心の律動

作者:柊透胡

「…………」
 今宵も、九田葉・礼(心の律動・e87556)は、祈る。彼岸へ旅立つ魂の安息を――それは、看取りの妖精としての拠り所か、或いは……贖罪に喘ぐように。
 ダモクレスとの最終決戦が決まって後に力を得たという、礼がケルベロスとなったタイミングは遅い方だろう。だが、それより更に前――定命化して地球に生きるようなった以前の記憶が、彼女の中にはない。
(「私、は……」)
 振り返れば、ぽっかりと深淵が口を開いている。覗き込もうとすれば足が竦み、振り切って前に進もうにも……『何か』がそれを許さない。赦して、くれない。
「……何を、置いてきてしまったのでしょうか?」
 零れ落ちた自問に、答える者はいない――その筈だった。

 ――嗚呼、お前は、『そう』なって尚、生き腐れているのだな。

「!!」
 息を呑んで、振り返る。街並みを見下ろす高台の公園には、ポツポツと電灯が灯っている。夜目にこそ困らないが、夜遅い時間に訪れる者もいない。だからこそ、礼も心置きなく祈っていたというのに。
「慈悲深き勇猛など名ばかり。傀儡となり、走狗となり、石に還って……形ばかりにでも『愛』せば、この重力の底でも生きてゆけるのか。ケルベロスの資格も、相当に、甘いと見える」
「あなたは……!」
 夜闇よりゆうらりと現れた偉丈夫は、零落した風情だった。マントの裾は擦り切れ、甲冑の傷みも激しい。だが、何よりも、礼を見下ろす琥珀の眼差しが、酷く酷く虚ろで。
「あなた……誰?」
 エインヘリアルの口調で、礼の知己と窺えようにも、彼女の脳裏には何の像も結ばない。なのに、ともすれば嗚咽が込み上げてきそうになるのは、何故なのか。
「私は、あなたに、何をしたの……?」
「俺の名前すら、覚えていないのだろう? ならば、別にそれでいい」
 冷ややかに礼を見下ろして、エインヘリアルは剣を抜く。
「戦技は頭でなく、その身で覚えるものだ。ならば、首から上が空白であろうと、グラビティは使えよう」
 ――――!!
 瞬時、エインヘリアルの闘気が燃え上がり、剣の一薙ぎに乗って奔る。咄嗟に礼が躱せたのは、正に、実戦経験の賜物であろう。
「止めて下さい! 今更、私達が戦う理由なんて!」
「『空っぽ』のお前になくとも、俺にはある。さあ、殺されたくなければ……俺を殺せ、空白のヴァルキュリアよ」
 
「ヘリオンに演算によれば……名前は、フェデリーグ・カスティル。アスガルド・ウォー以降、地球の取り残されたエインヘリアルです」
 既に、アスガルド・ゲートは、ピラーとなって閉じられた。本星へ帰る術を喪ったエインヘリアルだが、彼に『地球を愛する』気はないという。
「狙われている九田葉さんと、連絡が取れません。大至急、彼女と合流して下さい」
 眉根を寄せた顰め面のまま、都築・創(青謐のヘリオライダー・en0054)は集まったケルベロス達を見回す。
「場所は、高台の公園です。既に日は暮れていますが、電灯がありますので夜目には困りませんし、広さや足場も、戦うのに支障はありません。一般人もいませんので、避難誘導も不要です」
 敵のエインヘリアルは、一見して、零落した騎士そのもの。バトルオーラとゾディアックソードを駆使して戦うようだ。基本に忠実、と言えば聞こえは良いが、どことなく投げやりな様子も窺える。
「それでも、思う所があるのか、皆さんが加勢されても、逃亡せずに戦い続けます。ヴァルキュリア、というより、九田葉さんと縁があるように見受けられましたが……」
 ともあれ、まずは彼女の救援を優先するべきだろう。
「どうぞご武運を。九田葉さんを宜しくお願いします」


参加者
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
紺崎・英賀(自称普通のケルベロス・e29007)
カロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629)
エトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)
リリエッタ・スノウ(未来へ踏み出す小さな一歩・e63102)
如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)
リリス・アスティ(機械人形の音楽家・e85781)
九田葉・礼(心の律動・e87556)

■リプレイ

●自棄
 エインヘリアルが剣を抜いて尚、九田葉・礼(心の律動・e87556)は構えられずにいた。
「戦う前にせめて貴方の心を、私の罪を教えて下さい! 知らなければ、懺悔も償いも出来ない」
 考えるより先に、口を突いて出た。
(「私の、罪……?」)
 目の前の、酷く空虚な表情のエインヘリアルの、彼の名前さえ判らないというのに。顧みてもまだ手が届かぬ己が心の深淵は、罪を犯した事を識っているというのか。
 もどかしくて、もどかしくて。本当に涙を零しそうな礼に、エインヘリアルの無情の視線が注がれる。
 ――――!
「覚えていないなら、別にそれでいい。そう、言った」
「……っく」
 重い斬撃が、躊躇いもなく礼に一閃する。身の内から朱なる命が溢れるのを自覚して、礼は必死に声を張る。
「待って……待って下さい!」
 ヴァルキュリアは看取りの妖精だ。定命化しても、それはきっと変わらない。少なくとも礼は、魂の救いの為に『死』と向き合ってきた。
 その信念だけは、喩え言外に己が罪を糾弾されようと、曲げられない。
「今、私を殺しても。貴方の心が晴れて、生きるつもりにはなれないのでしょう?」
「何だ、命乞いか?」
「違う!」
 歴戦の勇士だったのだろう。誉れ高き騎士であったのだろう。操る闘気が、剣捌きが、彼の戦いの歴史を如実に示す。その磨き上げられてきた筈の戦技を、只々、機械的に浪費する。何の熱もなく、惰性的に礼に振るわれる。
「……あなたの『剣』は、もっと『生きて』いた! 最期まで! 最期、まで……」
 ヒュッと、喉が鳴った。そうだ、彼の『剣』を、礼は知っている。彼の闘気の熱さを、もっともっと昔に身を以て――。
「お取り込み中ごめんなさい、ちょっと失礼しますよ」
 エインヘリアルの攻撃を、シャウトで凌ぐ事しか出来なかった、三撃目――ゾディアックブレイクを遮ったのは、ゲシュタルトグレイブ。
「ミリムさん!?」
「手助けしに参りましたよ……礼さん」
 逆手の如意棒が唸りを上げ、斉天截拳撃が放たれる。確かな手応えがあったが、エインヘリアルは追撃の前に間合いを取る。
「皆で来たよ、大丈夫?」
 寸での所で、礼を庇ったミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)に続き、紺崎・英賀(自称普通のケルベロス・e29007)はライトニングロッドを掲げてヒールを飛ばす。
(「気咬弾とゾディアックブレイク?」)
 先に聞いていた敵の情報と礼の様相から、使われたグラビティを予測する英賀。だから、キュアよりエンチャントを優先した。彼は、厄付けよりダメージ量を優先しただろうのか。それでも、戦闘種族たるエインヘリアルにしては、戦法に粗を感じる。投げやり、と言い換えて良いかもしれない。
「はじめまして、騎士の方。音楽家のリリスですわ。以後お見知りおきを」
 更に、リリス・アスティ(機械人形の音楽家・e85781)が礼儀正しくご挨拶。メディックからのマインドシールドに、礼もホッと息を吐く。
「ミリム殿ニ、先を越されてしまいましタ」
 ウイングキャットのエトセテラと駆け付けたエトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)が、口ずさむのはホシアカリノウタ。ふわふわとエトセテラが清らな翼を広げる中、満天に煌めく星々の加護を火の粉のごとき光と降らせ、守護と成す。
「むぅ、礼の知り合い……みたいだね。戦いが終わったのに殺し合いなんて悲しいこと、させないよ!」
「殺し合いというか……何だか、あちらさんが一方的に、自棄になってる感じでしょうか」
 牽制のバスターライフルを構えるリリエッタ・スノウ(未来へ踏み出す小さな一歩・e63102)の言葉に、肩を竦めたのはカロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629)だ。
 更に問答無用だったのが如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)で、狙い澄ましたスターゲイザーが脚甲に包まれた足を刈る。
「うわぁ、容赦ない」
「こんなご時勢に、一方的に戦おうとするのは、間違っています」
 思わず頬を掻くカロンに、沙耶は凛と言い放つ。『庇う』術のないスナイパー故に強引な介入となったが、どちらか一方でも聞く耳が無ければ、会話は成立しない。周りの口添えが逆効果であるかどうかも、現状ではそれ以前の問題なのだ。
「まあ、ね……例えば、いきなり『地球を愛さないと死ぬ』なんて言われても困るでしょうし。でも、自暴自棄になるのは、違うんじゃないかなって僕は思います」
「自暴自棄……投げやりになっているのかな? まるで昔のリリみたいだね」
 衒いなく呟き、リリエッタは小首を傾げる。
「だけど、それで悲しむことになるのは周りのみんななんだよ」
「周り、な……」
 1対8(+ウイングキャット)という圧倒的な数的優位でありながら、一斉に打って出ようとしないケルベロス達の態度が、エインヘリアルには意外であったようだ。
「そんなもの、俺には、もういない。帰る処も、ない。ならば、自分の幕引きを自分で決めようとして、何が悪い?」
「この期に及んで、君が礼さんの所に来たのは、何か伝えたいことがあったからとか……彼女を頼りたいとか、思う所があったからじゃないですか?」
 言葉にしなければ人には伝わらないし、口を噤んで諦めてしまった後の挫折感は、カロンも嫌という程体験してきたから。
「諦めるのはまだ早いって、思います」

●心の律動
「馬鹿な……」
 明らかに、エインヘリアルは呆れた表情を浮かべていた。
(「まあ、気持ちは、判るかも」)
 内心はどうあれ、復讐を冷徹に成し遂げた英賀にとって、デウスエクスは、敵だった。本来、敵の言動は信じるに値しない。だが、デウスエクスに対して、真摯に向き合おうとするケルベロスも少なからず。その傾向は、ダモクレスとの決戦後、より強くなったとも言えようか。
「礼さん?」
 背後で身を竦ませた彼女を、武器は構えたまま気遣うミリム。
(「正直、ケルベロスが8人も揃えば、エインヘリアルだろうと、斃す事はそう難しくありませんが……」)
 恩義を感じる礼の援けとなるべく駆け付けたのだ。叶う限り、彼女の意に添うように――それは、この場のケルベロス全員共通の想いだろう。
「……」
 無言で、顔を上げる。重ねられたヒールのお陰で、最初に負った傷も殆ど跡形なかったが、礼の表情は沈痛を帯びている。
「……」
 ゆっくりと、前に出た彼女を、止める心算は毛頭なかったが、エトヴァもいつでも盾となれるよう集中する。
(「出逢って日こそ浅くとモ、俺は良き友人を得られタ。ダカラ、礼殿モ、この邂逅に悔いのないヨウニ」)
「……」
 乾いた唇を湿らせて、1度は吐息だけが漏れた。喘ぐように息を吸い直して。
「……フェデリーグ・カスティル?」
「……」
 金の前髪の間から覗く、エインヘリアルの双眸が細められた。

 ――それは、いつとも知れぬ昔話。
 無念極まりない絶望の中、その生を終えた騎士は、戦乙女の『選定』により、神の尖兵に生まれ変わる。
 騎士は、『選ばれた』事を誇りに思い、戦い続けるも――。
 選定の戦乙女は、次第に心を喪い、自らが選んだ戦士さえも手駒として扱い、時に冷酷に切り捨てた。
 憂いに満ちた剣が、その身を石と変えるその時まで。

「貴方は、こんな私を、救いだと言ってくれたのに……」
 エインヘリアル――フェデリーグ・カスティルの攻撃を受けた時、確かに礼の心は跳ねた。刹那の律動が、十全ならずとも、記憶の肝心な所を呼び醒ました。
「他にも、仲間がいたでしょう? 彼らは――」
「もういない」
 彼の言葉は簡潔だ。
「俺だけが、残ってしまった。アスガルド・ウォーで敗北して、こんな処を『愛する』など今更だろう。お前が俺を覚えていようといまいと、『デウスエクス』が『ケルベロス』に喰われるのはよくある事。只、それだけの事だ」
「……っ」
 フェデリーグがゾディアックソードを構え直したのは、話はこれで終わりという意味だろう。だが、礼は懸命に頭を振る。
「アスガルド・ウォーからいるなら、貴方も知っている筈。地球も宇宙もかなり変わって、争わずに生きられるようになりました。今は地球を愛せなくても、平穏に生きて……」
 ――違う。本当は、彼を思いやっているばかりではなくて。
「『私に』罪を償わせて」
 嗚呼、贖えれば楽になれると。あの時も止めてくれた彼に、再び甘えようとしてしまっている。
「リリエッタさんも言っていたけど。そういうのって『自暴自棄』っていうんだよ。自覚ある?」
 或いは、礼だけであれば、自己嫌悪と罪悪感のごった煮で身動きが取れなくなっていただろう。いっそ大胆な程に、英賀は今の状況を断言してのける。
「もしかしないでも、昔も今もおんなじなのかな? 当時の礼さんも、本当は喪いたくなかったんじゃないの?」
「……」
 虚を突かれたような面持ちのフェデリーグに、青年は礼をずずいと押しやる。
「ほら、今の礼さんを見てよ。今の彼女は殺すべき者なのか……取返しの付かない選択をする前に、考えて」
「礼さんを討った事を悔やんでいるのなら、同じ事をすればまた絶望の繰り返しです」
 己を顧みた時、沙耶は礼の境遇が他人事とは思えなくなる。
「私も、多くの人を死地に送り出す『神託』を下す占い師でした……貴方の辛さはよく分かります。私もかつて、多くの人に酷い事をした自覚はありますし」
 だからこそ、沙耶は断言する。諦めてはいけないと。
「私は、家族や多くの戦友の支えで多くの命を戦いの中で救う事が出来ました。私のような罪人でも、新しい道を歩める。だから、礼さんも、貴方も、きっと新しい道が拓ける筈なんです」
「僕はまあ、フェデリーグ氏が自棄になるのをやめた後なら、定命化、延命、戦死、どれを選んでも尊重したいと思っていますけどね」
 小さく肩を竦めて、カロンはあっさりとぶっちゃける。
「それでも、僕は礼さんの仲間ですから。礼さんがあなたに望んでいる事を望みたいです。手伝える事があれば力を尽くしましょう。兎の手でよかったら貸しますよ」
「リリも。この前、礼にダモクレスを説得するのを手伝ってもらったんだよ。今度はリリがお手伝いする番だから」
 難しい事を考えると、頭がぐるぐるする。それでも、知り合いにトドメを刺すなんて、すごく悲しい事だって判っているから。
(「説得、できるといいんだけど……」)
 リリエッタの碧眼が見上げた先。フェデリーグの表情は相変わらず乏しくて、何を考えているのかはまだ知れない。
「争いは終わり、今は己と向き合う時。貴方の本当の望みは何でしたカ?」
 平穏も贖罪も、己が決めた選択肢を自身で決断するべきだ。
「礼殿に仇なした事、もし本意ではなかったなラ……今この時がやり直す機会……」
 フェデリーグの様子を窺うエトヴァ。彼の様子に棘は無く、そのまま思いの丈を言葉にして紡ぐ。
「彼女が『生きて』と望むとして……貴方は何を望みますカ?」
 両者が過去を受け止め、再び歩み出せるなら……再び手を取り合えるなら、それが1番良いと、エトヴァも思っている。
「もしも平穏な生を望むナラ、定命化ヤ、或いは他の手段も探しましょう」
「あの、その事なんですが……」
 これまで、ずっとだんまりだったリリスが、静かに挙手する。
「地球からプラブータへのゲートが存在するのは、御存知ですか?」

●結論
「復興の必要性等、課題はありますが……プラブータへ移動すれば、定命化から逃れる事は可能ではないでしょうか」
 現在、マキナクロスでゲートをピラー化させた星に向かう計画は、急ピッチで進められている。順調ならば、年末には実現の運びとなりそうだ。
「後々、アスガルドに帰る方法が見つかるかもしれませんし……それまでの時間稼ぎの手段として考えてみてはどうでしょうか」
 要は、落ち着いて考えることが大切だと、リリスは思う。己の本当の願いは、存外、自分でも判っていない事が無きにしも非ずなのだから。
「まあ、そうですね……私が助けたいのはあなたの命だけではありません」
 あの顔は確実に、お人好しとか物好きとか思われているだろう――別に、それでいい。
「私はあなたの願いの助けにもなります、よ! っと」
 ミリムのにゃいぼう、もとい、如意棒がフェデリーグの剣先を弾く。
「デウスエクスの侵略がない今、もう争う必要はありませんので」
 カラカラと乾いた音を立てて、ゾディアックソードが地を滑る。
「……」
 それを無言で目で追ったフェデリーグは――疲れ果てたと言わんばかりに、重々しい溜息を吐く。
「私の事は信用出来なくとも、デウスエクスとの共存を望む有能で優しい人は沢山います」
 礼の願いは唯1つ――生きて。ならば、フェデリーグの望みは。
「私に出来る事は、何でもしますから!」
「地球で定命化は、しない」
 冷徹なまでの断言に、礼は我知らず拳を握る。
 駄目だったのか、とエトヴァの表情が強張り、エトセテラの尾が膨らむ。
 カロンはいつでも詠唱出来るように呼吸を整え、沙耶も魔法のステッキを握り締める。
「……プラブーダ、オウガの母星だったか」
 剣呑な空気は察しているだろうに、フェデリーグはまるで世間話の呈で、夜空を仰ぐ。
「まだ行けるなら、俺は其処へ行こうと思う」
「宜しいのですか?」
 提案したリリス本人が、ビックリ眼を瞬かせる。
 オウガ本星のゲートは、確かに現状ピラー化していない。
 単にプラブーダにはデウスエクスが存在していない為、ピラー化による『グラビティチェインの供給』が不要だからだ。ちなみに、現在は諸々の実験や研究に利用されているという。
「……ああ、そうか。移住してもグラビティ・チェインが枯渇して、今の所はコギトエルゴスム化するだけなのか」
 納得顔の英賀。対して、リリエッタは眉根を寄せる。
「石になってしまうの、問題?」
「それで良いんだ」
 或いは、プラブーダのゲートがピラー化した時、何れ石から目覚められる。フェデリーグにとって、地球には余りに奪われたものが多い。安住の地とはなり得ないのだろう。
「不満なら、今ここで終わりにしてもいい。レイの好きにすれば良い」
「!?」
 礼の鼓膜を震わせたその響きは、ケルベロスの仲間達の呼び声と似て非なる――ずるいと、思わず唇を噛む。
「……わかりました。貴方がそれで良いのなら」
 本来ならば、殺伐で終わっていただろう残暑の空気が、ほんのりと優しい彩を帯びた。

作者:柊透胡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年8月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 5/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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