祝彩のタマゴ

作者:東間

●狙われたタマゴ
 穏やかな青に染まった空の下、柔らかな陽射しを受けて、自然がその命を輝かせる。
 そんな自然豊かな土地の一角に広がる森の中、ミス・バタフライは頭を垂れる2人組に向けて言った。
「ジョン、ジェーン。あなた達に使命を与えます」
「はっ。何なりと!」
「どのようなものでも遂行してみせます」
 忠誠心の高さを伺わせた2人に、ミス・バタフライは笑みを浮かべ、この町にいるイースターエッグのアーティストに接触するよう告げた。
「名前は乾・雪恵。彼女の仕事内容を確認し、可能ならば習得した後に殺害なさい」
 グラビティ・チェインは略奪しなくても構わない。
 そんな言葉に、ジョンとジェーンの2人は一瞬だけ疑問の色を浮かべるが、すぐに真剣な面持ちでミス・バタフライを見つめた。指先でナイフをくるりと踊らせ、放り、目も向けずにキャッチする。
「これが我々には一見意味の無いものに見えようとも」
「いつか、この地球の支配権を大きく揺るがすものになるのですね」
 風が吹き、梢が鳴る。
 それは春らしいものであったが、ミス・バタフライ達が浮かべる表情は、春とは対極のものだった。

●祝彩のタマゴ
 イースター。日本語にすると復活祭。
 その催しに欠かせないものであり、近年の日本でもその存在を認知されているアイテム・イースターエッグの作り手が狙われるという。
「そしてこれが、そのアーティストが作ったイースターエッグさ」
「えぇっ!? こ、これ本当に手作り!?」
 ラシード・ファルカ(赫月のヘリオライダー・en0118)が持つタブレット画面、それを見た光宗・睦(上から読んでも下から読んでも・e02124)は目をまん丸にした。
 真っ赤な卵を彩る幾何学模様は華麗で、カラフルだが決して下品ではない。鮮やかな緑色の卵には、緻密な模様に寄り添う白い花々と小鳥達。
 オレンジや青、黒いイースターエッグもあり、下にスクロールすればポップな花が描かれたものや、伝統的な和柄で美しく装ったイースターエッグもある。
「春だし『もしかして』って思ったけど……ねー、大した事無さそうな事件でも後々ヤバイ事になるかもしれないんでしょ?」
「そうなんだ。それも高い可能性でね」
 乾・雪恵と未来への被害を防ぐ為、まずはおよそ3日前に彼女と接触する事。
 事前に避難させると敵の狙いが他へ移る可能性がある為、事情を話して仕事を教わり、敵の標的をケルベロス達に変えさせるのが最良だろう。
「敵は彼女のアトリエを尋ねてくるから、その時に疑われないようにする為にも、見習いレベルになっていると安心かな」
 かなりの努力を求められるが、雪恵が作ったもののように、花柄や水玉模様といった、やや簡素なイースターエッグもある。
「しっかり学んで、そして君達が持つセンスや個性を表せば大丈夫。俺はそう思うよ」
「じゃあ、デコっても……?」
 睦の目がきらりと光る。ラシードはしっかり頷き、さて、と言って続けた。
「アトリエにやって来る敵は2体。連携してくるから同時に相手取るのは少し面倒な敵だけど、分断すれば有利に戦える筈さ」
 接触し、学び、迎え撃つ。
 それら3点を伝えたラシードがいつものように『後は頼むよ』と笑えば、睦も明るい笑顔を浮かべ、パチッとウインクした。
「任して! だって私達、ケルベロスだし!」
 ねっ!
 元気なピースも加わったそれは、春に似合いの決意。


参加者
光宗・睦(上から読んでも下から読んでも・e02124)
千手・明子(火焔の天稟・e02471)
リヒト・セレーネ(玉兎・e07921)
砂星・イノリ(ヤマイヌ・e16912)
キアラ・カルツァ(狭藍の逆月・e21143)
ホリィ・カトレー(シャドウロック・e21409)
桜庭・萌花(キャンディギャル・e22767)

■リプレイ

●祝彩
 生卵に小さな穴を開け、割れないよう息を吹き込み中身を出す。絵付けし易いよう穴に棒を挿すか、ペットボトルの蓋に乗せる。それが修行中に何度もやった『準備』だ。
 だが、それが支障なく終わっても『いざ』となると話は別。千手・明子(火焔の天稟・e02471)は卵を前に背筋伸ばし、一呼吸。
「わたくしハンドメイドとか細かいことがニガテ……だけど、工夫次第でなんとでもなる! ……はずよ」
 イースターエッグ作りに触れるのは今回が初のキアラ・カルツァ(狭藍の逆月・e21143)も、こくんと唾を呑む。
「う、上手くできるでしょうか?」
「大丈夫、だって、一生懸命修行したんだよ?」
 ホリィ・カトレー(シャドウロック・e21409)がふんわり笑うと、ケルベロス達と一緒に準備を終えていた雪恵も、笑顔で親指を立てた。
「その通り! やってきた事は裏切らないので!」
 うっかりくしゃみをして、卵をおしゃかにしちゃった事はあるけど。
 そう言って照れ笑いを浮かべる雪恵は、螺旋忍軍に狙われているとは思えない。接触した際、ガイスト・リントヴルム(宵藍・e00822)とリヒト・セレーネ(玉兎・e07921)が事情を伝えた事と、『ケルベロスが傍にいる』という安心感と信頼がそうさせているのだろう。
「じゃ、素敵なイースターエッグを作りましょー!」
 心底楽しそうな笑顔を受け、光宗・睦(上から読んでも下から読んでも・e02124)はジャジャーン、とある物を取り出した。
「デコ素材ならバッチリ!」
「マジ? 睦ちゃん何持ってきたの、見して見して」
「いいよ。あきらちゃんも見る?」
「ええ!」
 桜庭・萌花(キャンディギャル・e22767)と、目を好奇と焔でキラキラさせた明子。2人に中身を見せれば、途端に響く楽しそうな声。
 そこに重なったチチチ、という音に砂星・イノリ(ヤマイヌ・e16912)は窓の方を見た。豊かな緑に囲まれたここで作るイースターエッグ。自分なら――。
「春の空を飛ぶ、白い小鳥を描きたいな……」
 窓の向こうで、小鳥がチチチと鳴きながら飛んでいった。

 雪恵から受けた教えを発揮しながらの作業は、時に真剣に、時に穏やかに過ぎていた。
 黒色卵にステンシルの蛙をぺたり。ホリィはポップな白蛙だけでなく、波模様と雨粒も描いていった。くるくると卵を回し、全体を見たホリィは小さく頷く。これは間違いなく自信作。
(「白も黒も誕生を示す色……復活祭、僕の願いもきっと叶う。いつかきっと」)
 黒くなったロザリオを添えた少女が何を祈ったのか。それはホリィしか知らない事。
 紫色に染まった卵に、つ、と筆先が乗る。そこから走り出す色彩は黒。静かに描いたガイストは暫し手を止め卵を見つめた後、銀の塗料を手に取り――注がれる視線に目を向ければ。
「渋かっこいい気配がしまして」
 真顔ぷらすキラキラ視線の雪恵。師である彼女への礼儀として陣笠を外していた事もあり、雪恵の視線がよく見える。
「もしかして、和柄です?」
「うむ」
 洋だけでなく和柄もある。それが興味をひいたのだと言えば、雪恵がとても嬉しそうに笑った。好きなものを好きに描いたっていい所が好きなのだと。
「それにしても、何だか慣れた手付きですね?」
「……さて。どうだかな」
 ガイストの目が、すう、と動く。僅か数日の交流故、どういう表情かは――細かい事は苦手だという事実も、雪恵にはわからない。
「……あの、雪恵さん」
「はぁーい!」
 青色卵を前にしたリヒトが手を挙げると、雪恵はすぐに寄ってきた。その目は、少年が丁寧に描いた星柄を見てキラッと輝く。
「わあ、素敵なお守りになりそう……!」
 青は『健康』、星は『魔除け』。称賛と共に聞いたそれを受け、リヒトは少し頬を染めつつ、ビーズの装飾を付けたいがどんな物がいいかと訊ねた。だったらこれは、と雪恵が素早くビーズのボックスを持ってくると、青と聞いたイノリがひょっこり覗き込んでくる。
「ボクも青にするんだ。『自由』の青」
 この『空』に白い小鳥を描く予定だが、どうすれば窓から見える穏やかな色を表現出来るだろう。悩みは耳に出て、少しだけペタリ。
「白にちょっとずつ青を混ぜていくと、理想の色に近付けやすいですよ」
「白に青? ありがとう雪恵先生、がんばるね!」
 ぱっと笑顔になったイノリは筆を取り、教わった通りに色を混ぜ混ぜ。春空と似た瞳を煌めかせて色を作り出していく。リヒトも星に合わせて選んだビーズを1つ摘み上げ、糊を付け慎重に――ちょん、と。
「イースターエッグってこうやって作るんだ……。……デコって難しいものですね」
「少し緊張しますね」
 少年の呟きに続いたキアラは、ふう、と一息。淡いピンク色の卵に踊るポップな花はカラフルで、藤色は大好きな姉、ピンクは可愛い友人のイメージだ。『幸福』の赤と『信頼』の紫、黄色も加えたイースターエッグには、彼女達との楽しい日々が詰まっている。
「あとは、ビーズも付けてアクセントを……ええと」
 お手本お手本、と探していた目が、春らしく彩られたイースターエッグにとまる。
「わぁ、明子さんのとても綺麗です……!」
「あ、あらっ。そう?」
 キラキラデコ未体験のキアラから真っ直ぐな尊敬を向けられ、明子は悪い気がしない。ちら、と見た自分の卵は、心を鷲掴みにした『成功』という響きを持つピンク色。そこには、グリッター製の金色春風にそよぐ桜草が描かれており、春風で細かい所をちょっぴり誤魔化し――もとい工夫したそれは。
「わたくしにしてはまあまあ? でも現役女子高生にはかなわないわね……」
「何言ってんの、明子さんのイケてんじゃん」
「だよねー、萌花ちゃん。私デコるの大好きだけど、あきらちゃんのみたいなのも超いいなって思うよ!」
 明るく絶賛した睦の卵は、正に春爛漫。黄色をベースにしたそれは、ピンクのハートとパールラメで生き生きと輝く花で彩られ、ラインストーンがとびきりのアクセントになっている。
「さすが睦ちゃん、センスいいね。ちょっとアドバイスもらってもいい?」
 萌花は英国に住んでいた時、友人とイースターエッグを染めたりエッグハントをしたり、とイベントに参加していたが、アーティスティック方面は流石に初。
 教わった事を存分に発揮した卵は、繊細な白レース模様を纏った淡い紫色。小さなビーズの装飾で光を散らしつつも、やる気はまだまだ漲っている。
「オッケー任して!」
 睦達の放つ情熱に、リヒトはすごい、と感嘆の声を零す。手元の卵には、小さな白兎も生まれていた。

●罠
 弟子入り志願の『男女』がやってきたのは、うららかな午後。目当ての先生もとい雪恵は不在だが、見習いである8人がにこやかに対応する。
「皆さんの技術は凄いんですよ」
「へえ。もしかして皆さんの作品もここに?」
 最年少のリヒトの言動を、男――ジョンは訝しむ事は無かった。少年が振る舞った通り、よく見学に来る子供と思ったようだ。連れの女――ジェーンと共に、熱心な様子でイースターエッグを見つめているが、全て雪恵を殺す為の嘘でしかない。
(「素敵なものを作る人を殺そうとするなんて、マジ許せないよね。私達が絶対守ってみせるっ!」)
 睦は笑顔の下で決意し、明子はそうだわ、と手を合わせた。
「倉庫の資材を取りに行きたいの。重たいから男手を貸してちょうだい」
「少々重いものでな、我等だけでは手が足りぬ」
 ジョンの視線にガイストが答えると、男は納得した様子。じゃあ私も、と言い掛けたジェーンをホリィが呼び止めた。
「こっちも作業があるんだった。ジェーンさん、教えてあげるからちょっと手伝って」
「あっち行かなくて大丈夫?」
「全員一度に倉庫には入れないからさ、卵の扱いやデザインについて説明するよ」
 萌花が補足するとジェーンも納得し、ジョンと視線を交わし『それじゃ、また後で』と手を振り合う。『また後で』で――雪恵を殺す算段か。
「それじゃ行こう。離れた所にあるんだ」
 手招きしたイノリに続いてキアラも出る。直前、アトリエ内に目を向ければ、様々な意匠を凝らした卵が並ぶそこは宝箱のようで。
(「お祭りを彩る技術にすら目を付けるなんて……綺麗だから気になる気持ちは分かりますけど、この技術、奪わせたりしません」)
 見習いだと思い込ませていれば先手を取るのは容易い。場所は予め見繕っていたポイント。空の下、豊かな緑が萌ゆる場所は、ジョンが悲鳴を上げてもジェーンまで届かないだろう。
 リヒトの編んだ雷壁の中、明子の縛霊手祭壇から飛び出した紙兵が群れのように飛び回る。仲間達への守護が廻るその瞬間、ガイストの蹴りはジョンをしっかりと捉え、急所を蹴り抜いたそこに、翼広げた睦が降魔の蹴りを叩き込んだ。

●春戦
 まともに喰らった筈だが、まだ二撃だからか。飛び退き、正体を表したジョンが素早く動く。華やかな衣装から飛び出したナイフを掴み、まず1人――と狙った刃は、黒鎖で己を締め上げてきたキアラではなくイノリを斬っていた。
 イノリは代わりに血を流しながらも、両手に纏った縛霊手から巨大な光弾を放つ。
「逃さないし、殺させない……ボクは番犬だから」
「貴様等、ケルベロスかッ……!」
「そうだよ」
 リヒトは一言のみの肯定を返し、イノリへと癒しの雷撃が奔る。長い髪が翻ったのはその直後。
「あなた達、自分でも何やってるか分からないんでしょ、本当は!!」
 明子の、技量全てを注いだ一撃が突き刺さる。呻いたジョンの目は『何を言って』と語っていたが、それはすぐ別のものを語る事になった。昼空の下でも眩く映る輝龍が、ガイスト剣閃から駆け――喉首に食らい付く。
「ぎッ、ア……!?」
 目は見開かれ、痛みは歪な絶叫となる。そして。
「絡み、捕えよ」
 ――狭藍の香よ。
 キアラの言葉と共に紫陽花から溢れた毒がジョンを蝕み、イノリの歌声が重なり響く。降魔の力で喰らい、覚え、感じた敵の『全て』込めた声に撃たれた衝撃で、ジョンの体が後ろに圧された。
「ちぃッ!」
 まずい、と思ったのだろう。朧気な分身を纏い傷を癒すが、癒えきらぬそこへ目に厳しく且つ眩い一撃が見舞われる。それは。
「ぐぁッ!! な、何だコレはッ!?」
「今回作ったのと合わせた鬼盛りで可愛くしてあげたの!」
 どーよ! と戦る気満々の睦によるラインストーンとラメの山は、黄色とピンクの超ミックス。それは、一緒に戦っていたガイスト達の視界にもチカチカと焼き付くような、そんな気がする程の――正に『鬼』盛り。
「おのれ、ふざけた真似を……!」
「ほう?」
 ガイストの金眼が、ひた、とジョンを見た。ぐ、と力込めれば、青鱗の右手は鋼の鎧すら貫く一撃へとなってジョンを襲い、片膝を突かせる。完全撃破まであと一歩。故に明子はすぐさま動いた。
「あなた達も純粋にイースター、楽しめばいいのにね」
 だって、こんなに可愛くデコってもらえたんだもの。

 イースターの由縁、卵の色や柄。それらについて教えながらの作業は、イースターエッグ用の卵の処理。ジョンとは恋仲なのか、という雑談も交えながらの作業は、仲間達からの連絡で終わりを告げた。
「倉庫に行った人達からですか?」
「うん。終わったよーって」
「じゃ行こっか」
 合流しよう。そう言った萌花とホリィの後をジェーンがついていく。
 アトリエで帰りを待たず、わざわざ合流しにいった先でジョンの不在に気付き、おかしい、と思った時にはもう遅い。
「騙し討ちして悪いわね。でもま、おあいこってことで許してちょうだい」
 明子は地獄焔纏った縛霊手を轟音と共に叩き付け、ホリィは鞄の中に隠していた相棒を呼ぶ。
「行くよサーキュラー!」
「きゅ? きゅー!」
 デコは? と自分の体を確認していた箱竜・サーキュラーが、ホリィの一声に慌てて封印箱に潜り込む。ガヅッ、と痛そうな音と共に、ジェーンが額を押さえながらナイフを振り上げた。
「よくもジョンを……任務の邪魔を!」
 怒りを露わにしながらも、そのナイフ捌きはケルベロス達を的確に殺そうとしてくる。だが、箱から飛び出したサーキュラーが勇敢な盾となり、叶わない。
 萌花の目に、だったらまずはそいつから、と息巻くジェーンが映る。くすりと笑い、唇を甘い色で艶めかせたら――。
「召しませ、Sweet Temptation♪」
 とびきりの囁きをひとつ。それがどれだけの痛みと共に深く刺さったか、ジェーンの歪んだ表情を見れば大体判る。
「もなに恋しちゃった?」
「きゃー萌花ちゃんてばオットナー!」
 睦は負けてらんないと不敵に笑い、一気にジェーンへ迫り降魔の拳をめり込ませた。みしり、という音の直後、風のように駆けたキアラの蹴りが炎と共に閃く。
「ああぁっ!?」
「雪恵さんの命も、イースターエッグも、あなた達には渡しません……!」
「大切な技術を良くない事の為に盗むなんて、ぼく達ケルベロスが許さないよ」
 さぁ。リヒトに喚ばれ、遊んでおいでの一声と共に、光弾が上へ下へ、右へ左へと跳ね回る度にジェーンが悲鳴を上げた。光の兎が捕らえたかのような光景に、次なる幻想が連なる。
「――推して参る」
 青い竜の武人が口にした、ただ一言だけの宣告。太刀風を劈いた光が龍となり、鋭い牙と爪を輝かす。それが、ジェーンの最期を埋め尽くした。

●春のもとへ
 全てを終えて、傷を癒して、倉庫は明子がしっかりヒールして。そうしてから隠れてもらっていた雪恵を迎えに行くと、ケルベロス達を見た彼女は心底ほっとした笑顔を浮かべた。
「一緒に作っていてとても楽しかったから……」
 良かった。良かった。
 何度も繰り返す雪恵の目が、少し潤んでいる。それを見上げたイノリは、掌に春空色の卵を乗せて微笑んだ。
「この卵、大事にする。ボクのお守りにするよ」
「私は、今回作ったイースターエッグをアレンジして、たくさん作って、旅団で販売予定!」
 イノリの自由な青空と白い小鳥、睦の春爛漫な眩い卵。リヒトも、星が煌めく卵を見つめ考える。これは双子の兄に自慢――という名の、一応は贈り物として持ち帰ろう。
 雪恵はまだ目を潤ませていたが、頷いた後、ふにゃっと笑った。
「皆さんが作ったイースターエッグ、いいものを連れてきてくれると思います」
「もなのイースターエッグは……売れるかな?」
「う、うちで取り扱いましょうか?」
 ソワッとした雪恵はもうすっかり元気といった様子。目の潤みも引っ込んでいるのを見て、ガイストは外していた陣笠を被り直す。
「貴重な体験をさせてもらった。其方の今後の作品も楽しみにしている」
「ありがとうございます……! こちらこそ、とっても楽しかったです!」
「そうだ、また見学に来ても良いですか?」
「僕もいい?」
 見上げたリヒトと、くるり振り返ったホリィ。返ってきた言葉は。
「喜んで!」
 弾むような笑顔と歓迎の声。

作者:東間 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。