最近流行りのロリコン戦車

作者:さわま

●最近流行りのォ!
 荒野を走る一台の戦車がいた。
 その戦車の名は『ロリコン戦車』。
 そう、最近流行りのロリコン戦車である。
「レジーナ様からの召還指令……しかし、その前に行かねばならぬ場所がある」
 ロリコン戦車は荒野をひた走る。
「我が魂の依るべき場所……純粋無垢なる少女の元へ!!」
 それは悠久なるアルカディア、久遠のガンダーラ。
 誰にもその行く手を阻む事はできないのだ。

 あっ、おまわりさん、変態です。
 
●ロリコン戦車ァ!!
「ロリコン戦車が出現したっす!!」
 開口一番、黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)のセリフにケルベロスたちの目は点になった。
「コイツは、ゴッドサンタの言っていた指揮官級ダモクレスのうちの1体、コマンダー・レジーナの配下で、これまで事件を起こす事なく地球に潜伏していたらしいっす」
 呆然とするケルベロスたちを脇目に、ダンテは熱く語り続ける。
「今回、レジーナからの召集命令を受けたロリコン戦車は何を思ったのか市街地に向けて進軍を開始したっす! おそらくロクでも無い事を企んでいるに違いないっすよ!!!」
 何となく事態を把握したケルベロスたちが急いで出撃の準備を始める。
「ロリコン戦車が市街地に突入する前に撃破を頼むっす、緊急出動っす!」
 ダンテとケルベロスたちはヘリオンへと乗り込むのであった。
 
「このまま急げば市街地に突入する前にロリコン戦車を迎撃できそうっすね」
 現場へと向かう途上、ダンテは詳しく説明を続ける。
「戦場の周囲には民家も無く人もいないので思いっきり戦ってもらって構わないっすよ」
 人払いは不要。現場に到着次第、ロリコン戦車との真っ向勝負になるだろう。
「ロリコン戦車の攻撃方法は胴部の砲塔によるロリコンキャノン、頭のバイザーから発するロリコンビームの2種類っすね。あと、不屈の魂で回復をはかったりもできるっす」
 敵の戦意は非常に高く逃亡の可能性は無い。その戦意の高さから本来の性能以上の力を発揮してくる可能性も高いので、見た目や言動から油断をしてはならない。
 
「ロリコン戦車の目的は不明っす。……でも何となくっすけど、若い女の子は色々な意味で注意しておいた方が良いと思うっす!」


参加者
ルリナ・アルファーン(銀髪クール系・e00350)
シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)
ギメリア・カミマミタ(俺のヒメにゃんが超かわいい・e04671)
天羽・舞音(アーマードケルベロス・e09469)
一津橋・茜(紅蒼ブラストバーン・e13537)
黄檗・瓔珞(斬鬼の幻影・e13568)
卜部・サナ(仔兎剣士・e25183)
リリー・リー(輝石の花・e28999)

■リプレイ


 荒野に立つ8人と2匹。
 彼らケルベロスの視線の先、地平線の向こうから大きな土煙が迫っていた。
「敵影確認、距離600。サウンドブースター起動、ドローン展開します」
 ルリナ・アルファーン(銀髪クール系・e00350)の指が6本弦の上を滑るように動くと、彼女の両肩に装着されたスピーカーと空に展開したドローンから、軽快なサウンドと澄んだ歌声が流れ出した。
 戦場に響き渡る歌声。その旋律を背中に受け、白と黒の翼を広げたシヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)が先陣を切り飛び出していく。
「太陽の騎士シヴィル・カジャス、ここに見参!」
「騎士様、お供しますの!」
 下からの声。見れば大地を駆ける卜部・サナ(仔兎剣士・e25183)の姿があった。
 並走する太陽の騎士と幼き剣士。シヴィルが黒き大剣『黒天』を前方へと突き出し、サナが名刀『星火燎原』を鞘から抜き放つ。
「最近流行りのロリコン戦車め、これより先には行かせん!」
「お覚悟、なのっ!」
 2人から放れた魔法と巫術の炎弾が前方の土煙へと吸い込まれ爆炎が噴きあがった。
「炎の中心に高エネルギー反応を捕捉、敵反撃きます。2、1……」
 ルリナの声。続けて爆炎の中心から閃光が走った。
「ロリコンビィィイム!!」
 炎が吹き飛び、空中を裂く光芒がシヴィルに直撃する。悲鳴をあげたサナがシヴィルへと振り向くと、地面に片膝をついたシヴィルの姿が目に入った。
「くっ……さすがは、最近流行りのロリコン戦車と言ったところか!」
 顔を上げたシヴィルが炎の残滓の燻る鋼鉄の機械を睨みつける。
「敵機、依然として進軍中」
「まずは敵の動きを止めないといけませんね」
「わたしにお任せ、です!」
 天羽・舞音(アーマードケルベロス・e09469)と一津橋・茜(紅蒼ブラストバーン・e13537)が前へと歩み出る。
「舞音さん、敵の注意をそらせますか?」
 茜の声に頷いた舞音が敵へと走り出していく。
 ――『Dress up!』
 無機質な電子音声が鳴ると、黒いアーマー姿の舞音が出現。蒼炎を纏った得物を接敵した敵へと叩き込んでいった。
 鳴り響く金属と金属のぶつかる音。
 と、茜の咆哮がその音を掻き消すように空気を震わせた。
「巨王ヒューゲル―――我が領域にて全てを圧し潰せ」
 茜が地面にかざした左腕の腕輪から赤いオーラが吹き上がる。
 すると、敵の直下の地面が振動を始めた。
「上から下から、右から左から縦横無尽に潰していきますよーっと! 圧壊!」
 間髪入れず空中に跳んだ舞音が地面を見下ろす。
 ドンっと衝撃が走り、大地へと縛り付けられた敵の姿が映った。
「『ストライクエモーション』!」
 蒼炎の斬撃が敵へと振り下ろされた。


「このプレッシャー……ケルベロスかッ!」
 動きを止めたロリコン戦車が四方から近づいてくる敵に口元を歪ませる。
 次の瞬間、その眼前に刃が出現。その切先から電光が走った。
「何を企んでいるのかは知らないけど、ここで死んで貰うよ」
 不意に現れた黄檗・瓔珞(斬鬼の幻影・e13568)の神速の刺突が頭部へと突き刺さる寸前。ロリコン戦車はとっさにその刀身を両手のひらで掴む。しかし、刀身より放出された電撃に身体の至るところから火花が散った。
「貴様らに私を止める事は……グハァッ!?」
 今度は背中に走った衝撃にロリコン戦車は苦悶の表情をみせる。
「俺たちが居る限り、これ以上の侵攻は赦さん!」
 鋭い飛び蹴りを敵の背中へと撃ち込んだギメリア・カミマミタ(俺のヒメにゃんが超かわいい・e04671)の赤い瞳は怒りに燃えていた。
「街の人はリィたちが守るの。ロリコン戦車さん、覚悟なのよ!」
 可愛らしい声。上空からふわりと羽が舞い落ちる。
 顔を上げたロリコン戦車の目が大きく見開かれる。
 そこには空中でビシッと指を突きつけるリリー・リー(輝石の花・e28999)と、その左右を飛び回る白と黒のウイングキャットの姿があった。
「?」
 顔を上げた途端、動きを止めたロリコン戦車にリリーが不審そうに首を傾げる。
 すると、口元をわななかせたロリコン戦車がポツリと呟いた。
「まさに天使……我が魂の依るべき場所に相応しい」
 リリーの背筋にゾクリと悪寒が走る。
「確かにヒメにゃんは天使そのもの! さらに隣にリネットちゃんまでいるとなれば、2匹で大天使、いや天使長クラスの可愛さであるが、それは赦さん……絶対にだ!!」
 何やら盛大に勘違いしたギメリアがハンマーを大きく振りかぶり、空を見上げたまま微動だにしない敵の顔面に叩き込む。
 ロリコン戦車が顔面から吹き飛び、勢いよく地面を2度3度バウンドして倒れ伏す。しかし、おもむろに起き上がると何事も無かったように再びリリーへと熱い視線を向けた。
 リリーを見つめるロリコン戦車は鼻血をダラダラと流し恍惚の表情を浮かべていた。
 言い知れない恐怖に顔を青ざめたリリーが後ずさる。
「ロリコン戦車さん、そこまでなの!」
 そこに聞こえたサナの声。サナへと振り向いたロリコン戦車がまた呟いた。
「まさか天使が2人いるとは!?」
「なんか嫌ーっ! こここ、こっち来ないでーっ!」
 ジリジリと歩みよってくるロリコン戦車にサナが黄色い悲鳴をあげた。
「わ、私は怪しい者では無い!」
「おまわりさん、こいつですです!」
 正体不明の謎の敵から一転して只の不審者と化したロリコン戦車を茜が指さした。
「最近流行りのロリコン戦車め、貴様の目的はいったいなんなのだ!」
 背中に隠れた涙目のサナを庇いつつ、シヴィルが険しい目を敵へと向ける。
「我が目的、我が魂の依るべき場所……すなわち!」
「すなわち?」
「幼女の膝の上よ! 我が魂の安息は幼女の膝枕にあるのだ!!」
「……」
 ドヤ顔のロリコン戦車にシヴィルが呆れた目を向け、茜があちゃーと空を見上げる。
「YESロリータNOタッチ。貴様にロリコンとしての誇りはないのか!?」
「お前たちの基準で我らデウスエクスを語るとは、笑止!」
 舞音の言葉にロリコン戦車は鼻で笑ってみせた。
「そんなの生理的にも物理的にも無理なの!!」
 舞音の後ろに隠れていたリリーが怯えた顔をロリコン戦車に覗かせた。
 重厚な鋼鉄製のダモクレスをか弱い幼女の膝の上に乗せればどうなる事か。答えは火を見るよりも明らかであろう。しかしロリコン戦車はリリーの言葉も一考だにしない。
「強度的な問題ならば改造すれば宜しい。そう、純粋無垢なるロリクレスにな!!」
「コイツ……どうしようもなく狂っています」
 ルリナがおぞましいものを見る目をロリコン戦車へと向けた。敵の言動はダモクレスとして支離滅裂過ぎる。その思考回路がどうしようもないレベルで破綻している事は、この場の誰の目にも明らかであった。
「フハハハハハハッ!! お前たちを殲滅し、我が目的を果たそうではないか!!」
 高笑いを上げる敵に瓔珞がため息をつく。あわよくば敵の指揮官や作戦についての情報を聞き出せればとも思ったが、ここまで狂っていてはその言動の信憑性は無きに等しい。
「やれやれ……壊れたテレビは叩けば直るっていうけど。これだけ歪んでしまっては閻魔様でも叩き直せないかもしれないねぇ」


「滾ってきたぞぉぉ、ロリコンキャノン!!」
 ロリコン戦車の砲塔が連続して火を噴き、間断なく爆発が巻き起こる。
 その爆発の中からススまみれになった茜が姿を現した。
「まったく好き勝手やってくれますですね。自慢のナップサックもボロボロです!」
 肩紐が焼け千切れたナップサックが地面へずり落ちる。
「大丈夫か?」
「そういう舞音さんこそ、平気ですですか?」
 側にやってきた舞音に茜は笑顔で答えた。2人は怒りのバッドステータスを付与し、優先的に敵の攻撃を引きつけていたのだ。お互いに蓄積したダメージは軽く無いが、その分味方への被害は最小限に留まっていた。
「姫君を悪漢の手から守るのは、ヒーローの務めだからな」
 男らしい事を言う舞音。普段はおしとやか口調で男の娘な舞音に、茜は内心で「普段はあなたがお姫様みたいですけどねー」とツッコミを入れる。
「2人とも倒れさせはしません、ご安心を」
 メインの回復役を務めるルリナが傷ついた2人をヒールで癒す。再び敵へと立ち向かっていく茜と舞音にロリコン戦車が憎々しげな目をルリナへと向けた。
「おのれ、BBAが!」
「……」
 普段の冷静沈着でクールな態度やそのスタイルから、年齢よりも年上に見られる事が多いルリナであったが、そう呼ばれたことは今まで無かったはずだ。
「あなた胸で判断してますですね? だったらレジーナさんはどうなるですか?」
「レジーナ様は上官だからBBAでも良いのだ!」
「レジーナさんに言いつけますよ、このロリコン野郎!」
 敵へは容赦の無いツッコミを入れる茜である。
 右手に『黒天』を、そして左手に陽光の輝きを放つ小剣『サン・ブレード』を手にしたシヴィルがロリコン戦車の正面から接近する。
「卜部殿、タイミングを合わせるぞ!」
「はいはーい、シヴィルに合わせるのっ!」
 パチりとウインクしたサナがシヴィルを追い越すように大きく跳躍。空中で『星火燎原』を上段に振りかぶる。
「お日様、お月様、お星様……サナに力を貸して下さいっ!」
 空高く掲げた刀身が光を帯びて、眩しく煌めく。
 サナの眼下でシヴィルが敵とすれ違い様に二刀の斬撃を繰り出したのが見えた。
「……日月星辰の太刀っ!」
 直後、振り下ろした光の一撃は吸い込まれるように敵の胴体へと撃ち込まれる。
「リィキック、なのっ!」
 よろけた敵の顔面にリリーの飛び蹴りが炸裂する。
「ウホ♪ クマさんパン……」
「ワー、キャーッ!? ロリコンーッ!!」
 涙目になったリリーが、ゲシゲシと敵の顔面を踏みつけまくる。
「いい加減にしなさいよ。この変態野郎」
 すかさず敵へと飛び込んだ瓔珞。その眼の光が背筋が凍えるような冷たいモノを帯び、片手に『大業物【紫苑】』、もう一方の手で『霊刀【紅弁慶】』を抜いてみせる。
「もう容赦はしない――オンアミリテイウンハッタ……」
 左右に得物を構えた瓔珞の身体から漆黒の霊気がほとばしり、その身体を黒く包み込む。
「!?」
 驚くロリコン戦車の眼前に八臂の怪物と化した瓔珞が出現。
「万障、討ち払うべし―――『憑鬼・軍荼利(ヒョウキ・グンダリ)』」
 8本の得物と無数の斬撃が次々と鋼鉄の身体に叩き込まれていった。


「まだだ、まだやらせはせんぞォオオ!」
 装甲はヒビ割れ全身から火花を散らすロリコン戦車が咆哮する。
「チッ、しぶとすぎるな」
 悪態をついたギメリアの頬を優しい風が撫でる。見ればリリーの相棒の白いウイングキャットのリネットが一生懸命その翼を羽ばたかせていた。さらに周囲を飛び回る黒いウイングキャットのヒメにゃんがテチテチと尻尾の輪っかを敵に飛ばしているではないか。
 そしてリネットとヒメにゃんがギメリアに気づき、2匹同時に首をチョコンと傾げた。
「かーわーいーいー! もうKAWAII過ぎて俺が死ぬ。萌え死ぬ!!」
 地面をゴロンゴロンと転がり悶えるギメリア。先程までの疲れもなんのその。彼のテンションは最高潮まで跳ね上がり天井を突き破った。
「今ならやれる! 我が内に秘める魂の躍動、力となり顕現せしめん――」
 ゆらりと立ち上がったギメリアの身体から猫好きオーラが湧き上がる。
「『Neco-Drive(ネコドライブ)』ッ!」
 突き出した手から放たれたオーラが敵へと襲いかかる。
「なッ、つるぺた猫耳娘だとぉ!!」
 ロリコン戦車が叫び、盛大な爆発が起こる。
 ――説明しよう。ギメリアの『Neco-Drive』は攻撃を受けた対象が無意識下にかわいいと思う猫に姿を変えるのだ! っていうか無意識でも何でも無いな、このロリコン野郎は。
「今だ、シヴィル殿!」
 ギメリアが空を見上げる。そこに颯爽と翼をひるがえしたシヴィルが天へと駆け上っていくのが見えた。
「幼い少女をつけ狙うこの悪党め! 我が剣の錆にしてくれる」
 最高点へと達したシヴィルが今度はロリコン戦車に向け急降下する。
 空に煌めく太陽をその翼に背負い、白黒2対の剣をその手に構える。
「カジャス流奥義、サン・ブラスト!」
 疾風の突撃が真夏の日差しの如く真冬の荒野へと降り注ぎ、ロリコン戦車の鋼鉄の機体とその歪んだ魂を打ち砕いた。


 四散したロリコン戦車の頭部が地面を転がり、何かにぶつかり、止まった。
 もはや死を待つばかりのロリコン戦車の視界が最期に捉えたもの。
「何だBBA……」
 ――グシャツ!!
 それは無表情に『ホーリーアックスギター』を振り下ろすルリナの姿だった。

「ロリコン死すべし、慈悲はありません!」
「はい。仁義無きロリコンには死の制裁を」
 茜の言葉に舞音が頷く。その姿や口調は既に男の娘のものに戻っていた。
「それにしても、今まで事件を起こさずにいられた事がびっくりの変態さんだったの」
 サナが大きく溜め息をついた。
「……リィ、きっとこの戦いを忘れられないのよ」
 出来れば早々に忘れたい相手であったが、リリーには忘れられそうには無い予感があった。夢に出てきそうで正直怖かった。
「手掛かり……は無さそうか。ともかく全員無事で何よりだねぇ」
 瓔珞がポリポリと頭を掻く。
「最近流行りのロリコン戦車……手強い相手だった」
 シヴィルの顔には強敵に勝利した自信と、仲間たちの無事に対する安堵が見て取れた。
「なあ、ちょっといいか?」
 ギメリアの言葉にその場の全員が振り向いた。
「物凄く今更だが、アイツのどこが最近流行っていたんだ?」
 その問いに全員が顔を見合わせ首を傾げたのであった。

 こうしてケルベロスの活躍により、恐るべきロリコンダモクレスの野望は露と消えた。しかし世に流行り廃りがある限り、最近流行りのロリコンダモクレスの脅威は消える事は無いだろう。第2のロリコンダモクレスが絶対に出現しないとは限らないのだから……。
 戦えケルベロス! 人々が安心して暮らせる世界は君たちの双肩にかかっているのだ!

作者:さわま 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年2月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 9
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