外宇宙への出航~京都を彩るイルミネーション!

作者:沙羅衝

「ケルベロス・ウォーからもう半年やな……」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)は、少し遠くを見るように話し始めた。
「……いろいろあったけど。新型ピラーが完成したで」
 ゆっくりと噛み締めるように。その言葉の意味は、ダモクレス本星であるマキナクロスで、ケルベロス達が暮らせるような状況になったという事だった。
「向こうに行く事を希望してる人もおるやろ。いよいよ外宇宙に進出するわけや」
 とはいえ、何もマキナクロスに遊びに行くのが目的というわけではない。この宇宙への旅は『デウスエクスのコギトエルゴスム化の撤廃』なのだから。その為に、まだ見ぬ他の惑星に広めに行く。一体どれくらいの月日が必要になるのかもわからないのだ。
「そんで、みんなには最後の仕事をしてもらう。外宇宙の出向の為には、季節の魔法『クリスマスの魔力』を使う事になる。この魔力を利用して光速を超える移動すら可能になる。せやから、みんなが宇宙の隅々まで探索できるように、魔力を届けよう」
 微笑む絹に、頷くケルベロス達。何度この光景があっただろうか。それを懐かしむ者もいたかもしれない。
「そんなわけで、うちらの行く地域やねんけど。京都や。
 京都でもこのイベントを快諾してくれたで。メインの京都タワーの会場のほかに、様々な神社仏閣でも、クリスマスを祝う事に賛同してくれたわ。
 もともと京都は、芸術系のイベントとかには歓迎の色が強いから、そう言った事もあったかもしれんけどな」
 京都と言えば厳格なイメージがあるかもしれないが、実は芸術作品から風俗にかけての敷居は低いのである。
「地球規模の一大イベント。出来るだけ皆で綺麗に飾ってほしい。どこの建物にイルミネーションをするかは任せるから、がんばってな」
 そう言えば、普段からライトアップされる建物もある。意外といけるかもしれないと、ケルベロス達は思った。ただ当然、雰囲気は壊したくない。そこは思案のしどころだろう。
「せや、京都の人から連絡がある。一応結婚式も受け付けてるらしいわ。もし、結婚式を挙げたい人たちがおったら、素敵なイベントにもなるな」
 確かにこの時に結婚式を挙げたのであれば、クリスマスのイベントとしては盛り上がるだろう。
「そんで、最後に出向するマキナクロスを見送る事になる。たぶんマキナクロスは光速を超えて外宇宙に向かうわけやから、月軌道上で、最後やな。
 二度と会えへんくなる仲間もおるやろう。せやから、後悔の無いようにな」
 こうして、ケルベロス達は最後の仕事に取り掛かっていったのだった。


■リプレイ

●雪の舞う庭園にて
 ガーデンミュージアム比叡は、山上にある庭園である。それは一種の美術館と言ってもいいだろう。
 空に近く、ゆったりとして心地が良い風が、通り抜けた。
 生明・穣(月草之青・e00256)と望月・巌(昼之月・e00281)は、そんな風を感じながら作業を開始していた。
「お金がある者はこういう時に使わねば……」
 とは穣の言葉だが、本来は休業中である庭園を、スタッフともども全てにおいて貸切った。
 様々な植物、そしてその植物を芸術的に彩る建物に、装飾を。
「アーチや植物の支柱にライトアップを。大きな木は勿論ツリーだ。
 陶板の絵画は普通に照らして楽しめるようにするぞ」
 巌はここぞとばかりにはしゃぎ、自らがやりたいように思いっきり飾り付けた。
 楽しい。この時間が穣にとっても大事にしたい事。異論があるはずはない。
 広大な敷地ではあったが、スタッフ総出となると、その準備は速やかに行われ、完了したのだった。

 そして夜になる。
 二人は食事までの時間、イルミネーションで照らされ、ライトアップされた園を歩くことにした。二人手を繋ぎながら、目指すは山頂駅。
「綺麗だな……」
 山頂駅に着いた二人は、巌がすっと渡した缶コーヒーを合わせながら、眼下に広がる夜景を満喫する。
 平和になったことを、ひとつひとつ話しながら、お互いに頷きあった。
 園の屋外に用意された食事をゆっくりと楽しむと、またゆっくりとした時間が訪れる。
 クリスマスの魔法は、心まで穏やかにしてくれるように思えた。
「おかえり、巌」
 ちらつき始めた雪を掌で受け止めながら、穣がそう話した。
「……ただいま、穣」
「途中から手伝いもできなかったけど、よく頑張ったね」
 これからは戦いもない。平和な時を、お互いに過ごしていく。
「いつも近くにいたけどさ、これからは戦わなくても良いしよ。
 ……また2人で商会や穣の事業とかもやっていこう。暇な日はまた、こうしてデートするのも良いな」
 ははと笑いかける巌を、穣はそっと抱きしめた。
「改めて言うのもなんだけどよ。ずっと一緒に居ような」
 巌が噛み締めるように言うと、穣は答えるように腕の力を強くする。
「ずっと……愛してる」

●京都タワーを見上げて
「あー、そこはもうちょい右……いや、左? わーっ、行き過ぎっす!」
 京都タワーの目の前にあるのは、京都駅だ。そこでシャムロック・ラン(風の走者・e85456)が上空に向かって声を出していた。
「あら? こっちかしら?」
 シャムロックの言葉に胡・春燕(三千年草の残り香・e84417)は手を動かし、高い木の枝に電飾を吊り下げた。
「そこっす! あ、いや……やっぱりもう少し下っす!」
 支持を出し、その通りに作業をしてみる。しかし、一発で決まる事はない。二人はそんなやりとりをしながらも、一つずつ作業をこなしていく。
 そんな一つ一つの簡単な仕事。失敗もまた、楽しいものだ。
 あらかた飾り付けが完了したと感じた時、羽を広げてふわりと地上に降りてくる春燕。そして、線トールであるシャムロックの顔と同じ高さで静止する。
「見送りの灯だと思うと、気合いが入るわね」
 そう。これは仲間たちを見送るための灯りとなる。これまで一緒に戦ってきた仲間も、何人かはもう会えないかもしれない。
 しかしそれは、その者たちが決めた事だ。ならば、精一杯の激励を込めるのは当然だった。シャムロックも春燕の言葉に頷いた。
「外の作業は冷えるわね」
「ん? オレは春燕さんから貰った手袋があるんで寒いのは平気……っ!?」
 すると春燕はくすりと笑いながら、両手をシャムロックに伸ばした。
「失礼」
 すっと流れるように春燕がシャムロックの頬に唇をあて、悪戯っぽく笑う。
「……ぁ、あとで倍返ししてやるんで、覚悟しておいて下さいっす」
 強がり。そんな彼を彼女はとても愛しく思い、満面の笑みでお応えする。
「……倍返しは楽しみにしてていいかしら?」
 と言いながら、流れるようにシャムロックの腰を下ろした春燕は、一つの提案をする。
「見送りまで時間あるし、水族館に行きましょう」
 彼女の感触を感じながら、シャムロックは後ろ足を蹴った。
「うっす、しっかり捕まっていて下さいな?」
 京都の街を駆ける人馬のリズムは、心地よい響きとなって街を彩っていったのだった。

●京都タワー
「ふぅ……。ここは、寒いな。いや、これはこの気温のせいではないな……」
 黒鉄・鋼(黒鉄の要塞・e13471)は、京都タワーの頂上からLEDを飾り付けながらそう呟いた。
 クリスマスの季節ともなると、京都は寒い。これは盆地ならではではあるのだが、夏は暑く、冬は寒い。
「炎なら出せますよ?」
 鋼のそんな呟きを探知したのか、ラーヴァ・バケット(地獄入り鎧・e33869)が作業を続けながら尋ねた。
「光の細工に合わせてですね、ええ」
「ははは……。遠慮しておこう。それに、燃やすのはやりすぎだろう」
 すると鋼は、ふとラーヴァに尋ねた。
「……お前もレプリカントならば、故郷に?」
「ええ、こんなかたちでかつての故郷に帰ることになるとはねえ……」
 ラーヴァの言葉が全て同じというわけではないが、鋼もまたそれに同意した。
「ならば、同行者という事だな」
「そうなりますか。私は機械。ダモクレスを相手するためのモノですので、あの星に乗って旅立つのは決意でも感情でもなく当然のことでございます」
「そうだな。そう言う事かもしれんな。……そうだ、宮元には挨拶はしたのか?」
「いえ?」
 ラーヴァは頭の炎をゆらりと揺らしながら、首を傾げた。
「宮元は残留組だぞ?」
「おっと、そうでしたか……。それは、寂しい? という感情になりそうですね」
 そんな会話が聞こえたのか、シルディ・ガード(平和への祈り・e05020)の声が京都タワーのシンボルとも言える、横に膨らんだおわんのような所から聞こえてきた。
「宮元さんとは、これでお別れになるの??」
 シルディは、鋼とラーヴァのところまですっと上り、頂上に巨大な星を取り付けた。
「ああ。そうなる」
「じゃあ、早く片付けなきゃ!」

「みんな有難うな。これで仕事は終わりや」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)は京都タワーのイルミネーションを手伝い、タワーから降りてきた3人に、感謝の言葉をかけた。
「……宮元さん」
 シルディは絹の手をぎゅっと握り、見つめる。
「宮元さんには依頼でたくさんお世話になったね。ひとまず区切りとなった今、改めて感謝を!」
 そんなシルディの顔を真正面から捉え、優しく微笑む絹。
「ううん。それはみんなのおかげ。ここまでこれたのは、みんなが頑張ったからや!」
「そうだな、みんなで頑張ったからだな。でもそれは、絹も同じだぞ」
 リコスはどこから仕入れたのか、生八つ橋を口に入れながら頷いた。
「そうだよ! 宮元さんもだよ!」
「そうか、そうやな。有難う!」
 すると、ラーヴァが礼をしながら言う。
「この地の仲間とは別れることにはなりますが、それも、ええと、たのしいね?」
「そうやな。ラーヴァさんとしては、それでええと思う」
 ラーヴァは感情を地獄化しているが、絹には何を感じているかは解っているようだった。
「……可能なら、いつか会いたいとは思うがね」
「うちもや。せやから、うちはいつでも、どんな長い時間があったとしても、地球でみんなを待ってる。そう決めた」
「ヘリオライダーの宮元が来れば、色々と都合も良かっただろう。優遇もされたと思うぞ? 惜しいな」
 すると、絹の言葉に鋼がそう反応を返した。
「ええねん。そんなんはうちには似合わへんわ。それにそんなんは、みんながこれから作っていけばええねん」
 そんな話をしていると、雪がちらつき始めた。間も無く日も暮れてくるだろう。
 LEDが点灯すると、周りから歓声が聞こえてきた。
 最後の魔法。
 それは見事に輝いたのだった。

●黄金の寺と庭園と
 鹿苑寺、通称金閣寺と言われている。言わずと知れた長く歴史がある寺であり、建物の内に外にと緊迫が貼られている。ただ、その派手な見た目ではあるが、周囲を自然豊かな庭園が囲むため、下品には映らないのが不思議なところだ。
「ケルベロスとして地球での最後のお仕事でお祭り、心に残るものにしないとねっ」
 峰谷・恵(暴力的発育淫魔少女・e04366)は、羽を広げながら、キラキラの飾り付けを行っていた。
「地球での最後の時間だ。ずっと戦ってきたこの国らしいものを、最後に心に刻んでいこう」
 同じくセラフィ・コール(姦淫の徒・e29378)もまた、恵から飾り付けを受け取りながら頷く。
 彼女たちは、地球を離れる。それはちょうど先ほどお互いに聞いたところだった。
「サキュバスだもん、楽しいのが一番大事。外宇宙に行く機会なんてこれ逃したらボクが生きてる間はなさそうだからねっ」
 恵はそう無邪気にセラフィに笑いかけたものだ。
「ぼくは、星空の彼方にあるものを見てみたい」
 飾り付けが終わり、日が落ち始めた。すると、周囲の松の木がライトアップされ始めた。
 セラフィたちによる飾り付けが、風に揺れて木の葉によって明滅する。
「金箔と周囲の光が混ざり合って、夢の国みたいだね」
 最後にライトアップされる金閣。そして鏡湖池にはキャンドルライトの灯籠が映えた。
 それは幻想的な光となって、ここにいる全員を包み込む。
「キラキラの金閣、しっかり覚えて行かないとね」
 恵はそう呟き、「セラフィさんにも長い間お世話になっちゃったね」と思い出すかのように続けた。
「この後の旅でも、腐れ縁になりそうだね。改めてよろしく」
 そしてセラフィが、ゆっくりとした音色で、音を奏で始めた。
 お互いの旅はまだまだ続く。
 その旅路がまた、楽しいものでありますようにと。

●森の神社の片隅で
 森林の中にある神社。それが貴船神社だった。近くを流れる貴船川は美しく流れ、心地よい音を運んできていた。
「貴船神社で氷雪のキャンドルアート?」
 と、皆神・龍伍(信頼と実績の原稿取立て業・e24045)から提案された時、姫橋・憂妃(夜の踊り子・e15456)は文句を言ったものだったが、いざこの場所に来てみると、そんなことを忘れて飾り付けを張り切っていた。
(「……思ってたよりさみぃ」)
 龍伍はポケットに手を突っ込みながら、少し散策をする。この場所は美しかった。
 時刻は夜だが、柔らかな蝋燭の灯りがまた、良いものと思わせてくれる。
 山々の緑と自然の音。こういう遊びも悪くはない。
 貴船神社に行くという提案をしたのは龍伍だが、真相は姫橋がキャンキャン煩いから。街中に居ては周りに迷惑がかかると、誰も居ないだろう山奥の神社へと思ったからだった。
 ただ、来た事は自分自身を満足させてくれた。
「龍伍」
 すると、憂妃がそう呼びかけた。
 普段はそう言わない彼女に、鼻で笑って返す。
(「何を血迷ったんだか」)
 とは思ったが、口にはしなかった。
「もう、勝手にいなくなったりしないで」
「……ああ」
 少し寂しそうな声の彼女に、そっけなくそう返す龍伍。そして憂妃はこう続ける。
「そんで早い所、あたしを好きになりなさいよね!」
「あー。そうだな」
 そして、憂妃は空を見上げた。
(「きれい……」)
 都会の光が届かないこの地の夜空は、星の光がより届く。
 憂妃は龍伍や仲間達や人々の幸福をそっと願う。
(「何か一つ違ってたら、きっと二人で今ここには居られなかった」)
 少し涙目になりそうになってしまう。それを堪えて、今の幸せをかみしめる。
(「それにしても、こいつは情緒ってもんを受け取る器官が壊れてたりすんのか?」)
 そんな憂妃の事を知ってか知らずか、龍伍はそんなことを思っていた。でも、ふと彼女を見てみると、そうではない事に気が付く。
(「ああ、違うか……」)
 龍伍は、憂妃の表情を見て、しばらく何も言わなかった。
「ここのご利益、知らねえのか」
 最後に龍伍はぼそりと呟いた。
「え? なに?」
「なんでもねえ……」
 貴船神社は縁を司る神社でもある。そのことを憂妃が知るのは、ずっと後の事だ。

●愛の魔法
 京都タワーの中では、結婚式が行われていた。
「凛那、綺麗だよ♪」
「えへ……ありがと蘭華姉」
 榊・凛那(神刀一閃・e00303)と六道・蘭華(双霊秘詩の奉剣士・e02423)は、多くの人が集まる中、お互いに白無垢で揃えていた。
「おめでとう!」
 誓いの言葉の後、仲間、友人、家族が彼女たちを祝福する。
 人前式だが、それが二人の選んだ結婚式だった。それは二人が、たくさんの人に認めてほしかったからだろう。
 結婚式はかわるがわるスピーチが行われ、にぎやかに話をしながら、振る舞われる料理に笑顔になる。
「女同士なのに、親も友達も、蘭華姉のお店の人たちまで来てくれて……えへ、ちょっと涙出ちゃった」
 凛那は目の前に広がる光景に、そっと人差し指で涙をぬぐう。
 蘭華の実家はは、老舗和菓子屋『京都六道庵』だったが、祝福してくれた。
 そして、式はいよいよお色直しの時間となった。
 しかし二人は、退場することはなく、すっと立ち上がった。
「よし、行こう蘭華姉!」
「うん。凛那、行くよっ!」
 白無垢が舞う。すると二人はあっという間に純白のドレスを纏っていたのだった。
 二人によるサプライズが、会場を最高潮にしていったのだった。

 そして最後。いよいよ指輪の交換となる。
「―私達も、みんなに恥じない愛を誓います―」
 二人は向かい合い、そっとお互いの薬指に通し、キスをする。
「凛那と名実共に結ばれるんだね……。もう離してあげないよ?」
「長かったけど、こんな日が来るなんて夢みたい。私もずっと蘭華姉のこと離さないからねっ」
 そして二人は抱きしめ合い、涙があふれてきた。
 長かった戦いも、もう無い。そう思えばこそ、今この瞬間が愛おしい。
 蘭華はふと、旅立つ人たちの事を思った。
「星海を往く皆様の未来にも、愛があります様に……」
 クリスマスの魔法は、愛の魔法。
 二人の愛は、きっと旅立つケルベロス達の力ともなるだろう。
 そして、式は披露宴へと続いていくのだった。

●結婚式を巡るケルベロス
 パシャリと結婚式を写真に収めるのは、ウィルマ・ゴールドクレスト(地球人の降魔拳士・e23007)だった。
 結婚式は多くの会場で行われていたので、紛れ込み、祝福の言葉を述べて言っていた。
「うーん……人の幸せって砂利の味が、しま、す……というのは冗談です、が」
 そんなことを呟きながらも、多くの写真を撮っていっていた。
「かつて犠牲になった、多くの人々が望んでも叶わなかった、人並みの、幸せ、というのもよいものです、ね……」
 最後の集合写真。その相手の事は知らないが、記念です、記念、と写真を撮って回ったのだった。

●別れと誓い
「では、私は、この子、を育て、て、地球であなたたちの、の成果がいつか聞こえるよう、祈って、ましょう」
 ウィルマはそう言いながら、おなかを撫で、旅立つケルベロスにそう言った。
 最後に自らの撮った写真は、『いつか再会することを願って』をこめた。

 そのウィルマの横で、鋼がリコスと絹に握手を求めた。
「ま、これで今生の別れだろう。
 上手くやれよ。特に宮元は、ダモクレスの傍系として誇り高く堂々とな!」
 鋼は最後にそう言って、マキナクロスに乗り込んでいった。
 次々に乗り込むケルベロス達。
「これで出発だけど、いろんな種族が力を合わせればきっとすごい事も発明もできると思うから、だから……またね!」
 シルディは、さよならは言わなかった。
「いってらっしゃい。楽しみにしてるな」
 すると、絹はにっこりと笑顔を作った。
「いってきます!」
 シルディはそう言うと、元気よくマキナクロスに乗り込んでいった。

 そしてここは月軌道に位置した万能戦艦ケルベロスブレイドの中だった。
 目の前にはマキナクロス。もう、声も届かない。
 今生の別れとは鋼の言葉だったが、絹はそれを信じなかった。
「いってらっしゃい」
 絹はもう一度言う。
 彼女はいつまでも仲間たちを待っている。
 これまでも、これからも。
 そして、帰ってきた時にはこう言うのだ。
「おかえり。なんか食べたいもんあるか?」
 と。旅の話を楽しみに、彼女は待つ。
 悲しみに暮れてしまう事もあった。
 戦いにより変わったこともある。
 でも、それだけは、人の想いだけは、絶対に不変であり続けるのだ。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年12月24日
難度:易しい
参加:14人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。