
●死神の暗躍
何処とも知れない路地裏に、黒衣の女が立っていた。
銀髪とも白髪とも見える髪は長く、蝋を思わせる肌は血の気が失せたように白い。身に纏った黒い衣服はドレスのようにも見え、不気味なほど整った顔には、冷たく死の気配を漂わせている。
死神。
その感情を見通せない目が、片膝をついたダモクレスを見下ろしていた。
黒いプレートアーマーに似たボディの女性型アンドロイドだ。
死神の手によって球根のようなモノを植え付けられたこのダモクレスは、胸元に手を当てたまま俯き、壊れたように動きを止めていたが、
「さあ、お行きなさい」
死神の声に突き動かされるように、ゆっくりと立ち上がった。
「グラビティ・チェインを蓄え、ケルベロスに殺されるのです」
冷たく命じる声を受け、ダモクレスが路地の向こうを見る。
二つの瞳は意志の光を失くし、さながら曇ったレンズのように虚ろだった。
「……任務……了解……。……コレヨリ……行動ヲ……開始……スル……」
壊れた機械人形を思わせる声で言うと、脚部の関節に駆動音を響かせる。
死神の命じるままに、殺人機械と化したダモクレスが都市に放たれようとしていた。
●イントロダクション
「死神に暴走させられたダモクレスが事件を起こします。一般の方に被害が出てしまう前に、対処をお願いします」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)がケルベロス達を見渡して説明を始める。
「今回、暴走状態に陥ったダモクレスは、女性型のアンドロイドタイプです。紺色の髪をした、黒い西洋甲冑のような装甲を纏う個体であり、識別は容易だと思われます」
二つの瞳は虚ろに曇り、まるで命令に従うだけの機械人形のようだという。
「このダモクレスですが……死神によって『死神の因子』と呼ばれるものを植え付けられてて、放置すれば多くの人命が奪われることになります」
死神の因子を植え付けられたダモクレスは、人々の虐殺を目的に動いている。
それは、大量のグラビティ・チェインを獲得するためだ。
「もしこのダモクレスが大量のグラビティ・チェインを得た後に死んだ場合、死神の手で強力な手駒としてサルベージされてしまいます。死神の思惑を打ち砕くためにも、今のうちに対処することが重要です」
急ぎ現場に向かい、被害を未然に防がなければならない。
「ダモクレスの出現ポイントは、ビルに囲まれたオフィス街の道路です。時刻は夜遅くなので、人の行き来は多くありませんが、それでも人払いは行ったほうがいいかと思います」
放置しておけば、ダモクレスはオフィス街の広い道路を駆け抜け、人の密集する夜の繁華街に至ってしまう。そうなる前に、何とか食い止めなければならない。
「ダモクレスの戦闘能力ですが、レプリカントのものに類似したグラビティと、リボルバー銃に似た武器で攻撃してくる模様です。暴走状態にはありますが基本戦闘術も心得ていて、かなり強力な個体と思われます」
幸い、ダモクレスは邪魔者が現れた場合、相手が戦闘不能になるまで戦い続けるようだ。
「あともう一つ、こちらも重要なのですが」
セリカはそう言うと、一呼吸置いて、
「今回のダモクレスは、死神の因子を植え付けられている関係で、ただ倒しただけでは死体から彼岸花のような花が咲き、どこかへ消えてしまいます。これを避けるためには、ダモクレスの残り体力に対して過剰なダメージを与えて倒すことが必要です」
弱ったダモクレスに大ダメージをぶつけることで、体内の死神の因子もろとも破壊することができる。
「多くの人命を守るため、そして死神の思惑を打ち破るためにも、暴走するダモクレスを撃破して下さい。……よろしくお願いします」
セリカが説明を締めくくり、ケルベロス達に一礼した。
参加者 | |
---|---|
![]() ロナ・レグニス(微睡む宝石姫・e00513) |
![]() テオドール・クス(渡り風・e01835) |
![]() リコリス・ラジアータ(錆びた真鍮歯車・e02164) |
![]() メモリア・ディアーリオ(ソップレッスィオーネバンボラ・e03328) |
![]() 天音・迅(無銘の拳士・e11143) |
![]() 天野・司(不灯走馬燈・e11511) |
![]() 千里・雉華(狂犬の警部補・e21087) |
![]() マキナ・マキナ(昼ドラゴン・e22776) |
●迎撃
都市の夜空は星の瞬きを隠している。
街路灯が点々と灯る舗装道の真ん中で、ロナ・レグニス(微睡む宝石姫・e00513)は、先程から道の先に目を凝らしていた。
「ここで……とめて、あげないと……」
ビル風に長い黒髪がなびき、耳飾りが揺れる。
その背後、距離にして数十メートル後方から声が聞こえてきた。
「あー、我々はケルベロスでス。今からここにおっかねーデウスエクスが来まス」
通行しようとした車を停車させ、建物から出てきた勤め人達にも向けて、千里・雉華(狂犬の警部補・e21087)が避難指示をしているのだ。
「それをさらにおっかねーアタシらがブッ倒しまスんで、皆さんささっと逃げてくだサい」
隣人力の効果で印象は悪くないが、どちらかと言えば、その物言いには逆らうことを許さない威圧感がある。
「間もなく戦闘になります。急いでこの場を離れて下さい」
衣擦れの音を立てて歩いてきたリコリス・ラジアータ(錆びた真鍮歯車・e02164)が続けて言った。襟の空いた和服を纏った彼女の胸の虚には、地獄化した心臓が覗き、二人の言葉に説得力を与えている。
「はいはい焦って転ばないように。車もUターンして迂回してくだサい」
手振りで一般市民に退去を促す雉華。
一方のテオドール・クス(渡り風・e01835)は、避難指示を聞いてビルから出てきた数名の会社員達に声を掛けていた。
「他にいないよね? 今は自分の身を守るのが肝心だよ。ここはオレ達に任せて」
ラブフェロモンの効果もあり、OLを含めた数名が期待と感謝の眼差しと共に頷き、その場を離れていく。
「見た感じ、逃げ道とかはなさそうかなぁ。あとは迎え撃つだけだねぇ」
建物の隙間などを確認し終えたメモリア・ディアーリオ(ソップレッスィオーネバンボラ・e03328)が、ゆるゆるとした口調で気合一声。
「初めての依頼頑張るぞ、おぉ」
「うまくやんねぇとな」
天音・迅(無銘の拳士・e11143)も心を定めるように拳を軽く握り締めた。
「死神の因子、か」
暗い夜空を見上げながら、天野・司(不灯走馬燈・e11511)が怒りとやるせなさを含んだ声で呟く。
「散々暴れた上で死んでこいだなんて、死神達は産まれてくる命を馬鹿にしてるのかよ……」
「マキナ、難しい事は良く解らないけど、どっちにしてもここで倒しちゃえばいいんだよね!」
マキナ・マキナ(昼ドラゴン・e22776)は羽をぱたつかせながら、左右に伸びる道路に交互に目を配った。
そんな中、初めに気付いたのはロナだった。
長い耳がぴくりと反応、素早く人払いの殺気を放つ。
不気味なほど均一なリズムで道路を駆ける、機械の足音。
「来たぞ、こっちだ!」
迅も注意を促し、反対側にいた雉華がコートを翻して走る。
「……紛らわしい真似しやがって、死神め」
行方不明の母親を想起させる今回の一件に、雉華は複雑な心境を抱いていた。その眼鏡越しの鋭い目が、接近するダモクレスを捉える。
機械の女が道路を蹴り、陣形を整えたケルベロス達の前に着地。
顔を上げ、紫の前髪に隠れていた虚ろな瞳を八人に向けた。
『生命反応多数確認……殺害対象ト判断……コレヨリ収奪ヲ開始スル……』
●戦闘
銃声が立て続けに轟き渡る。
空を切る弾丸を、司は体を覆った夜空――星々のような光を纏う夜色のオウガメタルで防いだ。
「やらせないぞ! このくらい止めてみせる!」
弾かれる銃弾、穿たれる無数の弾痕。言葉とは裏腹、流動金属の鎧を以ってしても、弾丸の威力は減衰しきれない。
「ひどいこと、しちゃだめ……!」
それ以上、引き金を引かせない――思いを込めて掌から放ったロナの竜の幻影がダモクレスを包み込んだ。
炎に包まれながらも両腕を交差させて突貫してくるダモクレス。
「回復は任せろ! 皆、存分にやってくれ!」
司の銃創をオーラを飛ばして癒しながら、迅が味方に声を送る。
それを耳にしながらリコリスが敵との距離を詰めた。
リコリスとダモクレス、互いの肘から先が高速回転の駆動音を響かせる。
「あなたにも意志があった筈です。抗えませんか……死神の束縛に」
ダモクレスは応えない。
弾かれ合い、火花を散らせる機械仕掛けの腕と腕。
「これからアンタがどれだけ暴れようが抵抗しようが捨て身になろうがフルパワーを出そうが、完膚なきまでに負けることをお教えしまス」
雉華がまくしたてるように啖呵を切りながら、幻想化したオーラでリコリスを強飾。
燃え上がるようなオーラを纏ったリコリスが襲い来る一撃を縛霊手で弾き、よろけたダモクレスの脇腹を高速回転する腕で穿ち抜いた。
弾け飛ぶ黒の装甲と内部機械。
「そんな風になったって恐怖はあるはずだ……!」
その隙に司が地面を蹴り、ダモクレスの首を炎を宿した指で突いた。
『……!』
本能的な恐怖心を掻き立てられたように、ダモクレスが虚ろな目を見開いて飛び退く。
「命令だか何だか知らないけど……人様の星で好き勝手とか、良い度胸してるよね」
テオドールが逃さず、杖を小動物に戻してダモクレスに放った。
高速で飛ぶ雌の大鷲。
ダモクレスが回避機動と共に銃の連射で迎撃を試みるが、撃ち落とせない。円を描くように切り裂かれ、装甲が細かく弾け飛ぶ。
「ドーンっていくよ!」
竜の羽を羽ばたかせたマキナが、グラビティバンカーの魂を喰らう一撃でダモクレスの胸部に亀裂を入れた。
「各兵装正常。各兵装展開完了。攻撃範囲設定完了。安全装置解除。カウント3後攻撃。範囲内の味方は退避行動を推奨」
「攻撃行くぞ!」
「3・2・1攻撃開始」
迅が叫び、戦闘前とは一転して表情をなくしたメモリアがガトリングガンを構えて全身の武装を開放した。
爆炎の力が込められた弾丸、連発される光線、ミサイル群の集中砲火。
ダモクレスは猛射を浴びながらも横に跳び、軽ワゴンを足場に高く跳躍。ビルから張り出した横長の庇に飛び上がって駆け抜ける。
ミサイルや弾丸が庇やビル壁面を破砕、ガラスを割りながら追う。
ダモクレスは宙に身を躍らせ、空中で銃を連射しながら着地して突撃。
「させないよ!」
守るように羽を広げ、太陽と月――二つのグラビティバンカーを構えて銃弾を防ぐマキナ。ダモクレスは構わず突っ込み、メモリアをスパイラルアームで弾き飛ばした。
ビルの壁面に叩きつけられるメモリア。
「おい、大丈夫か!?」
即座にオーラを飛ばして傷を癒やす迅。
「損傷状態を確認…………戦闘続行可能」
かなりのダメージだったが、何とか立ち上がってメモリアが応答する。
ダモクレスの戦闘機動は殆ど自己の損傷を省みないものだった。
ロナの放った熾炎業炎砲に焼かれながらも、ダモクレスが前衛を相手に暴威を振るい続ける。その一撃は、ディフェンダーでも直撃を受ければ深手になり得るほどだ。
ドリルさながらの腕を突き出してくるダモクレス。
「っと、子供騙しだね!」
雉華のオーラによる強飾を纏ったテオドールがその片腕に斬撃を叩き込んだ。
『腕部損傷ヲ確認……戦闘行動ニ支障ナシ……』
テオドールに蹴り飛ばされ、立ち上がるダモクレス。
その胸部の砲口が開き、光が収束する。
「誰かが傷つく姿はゴメンだ、させやしないぞ!」
司の声に呼応して、夜色のオウガメタルから輝くオウガ粒子が展開、前衛を包み込む。
「ダメージの蓄積は順調でシょうか。……と、支援しまス」
雉華の具現化させた光の盾に守られながら、司が襲い来るビームを受け止め切った。
「GGGYYUUUIIAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」
直後、敵を圧倒するような凄まじい叫声が轟き渡る。
味方を癒やし、戦意を高揚させるマキナのドラゴニアンシャウトだ。
好機を逃さず突っ込んだリコリスがチェーンソー剣を振るい、炎を纏ったその刃がダモクレスの装甲を破断、内部構造を断裂させる。
続く波状攻撃から逃れるようにダモクレスが後ろに体を流してミサイルを大量射出。
「飛来数確認、弾道計算、着弾点予測……完了、迎撃する」
メモリアが襲来する弾数を上回るほどのミサイルを発射――全てを迎撃した。
爆炎の花が咲く中、敵の背後に回りこむテオドール。絶空斬の一閃がダモクレスの損傷部に修復不可能なダメージを刻む。同時、ロナのシャドウリッパーがダモクレスに直撃した。惨殺ナイフの斬撃に随所の損傷部が断たれ、筋組織のようなケーブルが千切れ飛ぶ。
構造が露出した傷口の数々から火花が散り、爆ぜた。
「ガ、ァ……アァアアァァァァアァァ……!!」
ダモクレスが苦痛を振り切るように叫び声を挙げる。
その焦げた片目からは、赤黒いオイルが涙のように流れ出ていた。
●破壊
「もうすこしのはず、だから……いたいおもいをするのは、もう……」
ロナがナイフを握る手に力を込める。
死神の因子もろともダモクレスを完全破壊するため、ケルベロス達は状態異常を中心として倒さない程度のダメージを与え続ける。
ダモクレスの叫びは損傷部の火や凍結を吹き飛ばしていたが、重ねられた異常は一度に消し去れる限度を超えていた。それでも攻撃をやめず、腕を高速回転させて突進してくる。
「アタッカーさんよ、存分にやってくれ。しっかり支えるぜ!」
迅のオラトリオヴェールに包まれる中、オウガメタルを纏う司がダモクレスの腕を受け止めた。
「死神の手駒になんてさせない……もうそれしかできないんだ!」
「まぁ因子をつけられたってだけなら被害者でスものね……遺恨だけは無くしたげまス、か」
雉華がオウガメタルを駆使した達人の一撃でダモクレスの装甲を袈裟に断ち切る。
「景気いいの頼んだぜ!」
頷いたマキナが息を吸い込み、癒しの力を込めた叫びを放った。
『各部損傷増大……セん滅ハ困難ト判断……各個撃破ヲ優先スル……』
銃を構えた機械の女に、頭上から声が降ってきた。
「捨て身ってやつ? 悲壮なことだね」
壊れたビルの二階部に立ったテオドールだ。
杖を振るい、容赦なく火の玉を見舞う。
「作戦は順調に推移。状態異常の付与を継続」
言いながらメモリアがナパームミサイルを射出。
爆炎の中を跳躍してきたダモクレスが、機械の露出した腕を鞭のようにしならせる。両腕のグラビティバンカーで何とか受け止めるマキナ。
「こいつも捨て駒ってやつか……戦いって何なんだろうな」
迅がマキナをオーラで癒しながら憐れみを込めて呟いた。
「生き続けたいと考える事すら、もう、できませんか?」
リコリスが自身の剥き出しになった内部機械や配線を地獄の炎で包みながら、近くて遠い『物』であるダモクレスに語りかける。
『……ノイズを検出……思考系統ヲ確認……』
ダモクレスが呟き、小さな機械音の直後に言った。
『問題箇所ヲ消去……任務ヲ継続』
言い終える間もなく、歯噛みした雉華が機械の女に肉薄。
叫びに似た気合を短く放ち、表情も険しく機械の体に拳を叩き込む。
立て続けの痛打に胸部装甲を割られ、ダモクレスがたたらを踏んだ。
「敵損傷増大。以後、攻撃の抑制を推奨」
「そろそろか……」
メモリアが注意を促し、迅がダモクレスを見据える。
ロナが襲い来る銃弾をナイフで弾き、エアシューズの加速で接近。
ナイフを振るって敵の動きを制限。
「さあ、トドメだ。痕跡も残さず消滅する覚悟は出来た?」
テオドールがアスファルトを蹴り、ダモクレスの背後に回りこむ。
その手には愛用のナイフが握られていた。
『……!?』
ダモクレスが咄嗟に身をかわす。
ロナが胸に手を当てて祈るような言葉を紡いだ。
「おねがい、しにがみさん……ゆっくり、ねむらせてあげて。もう、このこに……いたいこと、くるしいこと……させないで、あげて」
辛くも回避したと思われた、その瞬間。
ダモクレスの耳にリコリスの声が響く。
「悪夢の中で死に疲れた屑達よ、眠りの前の絶望を吐き出しなさい」
戦闘の余波で崩れたビルの瓦礫、機械装置、鉄骨、自動車や街路灯のスクラップ、更には塵埃までもかき集められ、悪夢の果てに進化した九首鉄屑龍がダモクレスの前に顕現する。
軋みをあげる金属の音はさながら鉄屑龍の咆哮か。
虚ろな目で見上げたダモクレスに、最早、回避の手段はなかった。
鋼鉄龍がダモクレスの体に喰い付き、首だけを残して完膚なきまでに砕き尽くした。
●終結
「きかいのからだ、でも……いたかった、よね……ごめん、なさい……」
砕かれたアスファルトの上で、ロナがダモクレスであった残骸を抱きかかえていた。焼け焦げ、虚ろな瞳をした、少女にも見える頭部を。
そっと掌をかざし、その目を閉じさせる。
「ゆっくり、ねむって……もう……いたいこと、くるしいこと……しなくていいから……」
腕の中で、脆く、砂となって崩れていく残骸。
ビル風に吹かれてダモクレスであった塵が飛ばされていく。
その様子を、リコリスが無言で見送っていた。
「命を……こんな風に使い捨てるのかよ、死神は」
唯一無二である筈の命を道具のように扱う死神に、司が怒りで拳を握りしめた。
激戦の果てに道路は壊され、吹き飛んだ車や建物の外壁も散乱している。
念のため周囲を見まわっていた雉華が、壊れ飛んだ建物の破片を無言で見下ろしていた。
「……ッ!」
強く蹴り飛ばされたコンクリートの欠片が建物の壁に当たり、虚しく音を立てる。
額を押さえて暫し佇む雉華。
ダモクレスを悼んでいるのではない。想うのはもっと別のことで――。
「えーっと、これからどうしようか?」
聞こえてきたマキナの声に顔を上げ、一息。雉華がそちらに歩き出した。
「……目標は達成できまシたから、適当にやることやって撤退しまシょう」
「被害は建物とか車とかだけみたいだしねぇ。まぁ、こんな感じかなぁ」
辺りを見回して言ったメモリアに、テオドールが飄々として応じた。
「皆の無事が一番だからね。狙い通りの成果と言えるんじゃない?」
「ああ、怪我人もいないしな。喜んでいいと思うぜ」
人一倍、味方の状態に気を配っていた迅だ。誰ひとり倒れずに戦いを終えられたこともまた、大きな戦果と言えるだろう。
「死神の思惑も、砕いたと言えるのでしょうね」
あのダモクレスが死神の手駒にならずに済んだこと。
或いは――それが救いと言えるのかも知れない。
「おやすみなさい……どうか、やすらかに……」
空を見上げ、ロナが言葉を送った。
星のない夜空に向けて、祈るように。
作者:飛角龍馬 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2016年7月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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