おっぱい! おっぱい!!

作者:遠藤にんし


 38歳、恋人いない歴=年齢。
 恋人を作ることは既に諦めた。一人で生きる覚悟も、準備もとうに出来ている――そんな彼の望みはただひとつ。
 ――『おっぱいに触りたい』。
 女性に備えられた大小さまざまなおっぱい。二次性徴前のまったいらおっぱいは除くにしても、少なく見積もっても全世界の4分の1くらいの人間にはおっぱいがある。
「だというのに、何故おっぱいに触ったことがないんだ……!」
 恨めし気に言い、顔を覆うおっさん。
 おっぱいに触ったことのない者はおっぱいに焦がれ。
 おっぱいに触ったことのある者もおっぱいに焦がれ。
 おっぱいの小さくまっ平らな者もおっぱいに焦がれ。
 つまり、ほとんどの全ての人間がおっぱいに焦がれ――そんな気持ちから、モザイクの卵は孵る。
「おっぱいに触りたい! おっぱい! おっぱい!!」
 叫びながら、ドリームイーターは街へと繰り出す。
 全身から生えた手は、おっぱいを揉もうとわきわき蠢いていた……。
 

「地獄絵図にも程がある……」
 高田・冴(シャドウエルフのヘリオライダー・en0048)は説明を終え、げっそりと言う。
 何なら灯・寧々子(あかりねねこ・e16263)のように布団にくるまって全てを忘れて眠りこけたいところなのだが、そんなことをしてはこのドリームイーターが野放しになってしまう。
 ……色んな気持ちを胸の奥にしまい込んで、冴はドリームイーターの情報を語る。
「胸に触りたい、という気持ちから生まれたドリームイーターは、『他人の胸を触ることが出来る』人を見つけると姿を見せる」
 ポイントとなるのは、『他人の胸』を『触る』ということ。
 触る者、触られる者の種族・年齢・性別・関係性などは一切問わないようだ。
「このドリームイーターを野放しにした場合、真っ先に襲われるのは授乳中の赤ちゃんということになるね」
 近くに授乳室のあるデパートなどもあるにはあるが、赤ちゃんとそれを抱いた母親という一般人を囮に用いるのは現実的ではない。
 そのため、ケルベロスの誰かが、別のケルベロスの胸を触ってドリームイーターをおびき寄せるのが最も良い方法だろう。
 いい感じに無人で広い屋上を発見したので、そこでドリームイーターをおびき出し・戦闘して欲しい、と冴は言う。
「4メートルの人型に無数の手がついている、という見るからに気持ち悪い外見だから、ドリームイーターが現れたらすぐ気付けると思う。どうか、迅速に撃破してくれ」
 言ってから、冴は深々と溜息をつき。
「しかし、なんで胸なんかにこだわるんだ……?」
 その答えは、胸に手を当てて考えても分かりそうになかった。


参加者
鳴神・猛(バーニングブレイカー・e01245)
琴宮・淡雪(淫蕩サキュバス・e02774)
コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)
ガラム・マサラ(弱虫くノ一・e08803)
ヴィオラ・セシュレーン(百花繚乱・e11442)
セレナ・スフィード(薬局店員・e11574)
灯・寧々子(あかりねねこ・e16263)

■リプレイ


「此処が……極楽か……!」
 コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)の言葉は噛みしめるようだった。
 今回、ドリームイーター退治のために集結した八名のうちコクマ以外の七名は全員女性――おまけにドリームイーターを誘き出すには、『おっぱいを揉む』必要がある。
 控えめに言って、楽園である。
 ほんの数日前にもおっぱいにこだわりを持つドリームイーターと遭遇したばかりだったガラム・マサラ(弱虫くノ一・e08803)はちょっと自棄気味。
「いいですよ、やってやりますよ! 黄鮫師団の北半球担当、ガラム・マサラが相手になりますよ!」
 言って胸を張れば、露出の多い衣装から溢れるおっぱいがぷるんと弾ける。
 陽光に照らされたガラムのおっぱいはつやつや輝き、見るからに弾力豊か。
「お仕事お仕事~」
 そんなガラムのおっぱいの両脇を掴んで寄せ、ばふんと顔を埋めるのは鳴神・猛(バーニングブレイカー・e01245)。大きいおっぱいがあるならば顔を埋めるのはお約束である。
「夢が詰まってるね~」
 言って猛が顔を左右に振ると、細かく揺れるおっぱいが猛の頬を優しく叩く。
「っぁあ……ん……」
 その動きに思わずガラムは声を上げてしまう。羞恥のために滲んだ汗は谷間に溜まり、辺りに甘酸っぱく淫靡な香りを広げた。
 スーツ姿のセレナ・スフィード(薬局店員・e11574)はしばらくその様子を見ていたが、やがて覚悟を決め、スーツのジャケットを脱ぐ。
「……作戦であるから仕方ない。そう……これは作戦だ」
 自身に言い聞かせるセレナに飛びついたのは、琴宮・淡雪(淫蕩サキュバス・e02774)。
 シャツの上からセレナのおっぱいを触ると、ぱりっとしたシャツの生地の下には手が沈み込むほどの柔らかなものがある。
 外側から円を描くように、優しくおっぱいを撫でる淡雪。おっぱいの尊さを知っている淡雪だからこそ、乱暴に掴みあげるようなことはしない――だが、軽いタッチですら指を取られかけるほどに、セレナのおっぱいは蠱惑的だった。
「はぁ~♪ 幸せですわ! もうここで一日中触ってたいですわ」
「……っ、ふ、ぅ」
 淡雪のやり方は派手ではないが、手首のスナップから指先、そして眼差しまでおっぱいに注がれる全てから愛を感じるもの。
 最初は冷静を装っていたセレナも刺激に声を漏らし、青い双眸を蕩けさせていく――その姿に辛抱たまらず、コクマもセレナの胸に飛びかかる。
 二人がかりでのおっぱい責めを受けるうちにセレナのシャツのボタンは外れ、じんわり汗ばんだ体は赤く染まる。
 ばふん、とコクマがセレナのおっぱいに顔を埋めれば、伏し目がちに睫毛を震わせるセレナはその頭にそっと手を置く。感度の上がった肉体は、頭を撫でる指先からすら快感を伝えた。
 しっとりと濡れた唇から熱い吐息を漏らすセレナ。
 思わず崩れ落ちそうになる体を、後ろから淡雪のおっぱいが支えている――のを見て、ヴィオラ・セシュレーン(百花繚乱・e11442)は困惑を隠せない。
「これ以上考えるんやめときましょ……」
 自己研鑽を怠ったムッツリスケベの末路に思いを馳せていたヴィオラは溜息をひとつ、近くにいた猛のおっぱいにそっと触れる。
 ヴィオラのおっぱいの触り方は遠慮がちで、猛もそれに合わせて包み込むような指使いを披露する。着物の上からでも存在感の伝わるヴィオラのおっぱいに対し、猛のおっぱいは服の上からでも感触が分かり――彼女の下着の際どさを伝えている。
「……ふふ♪ 私のも、触ってください……」
 猛の背中にIカップのおっぱいを押し付けるのはクノーヴレット・メーベルナッハ(知の病・e01052)。普段から色々な愉しみの中にいるクノーヴレットからすれば、おっぱいを揉まれる程度のことはどうということもない。
 誘い掛けるようなクノーヴレットの眼差しからは淫欲が感じられた。猛がクノーヴレットの肌に指を滑らせるだけで、クノーヴレットは甘い声を上げる。
 ……ちなみに灯・寧々子(あかりねねこ・e16263)については今日も安らかに就寝中。誰かがおっぱいを揉まれるたびに上げる嬌声も、寧々子からすれば心地良い子守唄なのだった。


 セレナのシャツは濡れ、おっぱいに張りついている――彼女自身の汗と、コクマのこぼした感涙のためだ。
「うむ、では……!」
 次にコクマが狙ったのは猛のおっぱい。やわやわと揉みしだくコクマの指使いを邪魔しないように、そっと猛は上を脱ぎ、下着だけの姿になる。
 炎にも似た繊細な装飾の施された下着はおっぱいの色艶や形をより美しく艶やかに演出し、それにコクマの情欲の炎がいっそう燃え上がる。
 猛は触られつつもコクマのおっぱいにちょっかいを出すが、コクマは抵抗もせず受け入れている。
「ぅ……ワシに触っても其処まで楽しいとは思えぬが……」
「希望が詰まってるからね~」
 ガラムは恥じらいの表情を浮かべつつ、ヴィオラへと自らのおっぱいを差し出す。
「さ、触ってください」
「え、遠慮なくいかせてもらいますわぁ……」
 言いつつ触り合う二人はぎこちなく、初々しさすら感じられる。
 コクマが次に目をつけたのは眠る寧々子の無防備おっぱい。隠密服の上にうさぎの着ぐるみ風着る毛布、というやや重装備な寧々子のおっぱいの感触はおぼろげにしか伝わってこない。
 しかし、ダイレクトに揉むばかりがおっぱいではない。厚着をしていても寧々子のおっぱいの大きさは判るし、微かに伝わるおっぱいの感触からおっぱいの質感を想像するのもまた、おっぱいの愉しみ方のひとつであることをコクマは知っているのだ。
 おっぱいを揉まれていようと寧々子は眠り続ける。眠っていることをいいことにおっぱいを好き勝手している――そんなイケナイ気分に浸りつつも、コクマは満足せず、更なるおっぱいを探して目を配る。
 ――淡雪は恥じらいもなくメイド服のエプロンをずり下げ、自らのおっぱいを多方面へ見せつける。
「宜しければ私のも触りますか♪ ホラホラどうぞ~♪」
「ふふ、素敵な揉み心地……♪」
 色んなものがギリギリな淡雪のメイド服を更にはだけさせ、クノーヴレットは重さを確かめるようにおっぱいを揺らす。
 二人の大きなおっぱいの敏感な部分がこすれ合い、二人の手つきをより欲望に満ちたものへと変えていく。普段から眼鏡をかけているクノーヴレットと、メイド服だからと眼鏡を着用した淡雪。二人の眼鏡は触れ合って硬質な音を立てたが、衣擦れと荒い呼吸の音がそれをかき消した。
「ドリームイーターくるまで、ずっとこれなん?」
 ヴィオラの声もまた、かき消された。
 クノーヴレットのおっぱいに夢中になる淡雪はコクマが背後から忍び寄ることに気付かない――クノーヴレットはコクマと目が合ったが、悪戯っぽい淫蕩な笑みをひとつ浮かべ、淡雪には知らせないことにした。
「ひゃん♪」
 背後からの急襲に声を上げる淡雪。むにむにと掌でこねるようにおっぱいを触ればおっぱいは自在に形を変え、支配欲が満たされる。
 前後からおっぱいを好き勝手に弄ばれる淡雪が体をくねらせると脚にメイド服の黒いスカートは喰い込み、ヒップラインを明らかにする。淡雪の背後に位置取るコクマは体で淡雪の腰やおしりを感じ、手で淡雪のおっぱいを感じ、そして目ではクノーヴレットのおっぱいを見つめることが出来た。
 至福の時に、一生こうしていたいという想いがコクマの胸を満たす――しかし、コクマはやがて淡雪のおっぱいから手を放す。
 人生とは、おっぱいを求める旅のこと。
 ひとつのおっぱいにのみ固執することは、あまりにも愚かだと分かっていた。
「うん……包まれたらきっと幸せな気持ちに……優しさに包まれ……きっと……」
 揉まれ続けてなお形が崩れていない、クノーヴレットのしっとりもちもちおっぱい。
「あんっ♪ コクマさんはいつも揉んで下さってるじゃないですか……♪」
 だからこそコクマの揉みには容赦がなく、手だけでなく全身でクノーヴレットのおっぱいを貪る。
 おっぱいに顔をこすりつけながら目を開けば、至近距離おっぱいが楽しめる。
「この至福の感触……死んでもいいと思えてしまう!」
 内心で感涙しつつ、コクマは叫ぶのだった。


「――ら、…………!」
 後に続いた声は、この場にいるケルベロスのものではない――深紅の羽織を揺らし、ヴィオラは声の主の前に立ちはだかる。
「ならば、死ね……!」
 現れたのは、モザイクの体に無数の手を備えたドリームイーター。
 グロテスクな容貌を持つそれの初撃を受け流しつつ、ヴィオラは優雅な舞踊を行う。
 着物の裾を乱しもしない、美しき舞い。蒼の蝶々が周囲に発生する頃、ヴィオラは涼やかな声でドリームイーターへと言う。
「……ふふ、なんや見蕩れてはるん?」
 笑みや声は挑発的であり、ヴィオラが敵を引きつけている間に仲間は戦闘用意を完了させていた。
「切実なる叫びの具現……にしても格好つかないよね~!」
 赤く煌めくバトルガントレットにグラビティ・チェインを乗せ、猛はドリームイーターへと叩きつける。赤い光を伴う爆風に乗ってドリームイーターに向かうのは、淡雪の放った魔力弾。
 見えないトラウマに傷をえぐられたか、ドリームイーターの無数の指がわさわさ動き回る。その気持ち悪い動きを止めようと、コクマはスルードゲルミル弐式で手のいくつかを叩き潰した。
 ボクスドラゴンのマンダーは牙を剥き、ドリームイーターへとブレスを吐く。続いてガラムはドリームイーターから大きく距離を取り、カレー力を集約する。
「フェンネル、サフラン、ディル、コリアンダー、クミン、アニス、ジンジャー……全てのスパイスの力を此処に集結して、解き放つ!」
 どう、と吹き荒れる風はスパイシーで、おっぱいへの欲望によって作られたドリームイーターであってもカレー欲をかき立てられる。
 セレナは大急ぎでシャツのボタンを留め、簒奪者の鎌『ソウルスティール』でドリームイーターの生命力を奪いにかかる。セレナの鎌をさばく腕には力が満ち、顔にも凛とした闘志が宿っていた。
 ドリームイーターはなおもおっぱいへの未練を捨てきれないのか、クノーヴレットのおっぱいに襲い掛かる。わきわきと動き続ける手がおっぱいをかすめると、クノーヴレットは嬌声を上げる。
「ふふ、いやらしい子ですね……♪」
 言うクノーヴレットが淫猥に微笑めば、先ほどのことで溜まりに溜まった快楽エネルギーが霧となって辺りに広がる。魔香水「ナハトブルーメ」の蠱惑的な香りの混じった霧は、仲間の癒しとなった。
 霧に紛れてミミックのシュピールはドリームイーターに接近、大口を開けて噛みつく。寧々子は目を閉じながらも霧の気配を覚え、行動を回復から攻撃へと切り替える。
「うごきたくなーい……」
 一応喋っているし、薄目くらいは開けるのでちょっとはやる気があるらしい。現に、言葉と共に放たれたオーラはドリームイーターに倦怠感を与え、その動きを鈍くしていた。


 鞭を手にした淡雪は嗜虐的な表情を浮かべる。
「ほらほら~♪ いい声で鳴かないとまだまだ終わらないわよ~♪」
 大きく振りかぶるたびにギリギリのメイド服からこぼれんばかりのおっぱいが揺れ、ドリームイーターは回避どころではない。
「近寄らないで――あっ……ふぅん」
 欲望を喰らうべく振り回されたドリームイーターの手がガラムのおっぱいを鷲掴みにすると、思わず悩ましい声を上げるガラム。
 その直後、ドリームイーターの横面を叩いたのはマンダー。ガラムがドラゴンブレスで反撃すると、おっぱいはプルゥンと不規則な動きを見せる。
 攻撃を受けようと懲りもせず、ドリームイーターはセレナのおっぱいへと腕を伸ばす――触れた瞬間、セレナの眼差しが冷たく変わる。
 ゴミを見るかのような表情に似合う冷たい声音で、セレナは時限錬成を行う。
「いでよ、我が魂」
 出現したのは白銀のハルバード――叩きつける風切り音。その威力は、重い地響きが伝えていた。
「……欲望爆発したら犯罪起こしそうなくらい色々溜め込んでそうやね、うん」
 ドリームイーターの恐るべきおっぱい欲にぞっとしつつも、ヴィオラはバトルオーラ使い絶対に許さないオーラを立ちのぼらせ、ドリームイーターの指を残らずもぎ取るほどの激しさで弾丸を撃つ。
「ん~……ねむ」
 つぶやく寧々子のジョブレスオーラが仲間を包み、守りの力を強める。
 クノーヴレットは敵を氷の中に閉ざし、シュピールはその戒めをより強固に変える。
 コクマは仲間たちを見渡し、戦況が有利であることを見て取ると鉄塊剣に青白い水晶の刃を纏わせた。
「我が刃に宿るは光<スキン>を喰らいし魔狼の牙! その牙が齎すは光亡き夜の訪れなり!」
 巨大剣にとって、ドリームイーターの胴を両断することなど容易い。
 そしてドリームイーターの頭上には、高く跳躍した猛の姿もあった。
「正面から打ち砕く!!!」
 高速で滑空する猛の渾身の一撃――鳴神不動流初伝奥義『流星』は、ドリームイーターに命中し。
 分断された体のいずれもを、破壊し尽くした。

 戦いによる疲労を、コクマはクノーヴレットのおっぱいで癒す。
「うむ……やっぱり暖かくて……癒される」
 冬の寒さを思えば、この温もりを求める者が多いこともよく分かる。
「怪我人はいないね~よかった!」
「ヒールも必要なさそうやねぇ」
 辺りを見渡した猛とヴィオラは言い、寧々子は再び目を閉じる。
「おっぱいは、重いから邪魔~……あんまりいらない~……」
 寧々子はすぐに寝入ってしまったようで、それきり寝息ばかりが聞こえた。
「おっぱい触られたらお腹が空きました」
 カレーが食べたい、ガラムはそんな想いで胸がいっぱい。
 ――このようなドリームイーターの発生防止の策を考えていたセレナは、ひとつの結論に辿り着く。
「あれやこれやで自信をつけさせてやるしかないな……」
 一人頷いてセレナが男性へと向き直ると、彼は淡雪にこう囁きかけられていた。
「ねぇあなた……おっぱい教というのはご存知かしら……?」
 おっぱい――その幸福を、男性はたっぷりと享受することになるのだった。

作者:遠藤にんし 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年2月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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