ゴミはゴミ箱、クズは屑籠へ

作者:秋月きり

 深緑香る爽やかな空気の中、その青年はコンビニエンスストアで購入したアイスを食べていた。
 破った包装紙を何気ない動作でそのままぽいっと後方へ投げ捨てる。まるでそれを待ち構えていたかのように風が吹き荒び、包装紙を遥か彼方へと舞い踊らせた。
「ゴミをポイ捨てしちゃ駄目です!」
 流れるような動作で行われたゴミのポイ捨てに、注意の声を上げたのは中学生制服を身に纏った少女だった。眼鏡越しの理知的な瞳は今や、目の前で行われた許し難い行為への怒りに燃えていた。
「うるせーな! 文句があるならテメーで拾いにいけや!」
 億劫そうに片眉を上げた青年は、自身を注意した少女へ恫喝の言葉を向ける。そうすれば彼女がすごすごと退散するとの思っての行動だった。
 だが。
「そうですか。クズは屑籠に捨てるしかないようですね」
 いつの間にか少女の手に握られていたチェーンソー剣が唸り声を上げる。
 その彼女の肩で、ハムスターの形をしたダモクレスが「きゅぃ」と歓喜の声を漏らすのだった。

「福岡県の天神にある大きな公園で、新たなアンドロイドの動きがあるようなの」
 集ったケルベロス達にリーシャ・レヴィアタン(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0068)が気難しい表情で言葉を告げる。
「アンドロイドはルールや規則を破る人を見つけると制裁と称してその人を殺しちゃうわ。その上で、連れている小動物型ダモクレスを通じて制裁した相手からグラビティ・チェインを奪取するの」
 未だ予知の段階だから、アンドロイドによる犠牲者は出てないけどね、との事だった。
「ただ、問題は、彼女もまた被害者ってところね。一緒に連れている小動物型ダモクレスによって脳にチップを埋められ、ダモクレスになりかけているの」
 彼女が起こす凶行を止め、可能であれば彼女自身も救出して欲しい。それがリーシャが告げる依頼の内容だった。
「まず、アンドロイドだけど、公園に行って派手なルール違反を起こせば、誘き出す事が出来るはずよ」
 例えばゴミのポイ捨てだったり、ペットをノーリードでの散歩だったり、自転車の乗り入れだったり。
 何かしらの『派手な違反行為』を行えば、アンドロイドがそれを注意、そして制裁を行いにやってくるはずだ。
 なお、アンドロイドはチェンソー剣を所持しており、ルール違反者にはこれで攻撃してくる。また、ミサイルなどの攻撃方法も有しているので、距離を置く戦い方をする場合でも注意が必要だ。
「それと、彼女を元に戻す方法だけど」
 説明する時の癖なのか、立てた人差し指を前後に揺らしながら、解説を続ける。
「彼女が規則を破った人を許せるような力強い説得を行えば、埋め込まれた回路をショートさせて、人間に戻す事が可能よ。その場合、ダモクレスが無理矢理彼女に合体して襲ってくるけど、それさえ撃破してしまえばダモクレスだけを倒し、彼女を助ける事が出来るわ」
 しかし説得に失敗した場合、或いは説得前にダモクレスのみを撃破した場合、彼女に埋め込まれたチップが暴走し、救出は不可能となってしまう。そうなれば彼女を破壊する他、事件への解決策が無くなってしまうので注意して欲しい。
「ダモクレスの戦力拡充はもちろん、阻止するべき問題よ。でも、アンドロイドにされてしまった子も救えるなら救って欲しい。だから、みんなの活躍に期待しているわ」
 期待を込めた瞳を向け、リーシャはケルベロス達を送り出す。
「それじゃあ、行ってらっしゃい」


参加者
ミシェル・マールブランシュ(ガーディアンデクロックワーク・e00865)
ミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892)
リナリア・リーヴィス(怠惰な観測者・e01958)
ヤクト・ラオフォーゲル(銀毛金眼の焔天狼・e02399)
メドラウテ・マッカーサー(雷鳴の憤怒・e13102)
リュティス・ベルセリウス(イベリス・e16077)
プルミエ・ミセルコルディア(フォーマットバグ・e18010)
エドワード・エヴァンズ(太陽の笑顔・e26026)

■リプレイ

●春の陽気とゴミに包まれて
 五月も半ばを過ぎたこの日、九州の気候は春を通り越し、まるで夏のような陽気を帯びていた。
 福岡県の西寄りに位置する中央公園もその陽気に包まれている。公園内を彩る深緑達が作り出す日陰は、ようやく人心地つける涼しさを醸し出していた。
 その心地良い涼風に包まれたベンチを独占する青年の姿があった。寝そべった彼が身に纏うのは薄汚れた作業着。何処から見ても、仕事をサボり午睡を楽しむ不良社員、或いは寝床に困った住所不定無職と言った様子だった。辺りに散ったコンビニのビニール袋や総菜パンの包装紙、ペットボトルの類がその雰囲気を助長していた。
(「このような事はわたくしの矜持に反するのですが」)
 仕方ない、と横になったまま青年――ミシェル・マールブランシュ(ガーディアンデクロックワーク・e00865)は頭を振る。全てはデウスエクスを倒すための演技なのだ。
 ベンチの周りに無造作に捨てられたゴミは、ミシェルだけによって生み出されたものではない。ベンチにもたれ掛かるように休憩するリナリア・リーヴィス(怠惰な観測者・e01958)の周囲もまた、アルコール飲料の缶が散乱していた。アルコール臭い息を吐き、上機嫌に笑顔を浮かべる様は、真っ昼間っからお酒に溺れる駄目な大人の様相を呈していた。
「まったく、駄目な大人達だなー」
 若干棒読みな台詞と共に無邪気な微笑みを形成するエドワード・エヴァンズ(太陽の笑顔・e26026)もまた、そのゴミの山に向かって飲み終えた空き缶をぽいっと放棄する。ツッコミ役がいれば「お前が言うな」と言う動作ではあったが、生憎、この場にそんな者はいなかった。
 そんな三者三様の痴態を流石に見咎めたのか、通りかかった青年はポイ捨てしようとしたアイスの包装紙をコンビニの袋にしまい込むと、そそくさとその場を後にする。目の前に繰り広げられるそれを反面教師としたのか、それとも関わる事を拒否したのかは判らなかった。
「な、な、なっ」
 そんな彼らに怒りの声が上がるのも尤もな話だった。
 中学制服に身を包み、眼鏡の奥に理知的な光を湛えた少女が、肩を震わせながら立っていた。目の前に繰り広げられている光景を理解する事を拒んでいるのか、彼らを指さしたまま次の言葉を紡ぐ事が出来ないでいる。その肩で、掌ほどの大きさのハムスターが小さく鳴いていた。
「わふぅ!」
 声を失った彼女の横を銀毛の犬――否、狼が通り抜け、嬉しそうに吠え声を上げる。エドワードに駆け寄る様子から、少女は彼をその飼い主と判断したようだった。
 そして少女は爆発した。
「ゴミをポイ捨てしちゃ駄目です! あと、ノーリードでのペットの散歩も禁止です!」
 その言葉に胡乱気な視線が向けられる。三人、そして一匹の視線は明らかに少女の注意に対して鬱陶しいと言う感情を向けていた。
「あら?」
 そして、彼女の注意に油を注ぐ者がいた。ミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892)は大きめのゴミ袋にミシェルやリナリア、エドワードがポイ捨てしたゴミを容赦なく放り込んでいく。分別など度去年吹く風であった。
「あー、ごめんなさい、プラスチックは燃えるゴミかと思ってましたー」
「福岡市に於いてプラスチックは燃えるゴミです! でも、今入れたビニール傘は燃えないゴミです! ……じゃなくて! 貴方も何をやってるのですか!!!」
 ミリアの台詞も棒読みの為、演技である事は明白だったが、頭に血が上った少女にとってはそれは些細な問題であった。
 持ち前の生真面目さか、律儀にミリアの言葉に回答した彼女はしかし、次の瞬間、肩に乗るハムスターの小さな鳴き声にコクリと頷く。
「あ、あはは。うふふ。そうですよね」
 目に狂気を宿した少女の手に握られていたのは小さな身体に不釣り合いな巨大なチェーンソー剣だった。
 エンジン音を轟かせながら、彼女は死刑執行人の如く、最後の言葉を口にする。
「クズは屑籠に捨てるしかないようですね」
 駆動音に紛れるほどの小さな呟きはしかし、ケルベロス達の耳にしかと届いたのであった。

●制裁が意味するもの
 少女の豹変にミシェルとリナリアは立ち上がり、ミリアとエドワード、そして彼に寄り添う狼が身構える。
「貴女が見ている空の蒼さとわたくしの見ている空の青さは違います」
「むっ。まさしく公園でルールを破るの許せない明王」
「でもさ……」
「でもだからって!」
 四人から零れた言葉はしかし、少女に届く事はない。
「問答無用! クズは屑籠に!!」
 ぶうんと振られたチェーンソー剣は散開したケルベロス達を捕らえられず、ベンチを両断する。初撃を回避したケルベロス達は冷や汗を拭いながら、視線を交差させた。
 少女を釣る事は成功した。だが、そこに払われた犠牲は彼女に聞く耳を持たせないと言う事態だった。確かに目の前でルール違反を犯した者達が何を言おうと彼女にとっては言い訳にしか聞こえないだろう。
 制裁と言う言葉に囚われた彼女がダモクレスと化さない為には、このまま、その命を奪うしかないのか――。
 その心配は否、であった。
 何故ならば、この場に集ったケルベロス達は彼らだけではなかったのだ。
「ルールを破って言う事を聞かないだけで裁いてしまうのはどうなのでしょうか?」
 自身の生み出す殺界形成で園内の人々に避難を促したリュティス・ベルセリウス(イベリス・e16077)が咎める声を上げた。この陽気の中、厚手のメイド服に身を包んでいるが、その美しい顔には玉の汗一つも浮かび上がっていない。
「クズは屑籠という名の地獄行きはちょっと行き過ぎね。でも気持ちはわかる」
 メドラウテ・マッカーサー(雷鳴の憤怒・e13102)は頷きながら、少女の気持ちを肯定する。そして、その上で彼女に問う。貴方の行動もルールとしては如何かしら、と。
 そして二人と共に歩み出たプルミエ・ミセルコルディア(フォーマットバグ・e18010)は気怠げな表情と共に少女を指さし告げる。
「今の貴方は『制裁』の目的がすり替えられておりませんか?」
 ぴたりと少女の動きが止まる。
 規則を破る者を咎める為、自身も規則を破る。その矛盾はまだ仕方ないと言い訳できる。だが、制裁そのものが目的になっていないかと問われてしまえば。
「ち、違います。わ、私は、ルールを破る人に制裁を!」
 制裁そのものが目的でないと主張する声は、揺れていた。
「貴女の是とするルールは本当に誰から見ても是なのでしょうか?」
「他人に暴力を振るっちゃ駄目だよ!」
「自分だけは特別だと、あなたは主張しない筈ですよね?」
 動揺を露わにする彼女にケルベロス達が追撃する。
 ミシェルは客観性を強調し。
 エドワードはそれでも駄目なものは駄目だと訴え。
 リュティスの言葉は責めるよりも彼女そのものを気遣うもの。
 そして、いつの間にか取り出した眼鏡を装着したリナリアは、その言葉をぴしりと彼女に告げる。
「貴女が行おうとしているのは唯の私刑。ルールを破る人に与えるべきは私刑じゃない。ルールに則った罰だ!」
 ルールを守らせようとルールを逸脱するのは正しい事じゃない。
 その指摘に少女は頭を押さえる。
 次の瞬間、ぼんっと、爆発音が少女の頭から轟いた。

●クズは屑籠へ
 文字通り、少女の頭から煙が上がっていた。そして、それに動揺の表情を浮かべる者はいない。一人、否、一匹を除いてだ。
 少女の肩に捕まっていたハムスター――小動物型のダモクレスは少女の肩をグルグルと走り回ると、その勢いのまま少女の頭によじ登り、煙を上げる後頭部に潜り込む。
 その瞬間こそ、ケルベロス達が待ち望んだものであった。
 ダモクレスと同化した彼女を撃破する。ヘリオライダーが告げた唯一彼女を救出する方法を実践できる瞬間が、ようやく訪れたのだ。
「よし! 説得は成功だな!」
 動物変身を解除し、狼の姿から人型に転じたヤクト・ラオフォーゲル(銀毛金眼の焔天狼・e02399)が喜びの声を上げる。
 彼だけではない。ケルベロス達は各々の武器を構えると、少女への攻撃を開始した。
 だが、その動きよりも少女の動きの方が早かった。
「クズハ、クズカゴヘ!!」
 身体中から放出されたミサイルはケルベロス達を一様に吹き飛ばす――その筈だった。
「椅子!」
「シーリー!」
 リナリアとリュティスの呼び声の元、現れた二人のサーヴァント、ミミックの椅子とウイングキャットのシーリーが彼女ら二人と手分けを行い、前衛を庇ったのだ。七人と言う人数に阻まれ、減衰を引き起こしていたそれは、更に二人の活躍によって効果的なダメージに繋がらない。
 何とか与えたその傷も。
「はい。回復しますね」
 ミリアの降らせる薬液の雨によって、洗い流されてしまう。
「余り戦闘は得意では無い様子で御座いますね」
 地獄の炎を纏いながらミシェルが呟く。
 仮にもデウスエクス。戦闘能力が低い訳ではないだろう。だが戦術そのものは稚拙。ミサイルの効果が薄いと見るやチェーンソー剣での攻撃に切り替えるべく得物を構え直しているが、その隙はケルベロス達にとって益へと働く。
 今の内にと強化を施すのはミシェルだけではなかった。
「貴女が罪を犯す前に止められて良かった」
 シーリーと共に仲間に強化を施すリュティスが呟く。彼女の起こしたカラフルな爆発は仲間の士気を高揚させ、シーリーが翼を用いて生み出す風は、その煙を仲間達の元へと引き寄せる。
「進め、この風と共に」
 同時に巻き起こる風はリナリアの詠唱によって生じたものだった。彼女が生み出す風がもたらす加護は勇気への鼓舞。それが、攻撃への鋭さを纏わせる。
 そして風に後押しされ、二つの影が疾走した。一つはミミック。そしてもう一つは銀狼だった。
 椅子は具現化したエクトプラズムの斧を少女に叩き付け。
「テメェの臓腑。その全て、貪り喰らう餓狼の顎門に沈め」
 続けて飛びかかるヤクトの両拳は自身の心から吹き出る地獄に覆われ、巨大な顎を形成する。それが喰らうのは少女の肉体ではない。少女にまとわりつく悪鬼――ダモクレスの心だった。
 零れた悲鳴は少女のものか、それとも同化したダモクレスのものだったか。
「えーい! 吹き飛んじゃえーっ!」
 ケルベロスの追撃は終わらない。地獄化した髪を激しく燃え上がらせたエドワードもまた、地獄の炎を纏わせた鈍器の一撃を少女に叩き付けた。大振りのそれを躱す事も出来ず、まともに受けた少女は後方に吹き飛ばされる。
 体勢を立て直す少女に再びケルベロスの攻撃が重ねられた。
「……残念。召喚以外、やっぱり苦手です」
 流星を纏う蹴りをチェーンソー剣で受け止められたプルミエが残念そうに呟く。受けた当の少女はごろごろと芝生の上を転がり、彼女との距離を開ける。
 そこに突き刺さる光条はメドラウテの胸から放出されたエネルギーだった。
「やっぱりダモクレスだけを狙うのは無理ね」
 せめて狙撃手の恩恵があれば、と呟く彼女はエネルギーの奔流が少女の身体を覆う様を目の当たりにして、複雑な表情を浮かべる。
 ダモクレスの被害者でもある少女を助けたい気持ちは本物だ。だが、その為の手段として少女を痛めつける必要があると言う矛盾に自身の心が痛む。
 だが。
「クズハクズカゴヘ! クズハクズカゴヘ!」
 壊れたスピーカーの如く同じ言葉を呟きながら、チェーンソー剣を振り回す少女を思うと、少しでも早くこの時間を終わらせないと、と自身の得物であるバスターライフルを構えるのだった。

 戦いは終始、ケルベロス達の優位に進んでいた。
 少女の操るチェーンソー剣の威力は決して低いものではなかった。だが、それが振るわれる都度、リナリアや椅子、リュティスやシーリーと言ったディフェンダー達が仲間を庇い、ダメージを最小限へと抑えていく。
 そして、ケルベロスの猛攻に晒された少女は遂に膝をつく。
 それが崩壊の始まりだった。

「召喚機構同期開始。No.092。【アーマードバルタニックヤマタラヴァガニ】召喚します。『イブセマスジー』実行命令」
 少女の動きが止まったと同時に、プルミエが詠唱を完了させる。
 呼びかけに応じ、召喚されたのは山と紛うべく巨大な蟹だった。それが彼女の命の元、親爪から全てを消失させる破壊光線――蟹光線を放出する。
「チリも残しませんよ」
 彼女の宣言の通りそこには何も残らず、ただ、焼け焦げたチェーンソー剣だけがぷすぷすと煙を上げていた。
「クズハ、クズカゴヘ」
「あら。回避していたのですね」
 跳躍によって回避し、枝に捕まり体勢を維持する少女はしかし、その両脚は破壊光線により蹂躙されている。
 得物を失い、幾多のダメージが刻まれた少女にもはや、勝機はなかった。
 そしてそんな彼女への蹂躙は続く。
「患者さんの苦しみを、貴方も味わいなさい……」
 もはや仲間に回復は不要と、ミリアの放つ病魔の弾丸が少女を貫く。
 撃ち抜かれた少女はそのままぼとりと地面へと引き摺り落とされる結果となった。
「ワタシはその『因子』を『否定』する」
 待ち受けるミシェルはその唄を紡ぐ。向けられた唄は少女ではなく、少女を操るダモクレスへ。その存在を否定し、再び立ち上がる気力を奪い、そして囁く。望みなど棄て給え、差し伸べられた手は貴様を救う為のモノではない、と。
 少女の口から悲鳴が上がる。断末魔と見紛うそれは少女が奏でる絶叫と言うよりも、彼女に取り憑いたダモクレス自身の最期を現すものであった。
 そして少女の後頭部から零れ落ちたそれは、やがて、光の粒へとその身を転じて行くのだった。

●美しさを護るもの
 少女はベンチの上で静かな寝息を立てていた。
「少しはお役に立てたでしょうか?」
 ヒールを施したリュティスは問題ないと笑顔を浮かべる。ダモクレスが洗脳用にチップを埋めた頭部も、ケルベロス達との戦いで負った傷も、その全て塞がっており、彼女が改造された跡は残る事は無さそうだ。
「こちらも終わっております」
「ゴミも大丈夫よ」
 破壊の跡にヒールを施すミリアへと目配せをするミシェルとエドワードはコクリと力強く頷き、散らかすのは本意ではなかったとゴミ拾いを完了させたリナリアがゴミ袋を椅子の中に格納しながら声を掛ける。ゴミを託された椅子の表情は見えなかったが、おそらく自身はミミックであってゴミ箱ではないと抗議の表情を浮かべている――そんな気がした。
 そして再び狼の姿に転じたヤクトが嬉しそうに駆け出す、そんな小春日和の午後のこと。
「……お腹空いたわよね。美味しいラーメンでも食べに行こうか」
 アイズフォンで辺りを検索したメドラウテの提案に、ケルベロス達から歓声が上がる。
 少女も時期に目を覚ますはず。
 その時は一緒に御飯をする事も素敵だと、更なる提案を上げていた。

作者:秋月きり 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年5月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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