外宇宙への出航~オーロラ・セレブレーション

作者:藍鳶カナン

●旅立ち
 遠く、遠く。
 遥かなる星の彼方へ、外宇宙への旅立ちの時がやってきた。
 新型ピラーの誕生はまさしく永遠なる平和の輝きの誕生。まだ見ぬデウスエクスが住まう惑星へ、この宇宙すべてに新型ピラーを広め、歪みが発生することのない世界を創るための途方もない旅が、はじまりを迎える。
 嘗ては敵であり、今は頼もしき友となったダモクレス達をはじめ、ケルベロスへの降伏や和解を経て地球を離れるデウスエクス達、そして――数多の戦場を、幾多の歓びも悲しみも共にした同胞のうち、星々の海への旅を望むケルベロス達を乗せたマキナクロスが、地球も太陽系も離れ、外宇宙へ出航するのだ。
 戦いの日々の終幕の、本当の最後を迎える旅立ち。
 この星で生きる者と、遥か星の彼方へ往く者との、別離のときがやってくる。
 だから、どうか。
 ――二度と逢うことは叶わぬかも知れぬ仲間と、悔いなきひとときを。
 ――二度と逢うことは叶わぬかも知れぬ仲間へ、壮麗にして盛大なる餞を。

 星々の海へと出航するのは、機械文明を極めた船ならぬ星。
「御存知、ダモクレスの本星たるマキナクロス。この出航は勿論、途方もない旅そのものに膨大なエネルギーが必要になるからね。地球各地でクリスマスイベントを催して、大いなる季節の魔法『クリスマスの魔力』を贈って、マキナクロスを送り出すことになったんだ」
 狼耳をぴんと立て、天堂・遥夏(ブルーヘリオライダー・en0232)が感慨無量の面持ちで皆へと語る。様々な国で、様々な地で、クリスマスイベントを大いに楽しむことが、星々の海へと出航する者達にとっては己の旅路の糧に、出航する者達を送り出す者達にとっては、彼らへの何よりの餞になるはずだ。
 より多くの、より大きな『クリスマスの魔力』を贈るためにも。
 生涯で最も特別だと思えるような、聖なる夜をすごしに行こう。
「僕から案内するのは、聖なる夜に星空の奇跡が望める地。アラスカの黄金の心臓にして、オーロラオーバル、すなわちオーロラベルトの真下に位置する――フェアバンクス」
 街の郊外に広がる雪原が、この地でのクリスマスイベントの舞台となる。
 さあ、行こうか。アラスカの黄金の心臓へ、オーロラベルトの真下へと。
 ――星空に奇跡を描く、壮麗なオーロラのもとで聖なる夜をすごす、クリスマスへと。

●オーロラ・セレブレーション
 極光――そう呼ばれることもあるオーロラは、宇宙からの贈り物。
 太陽風のプラズマが地球の大気中の酸素原子や窒素原子と衝突することで生まれる奇跡の輝き、宇宙と地球が織り成す光の演舞はきっと、星々の海へ出航する者達への餞に相応しい壮麗な美しさを見せてくれるはず。
 NASAとアラスカ大学によるオーロラ研究施設があることからも判るとおり、アラスカ中央のフェアバンクスは世界有数のオーロラ観測スポットだ。
「そのフェアバンクス郊外、美しい樹氷の森を抜けた先に開けた広大な雪原で、満天の星とその星空に躍るオーロラのもとですごすクリスマスが、あなた達を待っている」
 星空に奇跡の光が咲くだろう。
 優雅に翻り、波打って、時には満天に爆ぜるように輝いて。
 そのオーロラを、暖炉の炎があたたかなロッジの部屋で、大切なひとと寄り添いながら。
 あるいは、ロッジの傍らで高く真白に聳え、煌びやかなオーナメントに彩られた、巨大なホワイトクリスマスツリーを登り、その枝に腰かけて。
 もしくは、何処までも広がるかに思える雄大な雪原へと出て、星空から降るように劇的な光の演舞に抱かれる心地で――壮麗なオーロラを見上げる、聖なる夜。
「それだけでも絶対に絵になる光景だろうけど、たとえばその雪原に、ムースやカリブー、つまりヘラジカやトナカイ達がいれば、彼らと一緒にオーロラを見上げたりできればもっと浪漫だと思わない?」
「ぴゃー! そんなの勿論! 浪漫満開に決まってますともー!!」
 悪戯っぽく続けられた遥夏の言葉に、真白・桃花(めざめ・en0142)の竜尻尾がぴこぴこぴっこーんと跳ねたなら、だよねと笑ってヘリオライダーは皆へと願う。
「そこで、あなた達ケルベロスに防具特徴『動物の友』であらかじめ仲良くなったムースやカリブー達をその雪原に連れて来てもらえたら、って話が出てる。もし良かったら無理ない範囲で協力してあげて」
「合点承知! 浪漫満開のためにはりきってまいりますなの~!!」
 野生のムースが市街地を我が物顔で闊歩するのもよくある話だというから、地元の人々にとっては彼らも珍しくない存在だ。けれど他所からこの地を訪れる観光客達にとってはこの大型の野生動物達は憧れの存在で、雪原で彼らとともにオーロラを見上げる体験は、きっと掛け替えない思い出になるだろう。
 ――この星ですごす最後の夜となる者達にとっても、きっと。
 最も美しい光の演舞が見られるのは深夜であるから、食事は事前に済ませてくるといい。
 魂の奥から溢れくる歓喜や感動で胸いっぱいになるだろうから、手許に温かなドリンクがあればそれでいい。この夜振舞われるのは、白樺の樹液で作られるバーチシロップを贅沢に落とした、温かな紅茶や珈琲、あるいはココア。どうしても小腹が空いてしまうなら、蟹や海老に貝やサーモンたっぷりなクラムチャウダーならぬシーフードチャウダーが、こころもからだも満たしてくれる。
「酒類はないけれど、お酒っぽい雰囲気だけでも楽しみたいってひとにはノンアルコールのスパークリングワインや、ノンアルコールの赤ワインで作ったホットワインがおすすめ」
 双方とも、上質な葡萄で通常どおりに醸造されたワインからアルコールのみを除いた品。ゆえに、酒精はなくとも芳醇な香りも風味もそのままだ。程好い炭酸の上品な口当たりも、柑橘やスパイスを加えた豊かで温かな味わいも、聖なる夜を特別に彩ってくれるはず。
 大勢の観光客の歓声が咲くなかで、あるいはムースやカリブー達と一緒にオーロラを仰ぎ見たなら、地球と宇宙と、そこに生きるすべての命との一体感が胸に満ちるだろう。
 勿論、暖かなロッジの部屋で、もしくは皆から離れた誰もいない雪原で。
 極光の夜空を、白銀の大地を。
 聖なる夜を、己だけ、あるいは大切なひととともに独占する心地ですごすことも叶う。
「それ以上の、生涯で最も特別だと思える聖なる夜にしたいと望むのなら、氷の宮殿めいた水晶硝子の聖堂があなた達を迎えてくれる」
 限りなく透きとおった氷のごとき水晶硝子で創られた聖堂は、星空の奇跡を、オーロラの輝きを、あますことなく満たした祈りの空間。宇宙と地球が織り成す光の中で、結婚式を、あるいは、未来への約束を、誓いを。
 新たに結ぶのもいいし、既に結ばれた約束を改めて誓い合うのもいい。
 それらもまた、季節の魔法『クリスマスの魔力』をより豊かにしてくれるはずだから。
 豊かな『クリスマスの魔力』を贈られたマキナクロスは、恐らく光速を超える速度で出航するだろう。出発したその瞬間にこちらから視認することは叶わなくなり、以後、観測すらできなくなると予想されている。万能戦艦で月軌道まで見送りに行くことはできるが、
「二度と逢えなくなるかも知れないひとと聖なる夜をすごすなら、どうか悔いのないよう、存分に別れを惜しんで欲しいなって、そう思うよ」
 眼差しを和らげた遥夏がそう話を結べば、桃花の尻尾がぴこりと揺れた。
「外宇宙へ往くひと達だけじゃなくて、わたし達みんながきっと、この夜から解き放たれていくの。同じ志を抱いて戦い続けた日々から、それぞれの旅路へ、それぞれの、未来へ」
 解き放たれて、旅立っていく。
 遥かなる星の彼方へ、あるいは、真に自由なる未来へ。
 ――願わくば、旅立つすべての者達に、涯てなき歓びと幸いがあるように。


■リプレイ

●Orion Blue
 ――永遠が、やってくる。
 凛冽にして透徹に透きとおる大気の底から振り仰ぐは深藍と薔薇色の星雲が迫りくるかに思える極上の星空。なれど街中では望めぬ微細な流れ星が幾つも降る空に故郷で観るよりも大きなオリオン座を見つけた刹那、時間が消えて、奇跡が生まれくる。
 星空と雪原の境界に覗いた翡翠色の光、透きとおる青を秘めたそれが天頂を超えて全天を翔ければ、波打ち脈動する光がたちまち輝きの紗を高く高く昇らせて。
 魂をも染め抜く輝きを、満天に咲き誇らせた。
 眩く爆ぜたオーロラが冷たい焔のごとく星空に舞う。翡翠色の輝きの裾に桃色真珠めいた煌きを連れ、地を撫ぜんばかりに青と紫の煌きを躍らせたかと思えば宇宙へ昇らんばかりに薔薇色と真紅を燃え上がらせる。
 地球と宇宙が織り成す壮麗な光の演舞に呑まれて、
 一瞬が、永遠になるかのよう。
「この感動も……皆を送り出す力になるのね」
「今までもそうやって、願いも力に変えて来たんだろう?」
 永遠の一瞬から息を吹き返す様にアリシスフェイル・ヴェルフェイユ(彩壇メテオール・e03755)が感嘆の吐息で紡げば、陽南・ルクス(零れ陽・e87336)の眼差しが極光を離れ伴侶へ注がれる。ええ、と微笑み返して振り返るは誰もいない雪原を歩みきた足跡。それに己の軌跡を重ね見れば、愛おしい感慨が溢れくる。
 星の彼方へ出航はしない。地球の重力に抱かれて、星空を仰ぎ見る。
 ――私はね、最近になってようやく地に足がついた気がしてるの。
 求めるものも離れがたいものも全てこの星にある。今までは定まっていなかったのねと、
「そう思ったなら、此処が居場所だったんだよって……大事な友達が言ってくれたの」
 だから地球が。私がルクスと生きる世界よ。
「……アリスは良い友人をもったんだな」
 幸せな笑みを咲かせる己だけの星、彼女の頬を大切に包むように触れ、ルクスは『友人がいる』ではなく『友人をもった』と口にした。手離し拒まれ捕まえて、二人が結ばれたのが三度目の正直であるのは自分達だけが識る物語。己の魂が定まったのも、己の星と手を取り合えた瞬間だと思えるから。
 聖堂に行ってみないかと誘えば、何度だって愛を誓うわと輝くような笑みが返るけれど、誓いよりもまず、と悪戯に笑ってその花唇に口づけを。アリシスフェイルが瞳を閉じれば、互いの心をとけあわせるように。
 ――お前との未来に、幸いを願って。
 凍てる夜に、雪煙が舞い上がる。
 痛いほどに凛冽な風を切り、ライ・ハマト(銀槍の来訪者・e36485)が飛ぶように雪原を駆ければ、雪中の狩りに長けたアラスカオオカミ達もライに従うようにじゃれつくように、何処までも開けた雪の大地を駆けてゆく。
 思うさま駆けめぐって一息つけば、次々と顔に鼻面で触れてくる彼らを抱いて、
「私は、この大地から離れる。牙と爪を持った友達、元気でな」
 その毛並みと温もりにうずめた後に、顔をあげて遥か彼方へ眼差しを向けた。
 星の彼方へ往く旅は、傭兵として、ケルベロスとして生きた今まで以上の大仕事になる。
「……父上、母上、兄上達、しばしのお別れです」
 再び戻ることは叶わぬやも知れぬ旅、なれど敢えて『しばし』と告げれば己が身をすべてニホンオオカミのそれへと変じ、銀の毛並みに覆われた四肢で雪の大地を踏みしめて。
 皆の眠る故郷まで届けとばかりに、遠く、遠く、豊かな遠吠えを唄いあげた。
 遥か遠く響き渡った狼の遠吠えに、幾つもの狼の声が続く。
 大きな躯をむくりと起こしかける灰色熊、争う必要はないよとその毛並みを撫でてやり、村崎・優(黄昏色の牙・e61387)は再び彼の温もりに己が背を預けた。灰色熊の冬眠は深い眠りでなく、彼らは時折めざめて巣穴を出る。今夜こうして、優と出逢ったように。
「君はこの後巣穴に戻るのだろうけど……僕はこの後、星の彼方へ旅立つよ」
 雪の大地から仰ぐ星空に、翡翠色の極光が舞う。
 優をいざなうように、真紅の輝きが宇宙めざして躍りあがる。
 大いなる何かに赦された気がして、心ほどけるように笑んだ。星の彼方で新たな出逢いがあれば、己は胸を張ってこう言うだろう。
 僕は地球の出身だ――と。
 芳醇な香りをくゆらすホットワインの湯気に、嫋やかな吐息がとける。
 セレスティン・ウィンディア(穹天の墓守・e00184)が仰いだ星空には翡翠色の光の紗が青い煌きの波を連れて翻る。あの彼方へ妹を送り出すのは寂しくて、けれど妹がその伴侶と往くのが心強くて、想い綯い交ぜに笑んだなら、アラスカオオカミ達が競うように口許へと触れに来た。
 機械文明を極めたマキナクロスには及ばずとも、地球の技術発展もなかなかのもの。
 新しめの機種ならスマートフォンでも綺麗なオーロラが手軽に撮れるから、夜空の奇跡も狼達に囲まれた自撮りも想いのままに撮り、長時間露光で星々の軌跡をも狙って。
 ――離れていても心はいつも側にいるよ。
「私の一番の狼は、やっぱり貴方」
 暖かな部屋へと戻ったなら、何時かの春に桜綴りの葉書を歓んでくれた白き狼へ、今夜もまた手紙をしたためようか。遠くロッジの方角を望めば、数多のカリブー達の影が見えた。
 冬は雪の下の地衣類を食むカリブー達にとって、牧草は御馳走になるだろう。
「お客様。こちらの香りの良い牧草……あちらのお客様からでございます」
 彼らとあちらのお客様こと観光客の仲立ちをするちびっこ――愛の狩人として名を馳せた(気がする)ルル・サルティーナ(タンスとか勝手に開けるアレ・e03571)は、数多のふわふわ達と(一方的に)愛を語り合った日々に想い馳せるけれど。
 ルルの愛するふわふわが、桃ひよちゃんやチョコひよちゃんの仲間が!
「一斉に姿を消しちゃってもう逢えないとかなんで!? どうなってんの!!??」
 情勢のお勉強をぶん投げたちびっこが地団太踏めば不意にずぼっと嵌まる雪の深み、だが暖かで大きな生き物がルルの襟首をまふっと咥えて引きあげてくれた。振り返ってみれば、
「あ! ムースちゃんとふかふかクマさん!!」
「でへへ、おれは野生のクマじゃなくて、クマのウェアライダーっすけどね!」
 雄大なアラスカの大地に生きる巨大なヘラジカ、すなわちムースと、森色の外套で彼らと友誼を結んだベーゼ・ベルレ(ミチカケ・e05609)の姿。ふわふわってビルシャナかなぁと思い至れば、彼らも彼ららしく旅立ったんだから祝福してあげて欲しいっすようと笑って、彼はちびっこを救った大きな友達とともに再び涯てなき雪原へ。
 雄々しく聳える角、冬には落ちるそれをいまだ備えた牡鹿も角なき牝鹿も並の馬を超える巨大さで、初夏に生まれ初冬に離乳した仔鹿でさえ、体重なら恐らくもうベーゼに勝る。
 大きく、力強いいのち。
 彼らと寄り添いながら夜空の奇跡を見上げて、保温ばっちりなスープジャーから木の匙で熱々のシーフードチャウダーを掬う贅沢ときたら、それはもう!
 蟹と海老の身が弾けて熱いチャウダーが口中に溢れだせば、幸せな熱がこころにからだに染み渡り、まるでそれが呼び水となったかのごとく、熱い感慨が魂の芯から込み上げる。
 この星を護るための闘いは、終わったんだ。
 生きるために奪うコトも、奪われるコトも。
 もう、しなくていいんだ――。
 瞳の奥にも燈る熱。大きな鼻面を寄せたムースに眦を舐められれば何でもないっすようと彼の鼻を撫で返し、巨大な野生動物と睦まじく触れ合う様に羨望の声をあげた観光客達へ。皆もこっちおいでっすようと、ベーゼは大きく、大きく手を振った。
 ――七夕に白夜の都でかけた願いが、聖夜に白銀の大地で叶う。
 幼き日に両親と手を繋いで歩いた街で出逢った花嫁衣裳、一番幸せだった頃に見た、一番綺麗だと思った衣裳を纏い、フィスト・フィズム(白銀のドラゴンメイド・e02308)は今夜あの頃よりも更に大きな幸せを抱きしめにいく。
 雪の大地の聖堂がその舞台。
 純粋に澄みきった氷のごとき水晶硝子の聖堂は、星空の奇跡を、壮麗な光の演舞を享け、如何なる仕掛けであるのかオーロラの輝きで、祈りの空間を優しく満たしていく。なんとも壮大なものよ、と双眸を細めていたバルバロッサ・ヴォルケイノ(業炎の覇者・e87017)の顔が更に綻んだのは勿論、誰より美しいと思える己の花嫁を迎えたから。
 彼女らしい白銀のシルクが迷わぬ流れを描くウエディングドレスは、凛としたフィストの美貌もすらりとした肢体も際立たせ、花嫁に合わせた白銀のテールコートとホワイトタイがバルバロッサの威厳をいっそう映えさせる。
 新郎新婦の胸元には白薔薇とブルースターのコサージュ、『尊敬』する二人の幾久しい『幸福な愛』を願ってアリッサム・ウォーレス(花獄の巫竜・e36664)が贈った花々と共に祭壇の前に立ち、
「……この手は離さぬ」
「私も離さないと――誓います」
 誓いと口づけを交わせば、晴れて夫婦となった二人にアリッサムが歓声を咲かせた。
「フィストさん、バルバロッサさん、ご結婚、おめでとうございます」
 長き戦いの日々の中、傷ついたことも涙したことも数多あっただろうけれど、これからは皆で掴み取った平和な世界で、
 ――末永く、お幸せに!!
 その途端、花嫁の視界が熱く潤んで滲む。
 今夜の誓いも祝福も、全て紛うことなき真実だから。
「……なんで、私、目の前が急に見えなくなって……」
「我が妻の涙も美しいが、アリッサムのカメラの前では笑む事を勧めるぞ」
「ええ、是非とも! ほら、聖堂の前でカリブーさん達が待ってますよ!」
 新郎が新婦の涙を拭う間にアリッサムが扉を開けばそこには、地竜の巫女と親しくなったカリブー達の姿。彼らの姿に惹かれてきた観光客達も結婚式に気づけば更に笑顔になって。
 聖なる夜に星空の奇跡のもとで、数多の祝福が咲き溢れた。

●Fiesta Rose
 煌びやかに彩られた白銀のツリーは、高く悠然と聳え立った塔のごとき偉容。
 想像以上に巨大なホワイトクリスマスツリーを仰ぎ見た初々しい夫婦はどちらともが翼で飛べるけれど、たとえばカルナ・ロッシュ(刻渡る銀宵星・e05112)が華輪・灯(春色の翼・e04881)を抱いて飛翔するなら、あの頂までぎりぎり飛べるか飛べないか。
「これほど大きなツリーなら……」
「天辺の星のもとでだって二人一緒に座れちゃいますね!」
 翼を広げれば忽ち至るベツレヘムの星のもと、自分達より大きな星に背を預けて酒精なきホットワインで乾杯すれば、仰いだ星空に壮麗な極光が咲き溢れた。翡翠の裡から眩い白が爆ぜるがごとき輝きが縁を桃色真珠の彩に染め、八重の、十重の、二十重の花を思わす光を満天に花開かせる。
 宇宙と地球が織り成す光、オーロラが輝くのは大気圏を超えた更なる先の、遥かな高み。
 なのに何故、手を触れられそうなほど近しく感じるのだろう。
 遥か高みに花開いて舞い降りる光の紗に、抱きすくめられる気さえして――。
「ずっと憧れていたんです、オーロラに。その彼方への旅立ちにも手が届くけれど……」
「貴方となら何処までも飛べるから、宇宙での冒険も心躍るものになったでしょうけど」
 翡翠の瞳に映る春色天使。二人は誰よりも傍にいる愛しいひとを確かめ合い、結婚の証を燈す指輪煌く左手を重ね合う。互いが羽を休める処はここにあるから、時にゆっくり歩き、時に軽やかに飛んで、歌いながら、笑いながら、ずっと二人で――、
「……いえ、そのうち二人じゃなくなるかもですね」
「ええ、二人じゃなくなるのも、楽しみです」
 柔らかな春色を頬に燈して灯が微笑めば、カルナの胸の奥から光の幸せが花開く心地。
 ふふ、と笑みを零し合い、幸せが咲くままに唇を重ねて、互いの夢をも重ね合い。
 ――この星の上で、一緒に時を重ねて、生きていこう。
 翠玉よりも優しい翡翠色の輝きが凛冽な氷河の青を孕み、紫に揺らめく冷たい焔を星空へ舞い上がらせた。背筋を昂揚が翔け昇るほど壮麗な光の演舞には畏怖すら覚えるけれど、
 ――怖い。
 馥郁たるホットワインの香り越し、微かに零れた婚約者の言葉はそれとも違う気がして、ヨハン・バルトルト(ドラゴニアンの降魔医士・e30897)が気遣うように覗き込んだなら、クラリス・レミントン(夜守の花時計・e35454)が淡く笑み返す。遥か星の彼方、以前には決して届かぬ世界と思えていた星の海へ旅立つ皆と別たれてしまうのが、少し、怖くて。
 星の海へ旅立つ従兄を思えばヨハンも彼を案じ、心は寂しさに波立つけれど、
 ――大丈夫ですよ。僕達はケルベロスなのですから。
「どんなに離れても、誰も独りではありません。旅立つ皆を信じましょう」
「……うん、皆ならきっと大丈夫だよね。ありがと、元気が出たよ」
 招き入れられた外套の裡、暖かな彼の言葉と鼓動を直接感じたなら、クラリスにほどける様な笑みが咲いた。不安の氷が融ければ、胸には優しい歓びがそっと芽吹く。
 長きに渡る侵攻の歴史、数多の命が奪われた事実は決して消えないけれど、心を得る前の父の故郷が、マキナクロスという名の星の船が。
「皆の希望を乗せて旅立つんだって……そう思えば、娘の私まで嬉しくなるの」
「僕の義父になる人は元ダモクレスでしたね。僕も『家族の一員』として誇らしいですよ」
 形は婚約者でも、絆は未来を先取りして。家族として歓びを分かち合えるその愛おしさを確かめ合うよう、言の葉だけでなく心も温もりも分かち合うよう、深く身を寄せ合ったまま口づけを交わす。
 どうか彼らの旅路に、幸あらんことを。
 雪景色の彼方で、薔薇色が輝いた。
 星空の片隅から天頂へ波が寄せるように光が揺らめき踊れば、満天に翻る輝きは翡翠色、けれど不意に宝石めいたペリドットの煌きが燈れば、紫に、桃色に、夏空の青にと、様々な彩の細波が星空を満たす。
「ふっふっふ~。わたし、あの色見た事あるよ! キカちゃんの髪が照らされた色だ!」
「えへへ、きぃの髪、似てるかな。何色っていうんだろ……やっぱりオーロラ色かな?」
 壮麗な極光にはしゃぐミミックを抱いたまま火倶利・ひなみく(スウィート・e10573)が振り返れば、もこもこに着こんだ胸元に玩具ロボのキキの顔を覗かせた隠・キカ(輝る翳・e03014)がはにかむように笑む。柔らかな白金の髪に揺れる虹と、星空に舞ったオーロラの彩は同じではないけれど、どちらもひなみくには宝物みたいな色。
 改めて仰いだ輝きに、きれーい! と二人で歓声を咲かせれば、誘われたように集まって来たのは先程キカが仲良くなった動物達。カリブーも大きいけれど彼らよりもっと大きな、二人が見上げるほどの偉容を備えたムースが、
「え? 背中に乗せてくれるの? ひなみくも一緒にいい!?」
「わ、わ、すごいねキカちゃん……! あ! サンタさんがいるよ!!」
 乙女達を背に乗せて立ち上がれば、一気に遠くまで開けたひなみくの視界に、水晶硝子の聖堂の傍でプレゼントを配るサンタクロースの姿が映る。わあとキカも瞳を輝かせたなら、
「メリークリスマス、ひなみく。またいつか、ここにオーロラを見に来ようね」
「……うん! メリークリスマスなんだよ、キカちゃん!」
 もう二度と侵略者に脅かされることのない世界で、
 曇りなき幸せの、約束を結ぶ。
 北極圏に生きる麝香牛の毛、キヴィアックは、カシミアの三倍暖かで八倍軽いという話。
 極上の暖かさを齎すその手袋を観光客達へと贈るサンタクロースは、カリブー達を連れたキルロイ・エルクード(ブレードランナー・e01850)、大盤振舞いは旅立つゆえのものだ。探し求める存在は地球上にいないと確信したから、ならば遥かなる星の彼方へ。
 機械仕掛けの聖王女――。
 鋼の肢体を持つ姿であるのか、いきいきとした薔薇色の頬を持つ、『ひと』としか見えぬ姿であるのか。マキナクロスにもいないと思しき、真実存在するのかさえも分からぬ相手を探して星の海を航るのは、死ぬまでの暇つぶしのようなもの。
「だが、逢ってみたいってのも本心だからな。で、桃花嬢はこれからどうするんだ?」
「いってらっしゃいなの、良い旅を! わたしは、お嫁さんに! なりますなの~♪」
 仮面のサンタさん発見なのと竜翼でふわふわ飛んできた真白・桃花(めざめ・en0142)へ旅立ちの挨拶がてらに訊けば、披露宴は日本に戻ってからの予定だけどと照れ混じりに笑むスプーキー・ドリズル(モーンガータ・e01608)が桃花と頷き合い、
「君が星の彼方へ出航するのなら……良ければ、今夜の式に立ち会ってもらえるかい?」
「――ああ。地球で最後の役目としちゃあ極上の部類だ」
 思わぬ言葉にキルロイも、口の端を擡げて笑んだ。
 聖堂の水晶硝子が、気紛れのように今夜の新郎の姿を映す。
 軍の礼装でなく白のタキシードを纏い、綺麗に髭を剃った己を見れば若返った心地。その擽ったさもすぐに、眩い歓喜へと塗り替わる。優しく身に添い裾にかけて波の花を咲かせる純白に彩られた花嫁が、
「スプーキーさんは、海を航る自由をわたしにくれたの」
「僕にとって桃花は、航海を導く女神様だよ」
 幸せそうに呼びかける笑顔を独占するよう、誓いを、口づけを交わす。
 ――互いの航路に、幸いを。
 二人と言祝ぎを交わせば、じゃあなと笑ってキルロイはさらりと去った。愛し合う者達に野暮な真似はしない、それが彼の一貫した生き様だ。改めて微笑み合い、夫が肘を曲げれば妻が手を添えて歩む聖堂には、月白の煌きに縁取られた青き極光の輝きが揺れる。さながらオーロラの波を航る帆船になった心地。
「お腹は空いてないかい? 実は佳いサーモンの仕入れ先を見つけてね」
「ぴゃー! なら帰ってから自家製スモークサーモンに挑戦してみたいの~!」
 彼の秘密基地が生まれ変わった北欧風グランピング施設、二人のおうちに戻れば、彼女の実家の果樹から生まれた燻製チップを使って。――さあ、出航しよう。
 自由と幸いに満ちた、涯てなき航路へ。

●Rayon Vert
 世界最高の晴天率を誇るフェアバンクス、その街灯りからも離れたこの雪原は、壮麗なる極光のみならず、極上の星空にも確実に出逢える約束の地。
 凛冽な大気はその冷たさで磨きあげられ限りなく透きとおり、雪の大地から仰いだ星々は数多の煌きが光の霧とも思えるほどに圧倒的で。けれどそれらが美しいオーロラに呑まれ、満天に若草色の輝きが翻って桃色真珠の細波が揺れる様に、二人きりの世界で息を呑む。
 遠く遠く、遥か高みに真紅の光が花開けば、
 ――こんな、こんなに、綺麗な世界があるなんて。
 胸を震わせる神楽・ヒナキ(くれなゐの風花・e02589)の手の温もりを確かめるよう握り直し、好きだよ、と語りかけたスバル・ヒイラギ(忍冬・e03219)は、彼女の紅き瞳が己を映せば微かな緊張に唇を引き結ぶ。けれどそれも一瞬のこと。
「俺と、家族になってください」
 空と雪だけが広がる夜に彼の言葉がまっすぐ胸に響けば、その奥から溢れくる熱い何かが涙になって零れぬうちに、ヒナキがはにかみながらも微笑み返して、
「……私も、スバルが好きです。一緒に、家族になってください」
「――!! やったー!!!!」
 弾けるような笑みを満面に咲かせたスバルが誰よりも大切なひとを抱きあげ、雪の大地をぐるぐる回る。蕾に閉じこもっていた孤独な日々には想像すらできなかった幸せ、その花を咲かせてくれた彼の歓びようにヒナキもいっそう笑みを咲き綻ばせ、
「……ずっと、隣に居てくださいね」
「勿論! 俺はヒナキと、ずっと一緒に歩いていく!!」
 花唇から零れた言の葉に、生涯で最も特別と思える聖夜にスバルは迷わず誓う。より高く抱きあげ、星にも空にも大地にも、星より遠い処にいる誰かにも見てもらう心地で、
 ――俺の手の中にいる彼女が、俺の、最愛の奥さんです!!
 白銀の大地の聖堂で、故郷の海辺の教会での挙式を語る。
 凛冽な風から隔たれて、なのに夜空と極光はあまさず透かす水晶硝子の聖堂で、灰の娘にねだられるまま訥々とレスター・ヴェルナッザ(銀濤・e11206)が遠い日の祝福を語れば、ティアン・バ(世界はいとしかったですか・e00040)の胸に憧憬が燈る。
 昔語りの礼というわけではないけれど、
「レスター、前、舞を見たいと言ってたろう」
「――見せてくれるのか?」
 白き手を祈りのかたちで光に伸べる。
 刻々と彩を変える光の紗を纏うよう、抱き込むように、天へと昇華させるよう舞う彼女は聖性を帯び、知らぬ隠れ郷の巫女のごとき貌を覗かせるけれど、舞のたびに白き裾が花開く衣は雪原に生きる獣達とも友誼を結ぶ力を秘めたもの。くるりくるりと覗く面影のすべてがティアンだと改めてレスターが実感すれば、祈りの舞が終わりへ至る。
 最後の一回転にふと、秋の祭典の夜に彼が寂寥の影から引き離してくれた時の軽やかさが甦れば、あの夜に感じた嬉しさが再びティアンに燈るけれど。
 魂の芯で誰かが責める。
 赤橙の彩を忘れないまま、憶えているまま、銀の彩を燈す心変わりを昔の心が責める。
「……レスターは、そういうのある? どう折合つけてる?」
 彼女へ惜しみない拍手を贈った手を、縋るように握ってくる華奢な手を、男は左手で包み込むよう握り返す。仇敵を討ち果たした今、己は幾らか自分を赦せるようになったから。
「……思うんだが。変わってくとしても、昔の心を放り棄てた訳じゃないだろう」
 ――大切に抱いた記憶を愛しむお前を、どうして責める必要がある。
 心の赴くまま舵を取ればいいと改めて男が伸べる手を、おれがついていると証すその手を娘が取った。北極星よりも傍で輝く銀を瞳に映せば、聖堂に極光が満ちる。若草色の輝きが清冽な白の光を抱いて、優しい桃や紫に彩られる様は、何処かの街に花が咲き広がっていく様を思わせて。ごく自然に、互いの手をより深く結び合う。
 何処へでも、何処までも――君と、航路を。
 薄紫の藤花から、薄桃の梅花から。
 花々を透かして零れるがごとき光で紗幕の裾を彩って、極光の演舞が星空に翻る。
 満天に羽ばたくよう解き放たれた新緑の光に蒼穹の青が重なれば、宇宙と地球が織り成す美しきオーロラのなかを、きらり、きらりと煌き流れる星がふたつ。水晶硝子の天蓋越しに星空の奇跡を二人で仰ぎ、
「僕もエトヴァもあの星みたいに、ある日この地上に降ってきたんだよね」
「――エエ。なんという奇跡でショウ」
 微笑みとともにジェミ・ニア(星喰・e23256)の新緑の眼差しが、傍らで蒼穹の彩を宿すエトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)へと向いたなら、万感胸に迫る想いで微笑み返す。別々に翔けて落ちて心を得た星、ほんの僅かな釦の掛け違えでも互いに知らぬまま終わっただろう二つの星が、めぐり逢い寄り添い合って、ひとつの家族になる。
 奇跡から軌跡を紡いで歩み来た、それが二人の物語。
 ――僕の愛おしい青い星。
 ――俺の愛おしい導き星。
 星々を司る神様がいるならどうか、と真摯に祈るジェミの想いがエトヴァを満たすから、彼もまた心からの想いを祈る。大切な家族、愛するひとへ、沢山の祝福を、溢れんばかりの幸せを。互いが互いの片割れだから、
 嬉しい事は二倍に、悲しい事は半分に、心を重ね合うまま、二人で寄り添い合って。
 君を、あなたを、
「「心から愛し、生涯の伴侶となることを――」」
 満天の星々に誓う。
 聖夜の星空のもと、極光の輝きに満ちた聖堂で挙げる、結婚式。
 艶やかな燕尾服を纏うエトヴァがジェミの左手を取れば、その薬指に燈されるは白銀の、暖かで柔らかな白に身を包むジェミがエトヴァの左手を取れば、その薬指には白金の指輪が燈される。伴侶としての絆を交わせば、幸せの眩さに瞳を細めるように微笑み合って。
 二つの星が寄り添い、融け合うように、水晶硝子に映る影をひとつにする。
 唇を重ね合い、絆と幸せを、永遠に――。
 春の扉を開いた先にはカモミールが咲き溢れ、
 聖堂の扉を開いた先には水晶硝子を透かした極光の彩が咲き満ちる。
 大気圏よりも遥かな高みに舞うあのオーロラの向こうへ、星々の彼方への旅立ちが迫れば幸・鳳琴(精霊翼の龍拳士・e00039)の胸にはこの星で紡いできた軌跡が甦る。
 両親の敵討ちのため戦いに身を投じ、デウスエクスへの憎悪を胸に駆けた日々の涯てに、超神機アダム・カドモンに言の葉をぶつけた。心から望んだ。
 ――勝者が全てを得るなら、もうひとつ。ダモクレスと生きる未来を頂戴よ。
 あの小さかった琴が、ほんと大きくなったよねと、シル・ウィンディア(鳳翼の精霊姫・e00695)が繋ぎ合う手の指を深く絡めて笑みを燈す。身体ばかりでなく、
「心がすごく強くなって、眩しいくらいに輝くようになったね」
「それは勿論、シルと出逢って、一緒に未来を拓くことが出来たから」
 ――コギトエルゴスム化を失うことは、きっと、
 ――デウスエクスが新たな『輝き』を得るための、道程なんだ!!
 あのときシルが超神機に告げた言葉を、この宇宙すべてで真実にするために、互いを心の翼とする二人はこの星から羽ばたき、遥かなる星の彼方へと旅立っていく。二人一緒になら何処へでも、宇宙を越えてでも飛んでいけると、まっすぐに信じられるから。
 春の扉を開いた春に想いを伝えあい、
 青薔薇のフラワーシャワー降る春に、皆の前で永遠の約束を誓ったけれど。
「わたしは、貴女を一生涯愛します」
「私も――永遠にあなたを愛してる」
 宇宙と地球が織り成すオーロラのもとで改めて誓う。互いの鼓動を求め合うように左手と左手を重ねれば、二人の薬指に煌く永遠の約束が出逢う。眼差しを絡めた瞳を閉じたのは、
 唇と唇で感じ合う相手、誰よりも愛しい伴侶への想いを、互いの魂へ届けるため。
 雪の静謐が満ちる夜、光の演舞が天に満ちる。
 白銀の舞台へ招かれるよう、まっさらな雪に足跡を記してきた砂糖菓子の娘が振り仰げば満天に、オーロラの輝きが花開いた。めくるめくほどの彩を抱いて踊る光の紗幕は揺らめき翻り、翡翠に桃に、輝く白に鮮やかな青にと、幾重にも舞い降りては舞い上がる。
 歓びに溢れる、終わらぬカーテンコールのよう――。
 オペレッタ・アルマ(ワルツ・e01617)がそう感じるのは、きっと、己自身のココロにも歓びが溢れているから。
 マキナクロスからはきっと、北米大陸を横切る壮大な光の演舞が観測されているだろう。母星とともに旅立ったなら、途方もない旅路の何処かで『あのひと』に、『マスター』にとココロが翔けそうになるけれど、
「――いいえ、いいえ」
 自らの意志で己をその衝動から解き放つ。
 万能戦艦で母星の出航を見届けたら、平和になった地球を、世界を、旅する夢を叶えて。旅の終わりには、春先に出逢ったばかりの、けれども遥か昔から焦がれていたかのような、白と青の楽園へ。地中海の空と海を望むシディ・ブ・サイドへ逢いにいく。
 あの春の夜に、
 純白の鳥籠から解き放たれて羽ばたいた、鮮やかなチュニジアンブルーの楽園に。
 われわれは、すべてからときはなたれて、
 ――どこへだって、いけるから。

作者:藍鳶カナン 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年12月24日
難度:易しい
参加:27人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 11/キャラが大事にされていた 0
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