
●グラディウス
グラディウスとは、長さ70cm程の光る小剣型の兵器である。
通常の武器として使用は出来ぬが、『強襲型魔空回廊』を破壊する事が可能という力を持つ。
つまり、デウスエクスの地上侵攻に大きな楔を穿ち得る存在。ただ、一度使用するとグラビティ・チェインの吸収が必要となる為、相応の時間を要するのだが――。
「前回のミッション破壊作戦で使用したグラディウスが使用可能になりました」
故に再びの破壊作戦発動ですと、リザベッタ・オーバーロード(ヘリオライダー・en0064)は朗々と告げる。
●ミッション破壊作戦、再始!
「攻撃するミッションは、現在の状況などを考えつつ、皆さんで決めて下さい」
強襲型魔空回廊があるのは、ミッション地域中枢である為、通常の方法で辿り着くのは困難だ。
場合によっては貴重なグラディウスを敵に奪われる恐れもある。
「ですので、今回はヘリオンから直接降下する作戦となります」
半径30m程度のドーム型のバリアで覆われている、強襲型魔空回廊。だが、このバリアにグラディウスを触れさせれば良いので、高空からでの降下であっても攻撃は十分に可能だとリザベッタは言う。
「8人のケルベロスの皆さんが、グラビティを極限まで高めた状態でグラディウスを使用すると、場合によっては一度の作戦で強襲型魔空回廊破壊も可能です」
そこまで至らずともダメージは蓄積していくので、最大でも10回程度の降下作戦を行えば確実に強襲型魔空回廊を破壊することが出来ると予想されている。
「勿論、強襲型魔空回廊の周囲には強力な護衛戦力が配されています――ですが」
それらも流石に高高度からの降下作戦を防ぐことは出来ず。しかもグラディウスは攻撃時に雷光と爆炎を発生させ、この雷光と爆炎は所持者以外を無差別に襲うという特性を有すのだ。
「皆さんにはこの雷光と爆炎によって発生するスモークを利用して、現場から撤退する事になります」
貴重な品であるグラディウスを持ち帰る事も今作戦の一環であると添え、リザベッタは唯一の回避不能な戦いに話を及ばせる。
「先ほど言った通り、魔空回廊の護衛部隊はグラディウス攻撃の余波である程度は無効かできますが……」
とは言え、敵も精鋭。
完全な無効化は流石に無理で、強力な敵との戦闘は避けられない。
「しかし敵も混乱中なので、連携をとって攻撃してくる事はありません。立ち塞がる相手を素早く倒し、速やかな撤退をお願いします」
時間が掛かり過ぎれば、敵も態勢を整えてしまう。そうなってしまえば、降伏、或いは暴走という強引な手段に出るしかなくなってしまう。
「容易くこなせる作戦ではありませんが……それでも僕は、皆さんに誰一人欠ける事無く帰って来て欲しいと思います」
勝手なお願いですみません。
無理を強いる事を小さく詫びて、ヘリオライダーの少年はケルベロス達を空の高みへと連れて征く。
参加者 | |
---|---|
![]() アリス・ヒエラクス(未だ小さな羽ばたき・e00143) |
![]() 日咲・由(ベネノモルタル・e00156) |
![]() ジェノバイド・ドラグロア(覇龍の称を求める狂紫焔龍・e06599) |
![]() 月神・鎌夜(悦楽と享楽に殉ずる者・e11464) |
![]() フェイト・ブラッドレイ(吸血軍曹・e19775) |
![]() 巴江・國景(墨染櫻・e22226) |
![]() 氷月・沙夜(白花の癒し手・e29329) |
![]() 玖堂・アマリ(陽彩・e33088) |
開け放たれたハッチの向こうには、真っ新な空が在った。
髪を嬲る無頼の風を見据え、アリス・ヒエラクス(未だ小さな羽ばたき・e00143)は薄紅色の唇をきつく引き結ぶ。
少女が生まれたのは、空の王者に名を冠し、人を殺める事を生業とする一族。故にアリスは身に染みた全てに法り、『死神』を名乗る総てを何れ滅ぼさんとす誓いを胸に掲ぐ。
(「役目を果たそうとするのは、きっと私も同じ」)
まるで己を道具であると自認するように。
今日もまた、ひとつの死神の命を狩りに――そしてそれらを送り込む命の軛を断つ為に。
「さぁ……飛びましょう」
ひらり。
ケルベロス達は宙の海原へ身を投げ出す。
●魄響
飛翔、というより、ただただ落下。地球の重力に引かれ大気を裂く轟音が、耳の際で五月蠅く叫ぶ。
そんな中、日咲・由(ベネノモルタル・e00156)は近頃迎えたウィングキャットへ声を張り上げる。
「あのねぇ、グラディウスを使うのに気合を入れなきゃいけないんだよう」
猫も一緒にやってくれないかなぁ、という言葉が聞こえているのか、いないのか。まだ名の無い翼猫は小さな体を風に翻弄されまいと、主の背に懸命に寄り添う。
「そっかぁ」
その様に由はくたりと表情を緩め、撫でる代わりに掌中の小剣を握り締めた。
眼下に広がる相模原市の光景は、ぐんぐんと迫っている。かつてシャイターンに襲撃された地に根差す、デウスエクス・デスバレス――死神の強襲型魔空回廊。それを守るバリアに意識を傾け、由は翼猫へ向けたものとは違う声音で吼えた。
「この場所を解放するまで、きっとあと少しなんだよう……! だから、今日。絶対に解放してみせる!!」
生半可な気持ちでヘリオンから飛び降りたわけではないのだと言う女の覚悟に応えるが如く、由が手にしたグラディウスが淡く輝く。
その眩さに、刹那惹かれた巴江・國景(墨染櫻・e22226)は、地上と己が手の中の小剣を見比べ、再びデウスエクスに蹂躙され続ける地を見遣った。
(「現世がどうなろうが、思う処もあまり無かったのですがね……」)
赤の単衣に漆黒の衣冠。古の時より迷い出たかの様な装束に身を包む、竜族である國景のそんな想いは既に過去のもの。
穏やかな日常を与えてくれる『人間』の温もりは好ましく。それを汚すモノは何人たりとて許せないのが今の國景。
「平和を踏み躙る――その行為が心底胸糞悪いのですよ」
未だ視認出来ぬ敵へ、國景は静かに不快を募らせる。叶うなら、存在そのものを改めさせたい。それが出来ぬ輩なら、下す答は一つのみ。
「この地球に住まう民の想念の強さと結束力、御見せしましょう。我が手に収まりし小剣よ、光を纏い穿ち貫け――」
まるで点の集合だった地表も、今や背の高いビルから見下ろす程度。そして眼前に迫った『其れ』目掛けて輝く刃を薙げば、稲妻と炎が爆ぜた。
「魂の叫び、言いたいことを言やぁいいんだよな?」
紫が目立つ全身を泡立たせる衝撃と派手な演出に、ジェノバイド・ドラグロア(覇龍の称を求める狂紫焔龍・e06599)は軽快に笑うと、地獄で補う腕を振り上げる。
「頼むぜグラディウス!」
切っ先を収める先は、魔空回廊を守る障壁。
「血で汚れた俺を受け入れてくれたケルベロス達皆の恩に報いてぇのよ! それと、未だに利用され続けてるあいつ等8人全員救い出す!」
落ちゆく速度に背の竜翼で抗い、ジェノバイドは叫ぶ。楽し気に、誇らし気に。
「いつか手にする覇龍の名に懸けてな! だから俺はこんなところで負けてらんねぇ! トチ狂った紫焔龍の生き様見ろよ! 最期まで楽しませてやるよ!」
そう、彼らの足元――死神に支配された地には、死神に眠りを妨げられ存在を歪められたヴァルキュリア達がいる。かつては地球人の仇敵であり、今は共に歩む妖精族たちが。
「僕は、とても嬉しかったんだよ。ヴァルキュリア達が仲間になってくれて」
垂れ耳を風圧で天に向けピンと立て、犬のウェアライダーな玖堂・アマリ(陽彩・e33088)は陽彩の魂を輝かす。否、輝いているのは彼女が握るグラディウス。その光は、ヴァルキュリア達の光翼にも似て柔らかく。
「今まで、なんて関係ない。弱い僕に優しかった仲間たちの様に、ヴァルキュリア達の笑顔を守る為に僕は戦うんだ」
人の命奪う悪であったヴァルキュリア。けれどそれは悲しみと苦しみの果てに成された事。そして様々を乗り越え、ヴァルキュリア達はケルベロスの手を取った。仲間になって知った事に、アマリは過去の己を投影し、胸を打たれた。
微かでしかない記憶の中の、優しい仲間の面影がアマリを突き動かす。辛い境遇の仲間を想う気持ちが、アマリを前へ前へと走らせる。
「その魂は今を生きる仲間の礎になった魂だ。死神が利用していいものじゃない」
ようやく解放された妖精達を、また悲しませるなんて。
「僕が絶対に許さない! 僕に力を貸せ、グラディウス! 今を生きる仲間の笑顔を守る力を寄越せ!」
一際熱い咆哮に、一帯を瞬く間に白く煙らす爆炎と、八方へ雷光が迸る。そしてそれは氷月・沙夜(白花の癒し手・e29329)が抱く願いと同じ彩でもあった。
「この地に戻る日を待ち望んでいる方々の為、そして利用され続けているヴァルキュリアの方々を解放する為。私は、この力を使います!」
白百合咲かす少女は、今もって戦いに慣れず、血で血を洗う事を恐れるけれど。だからこそ、死して尚、戦いを強制される辛さが誰より解る――不本意な形で力を利用される事への嫌悪も。
だから沙夜は。
贖罪だけではなく、目の前で苦しむヴァルキュリアを救いたいと思うのだ。
「どうか、迷える魂に救いを……!」
「死は、全ての命が辿り着く最後の安寧」
清らかな沙夜の願いに、アリスの静かな声が重なる。
「それは王も奴隷も、賢者も愚者も、強者も弱者も等しく」
死の在り方を魂で知るアリスの言葉は、風のない湖のように凪いでいる。さながら、敬虔な祈りを捧げるように。
「その静かな眠りを妨げ、命の在り様を捻じ曲げ、利用する者を私達は正さなければいけません。さぁ、力を貸してグラディウス」
衝撃音が鼓膜をつんざき、眩い雷光が瞳を灼く。誰かを想い、誰かを案ずる魄響に、世界は白く白く染まりゆく。だがフェイト・ブラッドレイ(吸血軍曹・e19775)だけは、少し異質だった。
「僕は戦争が大好きです。悪辣なる戦争狂のブラッドレイ、それが僕なのです」
いっそ優雅に、丁寧に。青年は、悪辣な魂を曝け出す。正義も、義憤も、死神への怒りも蔑みも、サルベージされる者への憐憫も。何もかも、知った事ではないとフェイトは哂う。待ち構える戦争に、心を躍らせて!
「戦える、戦争が出来る! この昂りこそ至上!! 僕は大好きな戦争をする為にケルベロスになったのですよ? だから、砕けなさい魔空回廊。そしてその先の戦争を僕に与えなさい!」
――ああ、愉しみです。愉しみで堪らない。さあ、戦争を始めましょう!!
シャーマンズゴーストのけーてん教官を連れるフェイトの魂の叫びは、他の誰とも違った。違ったが、強かった。
「ハハッ! そーゆーのもイイねぇ」
打ち上げ花火のように散った雷に、月神・鎌夜(悦楽と享楽に殉ずる者・e11464)は口の端をニィと吊り上げる。
ごろつきのように生きる彼にとって、フェイトの叫びは悪くなく。しかし鎌夜は、一瞬と一瞬の連なりの狭間に聞こえた仲間の声の終わりに、矢張り死神への怒りを吼える。
「テメェら死神の死体を玩具にし、戦奴へ換える悪辣さは、許せねぇし認められねぇ!」
誰でも自分だけの生を謳歌し、自分だけの死で終われる権利がある。それこそ生命の道理。
「それを我が物顔で奪いやがって、テメェら何様のつもりだ」
グラディウスの一振りごとに、爆炎が上がり、雷光が空を裂いた。
「生命の道理を捻じ曲げ悦に浸る死神共、今からテメェらが奪えるものなんざ一つもねぇと知れェ!」
鎌夜は知らない。己の裡に、正義や光が宿りつつあることを。それが彼に今の言葉を紡がせている事を。グラディスを、爛々と輝かせている事を。
「誰もが正しく生きて死ねる未来の為に、俺は今ここで破壊すると決めた」
哀れな骸へ抱く怒りを、誰も抱かなくて良いように。
「諦めなんざ俺の魂には必要ねぇ、俺の想いはまだ枯れてねぇ。今一度、俺に力を貸せよグラディウス。回廊破壊を成し遂げさせろ」
二度目の降下な男は、喉を枯らして叫ぶ。
さぁ、いざや滅びろ砕け散れ――と。
●果
「くっそ、まだだ!」
今や空は遥か高み。アスファルトの大地を強かに踏みつけ、鎌夜はグラディウスを手に、厚いスモークを掻き分け前のめりに走り出す。
――そう。
この地の強襲型魔空回廊は未だ健在だった。破壊は、叶わなかったのだ。
「まだだ、まだ俺は諦めねぇっ!」
鎌夜は本気だった。だが、周囲に意識を馳せていた國景が彼の行く手を阻んだ。
「なっ!?」
「いけません」
厚い煙のカーテンの奥に蠢く気配を肌で感じた國景は、息を顰める。
敵はもうすぐそこ。逃げ果せる事は叶わない――ならば。
「短期決戦と参りましょう」
グラディウスを懐に仕舞った男がそう呟いた直後、凍てた歌声が相模原市の一角に響き渡った。
●残響
髪に薄く張り付いた氷を払い、沙夜は不可思議な色に揺らめく光のヴェールで自身らを癒す。
「攻撃こそ最大の防御、という言葉もあります。皆さんは、どうか攻撃に専念を」
「お姉さん達も頑張るから。気にしなくていいよう~」
チラチラと銀の粒子を放つ由も、酔った素振りの千鳥足を踏んで緩く笑い。傍らに懐くウィングキャットも、沙夜や由の傷を治そうと背の翼を羽ばたかせる。
「健気ね、嫌になるくらい」
ケルベロス達の撤退を助けるスモークの中から現れた、死神――夜葬華ノクスは、執拗にケルベロス達の癒し手を狙った。
無論、盾を担うウィングキャットも、けーてん教官も、そしてフェイトも彼女らを守ろうと奮戦した。が、何れも生命力に余力は多くなく。しかも回復支援も担うという役割上、一人でも欠けば戦線崩壊に繋がる恐れすらあった。
しかし。
「えぇ、これが戦争ですよ! 楽しいですね。でも、もう少しくらい瀬戸際感も欲しいものです」
狙撃手ゆえ由らへの攻撃の余波を喰らうアマリを庇ったフェイトは、溜めた気力で己の怪我を癒して恍惚を謳い、余裕を肩に聳やかす。
戦況は、決して死神に優位ではなかった。むしろケルベロス側に分があった。理由は、沙夜が言った通り。
「本当、目障りだこと」
「目障りなのは、貴女の方」
闇色のドレスを翻した人魚の如き死神がフェイトへ斬り掛かる隙に、風の身のこなしで敵の背後を取ったアリスは歪んだ刃を閃かす。
既に死神が己を癒すのを阻害する因子は仕込み終えた。ならば仲間が根付かせた縛めごと、一気にその効力を高めるだけ。
「……其の傷、癒える事は無いと知りなさい」
「っ!」
刻まれていた裂傷を抉じ開けられる苦痛以上の内側を侵食される感触に、ノクスの赤い瞳に苦痛が浮かぶ。
「テメェだけの終わりを魂に刻んで、地獄に落ちな――死ねよ滅びろ息絶えろォ!」
己と得物を地獄と完全同調させる事で等身大の炎獄の恒星へと変性した鎌夜は、猛る怒りの体現者と化し浄滅の剛撃を繰り出し。
「キミに僕の仲間の笑顔は奪わせない!」
ジェットエンジンを噴かす拳を、重心を低く落としたアマリは瞬きの一時で死神の尾びれ部分へ二度、叩き込み。その肢体がバランスを崩したのを見逃さず、國景は長身を活かして敵の頭部を二振りの刃で深く抉る。
「おのれ、矮小な輩の分際で」
立て続けに与えられた多大なダメージに、死神が悪態を吐く。
「うるせぇんだよ……」
少なくとも魔空回廊にダメージは与えた筈。ならばその力を呉れたグラディウスに応える為にも、とジェノバイドは冥府の処刑人を意味する名を持つ長双方天戟を手に死神に肉薄した。
「とっとと刻まれろ!」
Demonvyde・肆式――ジェノバイドだけが有すグラビティの一つ。命中精度に重きを置いた斬撃は、ノクスの右腕を肩から吹き飛ばす。
そうだ。ケルベロス達は攻撃力で以て、死神を圧倒したのだ。癒し手らが倒される暇を与えず、狙った通りの速攻で。
「魂を弄んだ報いを、今こそ受ける時です」
終焉の時を察し、沙夜も攻勢に転じて物質の時間を凍てつかせる弾丸を放つ。
「教官、行きますよ?」
折角の楽しい時間が終わってしまうのは勿体ないと言わんばかりに眉尻を下げたフェイトは、軌道を変える射撃で死神の背を貫き、祈りを捧げ続けたけーてん教官も物質化を解いた爪で黒き人魚を引き裂いた。
「さぁ、お注射の時間ですよぉ――刺さるのはバールですけど」
お姉さんも頑張っちゃうのよう、と由もバールを放り、翼猫も尾のリングを投じる。
「――っ」
苦境にあって死神が紡いだ歌は、誰の心に届くことなく虚空に響く。デウスエクスはケルベロス達の気迫に、完全に負けていた。
「私は貴女の素性も、事情も、知らない」
長大な斧を構え、アリスは徐々に薄らぎゆく煙の中を走り、ノクスの直前で跳躍する。
「然し、其の魂は在るべき場所へ還す……なのだわ」
表情一つ変えずアリスが叩き込んだ刃に、闇色の死神の顔がぐしゃりと半面砕けた。
「他者の死を玩具にした罪、地獄で悔い改め贖えやァ!」
鎌夜が地獄の炎灯す右腕で死神の命を啜れば、デウスエクスはもう今際の際。死を弄ぶ種族でありながら、死の淵に立って動くことさえ出来ず。
「ヴァルキュリアの皆に、あっちでごめんなさいをすればいいよ!」
この地に眠る魂を完全には救いきれないのを悔やみつつ、アマリは救済の駆け星となって死神へ一つの死を与えた。
「……派手な戦いになったわね」
無音を良しとする教義に少々背き過ぎただろうか、とアリスは周囲のざわめきに耳を傾ける。
グラディウスが発した煙は未だケルベロス達を守ってくれているが、剣戟に多くの気配が吸い寄せられているのもまた事実。
「参りましょう、グラディウスを奪われるわけにはゆきません」
貴重な剣を仕舞う胸元を押さえる國景の言葉に、沙夜も「その通りです」と仲間たちの足を急かす。
「――くそっ」
今度こそと強く思っていた鎌夜は口惜しさを滲ませるが、引き際を見誤るほど野暮ではない。
「楽しい時間が延びたと思えば良いのです」
どこまでも『らしい』フェイトに、ジェノバイドも「そーゆー生き様もありか」と喉奥をククと鳴らした。
破壊出来なかった強襲型魔空回廊から、死神は戦力を送り続ける事だろう。
けれど刻まれた罅は、確実に大きくなっている筈だから。
「先ずは皆の笑顔が大事です!」
「お姉さんと帰るのよう」
アマリの笑顔と由の千鳥足を先頭に、ケルベロス達は死神の領域から離脱する。
――来るその時を、信じて。
作者:七凪臣 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2017年2月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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