破壊を繰り返す試作機

作者:なちゅい

●破壊される夕暮れの街
 その街は、ダモクレスの強襲を受けていた。
 「魔障」の力を得た試作機、ファーネンシルト。和服にフリルという、和洋折衷したような赤い衣装を纏った女性だが、耳から伸びる長いアンテナ、首には無地の黒いチョーカー。そして、その背にはアームドフォートと、青い光を帯びた刃が取り付けられた小型の自律兵器8機が浮かぶ。
 彼女は無数のレーザーで周囲を破壊し、徹甲弾で建物に穴を開けてから爆破。さらに、逃げ惑う人々に刃を突きつけていく。
「ひ、ひいいいっ!」
「あらあら……」
 ファーネンシルトは1人の女性に目をつけ、その頬にすっと刃を這わせて赤い筋を付けていく。
「うふふ……」
 別に嗜虐趣味があるわけではない。彼女は自らの目的の為、こうしていたのだ。
「さあ、早くいらっしゃい、ケルベロス。さもないと……」
 ファーネンシルトは刃の一つを捕まえた人の首に突きつける。その尖端を押し付け、赤い滴がぽとりと落ちていく。
 それを目にし、彼女はまた「うふふ」と艶やかに笑うのだった。
 
 ヘリポートへと駆けつけたケルベロス。
 すでに、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)がヘリオンの離陸態勢を整えた状態で、ケルベロスを待っていた。
「すぐに現場に向かうことはできるよ。その前に取り急ぎ話を……」
 聞くところによると、すでに人々がダモクレスによって襲われている地域があるという。その為に現場に急行したいと、リーゼリットは集まるケルベロス達へと告げる。
 だが、その前に、状況説明。焦るわけには行かない。
「指揮官型ダモクレスの地球侵略が始まってしまったようだね」
 指揮官型の一体『踏破王クビアラ』は自分と配下のパワーアップの為、ケルベロスとの戦闘経験を得ようと配下を送り込んできた。
 クビアラ配下のダモクレスはケルベロスの全ての力を引き出して戦う事で、より正確なケルベロスの戦闘データを引き出そうとする。その為ならば人質を取ったり、一般人を惨たらしく殺したりなどする行為も平気で行なってくるようだ。
「そんな行いを見過ごすわけには行かないよ」
 場所は、奈良県某所。日が沈む頃に街へと来襲した女性型のダモクレスは、現地で破壊行動を繰り返し、ケルベロスの来訪を待っている。
「現場は繁華街の中心だね。到着地点で1人の成人女性を捕まえているようだよ」
 ケルベロスが戦闘を望めば、ダモクレスは女性を解放するはずだが、周囲にはまだたくさんの人々がいる。その人々の避難に多くのケルベロスが当たったり、手を抜いて戦おうとしたりすると、敵は一般人の殺害を優先させる可能性がある。
「現れる踏破王クビアラの配下は、『ファーネンシルト』と名乗っているよ」
 武装は、背にあるアームドフォート。そして、刃が取り付けられた小型の自律兵器8機だ。それらを使った攻撃はいずれも強力な為、油断は禁物だ。
「敵の狙いは、皆のデータを取ること。その阻止の為には、可能な限り短い時間で敵を撃破する事が有効だよ」
 交戦時間が短いほど、敵が取得するデータは少なくなる。
 この為、敢えて手を抜いて戦い、データの信憑性を下げるという手段もあるだろうが、それで敗北してしまえば元も子もないし、敵に気取られれば、ファーネンシルトが一般人殺害を優先させる危険がある。こちらの作戦を取るなら、細心の注意が必要だろう。
「あるいは、皆が普段とらないような戦略で、戦うといいかもしれないね……」
 斬新な戦法を用いることで、敵が得られるデータの信憑性を下げると同時に、ケルベロス側も様々な戦術の実験を行なう事が可能となる。
 勿論、敗北したら元も子もないのは同じなので、行うならば戦術について充分な検討が必要となるだろう。
 情報を集めようと動くダモクレス、『踏破王クビアラ』。その目論見を止める為、事件を1つずつ解決していきたい。
「敵の破壊行動を止める為に……行こう」
 説明を終え、リーゼリットは改めて、ケルベロスへと現場への急行を促すのである。


参加者
クロノ・アルザスター(サンタクロノース・e00110)
写譜麗春・在宅聖生救世主(誰が為に麗春の花は歌を唄う・e00309)
アンネリース・ファーネンシルト(強襲型レプリカント・e00585)
守屋・一騎(戦場に在る者・e02341)
スミコ・メンドーサ(グラビティ兵器技術研究所・e09975)
ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205)
スノードロップ・シングージ(堕天使はパンクに歌う・e23453)
鉄砲小路・万里矢(てっぽうはつかえません・e32099)

■リプレイ

●ケルベロスを待つダモクレス試作機
 ヘリオンは奈良県上空へと差し掛かる。
 状況を再確認するケルベロス達。大儀そうに鉄砲小路・万里矢(てっぽうはつかえません・e32099)が溜息をつくと、クロノ・アルザスター(サンタクロノース・e00110)も合わせるように「は~」と気のない声を上げる。
「指揮官型ダモクレスっすかー。何かそんな話も出てたね」
 話によれば、この指揮官ダモクレスは、『魔障』という能力を持つという。これが如何なる能力なのか……。
「魔障の力……? 関係ないね、全部斬り裂く!」
 写譜麗春・在宅聖生救世主(誰が為に麗春の花は歌を唄う・e00309)はヘリオン内ということもあり、「やー」と手刀で切り裂くモーションをしてみせる。
「魔障の力だかなんだか知りマセンが……」
 現場に到着したようで、メンバーが立ち上がる中、スノードロップ・シングージ(堕天使はパンクに歌う・e23453)も腰を上げる。
「こと破壊に関してハ、全ケルベロスの中でも屈指の火力を持つアタシのが上だと思い知らせてアゲマス」
 自信に満ちた笑みを浮かべ、スノードロップはヘリオンから降下していくのだった。

 地上に降り立ったケルベロス達は、急いで現場へと向かう。
 街中を破壊しながら、一般女性一人を捕まえていたのは、和服にフリルのついた衣装を纏った女性型ダモクレス。耳の位置から上に向けてアンテナを伸ばす彼女は笑みを浮かべながら、捕まえた一般女性の腕をきつく握り締める。
「ファーン、ひーさーしーぶーりー!」
 アンネリース・ファーネンシルト(強襲型レプリカント・e00585)が呼びかけたそのダモクレスは雰囲気こそやや異なるが、その外見はアンネリースにかなり似ていた。
「アンナちゃん……」
 対峙する2人。そこへ、他のケルベロス達も駆けつける。
「私達を……呼んだなー!」
「お望み通り来てやったぞー。さっさと戦って、さっさと倒させて貰うぞ、和ロリのねーちゃん」
 頭に麗春の花を咲かせた在宅聖生救世主は天使の翼を、頭に竜の角を生やした万里矢は鋼鉄の翼を広げ、それぞれダモクレスの迎撃態勢に移った。
 続々とやってくるケルベロス。牧羊犬のウェアライダー、ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205)は敵の背後からゆっくりと迫る。
「そこら中で、派手にやってくれちゃってますね。こいつは大技をぶち込まざるを得ませんね!」
「ここは危険よ! 逃げて!」
 クロノは一度だけ周囲に大声で呼びかけた。
 ファーネンシルトは小さく眉を動かしたが、クロノはそいつに殺気を籠めた視線をぶつけ続ける。下手な避難誘導は手抜きと判断され、ダモクレスが捕まえた一般女性の命を奪うかもしれないからだ。
 敵の目的はケルベロスのデータを集めることだという。それを、クロノは是とはしたくはないが、一般人を死なせるわけにはいかない。
 ダモクレスという存在、そして、目的の為に冷静に他者を害する輩。守屋・一騎(戦場に在る者・e02341)はそいつを目にし、嫌悪感と無力感と不快感に苛まれながらも不敵に笑って見せる。
「情報ついでに伝えとけ。今度はあんた自身に地獄を見せてやる」
「積もる話はあるけども、とりあえずそれは後回しにして!」
 アンネリースはアームドフォートを展開し、敵と見定めた相手へと突きつけた。
「今日! 此処で! アンナが! 引導を渡してくれるわー!」
「うふふ……、おいでなさい、アンナちゃん」
 ダモクレス、ファーネンシルトは捕まえていた女性の手を離し、小型の自律兵器を展開してケルベロスへと襲い掛かっていく。
 一般人の解放を確認したクロノを始め、ケルベロスもまたダモクレスの応戦を始めるのである。

●温和な笑顔に潜む狂気
 ミルクティー色の髪をしたファーネンシルトの背後に浮かぶ、8つの狙撃型誘導兵器『ダマスカス』。それらにはそれぞれ、青白い刃が装着されている。
「うふふ……。さあ、行きなさい」
 ファーネンシルトの指示で、自律兵器は一斉にケルベロスへと飛ぶ。
 その刃に逆らうように、スミコ・メンドーサ(グラビティ兵器技術研究所・e09975)は敵へと迫る。
「前陣速攻! 敗北というデータを記せばいいさ」
 煽りながらも、スミコは敵目掛けて漆黒の魔槍……デモニックグレイブを振るう。まずは、そのひらひらとした和服のドレスを槍の尖端で裂いていく。
「性格悪いって聞いてるけど……、どうなのかなー?」
 翼で飛行しながらも、釘を生やしたエクスカリバールで敵を殴りつけていくのだが、そこで敵の自律兵器が執拗に在宅聖生救世主を狙った。
「本当に、性格悪い!」
 体を裂かれた在宅聖生救世主はなんとか、地面スレスレで持ちこたえていたようだ。
 自律兵器の刃は他のメンバーにも襲い掛かっていた。
 黒の柴犬の獣人である一騎は自らの傷にはさほど頓着せず、盾となろうと身構える。刃に切り裂かれながらも仲間を護りきり、一騎はブラックスライムを捕食モードにしてダモクレスへと食らいつかせた。
「あらあら……」
 動きを封じられ、頬を押さえて首を傾げるファーネンシルトへ、一騎の背後から飛び出したスノードロップが叫びながら近づく。
「さて、今回もキルキルしてイキマス! やってやるネー!!」
 敵のデータ採集などさせない。スノードロップは全力全開でグラビティを解き放つ。
「死ト希望ヲ象徴する我が花ヨ。その名に刻マレシ呪詛を解放セヨ! スノードロップの花言葉、アタシはアナタノシヲノゾミマス!」
 スノードロップ、和名は待雪草。その花言葉に籠められた呪いは真っ白な花びらとなり、彼女の翼の漆黒の羽と共に舞い落ちる。
 その間、敵を逃がさぬようにと敵を囲う仲間の穴を埋めるように、万里矢は立つ。
「回復はボクがなんとかするからさ。皆は思いっきりボコボコにしてやんな」
 万里矢は前線の仲間の背後にカラフルな爆発を起こし、仲間の士気を高めていく。
 そうした支援によって力を高めたジュリアスは、敵が逃げられぬようとその周囲を立ち回る。
「わざわざご丁寧に、地獄に片足を突っ込んだんです。五体満足で帰れると思わない事ですね……。いや、決してエロい意味ではなく」
 伝説の上で、ケルベロスは地獄の番犬という説もある。そんなケルベロスの護る地を襲うダモクレスへ、ジュリアスは至近距離から仕掛ける。
「頂きますも言わぬ殺生などはもっての外! 貴方はおやつ抜きですっ!!」
 ロングコートをはためかせ、ジュリアスはオーラを纏わせた拳をダモクレスへと浴びせかけた。
「お望み通り、全力でぶっ壊させてもらうわ!」
 こちらも接近戦。クロノは大きな声で周囲に呼びかける。巻き起こる風は気流を生み出し、彼女は気流のレールに乗った。
「風よ! 私を導いて! ロンドバルデュリアー!!!」
 風の加護を受け、クロノは一陣の風のように特攻していく。
 仲間達の攻撃の合間を見て、戦闘モードに切り替わったアンネリースはライドキャリバーのケーニヒに盾となるよう指示を出す。
「前衛が多い中辛いでしょうが、頑張って下さい」
 凛々しい口調で語りかけた彼女はケーニヒを前線に送り出し、自らも爆炎の魔力を込めたガトリングガンの弾丸を雨嵐のように叩き込む。
 それを浴びたファーネンシルトは自身の服が燃えるのを、冷静に見つめる。
「あらあら……」
 驚きの声を上げるダモクレス。しかし、その瞳はしっかりと個々のケルベロスを捉え、その動きを、グラビティをじっくりと観察していたのだった。

 周囲からは人々が避難を進めていくが、微笑を浮かべたままのダモクレス、ファーネンシルト。
「うふふ……」
 彼女は背中のアームドフォートを構え、ケルベロス達を同時に照準内に収めてレーザーを発射する。その間、彼女はケルベロスの動きを見つめるだけでなく、時折、人々にも注意を向けていた。
「一般人には、手を出させる余裕なんて作らせねーぞー」
 仲間が攻撃に専念できるように。万里矢は何かを呟き始める。
「りしほろきてれこぜ――まだ頑張って貰わないと困るぞー?」
 その言葉によって呼び起こされたのは、浄化をもたらす優しき風。仲間を包み込む風は、万里矢の意思に応えてダモクレスのつけた傷を塞ぐ。
 癒しを受けたクロノは指輪から光の剣を発し、ダモクレスの体へと切りかかっていく。
「あらあら……」
 その猛攻にプレッシャーを受けてはいるはずだが、ファーネンシルトは涼しい表情のままでアームドフォートの砲口をケルベロスへと向ける。
 そこに力の高まりを感じたスノードロップは、『華斧 華刃剥命』を手に躍りかかった。
「このアタシに火力勝負を挑むなんていい度胸ネ! きっちり、キルkillしてやりマス!!」
 刃に刻まれたルーンを発動させ、スノードロップはその厚く鋭い刃を敵へと振り下ろす。
「輝き砕ケ! 華刃剥命!」
 強烈なる斬撃。しかし、ファーネンシルトは笑みを崩さず、徹甲弾を撃ち出す。それはディフェンダー陣をすり抜け、在宅聖生救世主の体に撃ちこまれ……炎上する。
「き……くかぁー!」
 爆炎の中から在宅聖生救世主が姿を現し、ダモクレスへと迫った。
「天よ天よ。遍く我等を見守り包む優しき光よ、我等を見届け慈しむ暖かき光よ」
 その声に応じて現れ、大地に突き刺さった巨大な光の十字架を、在宅聖生救世主が引き抜いた。
「今一時、その身を刃へと変え、あれなるものを切り裂き給え!」
 十字架は巨大な光の剣となり、ファーネンシルトの体を切り裂く。
 その眼前に立つ一騎が腕から伸ばす攻性植物で、敵の体を縛り付けた。
「魔障ってのは、なんなんスか?」
 嫌悪感を抱きながらも、一騎は穏やかな微笑みを湛える敵へと問いかける。
「魔障は、ファーンの力を高めてくれるのよ……」
 それはダモクレス達がケルベロスを誘い出して交戦を求めていることと、決して無関係ではないだろう。
 こうしている間にも、敵は自分達の情報を発信している可能性がある。一騎はそれに注意を払うが、それが何なのか探ることが出来ない。
 多少の攻撃を受けながらも、ファーネンシルトはまたも自律兵器8機を操り、前線の仲間達の体に斬撃を見舞っていく。ライドキャリバーのケーニヒもじっとそれに耐えていた。
「おー、痛い。ま、流石に単身乗り込んでくるだけの事はありますか」
 全身に切り傷を受け、ジュリアスが感心する。万里矢がすかさず仲間の背後に爆発を起こし、傷ついたジュリアスを含めた前線メンバーの士気を高めていく。
 ダモクレスの体は仲間達の攻撃によって拘束され、足を鈍らせてきている。そいつを狙い、スノードロップは高く跳び上がった。
「バッキバキに砕いてやるネ!」
 重量のある斧を楽々と操り、彼女はその刃を全力で振り下ろす。
 かなりのダメージにもまるで焦りを見せぬファーネンシルトの背後には、アクアカーモ……光学迷彩で戦場に紛れたスミコの姿があった。
 ダモクレスの襲撃でスミコは国を焼かれた過去を持つ。そんなダモクレスとの交戦に臨む彼女の脳裏に、人の心に目覚めたレプリカントの少女の顔が浮かぶ。
 その支えを感じながらも、目の前のダモクレスの中に自らの目的を果たそうとする指揮官の存在を見出したスミコは、デモニックグレイブを振るう。
「悪いけど、もらった!」
 敵に近づいた彼女は無防備な敵の背に、刃を突き立てた。
「あら……」
「どうだ、不可解だろう? 人間は計算通りには動かないのさ!」
 満面の笑みを浮かべるスミコ。それに対し、ファーネンシルトの顔からは笑みが消えた。
「なればこそ、その力の源を……」
「ケルベロスの強さの秘密。宜しい、ならば教えて差し上げましょう」
 少し言葉を溜めてから、ジュリアスは声を荒げる。
「それは……たこ焼き! たこ焼きは地球! 無限の可能性を秘めた命のスープを固めし料理! それを知らずに貴方がたの勝利は無いと断言致しましょう!」
 ジュリアスはファミリアロッドを小動物に変え、「たこ焼きシュート!」と叫びつつ魔力を籠めて飛ばす。
 それに傷口を斬り広げられるファーネンシルトだが、もはや笑わない。
「冗談は程々にしましょうか」
 返答を一蹴する敵へと、ジュリアスはさらに続ける。
「たこ焼きを侮辱しますか。それこそが真理を離れ、数多の同胞を殺します!」
 その時、ファーネンシルトに照準を合わせたアンネリースがアームドフォートの砲口を突きつけた。
「徹甲弾装填。ストライクカノン、発射!」
 アンネリースがトドメとして発したのは、ファーネンシルトが使ったグラビティとほぼ同じもの。その体に撃ちこまれた徹甲弾は大きな爆発を起こして四散する。
「うふ、アンナちゃん、私の負け、ね……」
 最後の瞬間、ダモクレスは小さく笑みを浮かべ、その機能を全停止させたのだった。

●その力を受け継いで……
 ファーネンシルトを撃破し、街にはようやく平穏が訪れる。
「よーし、次の曲いってみよー!」
 ダモクレスによって破壊された繁華街で、在宅聖生救世主はギターをかき鳴らす。
「ガラクタの海にある十字架は 罪を持たず消えた命らしい……」
 彼女の歌はグラビティとなり、破壊箇所を修復させる。
「ええでー!」
「ありがとなー、ケルベロス!」
 さながら、それはライブ活動のようで。現地の人々へと活力を与えていた。
 一方で、メンバー達は倒したダモクレスにも気を払う。
「ま、完全じゃなくともデータとられただろうなー。次はそれも踏まえて戦わなきゃなー」
 万里矢は破壊されたその残骸を見下ろしながら、次なる戦いに活かそうと考える。
「それよりも、どうやって通信網を確保しているのかの方が問題ですね」
 戦法もそうだが、ジュリアスは敵の情報網などについて、手がかりを得たいと主張した。
「分解解剖なりして通信手段を解析しておきたい所ですが……その辺色々含めて、アンネリースさんにお任せします」
 それを調べようと考えるのだが、まずはとジュリアスはアンネリースへと一任する。一騎も同じ意見のようで、どうするのかと彼女を見つめていた。
 アンネリースはというと、少し唸った後、ファーネンシルトの残骸からアームドフォート『エアスト』を拾い上げる。それは、改修すれば問題なく使えそうだ。
「じゃ、もらってくよー!」
 自身の姉とも呼べる相手から敵を撃ち貫く力を受け継いだアンネリースだったが、能天気に声を上げて構えてみせる。
「ねー、似合うー、似合うー!?」
 どうやら、事後についてはさほど考えてはいなかったアンネリースの姿に、仲間達は嘆息してしまうのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年2月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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