人が訪れるのも疎らな田舎の、山深くにある峠道。
夜も更けて、静寂に包まれながら草木や動物達も眠る頃。
その眠りを妨げるような騒音が、突如としてけたたましく鳴り響く。
人気のない深夜の峠に集うのは、この場所を根城としている暴走族だった。彼等は改造車やバイクを我が物顔で乗り回し、危険な暴走行為に明け暮れていた。
「オラオラァッ! 何人たりとも、俺より先には抜かせねぇ!」
「ざけんなよっ! 轢き殺されてぇのかテメエッ!」
先行するバイクが蛇行運転しながら挑発すれば、改造車も負けじと、後方から接触寸前の距離まで詰めてバイクを煽る。
更に後続の暴走族達が騒ぎ立てて盛り上がる中、彼等の前方に何かが立ちはだかった。
それは、機械の身体を持った人型兵器――ダモクレスだった。
重厚感のある蒼い装甲で身を固めた姿は、勇壮な騎士を思わせる。そしてその両手には、機械的な外装の槍が握られていた。
ダモクレスが槍を振り翳してバイクを突けば、乗っていた少年の身体は放り出されて宙を舞い。そのまま地面に激しく叩き付けられて、夥しい量の血を流して動かなくなる。
「ヒイイィィィッ!? ヤ、ヤベエ! とっととずらかるぞ!」
暴走族達は絶叫し、恐れ慄き逃げ出そうとする。しかし、蒼き鋼の騎士は獲物を見逃す筈もなく。構えた槍から眩い光が放たれて、迸る一条の閃光が悉く暴走族達を灼き払い――。
爆炎が上がり、車の破片や肉片が飛散し道路を埋め尽くし。一人たりとも逃さずこの場にいた全員の、命を刈り取り屍の山を築き上げていた。
「やれやれ、この僕から逃げられるとでも思ったのかい。さて――」
ダモクレスは路上に横たわる死体の群れを一瞥し、生存者がいないことを確認すると。
「――任務完了。引き続き、ターゲットの捜索を遂行します」
新たな狩りの獲物を追い求め、更なる闇の奥へと消えて行く。
指揮官型ダモクレスによる地球侵略が開始され、人々はその脅威に晒されている。
中でもグラビティ・チェインの略奪を任務とする主力軍団、『ディザスター・キング』の部隊が新たな襲撃事件を巻き起こす。
「キミ達にはこれから急いで現場に駆け付けて、ダモクレスの撃破に当たってほしいんだ」
事件の詳細を説明する玖堂・シュリ(紅鉄のヘリオライダー・en0079)は、感情こそ表に出さないが、語る言葉はいつにも増して真剣だ。
ディザスター・キングの部隊による襲撃は既に決行されており、ヘリオライダーの予知も及ばず、多くの犠牲者が出てしまっている。
「ダモクレスは山の峠に出没し、そこを根城にしていた暴走族20名を全て殺害したんだ。その後は次の襲撃場所を選別する為に、山頂にある展望公園に移動するみたいだよ」
敵をこのまま放置しておけば、被害は更に広まってしまうだろう。だが次の襲撃場所に向かう前の今ならば、迎撃することが可能な状況だとシュリは言う。
これから展望公園に先回りして敵を待ち受ける。それが今回の作戦だ。
「今回戦う敵の名前は『サファイア・グレイブ』。宝石をモチーフとした『ジェムズ・グリッター』の一体で、青い機体の人型タイプだよ」
このダモクレスは機動力に優れた遊撃型で、名前の通り槍を武器にした攻撃を得意としている。近接攻撃以外にも、ビーム射撃で遠距離にも対応できる仕様になっているようだ。
相手は一体のみだが、主力部隊の一員である以上、その実力は決して侮れない。
そして敵はグラビティ・チェインの略奪が最優先の為、自ら戦闘を仕掛けてはこない。よって迎撃をする際に、相手を逃さないようにすることが必要となってくる。
そこで逃走が困難だと判断すれば、ケルベロスとの戦いに応じて、全力で勝負を挑んでくるようだ。一度戦闘が始まれば、以後は逃走しないので、こちらも戦闘に集中すれば良い。
「失われた命はもう戻ってこないけど、被害はここで食い止めないといけないからね。その為にも、どうかキミ達の力を貸してほしいんだ」
シュリはそう懇願しながら伝え終えると、ケルベロス達の顔を見つめて武運を祈った。
参加者 | |
---|---|
大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752) |
エスカ・ヴァーチェス(黒鎖の銃弾・e01490) |
リィンハルト・アデナウアー(燦雨の一雫・e04723) |
ロウガ・ジェラフィード(戦天使・e04854) |
深鷹・夜七(まだまだ新米ケルベロス・e08454) |
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983) |
レイン・プラング(解析屋・e23893) |
ラズェ・ストラング(青の迫撃・e25336) |
●包囲網
山頂にある展望公園から眺める景色は壮観だ。
空は深藍色の紗幕に覆われて、眼下には人々が住まう市街地の明かりが灯されている。
そこにある人々の営みを、ダモクレスは奪おうとする。既に多くの命が失われ、これ以上更なる虐殺は許さないと、ケルベロス達が先回りして待ち受ける。
「もう被害は出てるんだよね……。止めるには、倒すしかないのは切ないけれど……」
どことなく憂いを帯びた表情で、リィンハルト・アデナウアー(燦雨の一雫・e04723)が消え入りそうな声で呟いた。
今回の標的となる敵を、兄と呼ぶ少女が傍にいる。彼女のことを思うと胸が締め付けられそうになり。けれども彼女が覚悟を決めたなら、自分も確り手助けしようと。
ここで敵を倒して止めるのが幸せに繋がると。少年は胸に手を当て己の心に言い聞かす。
「クラビアといい、ディザスター・キングといい……いったいどうなってやがるんだ」
ラズェ・ストラング(青の迫撃・e25336)が咥えた煙草の火を消して、顔を顰めながら、やり場のない憤りを口にする。
ここ最近のダモクレス軍団による被害は、彼等の想像を遥かに超えている。そして今も尚侵攻は継続中であり、その恐るべき戦力数には焦燥感さえ覚える程だ。
一行は隠密気流を纏って遮蔽物に身を潜め、息を殺して気を張り詰める。やがて待つこと数分間――月明かりに照らされて、一つの影が朧気に姿を顕した。
蒼き装甲に身を固め、槍を携えたダモクレス。気高き騎士のような外見は、これから戦うべき敵に相違ない。どうやら敵は、こちらの存在には未だ気付いていない。
「今です!」
敵が捕捉範囲の中に入ったことを確認し、ケルベロス達は一斉に飛び出して包囲する。
「ここまでです、サファイア兄さん。貴方はもう、逃がしません!」
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)が目の前のダモクレスにそう呼び掛ける。彼女にとっては兄に当たる機体、それがこの蒼いダモクレス――サファイア・グレイブだ。
片やサファイアは、自分を兄と呼ぶ少女を怪訝そうに一瞥し、取り囲む番犬達に槍を突き付け威嚇する。
「君が誰だか知らないけれど、僕は忙しいんだ。悪いけど、邪魔をしないでくれるかな」
いざとなれば包囲を振り切って、逃走を試みようとするサファイアではあるが。行く手を阻むように大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752)が立ち塞がった。
「このような非道は決して許せません。人々の、そして何よりも盟友の為――正義の味方スーパージャスティとして尽力します」
深い絆を結んだ少女の身を案じて参戦を決めた秋櫻は、フローネを横目で見ながら小さく頷くと。彼女と共に戦う意思を、改めて強く抱いた。
「ああ、これ以上の犠牲は断じて許さぬ! ここから先には絶対に行かせない!」
ロウガ・ジェラフィード(戦天使・e04854)が険しい表情でサファイアを睥睨し、金色の翼を広げながら剣を構えて、臨戦態勢を整える。
「その凶行、私達が必ずここで食い止めてみせます!」
敵の僅かな動きも警戒し、陣形を崩さぬように間合いを測り、レイン・プラング(解析屋・e23893)が退路を阻むように回り込む。
「命を奪って逃げようたって、そうはいかないよ――さぁ、お相手願おうか!」
深鷹・夜七(まだまだ新米ケルベロス・e08454)が地面を蹴って跳ね上がり、敵を足止めしようと流星の如き蹴りを放つが。蒼き鋼の騎士は飛び退るようにして攻撃を躱す。
「目標捕捉……ここは抜かせません」
そこへ今度はエスカ・ヴァーチェス(黒鎖の銃弾・e01490)が、闘気の弾を撃ち込み牽制するものの。敵は槍を振るって気弾を斬り払う。
「やれやれ、余り時間は掛けたくないのでね。面倒だから――すぐに終わらせてもらうよ」
ダモクレスの目が青く冷たく輝いた。逃走は困難だと判断し、ケルベロス達を討つべき敵と見なして――鋼の騎士が勝負を挑んで襲い掛かってきた。
●蒼き騎士
まず手始めに包囲網を崩そうと、サファイアが槍を大きく振り翳し。青い光が軌跡を描いて番犬達を薙いでいく。
「そうはさせるかよ!」
ラズェが脚に溜めた力を解放するかのように、高く跳躍して前衛陣を飛び越えて。刃を仕込んだ踵でサファイアに足払いを掛けようとする。
サファイアは回避を試みるものの、ラズェが先の動きを読んだのか。蹴りは寸分違わず狙い通りに決まって、敵の身体が一瞬よろめいた。
「いくら早くても、この距離なら……!」
相手の機動力に翻弄されまいと、リィンハルトが離れないよう間合いを詰めて。掌を敵の身体に押し当てて、練り上げた気弾を至近距離から撃ち込んだ。
「くっ……!? 全く鬱陶しいね、ケルベロスって連中は。少し黙っててもらおうか」
立て続けに攻撃を浴びたことに対して、サファイアは微かな驚きを覚えるが。飛び掛かる番犬達を排除しようと、槍を構えて狙いを絞る。
短く持った槍の穂先は、間近に接敵しているリィンハルトに向けられる。到底避けられない距離から鋭い突きが繰り出されるが――フローネがリィンハルトを押し退けるようにして、身を挺して少年を護る盾となる。
「仲間を傷付けるような真似はさせません!」
紫色の戦闘服に身を包んだ少女の手には、翠石色に輝く動力剣が握られていた。その剣で槍を弾いて受け流し、フローネは真剣な眼差しを向けてサファイアと対峙する。
「困った時は助けると約束しましたからね。これでも喰らいなさい!」
秋櫻が励ますように声を掛け。背中に備えた二門のキャノン砲に充填されたエネルギーの塊が、砲口から一斉発射され。砲撃はダモクレスの脇を抉るように撃ち抜いた。
「星降る剣よ、再生を司る星の加護を!!」
ロウガが星の力を宿した剣を地面に突き刺すと、星座が描かれ光が仲間を包み込み、加護の力を付与させる。
「――解析完了、データリンクします」
レインが敵の今までの動作から、能力や思考データ等を自己分析して予測を導き出せば。情報を魔力に乗せて伝達することで、味方の攻撃精度を上昇させていく。
「共に戦う仲間に、私が斃す者に、私を斃す者に、敬意を。今度こそ、逃しません」
エスカが如意棒を伸ばして突撃を掛ける。しかしその動きは直線的で、サファイアは身体を捻り躱そうとするものの。如意棒は軌道を変えて敵を追撃し、サファイアを逃すことなく直撃させる。
「ぼくは全力で戦う! 君も、ありったけの力でこい!」
見た目は騎士の如きダモクレスを挑発するように、夜七が刃を振り抜き斬りかかる。刀は無銘の軍刀ではあるが、積み重ねた修練によって研ぎ澄まされた一撃が、ダモクレスの鋼の装甲を裂く。
刀を握る夜七の脳裏には、襲撃された故郷の光景が思い浮かんだ。戦う道を選んだ切欠となった過去への想いを、押し殺すようにフードを被り。今はただ敵を倒すことだけに全身全霊を傾ける。
「……調子に乗ってもらっては困るね。しつこいのは嫌いなんだよ」
サファイアの槍の先端が、蒼い光を帯びて力が集束されていく。火花が弾け飛び、渦巻く力は雷となって射出され、迸る閃光の矢が夜七を狙って迫り来る。
しかしオルトロスの彼方が間に割り込み夜七を庇い、主人の危機を救うのだった。
「俺にはお前の動きが見えている。些細な油断は、命取りだぜ」
攻撃直後の隙をラズェは見逃さず、高速演算によって敵の損傷部位を割り出して。亀裂が生じた肩口目掛けて、踵落としを叩き込む。
「少しずつ決まるようになってきてるね。ここは一気に行くよ」
リィンハルトが振るう如意棒からは、涼しげな雫の音が鳴り響く。奏でる音色は振り回す度に大きくなって、土砂降りのような激しさでダモクレスを襲う。
手数で勝るケルベロス達の波状攻撃は、サファイアの機動力を徐々に封じて、ダメージを更に積み重ねていった。
「大地の蒼、天空の紅、火水の紫……漆黒の闇、純白なる光……刻の黄金!!」
ロウガの口から紡がれる詠唱は、自然界を司る属性へと働きかけて、五色の霊力がロウガの掌へと吸い寄せられていく。そして最後に一際眩い黄金の不死鳥が出現し、霊力を束ねて一つに成していく。
「――六属性の霊力、全て束ねし生命の威、此処に示さん!!」
束ねられた霊力は虹色の光となって、傷付く者に癒しの力を施した。
「敵の動きは解析済みです。このまま、手を緩めず押し通しましょう」
レインは常に状況分析しながら、戦いの流れを読んでいた。現状優位と判断したレインは積極策に出て、惨殺ナイフを翻し、稲妻状に変化させた刃でダモクレスを斬り刻む。
「そろそろ動きが鈍ってきたですね。そこです」
最初のような俊敏性は失われつつある。エスカは表情一つ変えずに冷静に見極めて、金色の双眸を光らせながら力を行使する。嵌めた指輪がエスカの念に応えるように光の剣と化し、思いを込めて鋼の騎士を斬り付ける。
●ココロの強さ
「私が、貴方を止めます! サファイア兄さん!」
フローネの心に迷いはない。目の前にいる相手は討つべきダモクレスだと、剣を持つ手に力を込めて斬りかかる。対して受けるサファイアは正面から迎え撃ち、翠石色の剣と蒼玉色の槍が激突し、互いの誇りと信念を賭けて両者譲らずせめぎ合う。
「近接高速格闘モード起動。ブースター出力最大値。腕部及び脚部のリミッター解除――」
秋櫻が温存していた力を解き放ち、加速しながらサファイアに駆け寄っていく。
「対象補足……貴方は私から逃れられません」
大気がうねりを上げながら、秋櫻が敵の懐に潜り込む。そして息つく間もなく繰り出す超速度の拳と蹴りが、嵐の如く荒々しく乱れ飛ぶ。
止まることなきケルベロス達の猛攻に、ダモクレスも反撃を試みるのだが。圧倒的な勢いに飲み込まれ、戦況を覆すには至らない。
「逐い注げ、刺し貫け、穿の黎雨――たくさんの雫達……力を貸して」
リィンハルトが書物を捲りながら呪文を唱えると、上空に輝く魔法陣が浮かび上がった。リィンハルトの紡ぐ詞に呼応するように、魔法陣から煌めく雫が降り注ぎ、ダモクレスの装甲を貫いていく。
「悪いね――そこはもう、ぼくの間合いだ!」
夜七が瞬時に飛び込み距離を詰め、ダモクレスを見て不敵に笑んだ。抜刀の構えから、鯉口を切ると同時に刃が走る。抜刀から生じる熱は夜七の影を揺らめかせ、虚像の残滓は敵を幻惑し。放った鋭い一閃は、機械の身体を断って光の粒子が空に舞う。
「煌めけ!! 勇気を宿した調停の光、ザ・ピースクラフター!!」
回復役を担ってきたロウガだが、好機に乗じて畳み掛けようと攻勢に出る。気合と共にバスターライフルから撃ち出された光弾は、敵の力を中和し攻撃力を削いでいく。
「そろそろ詰みのようだな。もういい加減――壊れろよ」
ラズェが手を掲げながら念じると、青く輝く光の玉の群れが飛び交って。それらはラズェの掌の中で凝縮されて、光の線となってダモクレスを刺し穿つ。
「死に至る道筋、存在の終わり、万物に死は平等に――」
エスカが祈りを捧げるように囁いて、人差し指に滾る闘気を宿らせる。装甲が脆くなっている箇所を直感から見抜き、エスカの全てを注いだ一突きが、鋼の鎧を砕いて機械の身体をも射抜く。
「確かに貴方の戦闘力は優れています。ですが、人の心はそれすらも凌駕する」
レインは心を一度『初期化』した過去があり、心を取り戻して得られたものは大きいと。そうした想いを込めて、螺旋を腕に纏わせて。レインが敵の身体に触れた瞬間、内部を捻り潰すように破壊する。
「ば、馬鹿な……。精鋭であるこの僕が、番犬如きに負ける筈はない!」
サファイアにケルベロス達の攻撃を耐え得るだけの力はもはや無く。それでも手負いの身体で抵抗するのは、敗北を認めようとはしない執念ゆえだ。
せめて一人でも多くを道連れに。槍に最後の力を注ぎ込み、破壊を齎す閃光がフローネを襲う、が――秋櫻が咄嗟に彼女の盾となり。真紅の長手袋を嵌めた両の掌で、光線を受け止め闘志を漲らせて耐え凌ぐ。
「フローネにはこのスーパージャスティがついています! だから、大丈夫です」
秋櫻の鼓舞する言葉に大きく頷いて。フローネの持つ動力剣が、一層強い輝きを放つ。
「これこそが、ココロを通じ合わせた仲間の力です。ダモクレスには決してできません!」
互いに信頼し、支え合うことこそが真の強さだと。心の持つ意味をフローネが強く説く。
「そしてこれは、エメラルド姉さんの奥義――この剣で、全てを断ち斬ります!」
翠晶剣に紫水晶の盾の力を融合させて、二色の光が剣を包み込む。剣の威力に盾の強度が備わって、振り下ろした渾身の一撃は――紫翠の軌跡を描いて敵を断ち。力尽きた鋼の騎士は光に包まれながら消滅し、槍は主の手を離れて地面に深く突き刺さる。
それは、戦いの勝利を告げるかのように――。
槍を墓標に見立てるようにして、フローネは瞑目し、黙したまま死を悼んで祈りを捧ぐ。
彼もココロを持ってくれたなら。そう思わずにはいられない、少女の心を支えるように。秋櫻が隣に寄り添いながら、一緒にダモクレスの冥福を祈った。
「……泣いても、いいんですよ」
束の間の沈黙の後、労わるように秋櫻の口から出た一言に、紫髪の少女は小さく首を横に振り。夜空を優しく照らす、銀色の月を微笑みながら仰ぎ見た。
二人のことは、いらぬ心配だったかもしれない。リィンハルトは安堵の溜め息を吐きながら、鋼の騎士の死を悼み。レインは犠牲となった者達の安寧を祈る。
夜七もまた犠牲者の魂を弔いつつも、更なる被害を防いだことを誇らしく、力になれたことを密やかに喜んだ。
ロウガの所持する盾は、嘗て戦天使と呼ばれたエインヘリアルの大盾だ。因縁ある敵を討つことの心情を、ロウガは己を省みながら同じ思いを垣間見る。
敵を倒し終えたとはいえ、ダモクレス軍団の侵攻はこれからも続くだろう。もしかしたら最悪の事態も起きるのだろうかと、ラズェは不安な気持ちに駆られながら、眼下に灯る街の明かりに視線を移す。
例えどれ程の敵が押し寄せてこようとも、この生命の灯火を消すわけにはいかない。
戦士達は新たな決意を胸に秘めながら、穏やかな街の景色を静かに見守った。
作者:朱乃天 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年2月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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