甘くて美味しいさつまいも♪

作者:白鳥美鳥

●甘くて美味しいさつまいも♪
 さつまいも。秋の実りの一つだ。適度な量の葉は、太陽の光と水を浴びて、土の中にあるさつまいもを大きく甘くしてくれる。土を掘り返せば大きくていかにも美味しそうなさつまいもが沢山収穫できる。採れたてのさつまいもは、その甘さを存分に生かしてくれるだろう。
 例えば、焼き芋。焼く事によって、より一層甘さの増したさつまいもは最高の喜びをくれるだろう。
 そんな素晴らしいさつまいもが農家の愛情を受けながら、今か今かと収穫の時を待っている。
 だが、突然の変化が一つのさつまいもに起きた。蔓と葉を伸ばして……3メートル程の大きさに巨大化してしまったのだ。そして、するするとその大きな蔓を生かして畑で暴れだしたのだった。

●ヘリオライダーより
「秋って言ったら実りの秋だよね! 食欲の秋だよね!」
 美味しいものが大好きなデュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、にっこりと笑う。そして、直ぐに険しい顔つきになった。
「今って色々な秋の野菜や果物の収穫時期だよね。でも、その収穫時期を狙ったように攻性植物が出現してしまうみたいなんだ! 収穫時期のさつまいもがね、突然、攻性植物に変化して周囲のさつまいもを荒らしまわってるみたいなんだよ! このままじゃ、みんな駄目になっちゃうんだ! 農家の人が一生懸命作ってきた美味しいさつまいもを守る為……そして美味しいさつまいもを食べる為に、みんなの力を貸して! お願いだよ!」
 デュアルは悲壮な顔をして説明を続ける。
「攻性植物はね、最初の一体がさつまいもっぽい攻撃をしてくるんだけど……それだけじゃなくて、時間の経過と共に周りのさつまいもも攻性植物化させてしまう能力まで持っているんだ! 戦闘が7ターン以上長引くと、周りのさつまいもの攻性植物化が始まって、戦況が悪化の一途を辿ってしまうんだ。だから、出来る限り早く倒す必要があるよ。変化は7ターン目に2体、8ターン目に4体、9ターン目に8体、10ターン目に16体。後はもう、畑中のさつまいもがある限り倍々で増えていっちゃうんだよ。でも、最初の1体以外は攻性植物化させる能力は持っていないから、攻性植物化が始まってしまっても、まずは本体への攻撃を優先した方が良いと思う。後、農家の人には連絡がいっていて、遠くで祈りながらみんなを見ているよ。農家の人の為にも、みんなも頑張らないとね!」
 ミーミア・リーン(笑顔のお菓子伝道師・en0094)は甘いものが大好きである。当然、さつまいもも大好きだ。
「うう~! 折角作ってくれた美味しいさつまいもなのよ? 一杯暴れて、畑が駄目になっちゃったら、農家の人も、ミーミア達も泣いちゃうの! だから、みんなも力を力を貸して欲しいの! お願いなの!」


参加者
夜桜・月華(まったりタイム・e00436)
エイファル・フレイミア(オラトリオの鎧装騎兵・e00520)
ミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892)
知識・狗雲(鈴霧・e02174)
ニケ・セン(六花ノ空・e02547)
千斉・アンジェリカ(空墜天使・e03786)
センカ・イロドリ(ファンブルダイス・e20629)
ルト・ファルーク(千一夜の紡ぎ手・e28924)

■リプレイ

●甘くて美味しいさつまいも♪
 さつまいもを生産する農家の人が作り上げた広大なさつまいも畑。
 そこには明らかに不釣り合いな巨大なさつまいもの蔓が伸びていた。その周りのさつまいもは無残な姿になっている。
 さつまいも農家が見守っている中、ケルベロス達は3メートルはあろう、さつまいもの攻性植物の元に走り寄る。
「一次産業は大事なのです。おいしいお芋の収穫を邪魔するなんてダメなのです。私が許さないのです」
 そう宣言しながら夜桜・月華(まったりタイム・e00436)は、月華斬撃舞踏という名の魔術回路で強力な魔力を身に纏った連続した斬撃を繰り出して、初撃から強力な攻撃を繰り出す。
「美味しいサツマイモの為だ、頑張るぞ。大事だからいっぱい言っとくな」
 続けざまに知識・狗雲(鈴霧・e02174)は、唐紅色の鎖を出現させるとニケ・セン(六花ノ空・e02547)達の武器に力を与えていく。ボクスドラゴンのアスナロは攻性植物に向かってタックルを仕掛けた。
「汝、朱き者。その力を示せ」
 ニケはエイファル・フレイミア(オラトリオの鎧装騎兵・e00520)達に向かって古代語の詠唱唄と共に朱き鎖の影が力を与えていく。ニケの和紙による和柄の桐箱姿のミミックは、ぴょんぴょんと噛みつき攻撃を行った。
(「……話には聞いていたけれど、こうやって見るとやっぱり大きいな。おまけに厄介な能力まで持っているらしいし、一筋縄ではいかなさそうだ」)
 ルト・ファルーク(千一夜の紡ぎ手・e28924)は、巨大な攻性植物に押されつつ、見守っている農家の人々の為に自身を奮い立たせる。そして、エクスカリバールの曲がった所を使って攻性植物の表面を剥いた。
「正義の鉄槌☆ くらわせちゃうんだから♪」
 千斉・アンジェリカ(空墜天使・e03786)は、攻性植物に向かって強烈な一撃を放つ。
 巨大な攻性植物も、しゅるしゅると動き出す。蔓が伸びるとエイファルを縛り上げた。
「あ、危ないの!」
 ミーミア・リーン(笑顔のお菓子伝道師・en0094)は、急いで施術による回復を行う。更に、彼女のウイングキャットのシフォンは清らかな風を送り込んで回復かつエイファル達に加護も固めていく。
 ミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892)は、全体の様子を見て、狗雲達に向かって雷の力によって加護の力を送る。半分騙されつつミリアの応援に来た佐藤・非正規雇用は攻性植物をチェーンソー剣で引き裂き、彼のオルトロスは神器の剣により斬りつけた。
(「ボク、さつまいもっぽい攻撃ってイメージしづらいです」)
 そんな事を思っていたセンカ・イロドリ(ファンブルダイス・e20629)は、先程の攻撃を見て、なるほどさつまいもっぽいです、そんな事を思う。それはさておき。
「ボクさつまいも好きです。冬に食べるとほかほか体が温まりますし、とてもいい食べ物です」
 そう宣言すると、センカはルーン輝く斧を使い攻性植物に向かって飛び上がり、そのまま下へと斬りつけた。
「ケルベロスは人々の為にあれ」
 エイファルは煌めく斧を使った攻撃を行おうとするが、するりと攻性植物にかわされてしまう。
「……これは、命中率をできる限り上げたほうがいいかな。俺達は力押しで作戦を立てているからね」
 ニケは直ぐにエイファル達に向かって身に纏ったオウガ粒子を放って感覚を活性化させていく。ミミックは宝箱を傾けて落ち葉を発生させるとどーんと落した。
 月華は攻性植物に大鎌を飛ばすと回転させて斬り裂く。とにかく時間勝負だ。
「ただの飾りじゃないよ……!」
 狗雲はセンカ達に唐紅色の鎖を用いて力を上げる。アスナロは攻性植物に対してブレスを吐いた。ルトは地獄の炎にて弾丸を作り上げると攻性植物に対して撃ち込む。
 急に、ぐらぐらと地面が揺れる。巨大なさつまいもが埋まっている畑。簡単にアンジェリカ達を飲み込んだ。
「直ぐに治しますからね!」
 ミリアはアンジェリカ達が受けてしまった催眠効果を一気に打ち消す。更に非正規雇用が力の上乗せをした。オルトロスも瘴気を放って毒を纏わせていく。
「ありがと♪ よーし、頑張るよっ!」
 アンジェリカは攻性植物に向かって高速加速で突っ込む。しかし、巨体の割にはするりと避けてしまった。
「うう……あんじゅちゃんの攻撃も外れちゃったよ」
「……なかなか当たりませんね。ボクもキミ達が当たりやすくなるように頑張るです」
 センカは攻性植物の弱点を狙って、電光石火の蹴りを叩き込む。
「……次こそ当てます!」
 エイファルはルーンアックス二本を構える、攻性植物にクロスする一撃を与える。
「魔力に限界なんてないのですよ。私の全力をうけるのです!」
 月華は活性化した魔力を身に纏い次々と斬撃を浴びせた。狗雲は、再び唐紅色の鎖をニケ達に纏わせて攻撃力を上げる。その力を受けたニケはケルベロスチェインを攻性植物に放つと縛り上げ、ミミックはエクトプラズムを使って試行錯誤した末に火縄銃を創り上げて撃ち放った。
 攻性植物は形態を変えて自らを守るように蔓で囲むと、そのまま光合成をするかの様に身体を休めている。
「体力回復なんてさせないんだから!」
 アンジェリカは攻性植物に地獄の炎を叩き付ける。しかし、攻撃は通ったものの燃えてはくれなかった。
「ミーミアさん、シフォンさん。ご協力、お願いします!」
「分かったの!」
 ミリアとミーミアはそれぞれルト達、ミリア達に雷で作り上げた障壁を創り上げて仲間たちを守る。シフォンは残りの狗雲達へと聖なる加護を送った。非正規雇用はチェーンソーを用いて攻性植物に激しく斬りつけ、オルトロスも神器を用いて斬り裂く。
「捕えるです! エイファルさん、チャンスです!」
「ありがとうございます、センカさん」
 センカがブラックスライムを使って攻性植物を捕えた所をエイファルはルーンを輝かせた斧で上から下へと斬り下ろした。
 攻性植物が再び蔓を伸ばし始めた。次に狙うのはアンジェリカ。だが、アスナロが割って入って、その攻撃を受け止める。
「アスナロ、頑張ったね。俺も負けないよ。ニケさん達に期待してるからね!」
 狗雲は最後の力をニケ達に与える。
「ありがとう、助かるよ。……でも中々敵も手強いね。ミミック、一緒に行くよ」
 ニケは古代魔法の詠唱を始め、そこからドラゴンの幻影が生まれて攻性植物へと炎を放つ。ミミックは、ぴょんぴょん飛びながら噛みついた。
「燃やし尽くす! お前の罪も、その体も!」
 ルトは異世界への扉を開き、攻性植物に向かって業火を繰り出し、燃やし尽くす。……その炎は、焼き芋を通り越して消し炭にする勢いで。
「あんじゅちゃんも、失敗を挽回するよ☆」
 アンジェリカは攻性植物の弱点らしき所を狙って強烈な一撃をお見舞いした。
「患者さんの苦しみを、貴方も味わいなさい……」
 ミリアも様子を見ながら、一旦攻撃に移る。過去に捕えたデウスエクスの力を病魔の弾丸として噴出させて一撃を加えた。威力は高いとは言えないが、状態異常は今よりも付きやすくなる。更に、非正規雇用はチェーンソーの刃で更に斬り裂いていった。
 エイファルはオラトリオヴェールにて優しい光で月華達を癒しながら清めていく。続いて、月華は大鎌を構えると、攻性植物へと投げつけて回転斬りを行い、狗雲は稲妻を纏った突きを繰り出して電撃による痺れを与えた。
「……そろそろ、危ない所ですね」
 時間の経過を見ていたニケが、そろそろ分裂の時間が迫ってきている事を感じて、速攻で終わらせるために、古代語魔法を唱えると朱き鎖がアンジェリカ達を包み込み、その力を高めた。
 ルトも攻撃に移る。エクスカリバールが輝いて、攻性植物の表面を削り取った。
 攻性植物も大きくうごめき始める地面が大きく揺れだした。土は簡単に凹むとニケ達を簡単に飲み込む。アスナロもエイファルも動きたかったが、守りきれなかった。
 多めに耐性を付けていた筈だが、ミリアの判断力は鈍る。幸い、被害は無かったものの彼女はアンジェリカ達に雷の防壁を創り上げる。ミーミアも、まだ攻撃を受けていない月華を回復していた。シフォンの方は、もう一度ニケ達に護りの風を送り込み、強化を図った。非正規雇用はアンジェリカ達に更に力を与え、彼のオルトロスは瘴気を送り込んだ。
「……くっ、頑張るのです。おとなしく美味しくなっちゃえです!」
 意識を精一杯保ちながら、センカは攻性植物に向かってルーンで輝く斧を使って叩き割る。状態を見ていたエイファルは輝くオーロラの光により、ニケ達へと癒しを齎せ、正常に返した。
「もうすぐ、分裂してしまいます。一気に畳み掛けましょう」
 月華の言葉にケルベロス達が頷く。月華は魔術回路による強力な魔力により高速の斬撃を攻性植物に与える。
 攻性植物も危機を覚えたのか、蔓を伸ばしてミリアを狙ってくる。それをアスナロとエイファルが割って入って助けた。
「よし、俺も……!」
 一人と一匹の活躍を見て狗雲も気合を入れる。放つは対デウスエクス様の病原菌のウイルスカプセル。それを攻性植物に撃ち放った。
「俺も、一気に行くよ」
 ニケは幻影の炎によって攻性植物を燃え上がらせ、ミミックが火縄銃を形作るとそれを撃ち込む。
「……最後だ」
 ルトは開門-異端を苛む火焔の墓穴-を放つ。異世界から広がる灼熱の業火は、攻性植物を燃え上がらせていく。その炎は焦熱となり攻性植物に纏わりつくと、そのまま焼きつくように消えていった。そう、そこにはまるで何もなかったかのように。
「お疲れ様ー、大変だったねっ♪」
 アンジェリカは、仲間たちとハイタッチして回る。うまく行ってよかったね♪ と笑顔を浮かべて。
「あれだけのサイズのさつまいも、もし焼き芋にしてたら一体何人分になったんだろうな……」
 自ら倒したものの、攻性植物では無かったら……そんな悔やむような言葉をルトは零したのだった。

●さつまいも畑とさつまいも
「やはり、相手が相手だけに畑が荒れてしまいましたね……。被害が出てしまったところはどうしようもないですが、無事な場所は整えておきましょうか」
「そうだね。先に片づけておいた方が喜んでもらえるかな」
「じゃあ、早速直そうか」
 エイファル、狗雲、ルトの提案で、荒れてしまった畑の片づけを始めることにした。お礼が貰えるかもしれないけれど、戦った場所を荒れ放題にしているのは農家の人が被害に加えて大変だろうからと思うから。
「……しかし、農作業って大変なんだな……。だからこそ、美味しい物ができるんだと思うけどさ」
 ルトは駄目になってしまったさつまいもの蔓やさつまいもを片づけて、土をならしていきながら息をついた。
 流石に3メートルもある攻性植物が暴れまわったら、どうしても被害は出てしまう。せめて、この場所も来年にはきちんと植えられるようにしておきたい。
 片づけていると出てくる傷のついたさつまいも。これは明らかに売ることが出来ない。
「売り物にならないさつまいもは……対価を払ってわけてもらいましょうか」
「とりあえず、無事に倒した事を伝える時に、傷物をどうするか聞いてみよう。結構、傷物って言っても今なら食べられるものもあるしさ」
 エイファルの言葉にルトはそう答える。
 戦いで巻き込まれたさつまいもは傷物にはなっているけれど、先程までは綺麗なさつまいもだったのだ。このまま駄目にするのは、とても勿体ない。

「ありがとうございます。被害が最小限に抑えて頂けたのも皆様のおかげです」
 農家のご主人が何度もお礼を言ってくれる。それがとても嬉しい。
「もし、宜しかったら、スイートポテトを作ってみましたので、皆さんでどうぞ」
 奥さんが出してきてくれたスイートポテトに、月華、狗雲、ミーミアが目をきらきらと輝かす。
「実は戦いの際、傷物になってしまったものがあるのですが……何か対価を払い分けて頂けたらと……」
 ティファル、ルトは纏めた傷物のさつまいもを農家の人達に見せる。それに農家の人達は驚いた顔をした。
「傷物を大事にして頂けるとは嬉しい限りです。受け取っていただけるのなら、他にも少しになりますが……綺麗なものを含めて、お渡ししましょう。焼き芋等、皆さんで食べて頂けると嬉しく思います」
「ありがとうございます。お気持ち、ありがたく頂きますね」
 ケルベロス達は分けてもらったさつまいもで焼き芋を楽しむべく、場所を探して焚火を始める。
「うーん、美味しいです! お芋のスイーツは最高ですね!」
「うん、とっても美味しいの!」
 にこにこでスイートポテトを堪能する月華とミーミア。狗雲もアスナロと一緒にスイートポテトを食べながら、焼き芋も楽しみにしていたりする。
 焚火に入れるさつまいもにアルミを巻いていたミリアは、巨大なアルミの塊を見つけた。中身は皆を驚かせようとしている非正規雇用。
「……? このホイル……というか攻性植物、まだ生きてます……? ……焼いてトドメです」
「ちょ、ちょっと待つの! こんな大きなさつまいもなんて無いの!」
 ミリアに焚火に放り込まれそうになったアルミ包みの非正規雇用。それを、ミーミアとシフォンが止める。どこからかうめき声が聞こえるので、多少、熱かったのかもしれないけれど。
「……佐藤さんだったのですか?」
 アルミの中身が判明してミリアは傷を治してあげていた。ちょっと、いたずらが過ぎたのかもしれない。
 頂いたスイートポテトに焼き立ての焼き芋。
 秋の空の広がり、涼しい風も吹いてくる。とても、過ごしやすい。
 戦った後の、甘い休憩を楽しむ……そんなケルベロス達だった。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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