
●恋は規則違反!
とある、都内の女子高である理愛学園中等部はいわゆるお嬢様学校である。時代錯誤はなはだしい校則はいくつもあるが、その一つとして生徒たちに評判が悪いのは「不純異性交遊禁止」だ。
みだりに男女が恋愛にうつつを抜かして学業をおろそかにしてはならない、というわけで男女交際は禁止。もちろん、同性交際だって許可されているわけではない。
一応許可を出して承認されればいいということではあるが、どこの高校生が親の署名まで必要な異性交遊許可証を出したいと思うだろう?
というわけで、若さと愛を持て余した少女たちは、今日もひっそりと恋に励んでいる。
高校近くの、繁華街。クリスマスを終えたといっても、この寒い季節に恋は盛り上がる。
「ねえみてまーくん、この手袋かわいいー」
紺のセーラー服に身を包んだ女子高校生は、隣の彼氏へと甘く笑いかける。
しかし、答えたのはまーくんと呼ばれた男ではない。
「梓さん、不純異性交遊は禁止されていますよ」
スカートの長さからスカーフの角度まで、きっちりと整えたセミロングの女子生徒が、級友に告げる。
「……美奈ちゃん? で、でも、大好きなの。お願い、見逃して」
級友ならの気安さでぱん、と拝む形に掌を合わせた少女は、次の瞬間、胸から血の花を咲かせていた。
美奈、と呼ばれた少女は無表情にガトリングガンを構えている。
彼女の肩に乗った黄色い小鳥が、小さく満足げに鳴いた。
●ダモクレスの企み
「とある学園の近くで、少女型のアンドロイドが活動を行おうとしています。少女のターゲットは、不純異性交遊を行おうとする学園の女生徒になるようですね」
セリカ・リュミエールはいつもの通り、静かな口調でケルベロス達を見渡して告げる。
彼女が説明するに、『小動物型のダモクレス』が、少女の脳にチップを埋め込み、アンドロイドとなってしまった少女はダモクレスになりかけているという。
彼女は規則を破るものを見つけると制裁として殺害、その後小動物型ダモクレスを通じて、グラビティ・チェインを奪うこととなる。
彼女が制裁の対象としているのは、不純異性交遊。それを行っている人間に反応するため、派手なルール違反を起こせば彼女をおびき出すことも可能だろう。不純であれば、異性だけでなく同性でももちろん、ルール違反と判定されるようである。
また、必要ならば理愛学園の制服である藍色のセーラー服に臙脂のスカーフのセットもあらゆるサイズで貸し出すとのことだった。
このアンドロイドの凶行を止めるのが、今回のケルベロス達の任務である。 主にアンドロイドが見回るのは、人気の多い繁華街だ。何の準備もなければ、人ごみの中で戦闘をすることになる。
近所には小さな神社、中央広場、それからアーケードにはいくつもの店が並んでいる。
アンドロイドの武器として確認されているのはガトリングガン、さらにレプリカントのグラビティを使用する可能性がある。
また、小型ダモクレスが元凶ではあるが、先にこれを撃破してしまうと埋め込まれた回路が暴走して救出の手段はなくなる。
アンドロイドが、規則を破った人間を許せるように説得が出来た場合は回路がショートして、人間に戻ることも叶う。ただし、小型ダモクレスが無理やり合体して戦闘を継続するだろうから、この撃破が必要となるとのこと。
「小日向美奈さん、というのがこのアンドロイドの方なのですけれど。
恋に憧れる可愛らしい女の子だったようです。ただ、お友達に恋人を奪われるという経験を経て、こんな思いをするくらいなら、と極端に走ってしまったというデータがあります。
無事で皆様が帰還できるよう、お待ちしていますね」
参加者 | |
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![]() ミオリ・ノウムカストゥルム(銀のテスタメント・e00629) |
![]() 星野・優輝(それは違うよ・e02256) |
![]() 燈家・陽葉(冬の陽・e02459) |
![]() 青鮭・笑苦(赤い瞳の黒龍・e03883) |
![]() ルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184) |
![]() 神寅・闇號虎(天国の階段に足をかける獣・e09010) |
![]() 矢野・浮舟(キミのための王子様・e11005) |
![]() 伏見・たま(こたつ神社の巫女・e21633) |
●さまよう心
とある繁華街。きりりと横顔も凛々しいミオリ・ノウムカストゥルム(銀のテスタメント・e00629)は街へと降り立つ。
「人の心を奪うダモクレス、許しません」
そう、ここには敵が潜伏している。ターゲットを慎重に探すため、幾つかの店に視線を走らせた。
「あっちの雑貨屋にはいなかったべ」
柔らかな雰囲気のある小柄な少女、伏見・たま(こたつ神社の巫女・e21633)はのんびりと頷いて、また別の店へ。
「わたくしは、あちらのお店を見てまいりますね」
かたや指先までしとやかな一礼と共に、ルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184)はケーキ屋へ消えていく。
時折実際に言葉を交わして、また携帯で。ターゲットの捜索や監視に向かうケルベロス達。人海戦術もさることながら的確な状況確認と行動により、捜索は捗ったようだ。
「あちらにはいないか。となると、後は」
連絡に頷く神寅・闇號虎(天国の階段に足をかける獣・e09010)は着信を確認しならばと歩き始めた路上で、制服姿の女生徒――美奈の姿が目に入った。
美奈は公園を横切り、アーケード方面に向かっていくところらしい。しかし、まだ神社には遠い。
見守りながら、鋭い視線を走らせる。素早く幾人かに連絡を入れ、情報網の伝達と連携に注力しながらも、監視もまた怠れない。
それらしきカップルには目を配ることでひとまず状況の均衡は保たれているが、囮役が間に合うにはもう一手――。
「さっきみた二人、ちょっと引くぐらいイチャ付いてたな」
首にゴーグルをひっかけた好青年風の青鮭・笑苦(赤い瞳の黒龍・e03883)の声に、美奈の肩が震える。
どことなく人好きのする雰囲気の彼の台詞はよく通り、また言い方が自然なものだから疑念を抱かせない。選んだ言葉の内容といい、かなり効果的だったようだ。
「確か女の子は理愛学園の制服だったな」
釣れた、と笑苦は確信する。ことさらに、神社方面に視線を向けて。
「神社の方に向かってたけど、何するつもりだろうな?」
いかにも独り言を装っての呟きに、美奈はくるりと方向を変える。背を見送る笑苦の視線の先、闇號虎と目が合い、お互いに頷き合った。
闇號虎は笑苦へと監視を任せて、神社に先回りを。笑苦はそのまま、追跡を。
第一段階、完了である。
●待ち合わせは、神社
きれいな仕草で作法にのっとり、矢野・浮舟(キミのための王子様・e11005)は参拝をする。フリルをあしらうたっぷりとしたスカートが特徴的なドレス姿だが、不思議とその洋装が夜に向かう神社には映えている。
彼女が首を巡らせれば、ベンチに座るのは冬の寒さも物ともしない可愛らしく頬を染めた少女と、少し背の高い少年。いかにも初々しい二人はなるほど、人目を忍んで恋を育てているのだろう。
「愛らしく微笑ましいけれど、――無粋を許しておくれ。キミが明日も恋する為に」
優しげに細められた金の瞳は、しかし、次の瞬間触れれば切れる硝子のように冴え渡る。彼女の編む殺界による、牽制だ。仲間たちがこの場を戦場にする為のサポートが、彼女の仕事故に。
さて、その一方で。
「入口確認、オールグリーン。現在二人連れの退避を確認しました。解除、問題ありません」
ミオリは人形細工のように整った紫水晶の瞳で瞬き一つ。情報の確認と送信はお手の物だ。
「境内、待機する」
すぐに着信が返るのは、闇號虎から。
「ターゲットはそちらに向かった。監視を続行する、のし」
不思議な語尾付きで報告を入れてくるのは笑苦からだ。
待機、集合、対応、ケルベロス達は着実に罠を形成しつつある。 そして、メインとなるのは囮組。
「寒くないか、陽葉」
星野・優輝(それは違うよ・e02256)は甘い笑みを浮かべて、制服姿で傍らの女性と指を絡める。受けて、首を振るのは燈家・陽葉(冬の陽・e02459)。
「一緒だから、大丈夫」
いかにも可憐で気丈な少女に、そっと寄り添う――二人して、囮役を引き受けた以上、頑張っていちゃつかなければならない。それでも、陽葉は必要以上に触れてしまわないよう気を払い、優輝は有り難く気づかいを受けている。なにしろ、偽りの恋人なのでお互いに割り切りながらも、気を使うことは忘れない。
背中に感じる強い殺気で、囮を引き寄せられたのがぴりぴりと感じられていた。ここまでの捜索、監視、誘導作戦の連携が上手くいった故だろうか。美奈は、素直に二人をターゲットとしてくれているようだ。
優輝は長い指先で髪を撫でるふりで唇だけで意図を伝える。陽葉もまた無邪気になつく素振りに交えて頷きを。
一定の距離を保ったまま、人気のない神社へと連れ込むのを見届けて、しんがりを務めるのは、ルピナス。最後の仕上げとばかりキープアウトテープを入口へと張り巡らす。
「さぁ、これで他の方々が入って来る心配はないですよ」
今のところ、万事が上手くいっている。彼女は、神社の人払いが終わっていることも、仲間が先に待機してくれることも、信じているから。
一番最後の位置で入念にテープを貼って、駆け出すのだ。優しい明日の為に。
●恋心の行方
「不純異性交遊、禁止されています。近隣校の生徒ですね、ただちに距離を置いて帰宅してください」
じり、とにじり寄る女子中学生、小日向美奈。その瞳は、無機質で鋭い光を湛えている。肩にとまった黄色い鳥が黒幕だろう。置物の如く澄ましている。
「それは、できないな」
優輝は毅然と首を振る。彼らが退けば、美奈が襲い掛かることはなかろうが、他のカップル――本来殺されるはずだった二人に向かうだけなのだから。
自然に陽葉を庇う形で、一歩前に出る。
「違反者確認、粛清します」
美奈はガトリングガンを構え――二人に向かって嵐のような掃射を行う。
避けきれない着弾に一歩も引かず立ちはだかる優輝、腕に赤い染みを作りながらもまっすぐ顎を上げる。
「燈家さん、大丈夫?」
気遣う声を投げる優輝に頷いて見せる陽葉。それを合図に、ケルベロス達は神社の夕闇の中から躍り出る。
「全員到着だ。万事問題ない、人払いも終わった。これからが、勝負だな」
到着を声で知らせながら、剣を構えて笑苦は告げる。二人だけが狙いとなってしまわないよう。
「不純異性交遊したら即殺害というのは早計なのではないか」
「校則で不純異性交遊は禁止されてるとしても。――殺してしまうのは、もっといけないことじゃないかな」
合わせて陽葉も穏やかな表情で語り掛ける。芯の通った、まっすぐな声で。
「ああ、恋路を邪魔したり奪うよりも酷い事だ」
優輝も頷く。人の命は、失われたら戻らない。だからここにいるのだ。死んでしまったかもしれない、恋する二人。これから殺されるかもしれない、幾人もの恋人たち。
それから、目の前の少女すら。救う為に、優輝達は言葉を尽くし、向かい合うのだから。年上の青年は諭すように、静かに見据える。
「い、違反をしたのはそっちが先です! 異性交遊なんて、不純だわ! 間違ってるの!」
少女の声が上がる。アンドロイドとしてガトリングガンを構えながら、どこか傷ついた色が浮かんでいるのを陽葉は見逃しはしなかった。痛いだろう、悲しいだろう。
けれど、心の一番柔らかい部分を剥き出しにするのは、彼女に触れる為、必要なことだから。歪められた思いから、救い上げようと声をかけ続ける、胸の前で手を祈るよう組み合わせ。
「あんな可愛い子を袖にする子がいるなんて。なんなら、ボクが代わりに彼女の新しい恋人になろうかな? ……なんてね」
浮舟が薔薇のように紅い唇を魅惑的に笑ませる。実際のところ、浮舟から見れば、少女は叫んでるようにすら見えた。
未熟な恋を散らしてしまった、今にも萎れそうな花。だから、美奈が混乱する侭銃口を向けて浮舟の肩口を撃ち抜こうとも、愛おしむ笑みは絶やさないで。
ルピナスはすぐに、浮舟へと数歩歩み寄り、その傷の深さを見て癒しを紡ぐ。柔らかな力は浮舟の傷を塞ぎ、顔色を確かめるよう覗き込む。
「ええ、可愛らしい方ですよね。だからこそ、放っておけません」
彼女らは美奈を案じている。甘やかすだけではなく、強く意志をもって。不純、と美奈は繰り返して見境なく人を襲う。それが、正しいとは思えない。ルピナスは自分の胸にそっと手を当て。
「恋は、誰でも憧れる感情です。双方が愛している想いは、恋は、――不純ですか?」
凛と紡がれる問いに、美奈は息を飲む。真っ向から恋を肯定してしまわれると、弱い。
「……どうも恋とは厄介だ」
巨大な剣を掲げて、嘆息を落とすのは闇號虎。けして厭う風でなく、美奈を支配する理屈を読み違えぬように慎重に少女の弱い面差しを見据える。
かと思えば、だん、と深く踏み込んでからの巨大な剣の一閃。少女の命を摘み取るのでなく、厄介な銃を打ち払って少しでも、その精度を弱めようと。
「お前が否定したいのは恋ではなく、奪われた現実じゃないのか?」
剣と同じ迷わぬ強さは言葉にも宿る。見極め、見据えて打ち放つ。闇號虎は、目を伏せる少女の弱さを敢えて口に乗せ。
「う、うるさい。うるさいわね!!!」
次いで、少女はむやみやたらに銃を振り回す。それはほとんど、攻撃と言うよりも単なる駄々だった。
しかしながら、アンドロイドに改造された体は悲しい程的確にケルベロス達を狙ってしまう。
優輝が咄嗟に身を乗り出してたまを庇う。視線だけで大丈夫だ、と伝える彼に黙礼で返して、巫女たる少女もまた口を開いた。
「恋よりも規則が大事だっていう事にしておけば、失恋の痛みを誤魔化せるだべか?」
ぐ、と美奈が唇を噛み締める様子を見やって、たまは続ける。言葉は強く、だが表情は険しいものではない。
「本当は判ってるんだべ?耐えられないような痛みでも、それを受け入れないと次に進めないって」
「失う痛みは理解しています…でも、貴女は恋をしている間は不幸せでしたか?それは無駄な時間だったのでしょうか?」
たまに寄り添うのはミオリと浮舟。優しく包む響きで。
「恋していた時の気持ちを思い出してくれ。キミが、何をしたくて、これから、何をしたいのか」
そして、彼女たちの言葉は相互に矛盾しないがゆえに作用しあい、高め合って届く。
先に、進めと。
「恋は一つで終わりではないと思います。また探してみませんか? もっと素敵な時間を」
道を指し示す、ミオリ。浮舟は優しく綺麗な笑みで告げた。
「大丈夫、純粋で真っ直ぐなキミを心からすきになってくれる人が、必ず現れる」
見透かされ、壊され、そうして晒された心を包まれる。
アンドロイドたる美奈の頬から涙が零れた。失恋して、初めての涙。
そうして、彼女に埋め込まれた回路はショートする。心に刺さった氷の欠片が溶けたよう。
●決戦
傍観していた小鳥は美奈へと無理やり連結を試みる。ギギ、と醜い鳴き声が零れたとき、少女は完全に操り人形のうつろな目をしていた。
「ようやくお出ましだべな!」
たまは手にした糸を操り、あやかしの魔法陣を地面へと描く。溢れだす力は、苦痛をいやすと共に防壁を作り出すもの。
一方で舞にも似た優美な動作で、浮舟は雷を纏わせたナイフを繰り出す。美奈の細腕が構えたガトリングガンに雷がまとわりついて小さな火花を弾けさせた。
「…力を貸してね、阿具仁弓」
陽葉は己が持つ武器に、そっと囁く。彼女を解き放つ為にも、勝たねばならない。妖精弓に力が撓むのは、彼女の心を映してか。初手から、選んだのは赤の矢。
強大な力は赤い光となって凝縮し、閃光が戦場を走り抜ける。大きな衝撃に、ダモクレスが醜い悲鳴を上げる。
「殺ス、殺ス、殺ス――!」
もはやなりふり構わず、美奈だったモノは胸部や肩、ありとあらゆるところからミサイルを射出。雨あられと銃弾が降り注ぐ!
「こちらは、庇う!」
幾人かに降り注ぐミサイルの一部に、自ら身を乗り出して受け止めるのは優輝。彼自身の身体は朱に染まり、小さな着弾を繰り返してその振動すら受け止めながら、立つことを止めない。
優輝の意を受けて笑苦が頷くと、ドラゴンが立ち塞がるのは笑苦の前に。その小さな体で受け止める後ろから、炎弾がお返しとばかり小鳥を狙い焦がしていく。
「逃がしません」
身をよじる小鳥に追いすがるのは、目にもとまらぬ速さのミオリの射撃。正確無比な着弾は、容赦なく退路を断ち包囲を完全なものにしていく。
ならばと美奈を駆り立て、強引な操作で胸部が開き、閃光が出鱈目に襲い掛かる。
「人を操作することの方がよっぽど不純だろう」
片眉を上げて、笑苦が呟く。片腕が焦げたが、それくらいで自分が狙いを外すはずもなかった。それよりもよほど今の美奈の様子の方が、痛々しい。
「癒しの気よ、仲間を助けてあげて下さい」
すかさず、鈴の鳴るような優しい声音でルピナスは癒しを紡ぐ。手分けしながらも彼女はひっきりなしに美奈が仲間達に作る傷を癒しているのだ。
彼女が目覚めたとき、誰もが傷ついていないと良い。そんな祈りと共に。
回転する駆動音が美奈の腕から響いた。アームが凶悪な速度で、闇號虎の胸へと埋め込まれていく。肉が抉られる苦痛に耐え奥歯を食いしばり。
一瞬目を伏せて捧げた祈りは、何に対してか。闇號虎の全身が深く撓んで、文字通り獣の俊敏さで敵へと襲い掛かる。
「援護するべ!!」
たまの小さな体が俊敏に、力を解き放つ。美奈の足元に生まれたのは、最初はごく小さな亀裂。それは次第に広がり、溶岩を噴出させる。
「砲撃パラメータ問題なし、セイフティリリース……撃ち方、始め」
合わせて、ミオリが持つレールガンに巨大な力が蓄積されていく。帯電した弾頭はまばゆい光を放ちながら、先んじて着弾する。
「怖がらなくていい、痛みは一瞬だ」
浮舟が囁く。不可視の幻刃は彼女の優美な仕草に従って剣舞のごとき美しさで。けして逃れられぬ道、――冴え冴えとした死への先触れ。
絡めとられ、貫かれ、切り裂かれていくその最後。
飛び込んでいった闇號虎の腕が、敵の武器を弾き、薙ぎ払い、最後に小鳥を巨大な剣の一薙ぎで完全に破壊していく――。
「周囲に敵性存在なし。クローズコンバット、お疲れ様でした」
軽やかにミオリが銃を仕舞うのを合図として美奈に駆け寄ると、ルピナスもまた美奈の様子を確かめ、応急手当てを施す。ひょい、とその横顔を覗き込んで甘く笑うのは、浮舟だ。
「キミに手当てされたら、安心だね。頑張っているキミの横顔に見惚れそうになっちゃった、ふふっ」
先程の癒しを実感している浮舟の言葉に、はにかむような控えめな笑みでルピナスは頷く。
「有難うございます。――優しい恋が、あると良いですね」
手当を待って搬送の為に美奈を抱えたミオリも、また同感ですとばかり頷く。
それは、美奈を気にするケルベロス達の優しい願いでもあった。
作者:螺子式銃 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2016年2月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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