荒ぶるペンギンロボ

作者:紫村雪乃


「あっ!」
 コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)がはね跳んだ。
 直後、彼がいた空間を何かが唸りをあげて疾りすぎた。何かの正体を見とめたコクマの眼が驚きに見開かれる。
 それはペンギンであった。全長は三メートルほどか。鋼の機体をもつロボットであった。
 そのペンギンロボットはコクマが造り上げたものだ。それが何故コクマを襲うのか。
 コクマが知らないことであったが、実は、ペンギンロボットは改造されていた。ダモクレスがとりつき、虐殺マシーンへと変貌していたのである。
 が、改造されていない部分もあった。コクマの趣味であるプログラムが組み込まれていたのである。
 セックスプログラム。そうコクマは呼んでいた。
「なんということだ」
 コクマが呻いた。
 その時だ。ペンギンロボットの全ミサイルポッドが開き、大量のミサイルが射出された。


「コクマ・シヴァルスさんが、デウスエクスの襲撃を受けることが予知されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)がいった。
「急いで連絡を取ろうとしたのですが、連絡をつけることは出来ませんでした。一刻の猶予もありません。彼が無事なうちに救援に向かってください」
「敵はどんな相手なの?」
 豪奢な肉体を半ばまでさらした凄艶な女が問うた。和泉・香蓮(サキュバスの鹵獲術士・en0013)である。
「コクマさんが造り上げたペンギンロボット。ダモクレスと化していますが。レプリカントのグラビティを使用します。威力は絶大。注意が必要です」
「けれど誰かが助けにいかなくては」
 香蓮はケルベロスたちを見回した。
「コクマさんを救い、ダモクレスを撃破してちょうだい」


参加者
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)
風峰・恵(地球人の刀剣士・e00989)
リィン・シェンファ(蒼き焔纏いし防人・e03506)
コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
ユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397)
フレック・ヴィクター(武器を鳴らす者・e24378)
プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)

■リプレイ


 小型ミサイルの雨が降り注いだ。灼熱の嵐に翻弄され、コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)が吹き飛ぶ。
「くっ」
 焼け爛れた半身をコクマは起こした。が、さしものコクマもすぐには動けない。
「何故だ、ペン次郎君!?」
 コクマは呻いた。
 ペン次郎はロボットであるが、コクマの家族である。それが襲いかかってくるとはーー。
「待て!」
 声が響いた。
 足をとめたペンギンロボットが振り返る。
 声の主は女であった。冷然たる美貌の持ち主で、炯と目を光らせている。
 リィン・シェンファ(蒼き焔纏いし防人・e03506)はため息を零した。
「全く……因果応報、もしくは自業自得と言うべきだな、コクマは」
 告げると、リィンはデバイスを起動。真珠色に輝き、メタリックブルーの翼をもつドローンが空について浮かび上がった。
 次いで、リィンは矢をコクマに射かけた。祝福された矢は傷つけるどころか、コクマの肉体を再生させる。
「面目ない」
 コクマは唸った。リィンはもう一つため息を零すと、ペンギンロボットに鋭い視線をむけた。
「いいたいことはあるが、ともかくこれ以上火の粉が飛ぶ事は避けねばな」
「もう少しおとなしくしていてもらいますよ」
 告げると同時に風峰・恵(地球人の刀剣士・e00989)は動いた。玲瓏たる美貌からは想像もできぬ迅雷の刺突をペンギンロボットに叩き込む。
「今のうちに、早く!」
 背をむけたまま恵は叫んだ。うなずいたのは真摯な眼差しをもつ娘である。
 ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)。ウェアライダーであった。
「コクマさんが造りあげた機械に襲われるって一見自業自得の様に思えますが、デウスエクスが相手ですから仕方ありません。助けにきましたよ」
「うう、すまぬのだ」
 コクマはうなだれた。するとミリムは笑った。
 その笑みに不気味なものを覚え、コクマは慄然とした。思わず逃げようとしたが、遅い。凄まじい速さでミリムはコクマを女装させてしまった。
「さあ、お行き!」
 無慈悲にミリムはコクマを突き飛ばした。


「あ、わわ」
 つんのめり、コクマは倒れた。ペンギンロボットの前で。
「いやちょっとまて!
 コクマが制止の声を発した。が、ペンギンロボットが止まるはずもない。ペンギンロボットがコクマをおさえつけた。
「ペン次郎君、落ち着けぇっ!?」
 コクマが叫んだ。が、かまわずペンギンロボットはコクマの衣服を引き裂いた。現れたのは鍛えられたコクマの褐色の裸身である。
 とーー。
 ペンギンロボットの嘴状の口が開き、触手のようなものがのびた。特殊ラバーで造られた舌である。
 舌がコクマの乳首を舐めあげた。
「ひっ」
 コクマが声をもらした。乳首から全身に電流のような快感が走り抜けたからだ。
「……まあペン次郎君に襲われているのが女性ではなくシヴァルスだったのはある意味僥倖なのかもな…。それにしてもセックスプログラムなんてものを組み込まれているのにまずシヴァルスを襲ったというのは業と闇とどちらが深かったのやら…?」
 鮮やかな青髪を夏風に揺らせ、日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)が肩をすくめてみせた。
「業と闇、か」
 プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)の蕾のような唇からつぶやきがもれた。
「コクマは何でそんなえっちなプログラム作っちゃったのかな?」
「それは……」
 凛然とした娘が首を傾げた。フレック・ヴィクター(武器を鳴らす者・e24378)という名のヴァルキュリアであるが、この時は大きな乳房を強調した衣服をまとっている。囮になるためであった。
「欲求不満をペンギンロボ相手に解消してたとか……コク×ペン? ペン×コク?」
「あはは」
 フレックは曖昧に笑った。
 人間は時として器具や人形を性の対象とする。ならばロボットを性の対象とする者もいるかもしれなかった。
「使うのは、やっぱり触手?」
「かもね」
 プランがいった。少なくとも嘴からは触手に似た舌をのばしている。
「ペンギンロボ相手にしちゃうくらい欲求不満みたいだし、あとで遊んであげようかな」
 クスリとプランが笑みをもらした。


「あ、ああ」
 コクマの口から声がもれた。紛うことなく感じている声である。ペンギンロボットに乳首を愛撫され、コクマは快感を覚えているのだった。
 するとペンギンロボットの股間部分が開いた。現れたのは太い金属棒である。
 この金属棒は、しかし特殊ラバーで覆われていた。一見すると男性器そのものである。
 ペンギンロボットは疑似男性器をコクマの尻に当てた。さすがに慌てたコクマが抵抗する。が、容赦なくペンギンロボットはコクマの尻に疑似男性器を挿入した。
「ぎゃあ!」
 コクマが悲鳴をあげた。
「い、痛いのだ。や、やめるのだ、ペン次郎君。そんなことをしてはーー」
 激痛にゆがむコクマの顔に戸惑いの色がにじんだ。激痛が別のものに代わったからだ。それは快感であった。
「あ、あん」
 コクマの口から女のもののような喘ぎがもらた。その間、ペンギンロボットはピストン運動を繰り返している。
 その様子を、冷徹に見つめているのはユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397)であった。
「コクマ様の趣味が『如何様』か解せたが、兎も角、相手が機械仕掛けに変わりはない。油断せずに抱擁(だ)くのが正しい。しかし我が身は夫と仔の胎(もの)だ。易々とペンギンには渡せないな。HAHAHA!」
 ユグゴトは高笑いした。が、その目は笑ってはいない。深淵を映していた。
「荒ぶる相手には仕置きが必要だ。胎に還すにはひどく激しい。仕方がないだろう」
 ユグゴトの手が動いた。繊細な指先が描いたのは星座である。
 輝く星座から光が迸り出た。撃たれたペンギンロボットの背が氷に覆われる。さらにミミックのエイクリィが刃のような牙を生やした顎門で喰らいつく。
「ペン次郎君はどうやって相手の性別を判定しているのかと思っていたが、どうやら組み込まれたプログラムに従って女性を襲うというだけのもののようだな」
 気の毒そうにコクマに合掌してから、蒼眞は襲った。抜き払った斬霊刀の一閃はあまりにも鮮やかで。避けもかわしもならぬ一撃をペンギンロボットに叩き込んでいる。
「見た目は可愛いペンギンですが…人々を襲うデウスエクスですから侮ってはいけませんね」
 コクマの犠牲の張本人であることを忘れたかのようにいうと、ミリムもまた攻撃を仕掛けた。
 唸りをあげて彼女が振り下ろしたのは巨大な戦斧である。彫られたルーン文字が輝き、聖気を放散。神ですら傷つける破壊力をペンギンロボットにぶちまけた。
 わずかに遅れて蹴撃を放ったのはプランである。摩擦により赤熱化した脚を跳ね上げる。
 慌てて恵が目をそらせた。プランが下着をつけていなかったからだ。恥毛に縁取られた秘肉がはっきりと見えた。
「……まずいね」
 蹴りを放ったプランがごちた。ペンギンロボットの陵辱がとまらないからだ。このままではコクマは戦闘不能状態となってしまうだろう。
「それじゃ困るのよね」
 フレックが空の霊力をまとわせた魔剣空亡を舞わせた。ペンギンロボットの超鋼の装甲がはじける。
 が、ペンギンロボットに動じる風はなかった。ピストン運動をさらに強める。
「あ、あん。ペン次郎君、だ、だめえ。そんなにされたらいってしまうのだ!」
 コクマがペンギンロボットにしがみついた。口とは裏腹に、足をペンギンロボットにからめ、もっと深く疑似男性器を尻の奥に迎え入れる。
「ロボットに犯されて、いっちゃう! いいの、ペン次郎君の硬くてたくましくて。いく、いくぅー!」
 自身の肉棒から白濁液を迸らせてコクマはのぼりつめた。


 コクマを放り捨てると、次にペンギンロボットはフレックを襲った。
 いや、その前にリィンが動いた。ギターの絃をピィンと爪弾き、歌う。
 渺々と流れる歌声はケルベロスたちの魂そのものを揺り動かした。ケルベロスたちのさらなる覚醒を促す。
 直後、ペンギンロボットがフレックの衣服を引き裂いた。
 現れたのは豊満な肉体であった。乳房ははちきれんばかりにたわわに実っており、柔らかそうな肉のつまった尻はむっちりとしている。
「あ、あん」
 フレックは喘いだ。ペンギンロボットの疑似舌が彼女の秘肉を舐めたからである。
 嫌がるどころかフレックは積極的に応じた。身体の向きを変えると、ペンギンロボットの疑似男性器に舌をのばしたのである。
「あん。いい。あたしもがんばるから」
 快感と羞恥に頬を赤く染め、フレックは疑似亀頭を舐めまわした。
「ああん。感じるの? だったら凄いのね、コクマの技術って」
 フレックは淫らに微笑んだ。それならもっと感じさせたい、感じたいと思ったのだ。
 フレックは指でくぱぁと秘肉を開いた。
「いいよ、好きなだけ犯して」
 フレックが誘った。応じるようにペンギンロボットが疑似男性器をフレックの女陰に挿入する。
「ああん! すごい!」
 フレックが身悶えた。鉄棒とは思えぬ充実した感触がある。
 ペンギンロボットがピストン運動を始めた。膣を擦られる快感に、たまらずフレックがしがみつく。
「ふふ…ン…久しぶりだからかな…機械に感じさせられるってのも…新鮮…ねっ…!」
 フレックは膣でペンギンロボットを締めつけた。存分に搾り取るつもりである。ヴァルキュリアでありながら機械に犯されるという倒錯的な喜びに耽溺していた。
 今度はペンギンロボットがたまらなくなったように動きを速めた。
「ああん、いい。もっと、犯して。めちゃくちゃにしてぇ!」
 フレックもまた腰を動かした。

「ペン次郎君の女性への襲い掛かり方はシヴァルスそっくりだな。……もうコクマ2号で良いんじゃないか…?」
 苦笑すると蒼眞が斬撃をくれた。エイクリィもまたエクトプラズムで作った刃で斬りつける。
 効いているはずであった。が、ペンギンロボットは夢中でフレックを陵辱している。
「少しは冷めるべきだと思わないか。貴様は『ペンギン型』なのだろう。氷菓子でも齧りながら突くが好い。頭痛がしてきた」
 頭を手でおさえて顔をしかめると、ユグゴトは拳を叩き込んだ。唯我独尊の超意識をのせた拳を。またもやペンギンロボットの背が凍りつく。が、やはりペンギンロボットはとまらない。
 赤面して、恵はフレックから目をそらせた。剣をもつ者は常に冷静であれとは師の教えであるが、そういう意味ではまだ未熟であるのかと思う。
 気死したように倒れているコクマに合掌、冥福を祈ってから恵は襲った。
「凍れる刃の一撃、受けて頂きます」
 たばしる煌翼の一閃。氷の霊力を迸らせた恵の斬撃がペンギンロボットに癒えぬ傷を刻む。
「敵の攻撃が始まらないうちに」
 ミリムが大剣ーーブルーフレイムラズワルブレイドを疾らせた。狙いすませた鋭い一撃がペンギンロボットの羽根を砕く。
 プランが放ったのは呪符であった。
 空で結界解除。召喚した氷身の槍騎兵がペンギンロボットを穿つ。
 ここまでが限界であった。スキャンにより損傷率七十パーセントを計測したペンギンロボットは戦闘モードに移行。フレックを投げ捨てると、ケルベロスたちに向き直った。


「一気に決めないと」
 自らに言い聞かせるようにミリムがいった。そして紋章を描く。空に固定された輝く紋章が意味するものは女王騎士の風槍であった。
「風槍よ! 穿て!」
 紋章から現出した槍をひっ掴み、ミリムは次々と投擲した。疾風と化した刃がペンギンロボットを貫く。
「格闘っぽい技を覚えてみたよ」
 とはプランの台詞である。悪戯っぽく笑うと、プランは跳んだ。
「えっちなロボットだしこう言うの好きかな?」
 空気のみを足場とし、さらに跳躍。前方から肩車の形になるように飛びついた。
 そのあまりの素早さに、鈍重なペンギンロボットは避けることもできない。太腿で挟み、濡れた秘肉を押しつけて、プランは体重をかけた。
 ガギン!
 ペンギンロボットの後頭部が地を打った。男にとっては夢のような一撃に、一時的にペンギンロボットがフリーズする。
「名づけてサキュバス式フランケンシュタイナー亜種。どう? 気持ちよかったでしょ?」
 こたえる代わりにペンギンロボットの全ミサイルポッドが開いた。吐き出された無数のミサイルがケルベロスたちを襲い、灼熱の嵐で翻弄する。
「やっと本気になったというわけか」
 焼け爛れた身で蒼眞が叫んだ。
 刹那、炎の塊が弾丸のように飛んだ。蒼眞がーーいや、彼が召喚した超越存在が放ったのである。
 炎弾に撃ち抜かれ、ペンギンロボットがよろけた。その隙を恵は見逃さない。
 するすると迫ると、恵は目にもとまらぬ斬撃を放った。その剣流の美しさにダモクレスですら見惚れた。もしかしたら、ざっくりと機体が切り裂かれていることにも気づいていないのではあるまいか。
「……しかしピンク色な機械仕掛けだ」
 ユグゴトが嘲笑った。ペンギンロボットを。いや、世界そのものを。
「こういう機会でなければ遊ぶのも考えたものを。HAHAHA! 冗談だ、冗談」
 本当に冗談なのか、本人にもわかっていないのではないか。そう思わせる哄笑をあげて、ユグゴトはペンギンロボットの物語を否定した。
 物語とは、存在の軌跡。それを否定された時、存在は朧となる。混乱したペンギンロボットは自壊した。がーー。
 まだペンギンロボットは滅びない。そうと見て取ったエイクリィが再び喰らいつく。
 さすがにペンギンロボットの動きがとまった。重大なダメージを受けたと電子脳がはじき出している。
 そのペンギンロボットを憐れむようにリィンが見つめた。
「撒いた種は、コクマに責任持って刈り取らせようた思ったが」
 リィンの視界の隅、死人のように横たわっているコクマの姿があった。あの様子ではしばらく動けないだろう。
「哀れなるかな、汝の名はコクマ。以て瞑すべし」
 リィンの手足がかすんで見えなくなった。視認不可能な速度で無数の拳撃と蹴撃を放っているのである。
 散る氷光。それが渦を巻いた時、錬成された氷の刃が中心を貫いた。
「神威氷刃乱舞」
 告げると、氷の大太刀を引き抜いてリィンは跳び退った。ペンギンロボットが爆散したのは、その一瞬後のことである。


 戦いは終わった。恵とミリムは辺りの修復に忙しそうである。
「フレックの治療が完了する迄は此方を見るなっ!」
 蒼眞を睨み据えてから、リィンはフレックにガウンをかぶせた。するとミリムがふりむいた。
「ろくでもない機械を作った彼には、あとで説教とお仕置きが必要かもしませんね」
 物騒なことをミリムが平然という。するとプランが憐れむようにコクマを見下ろした。
「もうお仕置きされたようなものかも。私と遊びたかったみたいだれど、これじゃ無理っぽいし」
 かくしてコクマのひと夏の恋は終わった。

作者:紫村雪乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年6月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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