ヒーリングバレンタイン2018~古都に加護あれ

作者:絲上ゆいこ

●何だかきゃっきゃと騒がしい机周り
「おーう。という訳で今年もお前たちが解放してくれた地域の復興を兼ねて、イベントをするぞー」
 皆の前で手をゆるく振ったレプス・リエヴルラパン(レプリカントのヘリオライダー・en0131)は、掌の上で早速資料を展開する。
 映し出されたのは奈良県、奈良市の一角。
 ここに出現していた粘着く触手で構成された奇怪なオークの神社は、ケルベロス達の活躍により排除された。
 しかし、この地域にまだ住人は戻ってきては居ない。
「一度人が離れてしまった地域ではあるが、救世主であるケルベロス達がイベントを行う事で、解放された地域のイメージアップを図ろうと言う訳だ」

 古都。奈良市は平城京として栄えた8世紀まで遡る有名な寺院や、『奈良の大仏』として知られる像高15mの大仏等、数多くの世界遺産や名所旧跡が多く存在している。
 奈良公園では鹿が自由に公園内を闊歩し、ならまちと呼ばれる狭い街路は江戸時代以降の町屋がカフェや雑貨屋等に姿を変えて数多く建ち並ぶ、歴史を感じる事のできる観光スポットであった。

「街のヒールを終えてから、お前達にはお守り作りのイベントをして貰おうと思っているぞ」
 資料の地図を閉じると、レプスは後ろできゃっきゃしている方へと視線を向ける。
「ガラスロッドはコレを使って良いのよね?」
「キラキラが沢山で悩んじゃうわ……、なつみさんはどんな組み合わせにしたのかしら?」
 視線の先では天目・なつみ(ドラゴニアンのガジェッティア・en0271)と遠見・冥加(ウェアライダーの螺旋忍者・en0202)が身体を寄せ合い、机の上に広げられた材料の前で楽しげに話し合っていた。
「そうねぇ。私はこの蝋引き紐を使って、このコに映えるような……、あ」
 視線に気が付いたなつみは、ぱ、と皆に微笑む。
「皆にもこんな感じで、天然石やとんぼ玉を使ったお守りを作って貰うらしいわ」
 冥加もカーテシーでお辞儀を一つ。
「石をお守り袋に入れても良いし、ストラップやアクセサリーに加工しても素敵よね!」
 その耳には試作品の青いとんぼ玉とアクアマリンを組み合わせたイヤリングが揺れている。
「ヒールにイベント進行。さぁて、今年も忙しくなるだろうなァ。……ああ、そうそう。復興支援とは言え、今年もお前たち自身の分もお守りを作って良いぞぅ。せっかくのバレンタインだ、気になるあの子の一人や二人いるんだろう? 一発手作りアクセサリなんてどうだ? 俺なら超嬉しいぞ」
 な、と下世話なウィンクを一つ。レプスは嘯き笑う。
「街の復興に関しては今年からは私もケルベロスとしておもてなし側だもの、バッチリ頑張っちゃうわ」
 彼の言葉に肩を竦めつつもなつみは、意気込みを宣言して皆を見渡した。
「でも頑張るだけじゃ駄目よ、楽しいイベントは自分が楽しむ事からだもの」
 冥加が頷き、少しだけケルベロスの先輩として背伸びした様子で言葉を紡いだ。
「ふっふっふ、解ってるわ! さあ、皆もイベントを楽しんじゃいましょっ!」
 おー、と腕を突き上げる二人。
 古都を流れる空気は、どこか神聖で穏やかに感じられるかもしれない。
 ケルベロス達が祈りを籠めたお守りは、きっと訪れた人々に加護を与える事であろう。


■リプレイ


 晴天時々雪。神社仏閣を中心にヒールをするしおん。
 彼女の流派はこの街にゆかりのある人物が夢に現れ、軍要を教えたのが源流と言われている。
「感謝の気持ちを籠めて、しっかりと……」
 少し幻想的過ぎる風景になってしまっている気がするが、きっと悪い事では無いだろう。
「どうだ、予後は良いか?」
「あら結。ふふ、上々よ」
 ベンチに座るなつみに声を掛ける結。
「どうやら息災な様だな、……であれば私の用は済んだ」
 鹿煎餅を片手に結は笑む。用は済んだ、済んだのだが。
「帰れん」
「群がられているわね」
 そう、鹿達は腹ペコ。
 観光客の減った奈良公園では、鹿煎餅を持つ人も当然減り。
「だ、だめなのだ! これはパティの分なのだ!」
 鹿に囲まれたパティ(の煎餅)は絶体絶命の危機。そこへ通りかかる。
「冥加ー! お菓子あげるから助けるのだ!?」
「えっ」
 鹿に追われるパティの突撃を受け、冥加は思わず手を繋ぎ駆け出す。
 煎餅を食べるリィを見る鹿達。
「おいしいパオ?」
 エレコの問いにリィは首を横に。
「でもタダでくれてやるのは癪に触らない?」
「芸をする子もいるのパオ。はい、お手なのパオ」
 煎餅と手を差し出すエレコ。鹿はお辞儀、煎餅を齧る。
「惜しいパオ」
「所詮畜生ね」
 リィは鹿を煎餅を齧るイドを蹴飛ばし、何かを見つけた顔。
「ぱお、そう言えば吾輩修学旅行でも多分ここに来る予定なのパオ。下見パオね!」
「なら終えたら少し観光して帰りましょうか」
 遠くに見つけたゆるキャラに手を振り、エレコは笑顔で頷いた。
「櫻も一緒にあげましょう?」
 わくわくする櫻と一緒に、鹿煎餅を差し出す月。
「わ」
 背後より背を突いた鹿が自分もと催促をし、肩を竦める月。
「今持ってるのは進呈しますので……奈良を、鹿さんも守ってくださいね?」
 櫻と一緒に鹿を撫で、月は瞳を細めた。


 机に並んだ色とりどりの石。
 普段は古屋敷に集う花ひらりの面々を見渡し、ユタカは首を傾ぐ。
「皆さまは石を何にするか決められたので? 迷うならば直感で!」
 迷い無く。自然体の自分でいられると言う珪孔雀石と菫青石を手に取るアイカ。
「私、この日のために色々と調べてみました!」
「どれも綺麗な石ばかり、この石ってどういう意味なんでしょう」
 青空に浮かぶ雲の様。青蛋白石と白翡翠を手に取ったシエル。
「白翡翠は純粋の象徴だそうです。アイカさんと同じく私も調べて参りました」
 安らぎとを意味する淡い緑水晶と透明な水晶を手に、レカが笑む。
「わわ、さすがですの!」
「私もレカさんやアイカさんの様に調べておくべきでしたね」
 瞳を輝かせる真白。夕雨が呟く。
「拙者はシトリンを使ってブレスレットを……でぇい。色の配置がっ」
 美的センス皆無では、と唸るユタカ。
「暖色系で纏めても良いかも」
「まずは石を並べてみるとイメージが湧くと思いますの」
 ブレスレットを作るアイカとシエルの助言。
「一度並べて見まする!」
「中々難しくございますね」
 白と赤の蜻蛉玉の簪を作ろうと真白も格闘中。
 その場の出逢いとご縁。直感で出会った虎目石を合わせ。
「えっ簪とか凄い」
 真白を褒めつつ。赤と金の首飾りを手に夕雨は自らの才能も感じる。
「私はえだまめの首飾りを……お前はいつものが一番ですよ」
 切り替え早し。えだまめの首周りに圧倒的に足りぬ長さ。
「もう作り直しとかマジで面倒、ぽんずさん食べますか?」
「食べられないならいらないそうです」
 一応尋ねたアイカ。
「お上手なのに勿体無いですよ、ご自身用に如何です?」
「あっ成程」
 レカの言葉に夕雨は膝を打ち。
「銀華にも飾りを作ってさしあげますね」
 真白が微笑み、銀華を抱き上げた。
 時に曖昧になってしまう想い出も、蘇る切欠があるのならば。
 出逢いの時をもう一度。
「亮、手伝ってくれる?」
 アウレリアの言葉に喜んでと笑む亮。
 硝子棒は宵を溶かし深めた藍色。手間取る彼女の代わりに亮は火の調整を。
「ふふ、懐かしい、ね」
「ああ」
 連ね紡ぐ度に過る思い出、繋ぎ結ぶ絆が深まる事を祈り。
「――青い薔薇の色みたいだ」
「青は大切な色だもの」
 ありがとう、大切にする。
 贈り合うブレスレットは想い色。嬉しそうに笑む二人の手首を彩る。
 これからも、いつまでも。一緒だよ。
「いやー、お世話になりますー」
 寝猫が頭を下げ。
「レプスはんはヘリオライダーに珍しく今時の若者な感覚がみれるさかい」
「いやァ、大半の皆は真面目だもんな」
 世間話を始めた二人の横から、びぃくんを連れてそっと離れるイヴ。
「はう」
 半泣きの一美の姿。
「お。ねねこ母ちゃんは相手してくれないし、一美姉ちゃんアクセサリー作ろ」
 勾玉にして母ちゃんにプレゼントしようかなと一気に話を始めるイヴ。勢いに負けた一美は涙目。
「はわわ、お団子あげますから待ってくださいぃ」
 一息付いてから、二人は並んで作業を始め。
「そういえば、先程天目さんを見かけましたよ」
「おっ♪ 失伝者の。よし、売店で買った団子一緒に食べて、冒険の話を聞いてみるか!」
「はわわ、イヴちゃん引っ張らないで!」
 目を輝かせたイヴに一美は引きづられて行くのであった。
「上手に作るコツは想いを込める事っすよ。石言葉なんてのも意識すると面白いかもっすね」
 お守りには縁があると、講師を買って出た伽藍。
「分からない事があったら聞いていいっすよー。最後までしっかり面倒見るんで自分の納得の行く物作るっすよ」
 彼と並んで実演していたなつみに彗は頭を下げ。
「やあ、レディ・天目」
「元気していたかしら?」
 カグヤが首を傾いだ。
「まあ、二人共。ふふ見ての通りよ」
「作ったお守りを交換しようって話をしてたんだ。君もどう?」
「べ、別にお邪魔とかそういうの気にしなくていいから!」
「じゃお言葉に甘えて」
 カグヤの様子になつみは笑い肩を並べ。
「夕焼けに飛ぶ鳥を……」
 彗の長い説明は割愛。器用さに自信の有るというカグヤはヘリオドールを重ねた腕飾り。なつみは夜色の耳飾り。
「今日は有難う」
 護石を交換、三人は笑む。
 楽しげな皆を眺めていた炯介。
「あなたの好きな色は何?」
 俊に尋ねられ、炯介は首を捻った。
「特には」
 煮え切らぬ返事に俊は溜息を零す。
 口には出しはしないが、去年大怪我をした彼にお守りを作りたいのだ。
 もう、あんな想いは。目に止まる黒に碧と金の輝きを湛えた曹灰長石。
「ひと目見て、あなたに合うと思った」
 小粒の水晶と黒革紐で連ねた武器飾り。
「ありがとう」
「皆に挨拶も行くわよ」
 炯介はいつもの様に笑み。視線を落とさず、左手薬指の銀色を意識する。
 強く想いを込めた物なら、きっとその人にとって。


 龍髭学園番犬部。今日は部室を飛び出し皆でお守り作り。
「みんなは、どんなものを作りますか?」
 かりんは皆に尋ね。
「僕はこういう石の方が、性に合うかな」
 煙水晶をイヤーカフに固定して、皆に見せるムフタール。
「これなら普段から身に着けていられるしな」
「先輩のふかふかお耳にお似合いですね!」
 燈火が紫色の炎をゆらゆら。
「僕も身に着けていたいので、ペンダントにしましょうか」
 黒水晶の選別を始める。
「すごいよね、これ。見る角度で色が変わるんだ。夜の空みたい」
 黝簾石を気に入った様子のアンセルムはカフリンクスのパーツに手を。
「普段使いできるのは本当に良いよね、皆とても似合いそう」
 折角お守りなんだから、とアンセルム。
「ぼくはお守りを作りたいのです!」
 空色縞瑪瑙に灰簾石。蛍石に……。皆をイメージした石をどんどん袋に詰めるかりん。
「ふふ、こうすればみんながぼくを守ってくれてる気がしますし、みんなへのパワーもいっぱいです!」
「なるほどな、皆の力も貰いつつ、って事か」
「そういうの、とても良いな」
 褒められかりんはピカピカ笑顔。ご利益有ります様に。
 白とフィロヴェールは仲良く蜻蛉玉作り。完成したのは絵を描いた赤蜻蛉玉。
「フィロ、貰ってくれるか? フィロを見守るお守り、と言う事で」
 そして白はチョコを取り出す。それだけ渡すのは少し気恥ずかしくて。
「一緒に受け取ってくれると嬉しいのじゃ」
「え、わたしに? チョコも?」
 ぎゅっと白に抱きつく彼女。
「あっ、えっと……、白くんみたいにうまくできなくって、ただの白いとんぼ玉になっちゃって」
 真白な蜻蛉玉。
「で、でも形はちゃんとできたから! うけとってくださいっ」
 勿論、と白は笑う。
 迷った時の道標。唸りに唸って選んだ菫青石をお守り袋に仕舞い込んだシズネは、ノラビトの皆を眺めた。
「バレンタインにお守りを作るってのもなかなか面白いなあ」
「シズネのその石は迷わなくさせるんだ? 大丈夫? アイデンティティ無くなんない?」
 赤い硝子に細かい日長石を散らし、バーナーと格闘しつつ小町は問い。心の余裕を与える加護は簪に。
 灰は翼を纏わせた鷲目石を、鳥を刺繍した袋に。
「直感を高め、災いを遠ざけて繁栄を齎す――要は勝負運が良くなる石だ」
「灰相手に賭けごとできねぇな!」
 格好いいなあ、と見るシズネに灰はにんまり。
 ラウルの白菫色のお守り袋の中には、淡い桜色を咲かせた玻璃の手作り蜻蛉玉。
「小町もラウルも細工の細かい蜻蛉玉を作ったなぁ」
 灰は籠めた祈りが伝わる様だ、と呟き。
「ラウルのその硝子の中に花ってどうやって作るの?」
「今度作り方を教えてあげる」
「私にも出来るかな」
 ラウルは小町に柔らかく頷き。
「小町のだってオレにはできねぇし、ラウルに至ってはおめぇ職人か!」
 シズネは言う。
 古都に春陽にも似た加護が降り注ぐ様に。幸福と復興を願い、祈ろう。
「ちょっと熱いから……」
 バーナーの前には優菜。心配そうな堅和。
「気をつけますね」
 作るお守りは星空蜻蛉玉。
「何かあっても君の幸せが続く様にって意味で……ちょっと臭いかな?」
 それぞれ二人は袋を選び。照れて視線を反らしつつ、堅和は白地にチョコ色の刺繍袋を差し出す。
「ふふ、ありがとうございます。私からも探偵さんの幸せを願って」
 笑んだ優菜の選ぶ袋は黒。銀糸刺繍、『FromYtoY』。
「……参ったね、俺も何か書けば良かった」
 気づいた彼は照れ笑い。チョコレートは、もう少し後で。
 普段は郊外の工房、Wizに集う皆。
「誕生石ってお高い加工済みの宝石のイメージが強いけれど、誕生日石になると結構幅が出てくるのよね」
 アンナマリアは模倣蒼玉と、日長石を重ねてストラップに。
「私の誕生日石はこのサンストーン、別名ヘリオライト。勇気の石よ」
「偶然ですね」
 エイルルーネは色とりどりの蜻蛉玉を通した革紐に、ハート型の血玉髄を添えて首飾りに。
「ブラッドストーンの別名はヘリオトロープ。ヘリオは太陽。トロープは戻す。太陽を呼び戻す石との意味だそうです」
「石の意味とか皆色々調べてるのね」
「色々あるし悩むね~、小町さんは何にするのかな~?」
「直感で!」
 セイシィスの声に、小町が手に取ったのは赤虎目石。
「リィーアさんはどんなのを?」
「これで完成~、私のイメージ通り~」
 中に橙翡翠が収められたセイシィスの橙色のお守り袋は、白雪刺繍。
「要さん少し力を籠めてみて下さい」
「こう?」
 要は緑玉髄を収めるお守り袋を作るべく、初めての裁縫中。エイルルーネに指導されて力を籠めた。
「これ鈴に付けられるかなー」
「大丈夫じゃないかしら。石の意味は何かしら」
 アンナマリアが首を傾ぎ。
「希望、勇気、自己実現だって、願掛けにピッタリだね」
「エっちゃんお母さんみたい。カナちゃんは何か願い事?」
 答える要。小町が尋ねる。
「えへへ」
 皆との素敵な運命を、これからもこうして創って行けます様に。
 お守りも幸せも、沢山あっても良い。まずは練習、試し硝子に火を灯し。
 司はブレイズキャリバー。なのに。
「火が怖い」
 真顔で言う司。
「火は苦手か、悪い事を……あっ」
「火傷したくないだけでね……おっと」
 司によって生まれた勾玉。
「俺はウニだ」
「天才だね」
 くつくつと笑う二人。仕切り直し。
 暫し時を忘れ没頭すれば、硝子も心も丸くなる。
 恵は銀翼つき銀王冠を頂に。
 司は真紅の蜻蛉玉に金の鳥が一羽。
 共に天然石と繋ぎ武器飾りを。
 二人交換を重ね、その剣が切開く明日に向かい進む君に祝福を。


 石の彩り。
「綺麗だね、お腹空かない?」
「綺麗。だけどお腹はすかないかな」
 夜の言葉に、ティアンは瞳を瞬かせて。
「飴を見ている様で、此れなんて曹達味みたいだよ」
「その曹達の石は、ティアンには海の中にみえる」
 澄んだ青石を掌に掬う夜。
「君は何を作るの?」
「悩ましくてな」
 夜が繋ぐ移り変わる空の腕飾り。
「君に、あげる」
「……くれるの?」
 しげと眺め。
「ありがとう、ティアンも夜にあげるものをつくろう」
 夜の色に赤の珊瑚と一つ繋いだ武器飾り。
「縁起が良いだろう」
「夜明けか」
 夜は笑む。進む足取り、惑わぬ為の光としよう。
 イルヴァは青い蜻蛉玉に遊色水晶を添え。白と水色組紐の腕飾りを戒李へと。
「こうやって淡い光を照り返すと、なんだかお月様の光に似ていません?」
 きらきらひらめく光は、創造の力を高めるらしい。これなら、お月様に会えない日もきっと寂しくない。
「ボクが月が見れないっていつも言ってるんで、気を使わせたかな?」
 でもありがとう、と微笑む戒李。
 赤白組紐。赤蜻蛉玉に月長石の腕飾り。
「君の側に、ボクの色を少しでも。後は君の恋が長続きします様に」
「……わたしも、かいりさんの幸せをたくさん祈りますから」
 お守りに、願いを籠めて。
「天然石も素敵ですけれど、折角ですから唯一無二の石を作ってみません?」
 息吹の表情を窺うベルノルト。
「蜻蛉玉って手作りできるのね。作ってみたい!」
 溶ける硝子の中に咲く花。
「火が熱かったりはしませんか?」
「ベルさんは心配性ね、ほら。火を使う作業で余所見はだめよ」
 大丈夫だから、と言われてしまえば彼は手元に集中するしか無い。
「なかなか上手に出来たんじゃない? 愛のチカラかしら、なぁんて。ふふ」
「成程、愛の力」
「真面目に返されると、ちょっと恥ずかし……」
 大切な人に贈る形は、いつでも連れて行ける形で。
 視線巡らせ石選び。
 目に着いたのは、柔らかな桃色の石。
「何を選んだの?」
 ダリアの問い。彼女の手の中に収まった牛乳の様な淡い水色の丸い石。
 リィンハルトはぱちりとウィンク。へにゃりと笑う。
「――僕とダリアちゃんのおそろいの色!」
「うん、お揃いだね」
 お互いの色を選んだ。なんだかそれだけでとても嬉しくて。
 一緒に蜻蛉玉も作ってみよう。
 二人並んで教え合い、ブレスレットを編み上げよう。
「うん、完成!」
 でこぼこ少し不器用な出来上がりでも、大切な宝物。
「よし、出来た」
「わあっ、可愛いチョーカーだね」
 黒革にインカローズをあしらったチョーカー。
「ルージュがつけてくれるの?」
「うん、それじゃあ」
 ルージュの手がフィーを彩る。
「じゃあボクもつけてあげる!」
 フィーがたどたどしく繋ぐ銀鎖。
「とてもステキだよ」
「ふふ、ありがとう。とても綺麗なネックレスだ。大切にするよ」
 燐灰石は絆を繋ぐ。それはフィーが以前ルージュに教わった事だ。
「ボクのはどう?」
「勿論、良く似合ってるよ」
「えへへ……大切にするね!」
 二人の絆が、これからも繋がって行く様に。
 相手に贈る物だからこそ真剣に。心を込めて、想いを込めて。
 樹は真剣な表情で工具を手に。
 何だかプラモ作りを思い出して楽しくなってきちゃったけれど。男の子だし。
「ヒメさんや、分からないとこあったら手伝ってあげてもよろしくてよ?」
 樹はおどけつつちょっとカッコをつけちゃう。やっぱり男の子。
「ええと、それじゃあ……」
 手伝って貰うと、完成がバレちゃいそう。
 ヒメは色や形の好みを尋ね、調整しながらストラップを組み上げて行く。
 二人で過ごす普通の時間。大切な宝物。
 揃って筋金入りの不器用二人。
「……こういうのは気持ちだよね」
「ええ、たっぷり気持ちを込めて頑張りましょう」
 景臣が選んだのは澄んだ乳白。野花模したラペルピンを合わせ。
「――君らしい色だね」
 ゼレフは笑う。
 十字石。二つの線が絆を繋ぐ。
「この色チョコに似てるだろう?」
 銀のタイピンに飾り、ゼレフは景臣へ翳し。
「確かに美味しそうな色ですね、ふふ。絆というと僕達の、です?」
「涙から生まれた故に妖精の十字架――そう呼ぶのだそうだよ」
「なるほど」
 だから、こんなにも愛おしく思えるのだろうか。
 薔薇の形に彫刻された紅水晶の指輪。
「去年よりもちょっと良いのを、ね」
 少し大きな指輪は、銀の蝶と一緒にチェーンに潜らせて。
「これでエルピスも一緒だ」
 陣内の手元を見つめ、あかりは少しだけ戸惑ってしまう。
 自らに縁のない優美な薔薇、美しい桃色。
「似合わなかったらごめんね」
「君は、君が自分が思っているよりも強い。俺はいつだって敵わないなと尊敬している。それに可愛くて綺麗で女の子らしい。きっといい女になるよ」
「――流石タマちゃん、大人だなあ」
 簡単な言葉が口に出来ず、あかりは黒鉛を手にする。
 彼の毛色と同じ色。好きな事を貫く石。
「俺が好きになった人なんだから、保証する」
 ああ、この石を渡す時は、ちゃんと伝えたい。
 僕がどれだけあなたに支えられて、どれだけ焦がれてきたのかを。

作者:絲上ゆいこ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年2月13日
難度:易しい
参加:57人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 7
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