真性百合喫茶へようこそ

作者:ハル


 路地裏の、とある店の内装は、まるで教会のようだった。だが、ただの教会ではない。ピンクを基調とした華やかで可愛い色使い。そして、所々に学校の教室を思い起こされるアイテムが設置されていた。
「……百合喫茶、いいと思ったんだけどな~」
 学校で使うような席と机に腰掛けて頭を抱えるのは、恐らくは三十前後だと思われる妙齢の女性。
「内装だって、カトリック系の女子校をイメージしていろいろ工夫したんだけどなー。やっぱりアレかな? リアリティーを求めて、ガチの女の子達をウエイターに雇ったのがやりすぎだったのかな……」
 ガチの子を揃えたために、女性客には気合いを入れて対応するも、男性客に対しては塩対応だったのが問題だったのかもしれない。事実――女性の元には、そういった内容の苦情がきていた。
「比率としては女性客よりも、男性客の方が多かったから、客商売だしそこは痛かった……わね。女性客が入るには、やっぱりこの内装はやりすぎだったかも……」
 ふつふつと、店長の内心には後悔が沸き上がっているようだ。暗い店内で、店長の頰を涙が伝う。
 もっとこうしていれば良かった。考えが甘かった。
 何よりも――。
「女の子達に告白されるなんて思わなかった。それも、全員に……」
 最後は修羅場で、結局誰一人残らなかった。
「ふふふ、面白い人ね。私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『後悔』を奪わせてもらうわ」
 そんな、後悔に沈む店長の耳に、その声は届いた。
 え? と、振り返る暇も無い。気付けば店長の胸は、第十の魔女・ゲリュオンによって、貫かれていたのだった。


「店長さん、きっとすごい美人なんでしょうね」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、興味津々な様子で言う。
「百合美少女を集めた喫茶店を始めたものの、様々な要因が重なってお店が潰れてしまい、後悔している女性の感情がドリームイーターに奪われてしまう事件が起こりました」
 大元のドリームイーター、第十の魔女・ゲリュオンはすでに逃走している。だが、奪われた『後悔』を元に生まれた、百合美少女店員に模したドリームイーターは、何食わぬ顔で店舗の営業を再開させている。
「お願いします、ドリームイーターを倒して下さい。倒す事さえできれば、女性も目を覚ましてくれるはずです」
 セリカは、敵の詳細な資料をケルベロスに配る。
「ドリームイーターとはいえ、ガチな百合に関する後悔から生まれているので、必然的に攻撃手段……といっていいのか分かりませんが、そういった方法をとってきます。女性へは、抱きついてのキス……とか、過剰なスキンシップをとってきます。逆に男性に関しては、汚物を見るような目で、とにかくナイフで斬り掛かって来るようです。要するに、アレですね、クレイジーサイコ……というやつです」
 ドリームイーターに、配下はいないようだ。また、店内にケルベロス以外の客は存在しないので、周囲を気にする事無くドリームイーターに集中できるだろう。
「直接ドリームイーターを急襲する事も可能ですが、お客さんとして入店し、サービスを受け、かつ受けたサービスを心から楽しむ事ができれば、ドリームイーターは満足して戦闘力が低くなるようです」
 ドリームイーターを満足させる事ができれば、被害者の男性の中の後悔は薄れ、意識を取り戻した際に前向きになる効果もあるようだ。
「ドリームイーターは、お客さんを『お姉様』と呼ぶようですので、そう振る舞ってあげるといいかもしれません。オムライスを注文すれば、あーん、もしてくれるそうですよ。ドリームイーターとはいえ、外見は超美少女で制服の学生服も可愛いので、写真をとったりも楽しそうですね。男性は……ええ、はい……頑張ってください!」
 なんにせよ、『心から楽しむ』というのが大事だ。
「後悔がなければ、反省もできません! どうか取り戻してあげてください。あ、あと、女性でファーストキスがまだな人は、気を付けてくださいねっ! スイートなんて、甘いものじゃないですよ、きっと!」


参加者
ミツキ・キサラギ(癒し系お稲荷さん・e02213)
アイリス・ゴールド(愛と正義の小悪魔・e04481)
九条・櫻子(地球人の刀剣士・e05690)
アンナ・トーデストリープ(煌剣の門・e24510)
植田・碧(紅の癒し・e27093)
玄乃・こころ(夢喰狩人・e28168)
佐竹・駒(純白天使・e29235)
ユリイカ・ミュステリオ(生徒会長・e30957)

■リプレイ


「中々雰囲気のいい内装だね。我が校に少し似ているかな……?」
「そういえば、そんな気もしますわね、ユリイカ先輩」
 裏路地にある百合喫茶。そのドアを開けたユリイカ・ミュステリオ(生徒会長・e30957)と九条・櫻子(地球人の刀剣士・e05690)を出迎えたのは、学校と教会を掛け合わせたような内装であった。
「それにしても店長さん、全員から告白されるなんてよっぽど美人だったのかしらね? それとも内面かしら……?」
「それも気になるけど、ボクとしてはどうやってガチな女の子だけを集めたのかの方が気になるよ」
 植田・碧(紅の癒し・e27093)の疑問は、いずれドリームイーターが現れれば明かされるであろう。なにせ、ドリームイーターの外見は、本物の店長さんの若い頃だという話だ。碧に応じたアイリス・ゴールド(愛と正義の小悪魔・e04481)の興味も最もであり、アイリスは内心ではその技を伝授してもらいたがっているのかもしれない。
「拘りすぎたのがいけなかったのでしょうね。せめてどちらでも大丈夫な方を揃えていれば……」
 佐竹・駒(純白天使・e29235)がふぅー、と息を吐き出しながら呟くが、過ぎたるは及ばざるがごとしとも言う。ともかく、ドリームイーターを満足させる事が解決までの一番の近道だ。
「(爪オッケー、下着オッケー、シャワーも浴びました。完璧です!)」
 その点で言えば、このメンバーの中でも一二を争う程に気合いを入れているのが、アンナ・トーデストリープ(煌剣の門・e24510)である。美少女とのスキンシップにウキウキとしているのが、目を閉じていてもビンビンと伝わってくる。
 その時、軽い足音が、ケルベロス達の耳に届いた。
「ごきげんよう姉様方、歓迎致しますわ」
 現れたチェックの学生服を身に纏った少女は、ドリームイーターである事を忘れそうな程の美少女であり、腰の辺りまで伸ばされた黒髪に、嫋やかな所作が洋風の店内で映えていた。
「ごきげんよう」
 ドリームイーターの挨拶に対し、玄乃・こころ(夢喰狩人・e28168)が返す。慣れない言葉使いに、こころはチラリと「(こんな感じでよろしくて?)」と言いたげに仲間へ振り返ると、集まるグッジョブの視線にホッと頷いた。
「では、お姉様方、お茶にいたしましょう。どうぞ、こちらに――」
 自然な流れで、ドリームイーターはケルベロス達を席に案内しようとする。だが、そうしようとして、ふと目が止まった。
「(……気付かれてないよな? ナイフを刺されるのは嫌だぞ……)」
 ドリームイーターの視線が向けられたのは、ミツキ・キサラギ(癒し系お稲荷さん・e02213)。中学時代の制服を着用し、なんと髪型はお嬢様風の縦ロール。所作も問題なしで、とにかく女の子にしか見えない。
 だが、男だ!
「な、なんですの?」
 口調もお嬢様風のミツキ。幾分設定を盛り込みすぎのような気もするが、ともかくドリームイーターはミツキを凝視していた。そのまま、十秒、二十秒が経過し、ミツキの背筋にも冷たい汗が流れるが……。
「お待たせして申し訳ありません、どうぞこちらにお姉様」
 ようやく再起動したドリームイーターは、ミツキに向けて『お姉様』と改めて呼びかけると、案内を再開する。
 その黒真珠のような瞳は、きっと考えることをやめていた。


「駒お姉様、あーん、ですわ」
「あ、あーん」
 ケーキセットにオムライスをそれぞれ注文した彼女達は、さっそくそのサービスを全力で受けていた。口元に運ばれたオムライスを雛鳥のように口に含んだ駒は、周囲から視線が集中していることもあってか、顔を真っ赤にしている。
「こころお姉様にもあーんしてよろしいですか?」
「ええ、よくってよ」
 最初こそぎこちなかったものの、こころの振る舞いも様になってきている。なによりも、ドリームイーターに奉仕されながら優雅に紅茶を啜るゴスロリ服姿というものが、非常にこの空間にマッチしているのだ。
「加奈子、次は私もお願いしていいですか?」
「ええ、もちろんです。アンナお姉様」
 表面上はニコニコしつつも、待ちきれないといった雰囲気のアンナがドリームイーター――加奈子に声をかけると、彼女は楚々とした様子でオムライスをアンナにあーんをする。
「アンナお姉様、良い香りがします」
 その際に、うっとりと加奈子が告げた言葉に、アンナの微笑が僅かに深まった。
「ミツキく……ちゃん。私達もお願いしましょ?」
「……え、ええ、そうですわね」
 碧が思わず『君』と言ってしまいそうになるも、考える事をやめた加奈子に一切の動揺はない。
「はい、碧お姉様、ミツキお姉様、あーんです」
「ケーキも美味しそう! あーん」
「うっ、あーん」
 純粋に状況を楽しむ碧に、恥ずかしがるミツキ。だが、ケーキ自体の味は、十分に満足いくもので、二人の顔が綻ぶ。
「一つ聞きたいんだけどさ、ポッキーゲームとかないのかね?」
 ふいに、オムライスをふーふーからのあーんをしてもらったアイリスが、下心満載の表情と口調で言う。その目は、もちろん普通のポッキーゲームではなく、特別サービス付きのものな! そう告げていた。
「もちろんございます」
 対する加奈子は、これまた当然のように頷くと、いそいそとポッキーを持って来て、それを口に咥える。
「良い子だね、可愛い可愛い子猫ちゃん!」
 アイリスは、これまた迷うことなくガッと加奈子の両肩を掴むと、壁に押しつけるようにして反対側を咥えた。
「(百合小説や漫画を読んだり、話を聞いた事はありますが!)」
 唐突に始まったポッキーゲームに、櫻子はドキドキしたがら両手で顔を覆うも、指の隙間から一部始終をバッチリ目撃している。
 ポリポリ……ポリポリ……。
 店内に、ポッキを食べる音だけが嫌に大きく響く。異様な緊張感の中、ポッキーは途中で折れることなく、加奈子とアイリスの唇が間近となった。
 加奈子とアイリスの目が合う。そして、そのまま二人の唇は――。

「んんっ、ふぁ!」
 ポッキーゲームに何故か巻き込まれた櫻子の口から、甘い声が漏れた。ポッキーを咥えながら、加奈子にさり気なくボディータッチをされていたのだ。だが、その弾みでポッキーは折れ、ゲームは終了。櫻子は、何故か残念そうな表情を浮かべている。
「ユリイカお姉様も、是非」
 そして、今まで皆の様子を楽しそうに眺めていたユリイカがオムライスを食べさせてもらう番となったが……。
「美味しいオムライスをありがとう。だが、すまない。私は生徒会長という立場上、皆に平等でなくてはならないんだ。だから、食べさせて貰うのは遠慮させてもらうよ」
「……そうですか」
 ユリイカが申し訳なさそうにその申し出を断ると、加奈子も残念そうにする。
「折角ですし、皆でお写真なんて如何かしら?」
 暗くなった空気を打ち消すように、こころが提案をした。
「いいわね、そうしましょうよ」
 それに乗っかるように、碧が言うと、皆も乗り気なようで撮影場所に向かう。

「タイが曲がっていてよ」
 そこは、教会を模した店内の壁の前。カメラのタイマーをセットする加奈子のタイをアンナが整えてあげている。鉄板ネタに、アンナも加奈子も満足げだ。
 そして、タイマーセットを終え、加奈子が合流した所で、
「もっと百合っぽい雰囲気出さないとね!」
 アイリスが、近くに居た駒、こころ、碧、ミツキに抱きついた。
「もう、そんなに強く抱きしめないでくださいよー!」
「そうした方がいいなら、よろしいですわ」
「しょうがないわねー!」
「ちょっ、ダメだって! い、いや、ダメですわ~!」
 なんだかんだと、駒もこころも碧も乗り気で、ミツキだけが一人慌てている。ミツキの性別を知る仲間も、誰も意識していないのが少し悲しい。
「そういう事なら!」
 アイリスに便乗し、アンナも櫻子、ユリイカ、加奈子に抱きつく。
「そういう事なら。櫻子くん、いいだろうか?」
「も、もちろんですわ!」
 アンナとユリイカに挟まれた櫻子は、非常に幸せそうである。そして、言うまでも無く、加奈子もまた……。
 やがて撮影が終了した頃、ユリイカが加奈子に声をかける。
「さっきは断ってしまって悪かった。変わりと言ってはなんだが、もう一枚、今度は二人で写真を撮ってくれるかな?」
 ユリイカが、笑顔で加奈子の手を取る。満面の笑みを浮かべた二人が写真に収まったその瞬間、加奈子の中で何かが弾けた感覚をユリイカは感じ取った。
 そして――。
「お別れの時間です、お姉様方」
 加奈子……いやドリームイーターは、酷く切なげな表情で、そう告げるのであった。


「この追跡を逃れられるかしら?」
 碧の撃ち出した変幻自在の弾丸が、ドリームイーターに撃ち込まれる。
「敵はポジション効果の恩恵を受けられていません! 攻めましょう!」
「了解だ、ちぇりおー!」
 碧に続いて、鞘から日本刀を抜いた櫻子が、『古の龍の眠りを解き、その力を解放する。桜龍よ、我と共に全てを殲滅せよ』と、古龍を召喚し桜吹雪と共にドリームイーターを貫くと、ミツキもどこぞのヒロインと同じ間違え方をしたかけ声で、降魔の一撃を放つ。
「お姉様方、どうか思い残すことのないように!」
 対するドリームイーターは、本性を現そうともその性質までは変わらない。
「こ、こっちに来ないでください! 古の竜の幻影よ、全てを焼き払え!」
 掌をワキワキとさせつつ、ドリームイーターが狙いを定めたのは駒である。反撃のために駒が放った「ドラゴンの幻影」をモノともせずに、ドリームイーターは襲い掛かってくる。
「やらせませんわ……じゃない、やらせないわ」
 だが、駒を庇うために身を躍らせたこころによって、ドリームーイーターの狙いは逸れる。しかし、当然ながら変わりにこころがセクハラを受ける事となり……。
「……っふぁ……触らないで。伽藍開封、武想顕現」
 身体を這うドリームイーターの手に、こころは眉根を寄せる。そんなこころからドリームイーターを引き離すべく、エクトプラズマで武器を生み出したガランが斬りかかった。そして、ようやく解放されたこころは、前衛に守護星座による守護を。
「よくもこころを! 目には目を、歯には歯をだよ!」
「加奈子には、どうやらお仕置きが必要みたいですね」
 ガランに押されて後退したドリームイーターに、アイリス&アンナというセクハラコンビが襲い掛かる。アイリスは棒読みで、アンナに至っては肌と肌の触れ合いのために、普段の鎧装を身に纏っていない。完全にヤル気だ。
「望む所です、アイリスお姉様、アンナお姉様!」
 だが、ヤル気なのはドリームイーターも一緒。
「Trick with Treat☆」
 まず始めに、ラッキースケベ的な展開で、お菓子を口に含んだアイリスのキスが炸裂する。そのまま、お菓子を口移しするアイリス。しかし、ドリームイーターも負けじとスイートどころではないキスで応戦。キスとキスとの激しいぶつかり合い!
「自分が標的でなくてよかった……」
 駒などは、アイリスとドリームイーターどちらにも向けて、そう心から安堵している。
「仲間外れにしないで。貴女のも触ってあげます。さぁ、可愛い声を聞かせて?」
 キスに夢中になっているドリームイーターの背後に回ったアンナは、キスで恍惚とするその身体を「聖なる左手」で引き寄せると「闇の右手」で可愛がる。
「ああああっ!」
 ドリームイーターが頤を上げて、思わず声を漏らした。
「……ミュステリオさん、ゴールドさんをヒールしてあげて……一応」
「ああ、分かっているよ、フフ」
 ダメージを受けた割に嬉しそうなアイリスをヒールしてもらうため、碧が合図を出す。合図を受けたユリイカは、ウインクで応えながらも、その口元に浮かんだ苦笑を隠しきれずにいるのであった。

「百合の花はお好きかな?」
 ユリイカが、百合の花を咲かせた攻性植物を鞭のようにしならせてドリームイーターを締め上げる。
「もらったわ!」
 そこへ、碧の電光石火の蹴りが突き刺さった。
「そ、そんないきなり! あ、ああっ!」
 起き上がったドリームイーターは、一隙をついて櫻子にキスを仕掛ける。抱きつかれた櫻子は、その小さな唇にて、マシュマロのような唇と生々しく侵入する舌に目を見開く。
「も、もう勘弁して下さい! こ、こんな破廉恥な事、許せませんわ」
 顔を真っ赤にした櫻子は、ドリームイーターを振り払うと、雷を帯びた刀で突きを繰り出す。
「あー、もう動きにくい!」
 動く度にフワフワと頼りないスカートに、ミツキは軽く悪態をつきながら、
「(でも、ナイフで刺されなくて良かった。……あと、俺にキスはまだか?)」
 若干の安堵と、多大な期待を込めて、ミツキが旋刃脚を放つ。
「全ての時を凍てつかせる弾丸よ!」
 順調にバッドステータスを重ね、弱体化したドリームイーターの動きが急激に鈍り始める。駒はその隙を見逃さず、時空凍結弾を射撃し、さらなるダメージソースとする。
「休んでいる暇はないよ、レッツ触手プレイ♪」
「口の中の誰も触ったことのない所をくすぐってあげましょう」
 アイリスがウネウネの攻勢植物でドリームイーターを拘束すると、アンナが動けないドリームイーターの口に指一本を突き入れて秘孔を突く。
 すると、ドリームイーターの身体がビクンと大きく痙攣し、硬直した。
「ガラン、仕舞いよ」
 静止したドリームイーターに向けて、こころが巨大な大砲へと変型したガランの銃口を向ける。
「開砲……断滅!」
 そして、そのこころの命と共に、エクトプラズムの奔流がドリームイーターを飲み込むのであった。


「店長は、店員達すべてのお姉様になる覚悟を決めるべきだよ!」
「女の子全員を愛せる度量を持てれば、改善はできるはずです」
 目覚めた店長は、朗々と語るアイリスとアンナの過激な思想に押されっぱなしで苦笑いを浮かべていた。だが、当然ながらその笑顔には、加奈子の面影がある。心のモヤが晴れた店長は、次第に苦笑いから明るく笑う事ができるようになり……。
「その笑顔よ! こだわりも大事だけれど、今度は皆が笑顔になれるお店にして欲しいわ」
 碧の一言で、店長はハッとする。
「いいね、他に店員にも色んなタイプの女の子を集めて、仲良し同士ペアで接客させるようにしてみたらどうかな」
「なるほど、カップル売りですねわ! でも、本当に百合って素敵だなと思いましたわ。お友達にも紹介したいくらいに」
「まぁ、ちょっと恥ずかしかったけどな……」
 碧に続いて、ユリイカと櫻子も、諦めずに頑張って欲しいと声援を送っている。ミツキも、恥ずかしがりながら「いい店だと思う」そう素直に告げた。
 ただ、ミツキに一つ心残りがあるならば、
「(ファーストキスは、まだお預けだな)」
 その一点。願わくば、ファーストキスの相手が女性である事を祈るばかりである。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年2月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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