ヒーリングバレンタイン2018~子供達のための

作者:洗井落雲

●ヒーリング・バレンタイン!
「皆、ハッピーバレンタイン。……まぁ当日ではないのだが、街は今やバレンタイン一色と言った感じではあるな。街にチョコレートがあふれているのは喜ばしいが、しかし男のみで買うとなると、まるで見栄でチョコを買っているように思われそうで、そこが少し……と、すまない、脱線だったな」
 こほん、と、アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)は咳ばらいを一つすると、
「ええと、つまり、だ。バレンタインに向けての準備をみんなでしないか? と言う提案なのだ。と言っても、普通に準備をするわけではない。皆の活躍で奪還された、複数のミッション地域。この地域の建物などをヒールし、その場所でちょっとしたイベントを開く。地域復興を兼ねた……ヒーリングバレンタインだ」
 現在、かつてミッション地域であった場所に住人はいない。だが、解放され、元の生活に戻ろうとしている避難民や、引っ越しを考えている人々が下見に来たり、ミッション地域周辺の住民が見学に来ることもある。
 そういった一般人が参加できるイベントを開催すれば、解放した地域のイメージアップにもつながるだろう、という計画なわけだ。
「我々がヒールを行う場所は、福井県福井市。かつて『子どもたちの学園』と呼ばれる、ビルシャナの洗脳施設があった場所だ」
 と言っても、別に子どもたちの学園の建物をヒールするわけではない。ケルベロス達がヒールを行うのは、あくまで街の建物である。
「……この街で多くの子供達が傷つけられてしまった事は事実だ。それ故に、この街で多くの子供達を笑顔にしてやりたい。そうは思わないかね?」
 アーサーが提案したのは、子供達を対象とした、チョコレートの配布イベントと言うものだ。
 様々な理由からから、子供達が傷ついてしまった街。
 だから、今は子供達が安心して暮らせる街になった、というアピールにもなるだろう。
 当日の行動としては、以下のようなものだ。
 まずは、戦闘や、デウスエクスにより破壊されてしまった建物などのヒールを行う。
 続いて、街にある学校の体育館や調理室と言った施設を借り、子供達に配布するためのチョコレートや、ケルベロス個人のチョコレートを作る。
 そして、会場である、学校へとやってきた子供達に、チョコレートを配る。
「地域の復興に安全性のアピールもしつつ、君たち個人のチョコレートも作れる……ちょうどいい催しものだと思う。参加してくれると、嬉しい。君たちが、楽しい時間を過ごせるよう、祈っているよ」
 アーサーはそう言って、ケルベロス達に一礼した。


■リプレイ

●下準備
「すごい! 本格的です」
 みいが思わず、感嘆の声を漏らした。
 チョコレートの調理場として貸し出された体育館は、様々な調理器具や材料が所狭しと並べられている。
「これなら色んなチョコレートが作れそうです……そうだ! マシュマロを入れたチョコクッキーにしましょう!」
 ぽん、と手を叩いて、みいはうなづくと、早速調理を開始するのだ。
 もちろん、みいだけでなく、多くのケルベロス達が、様々なチョコレートを調理していた。
「期待している子供達の為に頑張らないといけませんわね!」
 【りゅうおうぐん】のメンバー、鈴蘭は、よし、と気合を一つ、調理に取り掛かる。
「リズ陛下の御旗の下での初仕事、誠実かつ確実に遂行を」
 國鷹も頷き、大量の素材、そして金型を用意した。
 りゅうおうぐんの作るチョコレートは、りゅうおうの名の通り、巨大な西洋風ドラゴンのチョコレートだ。子供達に配布する際は、砕いてバラバラにし、チョコペンなどでメッセージを書いてもらう、という寸法だ。
「しかし、予定通りに作るとなると、かなりの量のチョコレートを溶かさなければなりませんわね……凄い量ですわ」
 必要な量のチョコレートの山を目に、鈴蘭が呟く。その言葉に、
「……費用に関しては陛下にお知らせしないほうがいいでしょうね。秘密裏に処理を」
 と、返す國鷹であった。
 さて、りゅうおうぐん特製の巨大ドラゴンチョコレートは、ほどなく完成。後はこれを運ぶだけなのであるが。
「うっわ、ガチな出来だわね……どこ持てば良いんだろこれ」
 と、完成品を見て驚くのは、運搬係の要である。
「ふはは! これは見事!」
 同じく完成品を見てリアクションをとる勝蔵。リアカーを持ってきたようだが、流石に少々荷が重すぎるようである。
 結局、要の持ってきたトラックで運ぶことになった。
 さて、未だ配布イベント前であるが、これだけ目立つチョコレートだ、子供達も見ただけで大はしゃぎ。お預けを食らっているものの、気にしないぞとトラックの周りを走り回ったり。
「あっこら子供! ミラーにぶら下がるな! ……ったく、将来有望なワル共だわね……」
 子供たちのはしゃぎっぷりを見て、嘆息する要に、
「ふはははは、元気が良いのはいい事だ!」
 龍の刺しゅう入りの、《驚きたいもの遊びたいもの、りゅうおうぐんのもとへと集まれ!!》と書かれた旗を身体に括り付けた勝蔵が言うのである。
 さて、他のケルベロス達もチョコレートの準備が出来たようである。
 ここから、本日のメインイベントが始まるのだ。

●子供達の為の場所を、
 本日のメインイベントは、子供達や家族連れの一般人への、チョコレートの配布イベントだ。
 ケルベロス達も、作成した様々なチョコレート菓子を配って回っている。
「はい、どうぞ、です♪」
 にこにこ笑顔で、小さな小箱を渡すのは、陽菜だ。中は様々な動物をかたどった、色々な味のチョコレートが、4つずつ入っている。
「中に入っている、動物さんは、人によって、違うから、お友達と、とりかえっこしたりしてみて、くださいね」
 陽菜の言葉をうけて、子供達は早速、チョコレートのやり取りをしたりしている。みんな笑顔でチョコレートを頬張っているのを見て、陽菜もたまらなく嬉しくなるのだった。
 ローレライがチョコレートを渡すと、男の子が大きな声でお礼を言う。よろしい、とローレライは男の子の頭を撫でてあげた。にっこりと、男の子が笑う。
 ローレライとオイナスは、子供たちと触れ合いながら、2人でチョコレートを配っていた。
「いつか私がお母さんになったら、この出来事を息子か娘に話そうと思うわ」
 はしゃぐ子供たちの姿を眺めながら、ローレライが言った。
「その時は、オイナスさんも一緒にお話しましょう?」
 ローレライの言葉に、オイナスは首を傾げた。
「親の記憶なんて、ボクにはないのでいまいちピンと来ませんが……それでも、いつかボクも、誰かの親になれるのかなぁ」
「オイナスさんなら、素敵なお父さんになれるわ。私が保証するわ!」
 笑いながら言うローレライに、オイナスは微笑を浮かべて頷いた。
「お待たせしましたー! オレはきみたちのヒーローだよ」
 サイファが少しおどけながら、子供達の前に立った。
「このチョコはオレの念が込められてて、な? 食べると災いからきみを守ってくれるんだ」
 ――……そんな不思議パワーなんてある訳ない。すべては口からの出まかせだ。だけど、それでも。
「いやいや、嘘じゃぁないぞ? いいか? このお兄ちゃんは、すごーーーーい玄人ヒーローなケルベロスなんだからな!」
 少しの弱気。それを察したかのように、応援してくれるのは、万里だ。
「格好良くて可愛くて、ちょーっと意地っ張りで照れ屋さんで!」
 と、万里が大声で言い始めたものだから、サイファは困ってしまった。万里の様々な褒め殺しに、顔を赤くしたり青くしたり。迂闊に否定もできず、さてどうしようかとアワアワしている所へ、
「そんなヒーローに力を貸してくれる君たちがいる。ね、無敵でしょ? ヒーローのお兄ちゃんと、助手の僕が言うんだから間違いなし! ね! サイファくん!」
 と、万里がこっちへ会話のボールを投げてくるものだから、
「はぁ!? 助手なんて許すかよ!」
 そう言って、サイファは万里の肩を組むと、
「こっちのオニーサンとオレに任せとけ! きみたちがオレたちを信じてくれる限り、『オレたち』はきみたちのヒーローだ!」
 と、力強く言った。
「えー、僕は助手だってばー」
 と万里は否定したが、少なくとも、今日ここにいる子供達にとって、2人は本物のヒーローだったに違いなかった。
「グレッグ、丁度いい、遊ぼう!」
 と、グレッグの手を引っ張るのは、子供達と交流していたノルだ。
「ああ、そうだな」
 すこし緊張気味だったグレッグである。気を使わせてしまったかな。そう思いながら、ノルの誘いに乗った。
「前にさ、グレッグと一緒に、結核の病魔をやっつけに行ったことがあっただろう?」
 子供達と遊んで、疲れた2人は少し休憩。チョコレートを食べつつ、雑談を始める。
「ああ、あの時はすまない……いや、ありがとう、だったな」
 そう言って、しばし、子供達を眺めた。
「……俺は、小さい子供の時、って言うのがなかったから、わかんなかったけど」
 ノルが、口を開く。
「……でも、守って、たいせつにしてくれる人がいることでほっとする気持ち、今はわかるから。……そういう存在に、なれればいいなって思う」
 ノルの言葉に、グレッグは、
「なれるさ」
 と言った。
「俺は……様々な理由で傷つけられた子供達にとって、今日がいい思い出となってくれればいいと思うし……今日をノル、あんたと過ごせたことを……嬉しく思っている。だから、なれるさ」
「そっか」
 と、ノルは笑った。
「我こそはりゅうおうぐんの頂点、黄金の邪竜リズである! なんかこう……とってもえらいのだ!」
 と、翼をばさり、と広げ、胸を張るのはリズである。言葉通り、【りゅうおうぐん】のリーダー格のようだ。
「かつもくせよー!」
 仁王立ちし、ミニュイが続ける。
 りゅうおうぐんが用意した巨大なチョコレート。子供達も度肝を抜かれたようだ。
「……こんなに大きなチョコレートを本当に作っちゃうんだから、流石りゅうおう軍だよね……」
 ねむるが、感心したように呟く。
「このチョコは、我々の結束の結果。貴様の力添えもあってのことだぞ、ねむるよ。……さて、今日はお前達にチョコレートをプレゼントしに来たのだぞ! それ、チョコレートをぱっかーんせよ!」
 リズの号令と共に、チョコレートはハンマーで砕かれる。
(「軍の象徴な巨大チョコをばっきばきに割られてるのは、軍を壊滅させられてるってことにならないかな……」)
 と、内心思ったミニュイであったが、黙っていた。
 さて、こうしてバラバラになったチョコレートを、子供達に配るのである。
 とは言え、まだサイズは大きいので、適当なサイズになる様に、子供たち自身に割ってもらう。
「おおきなちょこれーと、じぶんで、くだいて、わがものに、するの、だ……こんな感じ、で、いいのか、な?」
 十三が小首をかしげつつ、ハンマーでチョコを割る子供達を見守る。
「これで叶えたい夢とか、好きなものをチョコレートにかいてくださいね!」
 蒼太がチョコペンを子供達に配る。
「うむ、良いぞ、蒼太! どんどん配るがよい! 十三も、子供達を見守ってやるがよい!」
 リズが楽し気に笑う。
 さて、子供達は、チョコレートへのお絵描きに夢中のようだ。
「書くものが浮かばない? そうねぇ、夢とか、好きなモノ、何でもいいわよ?」
 ウルストラが、子供達に言う。
「私? 私だったら……やっぱり、仲間の皆へのメッセージとかかしら?」
「夢とか願い事とか、書いて食べるといつか叶うかもですよ? おまじない、です」
 チョコペンを配りながら、絹が言う。
「うむ。良いかお前達! 私にも、一つだけ確かに自慢できる事がある。この、家族のような仲間達だ!」
 その言葉に、【りゅうおうぐん】の仲間たちが、微笑を浮かべた。
「悪でも、正義でも共に歩む者がいるのは良いものだぞ! お前達も周りの友と仲良く過ごすのだぞ? いいな?」
 りゅうおうさまのお言葉に、子供達は元気よく、はい! と返事をしたのであった。
「はい、1列に並んで。皆の分はちゃんとあるから、焦らず、順番に並ぶのだぞ」
 市販のチョコ菓子を、小さな包みに可愛くラッピングしたものを子供たちに配るのは、真也だ。子供達がお礼を言うのへ、
「うん。偉いぞ。こちらも用意したかいがあったな」
 と言って、頭を優しく撫でた。子供達の喜ぶ顔。幸せそうな家族たち。そんな人々を見ながら、
(「こうやって子供たちが笑えるささやかで温かな幸せ。これからも守って行きたいものだ。たとえ、この身が果てようとも」)
 心の中で呟き、誓った。
 将と霞は、2人でチョコウエハースを配っていた。カードゲームで使えるプロモーションカード付きで、その点でも子供達に大人気だ。
 慣れた様子の将に比べて、霞はどこかぎこちない。笑顔ではあったけれど、少し緊張しているようだ。
「フーッ。ちょいと休憩入るかね」
 将の提案に、霞はうなづいた。休憩用に開放されていた部屋に入ると、
「んじゃ、これはかすみんの分」
 と、将はチョコウェハースを差し出した。
「……え、これは? わたしの分?」
 驚いて目を白黒させる霞へ、
「あいにく不器用なもんでね。手作りとはいかねーが……ま、これ食べて後半もがんばろーぜ」
 そう言って笑う将。
「ほんとはわたしから渡さないといけない日なのに、もう。でも、ありがとうございます」
 霞はチョコレートを受け取って、パッケージを開いた。ウェハースを一かじり。中に入っていたカードは、大切に仕舞って。
「このイベントが終わったら将さんの分、ちゃんとお渡ししますから。後半戦、がんばりましょうね」
 そう言って、霞は微笑んだ。
「眸っ、眸も一緒にやろうぜっ」
 と、子供達と鬼ごっこをしながら、笑顔で眸を呼ぶのは、広喜だ。2人でチョコレートを配っていたのだが、子供達と意気投合、遊び始めたようだ。
 眸も、引っ込み思案な子供達を誘って、合流して鬼ごっこを始めた。
 子供達相手にはもちろん手加減をして。お互いが鬼の時は、本気を出して、ちょっと模擬戦のように動いてみたり。
 子供達は時に驚き、時に喜び。一緒に駆け回る。
「はは、楽しいな!」
 広喜が、笑顔で言った。
「なあ! 元ダモクレスで悪い奴だった俺でも、ヒトの役に立てるって! そのためにケルベロスになったんだって、眸が教えてくれたんだ!」
 子供達とはしゃぐその姿に、かつてダモクレスだった面影はない。
「だからさ。ありがとな、眸」
 飛び切りの笑顔で。広喜が言う。
「ワタシこそ……優しイ日常を、ありがとウ」
 微笑を浮かべ、眸が返した。2人と子供達の鬼ごっこは、まだまだ続く。
「んむんむ、エバラの素敵な魔法とチョコレートーぉ! 戌年なのでわんちゃんチョコですーぅ♪ 保護者の方には、ビターなチョコもありますよーぉ♪ 皆で楽しんでいってくださいねーぇ♪」
 エインが集まった観客たちに告げる。危なくない範囲でグラビティなどを披露しつつ、子供達のために大盤振る舞いだ。
「あらあら、はい、お嬢さん。魔法使いからチョコレートのプレゼントよ」
 輪に加われなくて、遠巻きに眺めていた女の子へ、しずくがチョコレートを手渡しに行く。ちちんぷいぷい、魔法をかけて。
「すぐにお友達がいっぱいできますよ。効き目はばっちりです。だってお姉さんは魔法使いですから!」
「アアアッツイ!」
 と、悲鳴が上がった。声の方を見てみれば、芙蓉がぴょんぴょんと飛び跳ねている。マシュマロでチョコフォンデュ、とやろうとしていた所、どうやらチョコが垂れたらしい。
「笑ったわね!? 今笑った子顔覚えたのだわ!? フフフ追いかけてマシュマロを食べさせてあげてよ……!?」
 と、子供達を追い回す芙蓉。子供達も、笑いながら逃げ惑う。
「あれはうさぎ。あれはテレビウム」
 子供達と遊びながら、真介がチョコを配る。
「アレは……なんだろう」
 と、その視線の先には、
「チョコとお金の妖精だよー。はい、お金型チョコだよー」
 チョコを配る着ぐるみの姿。敬重である。その後ろには、めびるが隠れていて、子供達へチョコを渡そうとタイミングを見計らっている。意を決して、めびるが飛び出した。子供に勢いよくチョコを差し出す。
「ありがとう!」
 と、子供が笑顔でお礼を言った。めびるはうれしくて、思わず笑顔になるのであった。
「あっ出ましたね着ぐるみモンスター! 倒すとチョコをドロップします!」
 さて、そんな奮闘もさておいて、エピが敬重を指さす。その言葉に、子供達が一斉に敬重へと襲い掛かった!
「皆、頭を狙うの。がおー。それ、はぎとれ、はげはげー」
 アウィスも一緒になって子供達をけしかける。子供達の剥げ剥げコールに、
「うっせ、ハゲじゃない! 生えてる! あ、ゴホン、だめだよー、頭はダメだよー、後悔するよー」
 と必死に頭をガードする敬重であった。
(「……なんか、心配させてるかな」)
 仲間たちの様子を見ながら、慶は思った。
 普段通りの、明るい仲間たちの姿だった。でも、隠していても、何処か気遣うような、そんなような雰囲気を感じる。
 慶にも、思う所がないわけではない。
(「でも、ここはもう解放されたんだ」)
 子供達の笑顔がある。
 仲間達の笑顔がある。
 この場所に、似合うのは、やっぱり笑顔だ。
「ほら、変な着ぐるみもいいけど、チョコレートはまだまだあるぞ。ユキもモフり放題だ」
 慶は少しだけ笑うと、そう言って、笑顔の中へと帰るのだった。

作者:洗井落雲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年2月13日
難度:易しい
参加:33人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 3/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 9
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