復讐のリア充スレイヤー

作者:雷紋寺音弥

●絶望転生
 薄暗く、先の見えない殺風景な部屋。周囲の様子を窺うことさえ難しい闇の中に、狂気を湛えた呼び声が響く。
「喜びなさい、我が息子」
 台の上に寝かされていた青年が目を開くと、そこにあったのは銀色の仮面で顔を覆い、黒いマントを纏った男の姿だった。
「ドラゴン因子を植えつけられたことで、お前はドラグナーの力を得た。しかし、未だにドラグナーとしては不完全な状態であり、いずれ死亡するだろう」
 それを回避し、完全なドラグナ―になるためには、相応の生贄が必要だと男は告げる。即ち、与えられたドラグナ―の力を振るい、多くの人間を殺してグラビティ・チェインを奪い取れと。
「……ああ、解ったよ」
 しばらく呆然としていた青年は、やがてゆっくりと起き上がると、仮面の男に向かって頷いた。
「どのみち、俺の人生なんて、誰にも愛されずに朽ちて行くだけだったからな。未練なんてとっくに捨てたけど……俺を差し置いて幸せになってる連中に目にもの見せてやれるなら、願ってもないことさ」
 淀んだ瞳に浮かぶ確かな殺意。そんな青年の姿を見た仮面の男、竜技師アウルは、実に満足そうな笑みを浮かべて青年を部屋から送り出した。

●生まれ変わった男
「召集に応じてくれ、感謝する。ドラグナー『竜技師アウル』によってドラゴン因子を移植され、新たなドラグナーとなった人間が、事件を起こそうとしているようだ」
 もっとも、この新たなドラグナーは未完成の状態であると、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)はケルベロス達に告げる。故に、完全なドラグナーとなるために必要な大量のグラビティ・チェインを欲し、ドラグナー化する前に惨めな思いをさせられた復讐と称して、人々を無差別に殺戮しようとしているのだとも。
「今回、お前達に倒してもらいたいドラグナーは1体のみだ。出現場所は、買い物客で賑わう繁華街。そこで、バレンタインムードに浮かれる者達を皆殺しにしようと企んでいる」
 クロートの話では、ドラグナーにされた人間は、男女問わず恋人のいる者に対して強い恨みの感情を抱いているとのことだった。なんでも、年齢=彼女いない歴の人間で、ありとあらゆる方法を試して出会いの場を増やしたり自己研鑽したりしたが全くモテず、挙句の果てには意中の女性から、遊ぶだけ遊ばれてこっぴどくフラれたらしい。
 自分は誰からも愛してもらえない。ならば、せめて世の中のリア充どもを皆殺しにしてやろう。そんな歪んだ結論へと至り、『竜技師アウル』の実験へ身を捧げたのだとか。
「幸いなのは、敵の力が未完成で、ドラゴンに変身する力を持たないことだな。だが、それでも油断は禁物だぜ。こいつはトカゲとカエルに変身するファミリアロッドを1本ずつ持っていて、相手を撹乱するような戦い方を得意とするみたいだからな」
 具体的にはファミリアシュート、ファイアーボール、そしてミラージュキマイラといった技を使用して来る。立ち回りを誤れば最後、こちらが火達磨にされたまま、同士討ちをさせられる危険性もある。
「人間、あまりにも失敗が続くと、学ぶことさえ放棄して無力感に囚われるようだな。だが、それが理不尽で無差別な復讐を正当化する理由にはならないはずだ」
 バレンタインデーの近づく最中、罪もなき人々の涙は見たくない。そう言って、クロートは改めて、ケルベロス達に依頼した。


参加者
暁星・輝凛(獅子座の斬翔騎士・e00443)
椏古鵺・笙月(黄昏ト蒼ノ銀晶麗龍・e00768)
ディバイド・エッジ(金剛破斬・e01263)
ミセリア・アンゲルス(オラトリオの自宅警備員・e02700)
西村・正夫(週刊中年凡夫・e05577)
志藤・巌(壊し屋・e10136)
箱島・キサラ(チェイサー・e15354)
葵原・風流(蒼翠の四宝刀・e28315)

■リプレイ

●リア充、殲滅すべし!
 冬の風が、未だ残る繁華街。だが、肌を刺す冷たい空気とは反対に、街を覆う雰囲気は暖かい。
 道を行き交う恋人達は、その誰もが甘いムードに包まれている。家路を急ぐ親子連れも、どこか嬉しそうな顔をしている者が多い。いつもは気恥ずかしくて言うことのできない、大黒柱への労いの言葉。それを臆することなく言える季節になったことが、彼女達の心に温かみを与えている。
「そういえば、バレンタインなのですね。デウスエクス退治や剣の修業ですっかり忘れていた……というより、全然気にしていませんでした」
 道を行き交う人々の雑踏に目を向けながら、葵原・風流(蒼翠の四宝刀・e28315)は思い出したようにして呟いた。
 見れば、他にも随所にスタンバイした仲間達が、それぞれにリア充を演じている。街を行き交う人々からすれば何の変哲もない当たり前の光景。もっとも、そちらの方が囮としては、何かと重宝するもので。
「えっと……話したいことがあって……」
 携帯電話を片手に、暁星・輝凛(獅子座の斬翔騎士・e00443)は何やら言葉を選びつつ通話するフリを。目を閉じ、長い睫毛を震わせて深呼吸した後に、意を決した様子で電話越しに叫んだ。
「す、好きですっ……! 僕と、付き合ってくださいっ!!」
 どこからどう見ても、愛の告白である。しかも、その後の彼の様子を見る限り、満更でもない返事がもらえた模様。無論、これは単なる独り芝居のため、実際は少々照れ臭く、寂しい気持ちにさせられる。だが、それを決して表に出さないのが、演技派子役の成せる業。
「年齢=彼女いない暦の人はいませんか~?」
 そんな中、ミセリア・アンゲルス(オラトリオの自宅警備員・e02700)は敢えて堂々と敵を挑発するような問い掛けをしつつ、繁華街の上空を飛び回っていた。
 まあ、実際には敵が引っ掛かるよりも先に、リアルでモテない男達の心をダイレクトに抉りまくっていたようだが、それはそれ。
「……待ったかしら!?」
 こうなれば、いっそのこと堂々と見せつけてやろうと、椏古鵺・笙月(黄昏ト蒼ノ銀晶麗龍・e00768)が片手を振りながら仲間達の下へ駆け寄った時だった。
「死ねよ、てめぇら……」
 突然、地の底から震えるような呟きと共に、巨大な火球が笙月達の下へと飛来した。
「……ッ! 現れやがったか!」
 片腕で熱気から顔を庇いつつも、志藤・巌(壊し屋・e10136)は雑踏の中から現れた青年の姿を睨み付けた。
 目元を覆うように深々と被られたパーカーのフード。酷い猫背で、こちらからは顔の上半分が満足に見えない。服装は地味で、どこにでもいそうな青年ではあるが……しかし、その手に握られた二振りの杖は、紛れもない魔性の武具であり。
「金剛破斬のディバイド・エッジ、ここに見参! 人々には傷一つつけさせぬ!」
 次なる一撃が放たれるよりも先に、ディバイド・エッジ(金剛破斬・e01263)が人々の盾になりつつ高らかに告げた。その間にも、逃げ惑う人々を掻き分けながら、箱島・キサラ(チェイサー・e15354)と西村・正夫(週刊中年凡夫・e05577)もまた、不完全なドラグナーと化した青年を取り囲み。
「ただのモテない人を馬鹿にする気はありませんけど、デウスエクス化して的外れの怨嗟を撒き散らす気なら話は別ですわ」
「誰にも愛されず、ってねぇ? 親がいるでしょうに、親が。親ほど無条件に愛してくれる存在はこの世に他に居ませんよ? それを、恋だのバレンタインがどうのと尻の殻も取れてないヒヨコの話で、愛されないのどうのと……何言ってるんでしょうね、この人」
 それぞれ、真っ向から正論をぶつけ、青年の矛先を街の人々から自分達へと向けさせる。
「なんだよ、お前達……。俺の邪魔をするつもりなのか? だったら……」
 まずは、そちらから先に片付けてやる。そう、青年が告げたところで、ケルベロス達もまた武器を片手に青年のことを取り囲んだ。
 同情こそすれど、話し合いの余地はない。冬の空気が舞い降りた繁華街。愛に飢え、人であることを捨てた青年と、人々を守るべく降臨した地獄の番犬達との戦いが幕を開けた。

●愛の渇望
 生まれてこの方、誰とも付き合ったことがない。好意を寄せた相手には悉く拒絶され、それでも負けずに自己研鑽した挙句の結果が、女に弄ばれて捨てられただけ。
 生い立ちだけで見れば、十分に哀れむだけの余地はあった。が、それでも、人であることを辞めてしまった以上、既に彼を救う手立ては存在せず。だからこそ、ケルベロス達も心を鬼にして、攻撃の手を休めなかった。
「あなた様ざんしかね? モテないからとリア充爆発とほざく輩は?」
 微笑を湛え、敢えて挑発するように尋ねる笙月。それに対し青年は、ぼそぼそと小さな声で反論するが。
「うるせぇよ……。俺だって、別に努力しなかったわけじゃ……」
「くだらないわ!」
 台詞は最後まで紡がせない。一瞥するように言葉を遮り、笙月は自らの声色を野太いものに変えると、決定的な事実を叩き付けた。
「ふふ、いいこと教えてあげるわ……。私こう見えて……一児の父親なのヨ? 羨ましいでしょ? こんな私でも子供が居るのヨ。なのに、どんな研鑽しても根本が腐っているあなたは無理ね」
 そう言いながら、自らは幻影を纏って分身氏し、敵を撹乱する術に出る。
「てめぇ……俺の根元が……腐っているだとぉ!?」
 今までの努力は全て無駄だった。それは、単にモテなかったという事実以上に、青年の心を深く抉る厳しい現実。しかし、それでもやはり、何の罪もない人に当たり散らし、その命を奪ってよいという理由にはならず。
「自分がモテないから人に当たり散らすとか、カッコ悪すぎるよ!」
 グラビティ・チェインを圧縮して光剣に変え、輝凛は自身の周囲へ放出して行く。放たれた刃は変幻自在の軌道を描き、敵を斬り裂く無情の剣。
「舞い集え……其れは闇夜を斬り裂く光!」
 明けない夜は存在しない。出口のないトンネルなどありえない。絶望の闇を斬り開く光の乱舞。その光と同じ希望を、目の前の青年が少しでも忘れることがなければ、このようなことにはならなかったのに。
「そもそも、愛を語るなら見返りを求めず、尽くしきる覚悟と言うものが必要ですよ。少なくとも、私が娘や妻に掛けた愛情はそういうものだったし、見返りのなさも報われなさも、誇らしくはありましたよ、私は」
 傷口を押さえて立ち上がった青年を、正夫が降魔の一撃で殴り飛ばした。
 愛する者を守りたい。そのための力を得たが故に、愛する者から見限られた。そんな経験を持つ正夫からすれば、目の前の青年は身勝手な自己愛に溺れているだけの存在にしか見えなかった。
「見返りを求めるな、だとぉ……? それなら、なんで俺の周りにいた女どもは、どいちもこいつも、俺に見返りばっかり求めたやがったんだ! なんで、女どもなら許されて、俺だけが許されねぇんだよぉっ!」
 もっとも、そんな正夫の言葉さえも、今の青年の心には届かない。
 対等に愛されたい。努力に見合う結果が欲しい。それは、確かにそうなのだろうが……その感情を剥き出しにし、自ら相手に求めることは、決して格好の良いものではない。
「このしみったれめ。女々しいったらねェぜ!」
 そんなことだから、どんな女にも相手にされないのだ。大剣を大振りに構え、巌が真正面から叩きつける。恋愛願望を歪んだ方向へ拗らせた挙句、人の身を捨ててしまった青年への天誅とばかりに。
「リア充スレイヤーとは、何とも悲しい存在で御座るなぁ……」
 顔面から豪快に舗装道路へとめり込んだ青年へ、続けてディバイドが斬り付けた。非物質化した刃が斬り捨てるのは、青年の肉体ではなく歪んだ精神。魂を毒する一撃は、闇に淀んだ青年の心を、徐々にだが確実に蝕み始め。
「消火は、こちらへお任せを。皆さんは、敵の撃破に集中してください」
 風流の掲げた長剣が、戦場に星辰の聖域を広げて行く。その光は仲間達の身体に纏わりついた炎を振り払い、傷口さえも修復し。
「異性から相手にされないってどんな気分なのかしら? わたくし、モテないなどという経験がないものですから、年齢=恋人いない歴の貴方にお聞きしてみたくって」
 後方から一瞬の内に間合いを詰め、キサラが青年の耳元で呟くように問う。瞬間、青年が怒りに任せて吠えようとしたところで、その脇腹を擦れ違い様に光の剣で斬り付けた。
「愛ゆえに、苦しんだり悲しんだりしちゃったの~?」
 同じくミセリアもまた、ドラグナーと化した青年に問い掛ける。もっとも、最初からまともな答えが返ってくることなど期待してはいない。
「ならば、わたしは愛のために戦う~? でも、愛って何だろう~?」
 自問自答しつつ、チェーンソー剣で更に傷口を深く抉って行く。
 愛することは躊躇わないこと。ならば、こちらも躊躇わず攻撃するのが、愛のために戦うということになると信じて。
「畜生……。どいつも、こいつも、最後まで俺の邪魔をしやがってぇ……」
 破れたパーカーを脱ぎ捨てて、青年は自身の顔を片手で覆いながら立ち上がる。指の隙間から覗く二つの瞳。そこに湛えられているのは、紛れもない淀んだ狂気の色。
「うざってぇんだよ……何もかもなぁっ!!」
 左手に握った杖をトカゲへと変えて、青年は弾丸のように発射する。鋭い牙を剥き出しにして、魔力を込められた醜い爬虫類が、ケルベロス達へと襲い掛かった。

●心の器
 人が、人を好きになる理由はなんだろうか。それは、時に容姿であり、時に経済力であるかもしれない。
 だが、それ以上に大切なのは、やはり心根の部分だろう。ドラグナーと化した青年も、自己研鑽は続けていたのかもしれない。しかし、いくらそれで外面ばかりを取り繕っても、中身で幻滅されれば全ては無意味だ。
「クソどもがぁっ! てめぇら全員、こいつの餌にしてやるぜぇっ!」
 もはや、呟くことさえもせず、青年は怒りの感情のままに二匹のファミリアを融合させた。
(「トカゲにカエル? なんともねっちこい性格のようざんしな……」)
 出現したキメラ状態の化け物を前に、思わず嫌悪感を露わにする笙月。
 あれは、青年の心の具象だ。そう思わずにはいられない程、目の前の怪物は醜悪な気を放っている。
 トカゲの胴に、カエルの頭。半透明の幻影合成獣は、腐った野菜のような吐息を吐き出しながら、粘液を撒き散らして巌へと襲い掛かるが。
「そうはさせぬ! この場は、金剛破斬に任されよ!」
 すかさず割り込んだディバイドが、幻影の巨体を真正面から受け止めた。
「下らない……実に下らないざんしな。どれだけ研鑽を重ねても、最後に決め手となるのは人間性……つまり、相手を思いやる想いざんし」
 心の中に怪物を宿していたからこそ、その域に到達できなかった。私流に、だが的確な真実を突いて、笙月は変形させた如意棒で青年の顔面を殴り飛ばし。
「もう、勝負は見えているはずだよ。さあ、言うんだ! 竜技師アウル……彼がどこにいるのかを」
「へっ……知るかよ! だいたい、なんで俺がそんなことを、てめぇらに教えなけりゃならねぇんだ?」
 体勢を崩したところに放たれた輝凛の蹴りを、青年は片手で強引に受け止めて返す。人としての心を失った青年。そんな彼と話をして得られるものは、もはや何もないのだろう。
「人の恋路を邪魔する阿呆は、俺に蹴られて死ね!」
 片手が埋まった隙を狙い、巌の蹴りが横薙ぎに青年を吹き飛ばした。それでも、未だ倒れる素振りを見せない青年だったが、そこは正夫が立ち上がることを許さなかった。
「授業料替わりです。この一撃に、おじさんが背負ってきた愛情……覚悟、経験、後悔、すべて載せましょう」
 スーツを脱いで袖をまくり、下から抉り込むようにして貫手を打ち込む。シンプルだが、故に凄まじい破壊力を誇る技。その威力は、堅さは、巨木の幹を穿つかの如く。
「がっ……はっ……!!」
「これが、一角の愛情の重さってやつですよ」
 腹を押さえて崩れ落ちた青年に、正夫は淡々とした口調で言い放った。
「受けよ、我が必殺の一撃を! 纏うは流水、放つは一刀、ご覧にいれよう金剛破斬!」
 間髪入れず、ディバイドが自らの編み出した機人剣技で斬り掛かる。高圧縮された流水を纏った鋭い刃。それは青年の妄執でさえも、真正面から斬り伏せて。
「最後まで、悲しい人ですね。ですが……今の私達にできることは、あなたを倒すことだけなのです」
 風流の蹴撃が美しい円弧を描き、三日月状の炎を呼ぶ。青年の顔面を直撃する緋色の焔。声にならない悲鳴を上げて顔面を押さえる青年だったが、その間にも炎は彼の全身へと燃え広がって行く。
「誰からも愛されない自分に未練は無いでしょう? バラバラにして差し上げますわ」
 顔を焼かれてしまったならば、もはやイケメンもブサメンもない。
 懐に飛び込み、最後はキサラが青年の身体を徹底的に斬り裂いた。抵抗する術を失った、憐れな出来損ないのドラグナー。その咎を、業を、全てを断ち切るようにして、非情の刃が宙を舞う。
「そ、そんな……馬鹿……な……」
 仰向けに倒れた青年の瞳に映るのは、ぼんやりと霞んだ夕刻の空。
 勝負はあった。既に己の意思で動かせなくなった掌に、ミセリアはそっとチョコレートを握らせる。
「めいどのお土産にどうぞ~?」
 人生のうちで一度くらい、女の子から何かを貰って逝くのも良いだろう。だが、果たして、そんな彼女の想いに対し、青年は既に返すべき言葉さえも失っていた。

●愛故に
 戦いの終わった繁華街。惨劇を防いだケルベロス達ではあったが、その心境は複雑だった。
「これにて一件落着で御座るな、はっはっはぁ!」
 人々を守れたことに誇りを感じて笑うディバイドだったが、考えようによっては、今回の青年もまた被害者であることに変わりはない。
「愛ふかきゆえに、愛を捨てちゃったのかな~?」
 黙祷を捧げるミセリア。しかし、青年の蛮行を顧みれば、全ての者が彼に無償の慈愛を捧げるはずもなく。
「ったく……人を辞めちまうにしても、その理由がショボ過ぎるぜ」
「ドラグナ―に堕ちた時点で心が折れているんでしょう? 喧嘩の相手としては、程度もしれましょうよ」
 巌と正夫は最後まで、手厳しい態度を崩さない。口にこそ出してはいなかったが、他の者達も似たような想いを抱いていたのだろう。
「さようなら。来世では、きっと素敵な出会いがありますわよ。……知りませんけど」
 キサラの言葉が、冷たい冬の空気に乗って突き刺さる。仮に来世があるとして、そこで充実した人生を送れるか否かは、全て本人の問題であると。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年2月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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