恋の病魔事件~好きは、苦しい?

作者:ハル


 熱に浮かされたようだと、少女――ユウナは思った。
 大好きな先輩に、意を決してバレンタインチョコを渡し、そこに自分の想いを綴った手紙を添えた。
 それから数日経った今日、ユウナは先輩に呼び出されていた。
「(先輩っ……好き……好きっ……好きぃっ!)」
 約束の日時を伝える先輩の顔は真っ赤で、可愛かった。答えを聞くのは正直恐い。だけれど、先輩がユウナに好意を抱いてくれている事を、彼女はなんとなく察している。ズルいかもしれないけれど、そうでなければ、とても告白なんてできなかった。
 脳裏に、先輩から『好き』を伝えらる瞬間を想像する。
 それだけで、天にも昇る気持ちになって、胸がたまらない程苦しくなった。
「ユウナ、貴女昨日から何も食べてないでしょ?」
 母親の声。それでようやく、ユウナは自分が朝食をとっている最中である事を思い出した。
「……ごめん、ママ。すぐに食べるから」
 慌ててお箸を手にしたユウナは、卵焼きを口に含んで……。
「――っっ!?」
「ユウナッ!?」
 吐き出してしまう。
「ど、どうしたの、ユウナ! っ、救急者!」
 その後も胸を押さえて咳き込み続けるユウナに、母親は血相を変えて救急者を呼ぶのであった……。


「本日、日本各地の病院より、原因不明の熱病が多発しているとの報告がありました」
 資料に目を落としたセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は、集まったケルベロスにそう切り出した。
「病気の症状としましては、『胸がドキドキして、食べ物も飲み物も喉を通らない』という奇妙なものでして、誰かに純粋な恋をしている人がかかるという事が、現時点で判明しています!」
 症状は、決して比喩表現ではない。実際、水も飲めない状態で、飲み込もうとする度に激しい咳と嘔吐感に襲われてしまう。
「皆さんに担当して頂く患者――ユウナさんという女の子は、点滴を受ける事で命の危機はなんとか脱しましたが、残念ながら治療方法は全く判明しておりません」
 だが、少しだけ進展もあった。
「病気の症状に心当たりのある方……アイオーニオン・クリュスタッロス(凍傷ソーダライト・e10107)さん達が調査を進めた所、原因は『恋の病』という病魔である事が分かりました」
 どうかこの病魔を打ち倒し、恋の病に冒されたユウナを助けてあげて欲しい。
「病魔に関してですが、露出度の高い、恋に狂った堕天使の姿をしているようです」 
 赤く長い髪に、黒く濁った翼が特徴的で、その性質を示すようなハートの弓矢を所持している。
「ユウナさんは現在、私共の要請で広い個室に移動されています。皆さんの中にウィッチドクターの方がいれば、ユウナさんから病魔を引き離して戦闘を始めてください。いらっしゃらない場合は、こちらで事前に病院に連絡し、医療機関のウィッチドクターを手配しておきます」
 次いで、セリカの話しは病魔の戦闘力に移る。
「病魔は、ホーミングアローと巨大矢を交互に放つのが基本です。注意して頂きたいのは、時折放たれるハート型の矢であり、運が悪ければ魅了されて仲間を攻撃してしまう可能性があります」
 だが、病魔はデウスエクスではない。
 ゆえに、普通に戦闘を行えば、極めて短時間で撃破する事ができるだろう。
「問題が一つあり、病気の苦しみによって、恋愛に対してトラウマ、恐怖心を抱いてしまう患者さんが多数いるようなのです。できれば、フォローはしっかりと行ってあげてください!」


参加者
南條・夢姫(朱雀炎舞・e11831)
峰岸・雅也(ご近所ヒーロー・e13147)
ポネシー・シンポル(情けは巡る・e23805)
櫂・叔牙(鋼翼骸牙・e25222)
獺祭・鴻(ゴーストライター・e27911)
ヴァーノン・グレコ(エゴガンナー・e28829)
仙道・風(しゃべくり鎌鼬・e31694)
レーヴ・ミラー(ウラエウス・e32349)

■リプレイ


「まさか人の感情まで病魔になるとはな……」
 看護婦さんの案内の元、白い廊下を歩きながら、峰岸・雅也(ご近所ヒーロー・e13147)が呟いた。
「一見微笑ましいんだけれど、ユウナさんは辛いだろうから、早く直してあげたいね」
「名称だけなら、なんともロマンチックではあるんですけれど……」
 『恋の病』と聞くと、たいした事がなさそうに思う。だが、ご飯が食べられないのは、それだけで酷く辛い事だと、ヴァーノン・グレコ(エゴガンナー・e28829)は言う。レーヴ・ミラー(ウラエウス・e32349)も、無粋な病魔に憤っているようだ。
「でも、わたしも告白の返事を待ってる間はすごくドキドキしたなー」
「僕も、誰かを好きな気持ち……分かるよ」
 実体験を思い出し、南條・夢姫(朱雀炎舞・e11831)が眼を細めると、櫂・叔牙(鋼翼骸牙・e25222)も同意する。
「恋……恋でござるかー……」
 いろいろと経験豊富そうな雅也、ヴァーノン、夢姫に加え、愛情深そうな叔牙にレーヴとは対照的に、仙道・風(しゃべくり鎌鼬・e31694)は浮かぬ表情。病魔をさっさと倒したいのは山々だが、恋のこの字も知らぬ風には、その後のフォローと言われても……。
「私だって恋愛に関しては良くは分かりません。風さんだって女性を助けたい気持ちは同じですよね? でしたら、それをそのまま素直に伝えればいいと思います」
 悩む風に向けて、ポネシー・シンポル(情けは巡る・e23805)は柔らかい笑顔を浮かべて告げた。
「吾輩なりにやってみるでござる」
 考えるだけ無駄であると結論づけた風は、一先ず戦闘に集中。
「なんだ、だったら風もポネシーも、僕様の仲間だな!」
 風に向け、同じく恋愛経験皆無の獺祭・鴻(ゴーストライター・e27911)が、安心したように笑いかける。
 風とポネシーはそれに苦笑いを返すが、その笑みの中には、アラフォーと一緒にするなという意が込められていたことは、想像に難くはなかった。

「こちらです」
 看護婦さんに案内されて辿りついたのは、病院内でも比較的広めの個室であった。
 ノックをした後、ケルベロス達が個室の中へ入ると、
「ふぅっ……はっぁ……!」
 真っ赤な顔で苦しげに息を荒げ、胸もとを押さえる少女……ユウナがいた。
「……ぁ、ケルベ……ロスの……っ」
 ユウナは、ケルベロス達の姿を見るや、起き上がって挨拶をしようとする。
「大丈夫ですから、どうか楽にしてください!」
 レーヴは、そんなユウナに駆け寄ると、再びベッドに寝かせてやる。想像以上の苦しみ方に、ケルベロス達は急いだ方がいいと判断。すぐに準備を始める。
 叔牙とポネシーで、ユウナをすぐに移動できるようステレッチャーに乗せ、雅也が窓の前に、ヴァーノンが出入り口の前に陣取った。鴻、風、レーヴもそれぞれ配置につくと、
「(行きますよ?)」
 夢姫が、皆に目配せして、準備はいいか確認をとる。それに応えるため、全員が夢姫に頷く。
 夢姫は、激しく上下するユウナの胸元に手を翳すと、カッと目を見開いた。
「病魔――召喚!」


「……これが……?」
 姿を現した病魔は、見た目だけならば可憐な少女と言えなくもない。ユウナは、呆然とその姿を見上げていた。
 だが、やはり狂気を宿したその瞳は、人に害を及ぼすもの。
「ユウナを頼んだぞ!」
「了解、だよ」
 雅也の呼びかけに叔牙が応じると、叔牙はストレッチャーを押してユウナを病室の外へ避難させようとする。
「ユウナを返してッ!」
 そのユウナを自分の物であると主張し、病魔は後を追いかけようとする。しかし――。
「お主の相手は吾輩達でござるよ!」
 病魔の無防備な背中に向け、空の霊力を帯びた、風の疾風鎖鎌が襲い掛かる。
「そうですよ、私達を無視しないでください」
 次いで、夢姫は催眠効果のあるというラブラブアローを警戒し、前衛へ癒やしの歌を。
「ユウナもいなくなった事だし、楽しませてもらうぜ?」
 ユウナの前では見せなかったが、雅也の口元には抑えきれぬ笑み。初対峙の病魔に、不謹慎ながらワクワクしていたのだ。
「確かに、姿は可愛いが……」
 ついでに胸もあるなと、雅也は笑うが、無論容赦などするつもりはない。斬霊刀に雷を纏わせ、躊躇なく病魔を貫いた。
「むぅ、皆私にメロメロにしてあげる。ラブラブアロー♪」
 ケルベロス達に囲まれた病魔は、彼らを撃退しない限りユウナに再び取り付けないと判断したのか、ハート型の矢を射出する。
「ノジコちゃん、頼んだ!」
 鴻の指示を受け、ノジコちゃんが庇いに入る。幸運にも催眠の効果は発現せず、ノジコちゃんが予定通りに鴻へ祈りを捧げ、鴻は己に自己暗示を。
「やはり催眠は厄介ですね。かかった人から重点的に解除するのが一番、ですか」
 とはいえ、敵の攻撃は単体攻撃のみ。ポネシーは落ち着いて、まずはノジコちゃんの催眠を薬液の雨で癒やそうと試みた。レウムも、その意図を察して応援動画を流す。
「願いの力を俺に」
 折り鶴のドリームイーターの魂が封じられた弾丸。それを込めたヴァーノンのリボルバー銃の銃口が、病魔に狙いを定めていた。
 ――バンッ!
 一発の銃声と共に、美しい鶴の嘴を体現した弾薬は、一直線に病魔の胸元を穿つ。
「うっ!」
 プシャ! と、病魔が呻きと共に血を吐き出す。
「ユウナさんの元から早く出て行ってください」
 レーヴの無垢な瞳が、恋に狂った病魔の瞳を射貫く。喰らった魂を憑依させ、悪しき存在を討つために、レーヴは魔神へと変貌し力を蓄える。
「隙だらけだよッ!」
 そこへ、病魔は追尾の矢を放ってくる。だが、レーヴとてその程度は織り込み済み。鴻が庇いに入って矢を打ち落とし、
「プラレチ」
 レーヴがそう一言発すると、後方で控えるプラレチが、逆に病魔の隙をついて尻尾の輪を喰らわせた。

「ユウナさんは……看護婦さんに、預けて来たよ。病室から、できるだけ。離れるように、言っておいたから」
「それは良かった。叔牙くん、ご苦労さん」
 一仕事を終えて戻ってきた叔牙に、ヴァーノンが労いの言葉をかける。
「なら、後は病魔を倒すだけですね!」
「えぇ、そういう事ですね」
 夢姫とポネシーの視線が交錯する。同じメディック同士、やはり考えることは同じなのだろう。
「(私が敵を攻撃するので、ポネシーさんは回復をお願いします)」
「(えぇ、分かりました)」
 そういった意図を交わし合った二人。夢姫が黒色の魔力弾で病魔の羽を撃ち抜き、ポネシーが鴻に電気ショックを飛ばす。
 それに加えて、プリンが前衛の邪気を払っていく。
「今度こそ、ラブラブアロー♪」
 レウムが病魔の催眠攻撃を受け止めるが、十分なバッドステータス対策により、同士討ちのリスクは回避できていた。
「(バッドステータス対策は、大丈夫、だね)」
 その事を、合流した叔牙も感じ取っている。ゆえに、守護星座で仲間を守護するよりも、ユウナのため、一刻も早く病魔を撃破する事を優先。
「さて……どんな魂胆。あるのか……無いのか、知らないけれど。人の恋路、邪魔する輩は。早々に、退場して……頂きましょう」
「嫌だ! ユウナは私の、私のもの!」
 病魔が、叔牙に向けていくつもの矢を束ねた、巨大な矢を射る。迎撃のために叔牙が氷結の螺旋を放つと、遠距離に控える病魔諸共凍らせてしまう。
「そこでござる!」
 地を蹴り、壁を蹴り、風は動く度に凍傷ダメージを受ける病魔の背後に回る。病魔の死角に入った風は、影の如き斬撃で、忍者の如く音もなく病魔を切り裂いた。
「さぁ、そろそろ終わりにさせてもらうぞ?」
 雅也が、鞘から日本刀を抜く。抜かれた刀は、そのまま流れるように緩やかな弧を描きながら、病魔の白い肌を断つ。
「ぎゃああああああっっ!!」
 病魔は、悶え苦しみ血を噴き、悲鳴を上げた。
「これは、ユウナさんを避難させておいて良かったかもね」
「ああ、まったくだ。さすがにこんなのを見せるのは酷だったな」
 病魔とはいえ、ユウナに別のトラウマを発症させかねない。苦笑と安堵を浮かべるヴァーノンと鴻。
 向かってくるホームングアローをノジコちゃんに任せ、鴻の大地をも砕く強烈な一撃が、病魔の腹部へ深々と突き刺さる。
 同時に、ヴァーノンはトドメを刺すべく、体勢を低くしてリボルバー銃を構えた。
「では、ヴァーノン様、最後はお任せしましたよ?」
 レーヴは、ヴァーノンが狙いを定めやすくするため、病魔に電光石火の蹴りを放つ。
「ッッ!」
 しかし、その蹴りは間一髪、病魔に交わされてしまう。
 だが、それは誘導であった。
 ――バンッ!
 再び響く、一発の銃声。ヴァーノンのリボルバーからは、モクモクと煙が上がっており……。
 見事、頭部を打ち抜かれた病魔は、幻であったかのように消滅するのであった。

● 
「改めて初めまして、ケルベロスのレーヴと申します」
 ヒールが施された病室に戻ったユウナは、レーヴを筆頭に、ケルベロス達からの自己紹介を受けていた。
「もう苦しくはないですよね?」
「は、はい。えっと、ありがとうございました」
 夢姫の問いかけに、ユウナは何度も頭を下げる。顔色はよく、息も乱れてはいない。病魔が完全に消滅した何よりの証拠であった。
「ユウナが苦しくて辛かったのは、病魔ってヤツのせいだったんだ。でも、もう大丈夫だ。お医者様でも草津の湯でも治せない病でも、ケルベロスなら治せるんだぜ」
 雅也が、ユウナの苦しみの原因の説明をしながら、グッと親指を立てる。
「そうだったんですか」
 だが未だ、どことなくユウナの表情は冴えない。時折、もう苦しくないはずの胸を抑えるような仕草も見せていた。
「恐いですか?」
「……え?」
 ポネシーが、柔らかな微笑を浮かべて言う。すると、ユウナは少し迷ってから頷いた。
「今回はこのような事になってしまいましたが、今回のような苦しみは、恋以外にも起こ得ます」
 最も、今回は少し特殊ですけどね、ポネシーはそう微笑みながら……。
「でも、例え苦しい思いをしても、それだけではないのが恋だと私は考えます。好きな人の事を考えた時の、ドキドキする気持ち……貴女なら、私よりもずっと分かるはずですよ?」
「先輩……っ!」
 胸元に添えられたユウナの手が震える。先輩の顔を思い出して、『好き』だと伝えられる瞬間を想像して、あの幸福でもどかしい気持ちを思いだそうとしている。
「ユウナ様……恋する事を、恐れないでください」
 レーヴが、震えるユウナの手に、ソッと掌を重ねた。
「恋の病は、どなたでも発病してしまう病ではありましょう。でも、ポネシー様が仰るように、貴女が知っているように、素敵なことと存じております。何億と人は生きているのに、そのたった一人に恋焦がれ想いを抱くこと、人を大切に想うこと、愛しむ心、恋をする心を持つのは地球に住む私たちの特権とも存じます」
 恥ずかしながら、私はまだ恋の経験がないのです。レーヴは、頰を少し赤らめながら、
「だからこそ、人を恋しく想っている貴女を、羨ましく思います。どうか恐れないで、貴女の想いを、どうか大切に育んでください」
「ありがとう、レーヴさん、ポネシーさん」
 ユウナの震えは、いつのまにか、かなり収まっていた。だが、ふとそんなユウナの目に、部屋の隅でノジコちゃんと相談している鴻の背中が映る。ユウナに見られている事に気付いた鴻は、頭を掻きながら、
「あー……僕様言葉でうまく伝えるのは苦手なので、落ち着きそうな静かな曲でも一曲弾いておくわ。お嬢ちゃん、流行りのラブソングは嫌いかい?」
「音楽は、好き……です」
 恥ずかしそうにそう言うのであった。そして流れる、静かメロディーライン。人気歌手の歌ったラブソングをユウナは知っていたのか、自然と身体がリズムをとる。一方、鴻はノジコちゃんに歌もちゃんと歌えと叱られ、それだけは勘弁してくれと何度も頭を下げている。
「ふふっ」
 その心を癒やすメロディーとやりとりに、ユウナがクスリと笑う。
「やっぱりいいね、女の子の笑顔は。それは武器になるよ。うん、ユウナさんの笑顔は素敵だ」
「……あぅ」
 ふいにかけられたヴァーノンの褒め言葉に、ユウナはすっかり真っ赤だ。
「それにさ、食べ物だってすぐに食べられるようになるよ。手紙の答えも、勇気出して聞いておいで。頑張って書いたものなんだ、きっと気持ちは届くよ。何よりも、君の笑顔にかかれば男なんてイチコロだ。女の子の笑顔に弱いからね、男って」
 ヴァーノンの言葉に同意するように、雅也も頷く。きっと、恋人の事を考えているのだろう。
「これ見てみ、今年のバレンタインに、彼女から貰ったチョコ!」
「わぁ、可愛いですね!」
 誇らしげに雅也が見せるボンボンショコラの写真に、ユウナが歓声を上げる。
「告白した状況もユウナと似ててな、告白はオレからなんだけど、切っ掛けをくれたのは恋人なんだ。だから、ユウナには勇気を持って先輩の返事を聞いて欲しい!」
「はい!」
 ユウナが力強く頷き、雅也がよし! と笑う。
「辛くとも……その気持ち。捨てないで、下さい。恋する事で……かえって。心の痛みを、覚える事も……あります。恋を、拒絶されて。哀しい思い、抱いた事は……僕も、ありますから。それは、辛い事……です」
 叔牙の言葉は辿々しい。しかし、だからこそ、それが真剣な言葉なのだとユウナに伝わる。
「もし……貴女が、恋する気持ち。封じてしまったら……その事で、辛い思いを……抱く人。居るのでは、ないでしょうか?」
「はい、そうですね、忘れていました」
 恋愛は、一人ではできない。
「それに、身体の苦しみ、痛みは……僕達が、何度でも。癒してみせます」
「その通りじゃ! 病魔相手なら、吾輩達がいくらでも倒してみせるでござるよ! それに、どうせなら、倒れる前に自分から言うようにアグレッシブな恋をしてみたらどうでござろうか! 攻撃は最大の防御でござるよ!!」
 どのタイミングで入っていこうか迷っていた風が、叔牙に便乗して声を上げる。何度病魔に襲われようとも、必ず自分達が助けるという風の言葉は、実に力強い。
 その時、コンコンと病室のドアがノックされる。
「ユウナを心配した先輩じゃないか?」
 そう言う雅也に、ユウナは真っ赤になってアワアワし始める。
 もう本当にそうであったら邪魔になる。ケルベロス達は、窓から退散することにして、
「ユウナさんの先輩が好きな気持ちを大事にしてくださいね? 先輩もユウナさんに好意を持ってるのなら大丈夫頑張って下さいっ! 女の勘を信じてください!」
 恋の先輩からのアドバイスですっ! そうユウナの耳元で囁いて、夢姫達が退室していく。
 外に出た叔牙は病室の方を振り返り、
「僕には、多分……恋して貰う、資格。無いのだろうけど……彼女は、幸せな……恋が。出来ると、良いね」
 そうエールを送るのであった。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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