●
「ぎゃあああああ!!」
赤く、美しい髪が風に靡く。スタイルのいい肢体を誇示しながら、大きな手帳を悠然と捲る女――ティルリア・レキュペラスィオンは、その響く悲鳴を耳に、楽しそうに頰を歪めた。二重関節となっている手足は、彼女がただの人間ではない事を何よりも雄弁に語っており……。
「さて、これでまずは一人ね。ご苦労様」
手帳をパタリと閉じたティルリアは、ふいに傍らに声をかけた。そこには、トランクケースに機械の手足がついたダモクレスが控えている。その手足は、真っ赤な血でベッタリと濡れていた。
「ひっ……ぎっぁっ……!」
その血の元を辿ると、そこにはダルマがあった。呼吸をしていて、顔がある。だが、手足だけが存在しない。でも、元はそうではなかったはずだ。何故なら、手足はまるで壊れたガラクタのように、四方へと飛び散っているのだから。
「あら、まだ息が合ったのね?」
ティルリアは言うと、辛うじて呼吸をしていた男の心臓を靴のヒールで打ち抜き殺害した。
「い、いやああ!」
その時、思わず女性がへたり込んで悲鳴を上げる。ティルリアが顔を上げると、そこには十数人の人影があった。彼女達はティルリアの命令で、男性の解体作業をずっと見せつけられていた。背を向けたなら、その瞬間に殺すと脅されて……。
「ま、どっちにしろ殺すんだけれど、ね」
うふふと、ティルリアは口に手を添えて優雅に笑った。次は、悲鳴を上げた女性に狙いを定め、ティルリアはトランクケース型のダモクレスをけしかける。
「いやあああああああ、助けてえええええ!!」
機械の手足は、女性の四肢を容赦なく、無慈悲に切断していく。最終的に現場には、十数人分の手足と死体が散乱していた……。
●
「指揮官型ダモクレスの地球侵略が始まってしまいました」
口火を切ったセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は、沈痛な面持ちで集まったケルベロス達を眺めた。
「指揮官型の一体『踏破王クビアラ』の目的は、自身と配下の戦力アップです。配下を送り込んできた理由もまた、戦闘経験を得るためで、皆さんの全力を引き出し、より正確な戦闘データを得るためには手段を選びません」
今日、十数人の人々が、惨たらしく殺されてしまう可能性がある。人の尊厳を奪うような、最悪なやり方で。
「ケルベロスの戦闘データを得るためだとしても、……こんなやり方は絶対に認める訳にはいけません!」
セリカは、詳細が書かれた資料を配った。
「先程も言った通り、今回出現したダモクレスは、人質となった人々の四肢を時間をかけて、絶望させながら殺していきます。そして、人質となった十数人の内の、一番最初の男性に関しては……残念ながらもう助けることができません」
ケルベロス達が介入できるタイミングとしては、二人目の犠牲者となってしまう女性が、へたり込んで悲鳴を上げる辺りが最短となる。
「敵の正体は判明しています。シエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する人形娘・e00858)さんと因縁のある、ティルリア・レキュペラスィオンです」
セリカは、次いでティルリアの戦闘能力について解説を始める。
「ティルリアに配下はいませんが、トランクケース型のダモクレスを従えています。ダモクレスとティルリアは二つで一つの存在であり、ダモクレスにダメージを与えると、ティルリアにも同様にダメージが入ります。ですが、トドメはティルリア本体にしか入らず、ダモクレスはその弱点を守るように立ち回るようです」
攻撃手段としては、自立駆動するダモクレスによる突進に加え、ティルリアの長く強靱な足腰を生かした蹴り技や、古代語魔法と多彩だ。
「ティルリアの戦闘力は、通常のダモクレスよりも多少強力ですが、皆さんが油断さえしなければ撃破は充分に可能です。また、ティルリアは『ケルベロスとの戦闘』及びデータの蓄積を優先目的としているので、戦闘が始まってしまえば周囲の人々へ攻撃は行いませんし、人質も解放されます」
たが、ケルベロスが一般人の救出に人数を割いて全力で戦闘をして来ない場合、戦闘データを取られまいと、手を抜いて戦闘をしているとティルリアに悟られた場合はその限りではない。その時は、見せしめとばかりに周囲に被害が及ぶ事態も考えられるので、細心の注意が必要だ。
「このような残虐な行為を見過ごす訳にはいきません! 男性がどんな思いで亡くなったか……。男性の無念を晴らすためにも、ティルリアに罪を贖わせなければなりません!」
参加者 | |
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シエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する人形娘・e00858) |
フランツ・サッハートルテ(剛拳のショコラーデ・e00975) |
イグナス・エクエス(怒れる獄炎・e01025) |
ジョージ・スティーヴンス(偽歓の杯・e01183) |
泉宮・千里(孤月・e12987) |
セレッソ・オディビエント(だらマス・e17962) |
森嶋・凍砂(灰焔・e18706) |
九々麗・吟(艶美・e29370) |
●
「confirmation……事前の相談通り、わたしの事はジャルとお呼びくださいですの」
「俺の事はイギーで頼んだ」
シエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する人形娘・e00858)と、イグナス・エクエス(怒れる獄炎・e01025)の名称の呼び方に加え、作戦の最終確認を終えたケルベロス達が、惨劇の現場となる大通りを駆ける。
「血の臭いが鼻につくのう……折角の香が掻き消えてしまう」
現場が近づくに従い、匂いたつ濃厚な血臭に、九々麗・吟(艶美・e29370)は顔を僅かに顰めた。その血臭は、まるで吟が纏う花の香を犯すように……。
その時――。
「い、いやああ!」
間近となった戦場から、女性の悲鳴が上がる。四方に散る手足に、絶望と恐怖の戦く女性を含めた被害者達。
「どうもーお元気? あなたのお探しケルベロスよ! さああたし達と遊びましょうね!」
そんな、どこまでも澱んだ空気を打ち払うように、森嶋・凍砂(灰焔・e18706)の声が大通りを切り裂く。
「あら、ようやくお出ましね?」
現れたケルベロスに、この惨劇の主演たるティルリア・レキュペラスィオンはどこまでも艶然とした笑みを浮かべながら、歓迎するように凍砂の無慈悲な斬撃をトランク型の相方に受け止めさせた。
「助かった、ケルベロスだ!」
「……良かった……うぅっ……」
ようやく現れた救いの手に、騒然となる被害者達。歓喜する者に、泣き出す者。
『助けに来た者だ、巻き込まれ無いよう折を見て脱出してくれ。だが、故あって直接避難誘導は行えない。敵からの攻撃は我々がすべて請け負う』
フランツ・サッハートルテ(剛拳のショコラーデ・e00975)は、そんな被害者の中でも比較的冷静そうな数人に目を付けると、テレパスを通じ、安心するように笑顔で語りかけた。
「お主ら、死にたくなければ早々に此処から去る事じゃな」
無論、その間もケルベロス達がティルリアから目を逸らす事は決して無い。吟が攻性植物に黄金の果実を宿らせ、聖なる光で味方の耐久を高めており、
「此処は食い止める、落ち着いて離れな」
「死にたくなきゃさっさと逃げろ!」
呆然とする女性の間に入った泉宮・千里(孤月・e12987)とセレッソ・オディビエント(だらマス・e17962)が、ティルリアを守護するトランクを集中して狙い、「鋼の鬼」と化した拳と「砲撃形態」に変形させたハンマーから放たれた竜砲弾でと、次々に攻撃を仕掛けていく。
「あら、いい感じね。そうよ、それでいいの」
連撃に晒されているにも関わらず、ティルリアの表情は優雅であった。主目的である戦闘データ蓄積のためには、こうしたケルベロス達の反応こそ望んでいたのだろう。無残に転がる遺体への罪悪感は欠片たりとも見られず、嬉しそうにタフトの神器の剣を捌く。
その間に、フランツのテレパスを受けた数人が、足腰の覚束ない女性を抱えて退避させてくれた。ティルリアは、そちらを気にも止めず、戦闘に集中している。
「やれやれ、人を人形扱いとはいい趣味じゃないか。一つ向いてる仕事があるぜ? いかがわしい店で人を虐める、卑猥な役さ」
「……下品ねッ!」
だが、ジョージ・スティーヴンス(偽歓の杯・e01183)が薄笑いと共に言い放った言葉が、ティルリアの悠然とした表情を崩す。
同時に、強靱な足腰に支えられた長い脚とヒールが、ジョージに猛然と迫る。
「悪いな、生憎と俺は蹴られて喜ぶ趣味はないんだ……いい女ならともかくな」
ジョージは、両腕を壁にしてティルリアの蹴りをガードした。痛みと血が舞うが、ジョージが気にした風もなくドローンを展開させる。
「悪趣味な華には、疾く枯れ果てていただこう」
「抗えない一般人をダルマにするとか、このクソ外道、潰してやるから覚悟しな。ケルベロスと戦いたけりゃ果たし状でも出せばいいだろうが!」
フランツとイグナスが露わにする激昂。それこそがティルリアの求めていたものであり、彼女は「ふふふっ」と嘲笑う。
その不快な笑みをやめさせるため、フランツの地獄の炎を纏ったガントレットに、イグナスの放つ電流が迸った。
「Bonjour……ティルリアお姉さま、お久しぶりですの」
果たして、シエナにとってそれは懐かしいと読んでもいいものか。彼女は、シエナの姉だが、ただ一方的に愚痴を言われるだけの関係であった。
「……誰かしら?」
しかし、見知らぬ誰かを見るようなティルリアの視線に、一抹の寂しさを覚えるのもまた事実。レプリカント化の際に、外見が別人に変化するのは普通であり、それに加え、ダモクレスにとってレプリカントは唾棄すべき存在であろう。いわば、ゾンビのような、故人を冒涜する存在。
「Emprunts! ラジン、眷属を借りますの!」
シエナは、ラジンシーガンが集めた眷属に命令しながら、一瞬目を伏せた。それは、過去への決別か……。
「――En avant! 全軍突撃なの!」
その号令と共に解き放たれた様々な毒をもつ蜂の眷属達の特攻は、ティルリアを十分に満足させるものであった。
●
人質の姿がなくなり、ケルベロス達の懸念材料の一つが解消された。あとは、できる限り最短でティルリアを撃破し、敵に渡るデータ量を最小限にする事だ。そして、それに加えて――。
「昨日の私は今の実力の60%だった。明日の私は今の120%、一週間後は今の250%だ。さて、このデータは役立つかね?」
「小賢しいわねっ!」
フランツが、ティルリアを惑わすような言葉を吐き出しながら、
「ただそこに居れば良い。我が地獄が君を迎えに行こう」
高速の突進からの貫手を繰り出す。いずれ邪魔になるであろうトランクの外殻を抉りながら、その貫手は何度も角度やタイミングを変えては追いすがった。
「ふん、その程度……! 反撃なさい!」
だが、ティルリアがトランクにそう告げた途端、トランクは反転して前衛、中衛に列攻撃を仕掛けてくる。
体力の少ない凍砂をラジンシーガンが庇いに入ると、
「ありがとね、ジャルさ~ん!!」
凍砂は少々大袈裟な様子でラジンシーガンとシエナに感謝を告げた。
その様子に、戦闘中だというのにシエナの表情が少し緩む。しかし、口元を引き締めたシエナは、ティルリアにある事を問いかけた。
「Question……なんでお姉さまは本来の役目であるダモクレスの回収をせず、一般人の殺戮なんてしていますの?」
「そんな事、貴女に言う必要があって?」
だが、ティルリアの反応は鰾膠もしゃしゃりも無い。この分では、ジュモーお母様の近況について尋ねても、似たような答えが返ってくるだけだろう。
「私の大切な妹分であるシエナに、随分な態度だな。心も身体もバキバキにへし折ってやるから覚悟しとけ」
そんなティルリアの態度が、セレッソはシエナ本人以上に気に入らない。ただでさえ気が立っていたのに、それをさらに増幅させ、セレッソは簒奪者の鎌を投げつける。
「ふんっ!」
投げつけられた鎌をティルリアは軽いステップで躱す。だが――。
「Prendre! 本来の役目を放棄したお姉さまにその手帳は不要ですの!」
セレッソの作った隙をついたシエナが、ティルリアを殴りつけ、緊縛した。
「なんであんたがいい女キャラみたいな振る舞いしてんのよ、このブース!」
追撃に、凍砂の地獄の炎を纏ったチェーンソー剣がティルリアに叩き込まれる。
「グッ!?」
しかし、手帳を奪う寸前で、緊縛からティルリアに逃れられてしまう。
「逃がすか!!」
シエナの正体が悟られていない以上、手帳にシエナの知る効力が今なおあったとしても問題はない。だが、念には念を入れ、イグナスの轟竜砲がティルリアの手帳を持つ手を直撃し、ラジンシーガンがそれを回収した。
「よくも私の手帳を!?」
怒りを浮かべたティルリアは、手帳を奪い返そうと古代語を詠唱し、シエナに狙いを定める。やがて、ティルリアは妖しい気配を纏った呪術を放つが!
「……まったく、休む暇もありゃしない」
攻撃を読み、シエナの前に陣取ったジョージが呪術を受け止める。今の所は大丈夫なものの、石化の影響を受けて感覚に鈍くなる足に鞭を打ち、ジョージは前に出た。
「ヒール技なんざ今までほとんど使ったこともないんだがな、やっぱ、こういうのが落ち着くぜ」
ジョージの振りかぶった鉄製の暗器の先端が、トランクへと深々と食い込んだ。
「まったくだぜ、手間をかけさせてくれやがる」
千里にしろ、普段とは違う装備である。情報を与えないために、幻花まで控えざる得ない。だが、こうした戦いも、偶には悪くはないと千里は笑って、未だ残るティルリアの惨殺の名残にその笑みは掻き消される。
「(戦闘の余波で余計酷い事になってやがる。どんな美貌もこれじゃ台無しってもんだ――胸糞悪ィ)」
「……そんなに見つめられると、照れちゃうわよ?」
そんな千里の視線を感じたのか、ティルリアが目を細めた。
花とはいえ、あれは人を喰らう忌まわしき食中花。さっさと散って引導を渡すべく、千里は惨殺ナイフを変型させ、トランクを切り刻んだ。
「パラライズを受けたジョージの傷が目につくのう」
吟が制服の裾を払いながら、後方から戦況を見つめている。
「仕方あるまい。多少の機密漏洩はやむを得ぬ」
判断は一瞬。
「滾々と 御霊に添いて 咲く花よ 今ひとときは 夢の如くと」
吟が、浪々と詠を詠み上げ、前衛をヒールする。その様は、優雅であり、妖艶でいて不遜。
「ん?」
ふと、吟は視線を感じて顔を上げた。すると、こちらを見つめるティルリアと目が合う。ティルリアはまるで、自分と似た者を見るように、吟を見ており。
「笑止! 其れが妖艶と? ――抜かすなよ、小童めが」
「な、なんですって!!?」
吟はその一言で、ティルリアを切って捨てるのであった。
●
戦闘開始から数分。新たに分かった情報としては、ジョージの列攻撃により、ティルリアとトランクが同列にいる事。ディフェンダーである事。
そして――。
「ディフェンダーと同じように、毎回トランクがティルリアを守れるとは限らないって事だ! 命も情報も、これ以上はくれてやらねえ――朽ち果てろ」
「ぐっ……ああっ!!」
千里の「鋼の鬼」と化した拳が、ティルリアに深々と突き刺さった。ティルリアとトランクは互いにダメージを共有しているゆえ、かなりのバッドステータスを蓄積させ、消耗している。
「行くぞ、タフト!」
セレッソとタフトの目的は、ひたすら炎と服破りを付与する事。特に、服破りによる火力強化は全体の役に立っていた。
タフトが神器の瞳で対象を睨むと、一瞬の内にティルリアが炎上する。
「あ、あああ!」
悶え、叫びを上げるティルリアに、セレッソは一切の容赦なく、炎を纏わせた鎌を叩き付ける!
「ギッl イイ゛!」
美しかったティルリアの相貌が焼けて爛れる。それでもなお、ティルリアは反撃のために、呪術を繰り出した。呪術は、攻撃の体勢を構えていたフランツへ。
「くっ、だが!」
しかし、そんな事でフランツは怯みはしない。あと一歩、もう一歩なのだ。これまでに施したインフェルノファクターの効果や、吟のブレイブマインにより、火力の上がったフランツの貫手が、ついにトランクを貫通する。
「あっ、そんな!?」
同時に、ティルリアが膝をついた。
「お主ら、今じゃ!」
すぐ様、鋭い吟の声が戦場に響き渡り、率先して吟が攻性植物を操ってティルリアを締め上げる。
「大変失礼とは存じますがここで死んで頂けません?」
「き、貴様ぁ!?」
動けないティルリアに、わざと慇懃無礼な言葉使いをした凍砂が煽る。
「顔もそんなになっちゃってぇー、可哀想~」
自分がそんな顔になったら生きていけなーい、と笑う凍砂の嘲笑と絶空斬が、ティルリアからさらに余裕を奪っていく。
「ああああああああっ!!」
吟の攻性植物から抜け出したティルリアは、断末魔の如き叫びを上げながら、蹴りを放つ。その蹴りは、ジョージの鳩尾へと深々と突き刺さり、ジョージに苦悶の声を漏らさせた。
「は、ははは……」
意識が遠のく中、ジョージはどこか空虚な笑みを漏らした。
「(まさか、かつて自殺願望に囚われていた俺が、自分を癒やすなんてな)」
ジョージは、なんて滑稽で無様な姿なのだと、自分へ向けて自嘲するような笑みを浮かべる。だが、オーラで自身を回復する間際には、ジョージの脳裏には、お節介な二人の男の顔が浮かんでおり――。
「本当に、しょうがねぇな」
倒れる事なく堪えたジョージは、戦いの最後を見届けるために顔を上げた。
「fin……さようなら、ティルリアお姉さま」
幕を引くべく、シエナは言った。それに呼応するように、ラジンシーガンがティルリアに体当たりを喰らわす。そうして、ティルリアが体勢を崩した所に、
「Emprunts! ラジン、眷属を借りますの! En avant! 全軍突撃なの!」
再び蜂の群れがティルリアに襲いかかるが――。
「Pourquoi!?」
その攻撃は、最後の力を振り絞ったトランクによって防がれてしまう。確かに、ティルリアとトランクはダメージを共有しているゆえ、ティルリアを撃破しない限りトランクも撃破はできないはずだ。だが、穴だらけになってもティルリアを庇うトランクに、シエナは複雑な感情を抱いた。
思えば、こうして相方にお世話になりっぱなしな所は、ティルリアもシエナもそっくりだ。
そして、だからこそ最後は他の者が相応しいのかもしれない。
「データが欲しければ取れるだけ取ればいいさ。だがデータの蓄積如きで俺達を推し量れるとか思うなよ! 俺達は一分前より強くなってみせるからな! わかったらさっさと潰れやがれ!」
イグナスの一喝と共に、業火を纏うドラゴニックハンマーがティルリアに振り下ろされる。
「……ふふっ」
最後の時を悟ったティルリアは、悠然と、艶然と、そう笑ってみせながら逝ったのであった。
「……ティルリアお姉さま」
亡骸を前に、シエナが手を組み祈りを捧げている。その肩に手を置き、目を伏せたセレッソは、静かに彼女へと寄り添っていた。
「……どうやら俺はまだ、生きている様だ」
嬉しいのか、悲しいのか、ジョージにすら分からない。ただ、深い吐息をほぅ……と吐き出した。
「……さっさと禍根から絶たねえと、な」
攻勢の規模から言えば、恐らくまだまだ始まったばかりなのだろう。怪我人の手当を終えた千里が頭を掻きながら、方々へ戦闘の終わりを伝えている。
「これで、全部よね?」
凍砂は、バラバラになった男性をできる限り元通りにしようと務めていた。だが、そこに命が宿る事は決してない。凍砂は無言でしゃがみ込むと、手を合わせた。
せめて、死後は安らかにいられる事を願って……。
作者:ハル |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年2月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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