かさずに去っていく。
 ユースたちが遊んでいた公園を見据えて、闇號虎は危なっかしい光景をつい想像してしまった。
(「幼いと、周りが見えないのが不憫だ……」)
 親子を助けたということもあり、やや感傷的になっている悠莉。
(「お母さんか。家族っていいよね」)
 年は上だけど背を越えている、ドワーフのルルティアの顔をふと見やった。
「?」
 ルルティアが顔を上げて、悠莉に小さく微笑みかける。普段は過保護にされている立場なのに、どこか本当のお姉ちゃんっぽかった。
 悠莉がルルティアと一緒に夕空を眺めることにする。
(「私には、ルルティアがいる。全然寂しくない。今日も悠莉は元気にしてるよ、パパ……ママ」)
 平穏を取り戻した街中を照らす夕焼けは、今日ほんのちょっとだけ……誰かの温もりが宿っているような気がするものだった。

作者:森高兼 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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