●ギャラクシーマンボウ! 襲撃!!
茨城県ひたちなか市。
現在もなおダモクレスの制圧下にあり、無数に埋設された地雷型ロボットとそれらの破壊任務を帯びたケルベロス達が幾度となく激闘を繰り広げる『ミッション地域』たるその地の外縁部で、数人のケルベロス達が帰還の途についていた。
「んもう、相変わらずでかいわ頑丈だわ強いわでほんと面倒だったわねメガアーム!」
「だよねー! あんなでっかい地雷型ロボ、あとどんだけ埋まってんのよ」
巨大で強大な地雷型ロボットの破壊任務を終えたケルベロス達は疲労困憊。
帰ったら何よりまずシャワー浴びたいと語らいつつミッション地域の外へ抜けようとした彼女達の眼前で、何かがぷかっと浮かびあがった。
玩具のメカっぽかった。まるくて平べったくて水色だった。
目が合った。なにこれかわいい。
まるくて平べったいからだの背と腹から、長いひれが上下に突き出たそのさかなは。
「……まんぼう?」
ケルベロスが思わずぽろっとそう呟いた――瞬間。
『マンボウ!』
『ママママンボウ!!』
『マンボウ! ビイイィィィィィィィムッ!!』
「きゃー!!??」
辺りから唐突にぽこぽこ湧いてきた十体以上のゆるキャラまんぼう達が強烈なエネルギー光線やら回転突撃やらミサイル乱射で一斉に襲いかかってきた。
「ちょ、ダメ今ちょっとムリ! 皆、逃げるわよ――!!」
頑強なメガアーム達との戦闘で疲弊していたケルベロス達に応戦する余力はなく、撤退を余儀なくされる。その離脱を見届けたゆるキャラまんぼう達はぷかぷかふよふよと宙を漂い瓦礫の合間に戻っていく。
明日の軍勢の主力を担う次世代量産機。
その開発研究のための量産化運用実験という輝かしい任務を帯び、軍団の未来を背負った彼らは、瓦礫の中にふよっと潜むと、愛らしい電子音声で一声ちっちゃく鳴いた。
『……マンボウ!』
そう、どう見ても玩具のゆるキャラまんぼうな彼らもれっきとしたダモクレス。
彼らこそはマザー・アイリス軍団の新たなる期待の星(生産コストが安い的な意味で)、量産型ギャラクシーマンボウである――!!
●量産型ギャラクシーマンボウ襲撃モード
「なんか凄い期待の新星が現れたんだけど」
天堂・遥夏(ブルーヘリオライダー・en0232)は狼耳をぴるっとさせ、狼尻尾もうずうずぱたりと胸のときめきを隠せない様子でケルベロス達にそう語った。
怒涛の地球侵攻作戦を開始したダモクレスの軍勢。
其々に軍団を率いる六体の指揮官型ダモクレス、そのうちの一体『マザー・アイリス』は現在ダモクレスの支配下にあるミッション地域へ量産型ダモクレスの試作機を放って、その運用実験を行っている。
「来たるべきあなた達との戦いに備えて、コストパフォーマンスのいい量産型ダモクレスを開発しておきたいんだろうね。既に幾つかの機種が確認されてるけど、今回それらとは別の新機種が投入されたらしくてさ」
新たな量産型ダモクレスはミッション地域の外縁部に潜み、ミッションを終えて消耗したケルベロスチームや少人数のケルベロスチーム、経験の浅いケルベロスなどを狙って攻撃を仕掛けてくるという。
「もう幾つか被害報告が上がってるんだけどね。今回は事前に出現が予知できた」
次に彼らが出現するのは茨城県ひたちなか市の外縁部。
現れる量産型ダモクレスは、その名を『ギャラクシーマンボウ』という。
銀河マンボウ――ああ、その壮大なる機種名からしてマザー・アイリス軍団上層部からの期待の程が窺える。もちろん彼らの思惑を正確に推し量ることなどできないが、多分きっと『いずれギャラクシーマンボウで銀河を埋め尽くすことも可能ッ!』的な自信もこめられているのではなかろうか。それが意味することは、つまり。
「ずばぬけて生産コストが低いってことだと思う」
遥夏の狼尻尾がひときわ大きくぱたりと揺れた。
安くていっぱい作れる! しかもかわいい!!
簡単に量産できる可愛いゆるキャラという時点で既にコスパはもう最強だが、彼らの研究開発がこのまま進めば、簡単に量産できて可愛くて、しかも戦力としても超優秀――なんて量産型ダモクレスが誕生してしまうかもしれない!!
「そんなわけだからさ、研究妨害のためにもミッションに向かうケルベロス達の安全確保のためにも、あなた達にこのマンボウ達を殲滅してきて欲しいんだ」
要するにマンボウ達が潜んでる辺りへ向かってのサーチ&デストロイ。
瓦礫の街並みと化したミッション地域外縁部に彼らはふよっと潜んでいるが、特に潜伏に向いた機体ではない。何も知らなければ奇襲されるのも無理ないが、何処かに潜んでいると知った上で索敵するなら発見は容易なはず。
敵の総数は16機。
個体の戦闘力だけ見れば、多少経験のあるケルベロスなら一人で二機相手にしても勝てる程度だが、攻撃に特化している点と何よりその数が侮れない。
「けれど、あなた達ならばっちり全機殲滅してくれる。そうだよね?」
挑むような笑みに確たる信を乗せて、遥夏はケルベロス達をヘリオンに招いた。
さあ、空を翔けていこうか。
マザー・アイリス軍団期待の新星、ギャラクシーマンボウ達のもとへ。
参加者 | |
---|---|
花凪・颯音(欺花の竜医・e00599) |
鏃・琥珀(ブラックホール胃袋・e01730) |
レイリス・スカーレット(紫電の空想科学魔導師・e03163) |
アバン・バナーブ(過去から繋ぐ絆・e04036) |
熊谷・まりる(地獄の墓守・e04843) |
ルリカ・ラディウス(破嬢・e11150) |
マリアローザ・ストラボニウス(サキュバスのミュージックファイター・e11193) |
ムジカ・レヴリス(花舞・e12997) |
●ギャラクシーマンボウ! 遭遇!!
茨城県ひたちなか市、ミッション地域外縁部にて。
――瓦礫の街並みに水色の奴が複数って目立つんじゃ……?
――たぶん目立つよね、ちょう目立つよね。だってマンボウだもの!
熊谷・まりる(地獄の墓守・e04843)とルリカ・ラディウス(破嬢・e11150)の脳裏をふとよぎった予感は大当たりだった。
翼での飛行が可能な二人、レイリス・スカーレット(紫電の空想科学魔導師・e03163)とムジカ・レヴリス(花舞・e12997)が上空からの索敵を開始して僅か三分足らず、鏃・琥珀(ブラックホール胃袋・e01730)のアイズフォンに発見の報があったのだ。
だが。
「了解で……あっ!」
電波の不具合っぽい感じで切れました、と琥珀はメモで仲間に伝える。
外縁部とはいえここはミッション地域。デウスエクス勢力の制圧下にある地で携帯電話や無線等の通信が確実に繋がる保証はない。たまたま短時間だけ繋がったのと、すぐに二人と合流できたのは幸いだった。携帯には頼れないと考えておくべきだろう。
花凪・颯音(欺花の竜医・e00599)も愛らしいボクスドラゴンに声を出しちゃダメだよと眼だけで伝え、皆で敵の潜伏地点へ向かえば、瓦礫の陰に水色のマンボウがわらわらいた。
一応通りからは見えないが上や横からは丸見え。成程『発見は容易』というわけだ。
仕掛ける直前に一機に気づかれたが、
『マンボウ?』
マンボウはななめになった。首を傾げているっぽい。
自分達の方がケルベロス達に先に発見される事態は想定していなかったらしい。ばっちり奇襲のチャンス! だが!!
「よしまずは命中率の高い敵から……って、ああっ! 量産型だから皆完全に一致ー!?」
「弱ってるヤツから――って最初は全部一緒か、とりあえず目についたヤツから行くぜ!」
一瞬まりるは迷い、アバン・バナーブ(過去から繋ぐ絆・e04036)が手近なマンボウへと全力回転で突撃するのに獣撃拳で続く。
飛行索敵組を中心に索敵についてはみっちり作戦を立てていたが、そういえば本番である戦闘については共通方針をまったく立てていなかった。皆で集中攻撃していこうね☆ 的な大まかな指針も無しという豪気な態勢だ!
「けど奇襲は成功だしね、んじゃま、ハデにいってみよっか!」
――誰もこの刃からは逃れられないんだから!
ぷかぷかしてるマンボウ達に目をこしこししたくなったのも一瞬のこと、ルリカは即座に生みだした輝くオーラのナイフで最初に目が合った子を華麗にすっぱり。
更にマリアローザ・ストラボニウス(サキュバスのミュージックファイター・e11193)が完璧な狙いでガトリング連射をぶちかませばマンボウ達は大混乱に陥った。が。
『マンボウッ!?』
『ママママンボウッ!!??』
「吃驚しただけは死なないとは……このマンボウさんはなかなかやるようですね!」
「マンボウのそーゆー噂って大半がデマみたいヨ! 確かにきゅんとくるけどネ!」
いやん、両手に花どころかマンボウハーレムも夢じゃない……!
あわあわする彼らの姿に胸が高鳴るままムジカが凝らせたのは焔めいて揺らめくオーラ、彼女の気咬弾が敵を直撃する様にレイリスは頷いて、
「では改めて、最優先攻撃目標:海洋生物型機動兵器・銀河翻車魚。――戦闘開始だ!」
三つの鉤爪状アンカー閃く鎖を奔らせ、守護魔法陣を描きだした。
もし標的を合わせて全員で集中砲火という策があれば初撃だけで一、二機ほどは軽く撃破できていただろう。先手を取ったケルベロス達は二手目で一機を撃破したが、
『マンボウ!』
『ママママンボウ!!』
『マンボウ! ミサイルー!!』
十機以上のマンボウが『なんかすぐ近くにたくさんいるから』的な感じで前衛陣に無数のミサイルを撃ち込んできた。二、三機程はビームや回転突撃をかましてきたが、まだ此方に大きな被ダメージがない現状では大量のパラライズの方が問題だ。
「く、ヤバい。流石に動けない……!」
「まりる!!」
護り手のうち颯音は防具耐性で、箱竜のロゼは自身の理力耐性で己へのミサイルを八割方躱したが、それでも仲間を庇った分でいくつか麻痺を受け、彼らの倍近く被弾し仲間の分も肩代わりした分でまりるは一気に多重の痺れに襲われた。
五人と一匹の前衛は列減衰があるが、流石に列攻撃×10以上は強烈だ。
――深淵なる叡智、稀有なる魔材。用いて此処に神威を精製せん。
颯音が精製した賢者の石が浄化の霊薬でまりるを癒して、彼女に庇われたルリカも癒しと浄化を凝らせたオーラをそそぐ。続けて回転しかけた一機へマリアローザが夢魔の魔力弾を撃ち込めば、
『マンボウッ!?』
びくぅと飛びあがったマンボウがひっくり返っておぶおぶした。
すごいトラウマが出たらしい。なにこれなごむ。
「この姿で私達を油断させようというのがダモクレスの作戦でしょうか?」
「そういう意図はなかったはずなのですが……」
――治療用ナノマシーン生成、目標への散布を開始します。
断続的な浄化を齎す力を三重に乗せたナノマシーンを放つ琥珀の言葉に、癒し手の浄化を重ねた鎖で更に守護魔法陣を展開するレイリスが微かに笑んだ。
「そうか、琥珀はスペ――もといギャラクシーマンボウを以前から知っていたのだったな」
「はい。しかしあのマンボウはバーニアの欠陥で不採用の烙印を押されたはずなのに……」
なお欠陥の主要因は勿論コストのケチりすぎ、それは琥珀もよく知るところだ!
元は指揮官機として製造されたダモクレスであった琥珀だが、彼女がレプリカント化した後にあちら側で一体何があったというのか。
まあ、ギャラクシーマンボウの類い稀なる低コストっぷりが脚光を浴びて抜擢されたとかそんなところだろう。勿論ただの推測ですが。
「ダモクレスもコスパとか考えるなら、ブラック企業とかパワハラとかもあるのかな……」
何処の世界も世知辛いとかなんてことだ。だがしかし!
――断ち切れ太陽の微笑よ、絶望の雲の切れ間。
諦めず信じて護る力でまりるは、バッドステータスとかいう名の世知辛い絶望を克服する力を前衛陣へと降らせた! 耐性は厚めのほうがきっといい!
●ギャラクシーマンボウ! 激闘!!
このマンボウ、量産型とは言え流石にギャラクシーとか名付けられただけあるッ……!
名前カッコイイし見た目で油断しないようにしねぇと、とアバンは思っていたが。
「それでも詰めが甘かったな」
「だね、ちゃんと作戦とか立てれば良かったかも」
降りそそぐミサイルは護り手に盾になってもらい、撃ち込まれるビームを躱し、アバンの光の剣が一機を撃破すればルリカは流星となって別のぷかぷかマンボウを地に叩きつけた。
『スパイラル……マンボウッ!』
そこへ高速回転マンボウ達がドスドスッと突っ込んできた威力は防具耐性で殺したもののそれでも敵がクラッシャーゆえに結構痛い。
が、個体で見れば確実に自分達より弱くてユルい相手なのだ。
例えば、集中攻撃で確実に敵を減らす――という共通認識が全員にあれば、マンボウ達が迎撃してくるより先に敵機の三分の一、あるいはそれ以上を撃破できていただろう。
それならもっと余裕綽々な展開になっていたはずだ。
敵は『発見は容易』で『攻撃に特化している点と何よりその数が侮れない』と聞いた。
どう索敵するかよりどう戦うかを重点的に詰めるべきだったね、と颯音は苦笑して、
「押し切られるとヤバいしね、僕もメディックに下がるよ」
「助かる! この敵数だと流石に私だけでは追いつかん!」
皆へと声をかければ、双頭の槍めく杖から癒しの電撃を撃ち込んでいたレイリスが即座に応え、電圧で力を高められたムジカがいまだ相当数が健在な敵陣に躍り込む。
「援護するわネ、先生!」
「此方からも牽制、援護します」
「ありがとムジカ、琥珀! ロゼは僕の分も皆を護って。マンボウ食べちゃダメだよ!!」
――If you want to be happy, be.
秘めやかに囁いたムジカの蹴撃が描いた軌跡は周囲の敵を穿つ残影の花、琥珀は両の手に携えたバスターライフルから迸らせた魔力の奔流でマンボウ達を薙いだ。敵群はまだかなり減衰があるが、それでもジャマーたる琥珀が揮う麻痺には大きな意義がある。
花咲く小竜は『えっ』と言いたげに主を振り返り、慌てて敵に突撃した。
――ああロゼ! 涎がたりっとしてるとこも可愛いけど、絶対食べちゃダメだからね!
溺愛オーラだだもれで後衛に下がる青年を狙うビームを遮ったのは、
「これ絶対美味しくないからね、焼きマンボウにしたってカチカチだよ!」
自らビームに突っ込む勢いで跳んだまりる。相性ばっちりの防具でその威力を激減させ、まりるはスマホに燃え上がる地獄の炎をマンボウに叩き込んで見せる。
箱竜の涎は引っ込んだ。
甘やかな夢魔の霧で颯音が単体ヒールを、鎖の守護魔法陣でレイリスが列ヒールを担い、護りもがっつり重ねていくことでようやく戦況が安定してきた。
――蒼き燐光解き放ち、暗雲を斬り裂け、疾風の斬撃!
更に攻めるぜとアバンが斬霊刀を揮い、放つは蒼き一閃。敵の害意のみを斬るその技は、
「っ、効いてねぇ!?」
「いや効いてるし! ばっちりダメージいってるし!」
意志とかなさそうな量産型には効かないような気がしたがそんなことはなかったぜ!
反射的にツッコミ入れたまりるが害意(仮)を斬られたマンボウを三毛猫の拳で撃破し、撃ち込まれたビームを簒奪者の鎌でぶったぎって相殺したルリカが即座にナイフから惨劇の魔力を解き放てば、
『マンボウッ!?』
どきーんと硬直したマンボウがぱたんと横に倒れてぷるぷるした。
やっぱりすごいトラウマが出たらしい。なにこれときめく。
「可愛いっ! まだ運用実験中のくせに……恐ろしい子!」
「これだけいい反応してくれるとトラウマ付ける甲斐がありますよね!」
力一杯頷くマリアローザはエクスカリバールをぶん投げたが、次は勿論トラウマボールで狙い撃ちだよ! みんな一層いきいきしてきたわネ、とムジカは笑み咲かせ、
『スパイラル……マンボウッ!!』
「ああっ! か、かわいいっ!! アタシも全力で応えて――あなたを、倒すワ!!」
水色のドリルというか巨大独楽みたいに回転して突っ込んできたマンボウを抱き、もとい受けとめて、降魔の一撃で撃破。なお、こっそりお持ち帰りしたかった子マンボウ達は親と一緒に消滅しました。
「大分楽になってきましたね」
「ああ、回復にも余裕が出てきた。私も打って出るぞ」
正直皆さんのマンボウ愛がこれほどとはと無表情で驚きつつ琥珀が砲撃を炸裂させれば、不敵に笑んだレイリスがマンボウ達を見据えた。
「オプションなら私にもあるぞ……200機程な。最終平和兵器起動!」
途端、戦場に現れたのは異相次元の次元空母から召喚した小型攻撃機型の数多の使い魔。全方位から高出力ビームを集中され、また一匹のマンボウ(と子マンボウ型ビット×4)がこの世から消滅した。
●ギャラクシーマンボウ! 玉砕!!
量産機は何より数が脅威。ゆえに数が減れば減るほどケルベロス達の勢いは加速する。
「っしゃ! ここから列攻撃で一気に行くぜ!」
「まだ減衰がありますが……そういうことなら、私も!」
鮮烈な軌跡を描いたアバンの剣閃から舞い溢れるのは桜吹雪、彼の狙いに気づけば同じく列催眠を狙っていたマリアローザも夢魔の瞳の魔力を解放し、
「いいね催眠。ロゼ、ブレスを!」
颯音が夢魔の霧でムジカを癒すと同時、箱竜の息吹が催眠を付与された敵を直撃すれば、成程ジグザグか、とレイリスも楽しげに笑みを深めた。
「神威から撃てればいいが……まあいい。照射する」
翼から迸って戦場を翔けるのは聖なる光、シャイニングレイ。
彼女の開発した双頭槍杖、神威弐式から誘導電撃で同効果の技を放つには、杖のみならずオリジナルグラビティの開発が急務だ。
輝く光を追うように戦場を乱舞するのは琥珀が射出した無数のミサイル、ここまでくれば三重の麻痺もその効果を遺憾なく発揮して、痺れで攻撃できずに震えるマンボウが皆に次々撃破されていく。
ああ、ぴくぴくしている姿も可愛い……!
「通信制でも女子高生だもの、ほんとはゆるかわマンボウに興味津々なんだけど!」
「わかるワ、女の子だもの。けど、全力で狩らなきゃネ!」
最早攻撃を喰らうのすら御褒美だけど、もっと戯れていたかった想いを堪えて、まりるやムジカが地獄の炎弾や電光石火の蹴撃で容赦なくマンボウを仕留めれば、残った二機のうち一機が高速回転を始めたが、
『スパイラル……マンボウッ!!』
思いきり惑わされたマンボウは仲間へ突撃。まだ元気があるならあたしにちょうだい、とルリカは虚を纏う刃でマンボウをざっくり斬って、後衛を振り返る。
「先生、やっちゃって!」
「何か用心棒の先生みたいなんだけど」
半裸先生って呼ばれなくて良かったと安堵するような寂しいような複雑な気持ちを抱え、颯音は雪の世界を戴く杖から雷撃を迸らせた。ああ、本当は先生だって思いきりマンボウを愛でたかったのだけど……!
雷撃が爆ぜるとともにマンボウが消えれば、残るは一機。
「どんなにかわいくたって、心が伴っていなければ所詮は偽者です」
心が伴えばダモクレスじゃない気がしたがそれはさておき、琥珀は心からの想いとともにアームドフォートの主砲を咆哮させる。
「あなたに主役は務まりません、万年エキストラには、とっとと退場していただきます」
哀れな量産型ギャラクシーマンボウ襲撃モードの最後の一体は、斬り捨て御免的な彼女の言葉と砲撃に呑まれ、綺麗さっぱり世界から消え去った。
「色んなイミで恐ろしい敵だった……ってか、序盤は結構ヤバかったよねー」
まりるが安堵の息を洩らす。
なお、個人の戦術はともかく全体としては無策で誰一人倒れることなく勝利できたのは、比較的練度の高い面子が多かったことと、颯音が立ち位置をメディックに切り替えたこと、そして、相手が特定の標的に単体攻撃で集中砲火する戦術を取ってこなかったためである。
「ともあれ、銀河翻車魚撃破。敵、残存勢力00%――だな」
満足気にレイリスは宣言したが、ふとマリアローザが呟いた。
「しかし、本物のマンボウさんは卵が多いと聞きますし、もしかしたら……」
「この子達が襲撃モードなら、別モードの子達が他にいるかもしれないわネ」
「まさか、そんな……」
再会を待ち望むようなムジカの言葉。琥珀も『あり得ない』とは言い切れなかった。
何せギャラクシーマンボウのずば抜けた低コストっぷりは誰より琥珀自身が知っている。
だが今回予知された敵は完全に殲滅した。
さよなら量産型ギャラクシーマンボウ襲撃モード、君達のことは忘れない!
多分きっと!!
作者:藍鳶カナン |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年2月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 3
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