●お花さんが来る!
いよいよ夏の始まりを思わせる暑さがやってきた。
激しい日差しがアスファルトを焼き、その上を歩けば否応なく汗が滲む――という状況がすこぶる嫌だったので、片白・芙蓉(兎晴らし・e02798)は北の大地にバッチシ逃走をキメていた。
「風が気持ちいいのだわー!」
うふふふ、と帝釈天・梓紗(テレビウム)と一緒に草原を駆ける芙蓉。
はるばる北海道まで飛び、猛暑から解放された女は絶賛ハイテンションだった。いやいつだってやかましいのが芙蓉なのだが、それに輪をかけて元気になっている。
もっともテンションが高いだけで正直、時間を持て余してはいるのだが。
「誰か誘ってくるべきだったわね! 走るのも飽きてきたわ!」
ふぅ、とその辺に座りこむ芙蓉。ちょこんと隣に座った梓紗とともに見上げる空はとても広くてとても青い。お弁当とか食べたら最高かも――。
「って考えたらお腹がすいてきたわ! こうなったらお昼ごはんを食べるしかないわね! 北海道だものきっと何食べても美味しいに決まってるわ行くわよー!!」
「!!?」
うおおお、と秒でエンジン全開になった芙蓉が猛ダッシュで梓紗を置いてきぼり。慌てて追いかけてくる梓紗を突き放す勢いで芙蓉はそのまま何百mかは疾走した。
……そうしたら、である。
「? あれは何かしら!?」
前方にある何かの気配に感づいた芙蓉が、目を凝らす。
広やかな草原にぽつんと、巨大な花が咲いていた。というか歩いていた。
「――♪」
まるで楽しく歌っているかのように上下にぽいんぽいんしてるその花は、なんとゆーかファンシーっぷりが半端なかった。まず顔がついてる。花弁に囲まれた中央にほんわか笑顔が覗いている。
しかも花弁も葉や茎もパステルカラー。何やらぽわぽわした小花も散ってるし、挙句の果てには幼児向けグッズみたいな見た目のうさぎさんや妖精さんやらが周囲をぐるぐるしているのだ。
そしてさらに!
「――♪」
緩みきった表情のお花さんから、大量の花粉が放たれる!
歩くたびにぼふんぼふんと舞う粉煙。ほんのりピンク色したそれを吸いこんではタダで済まないだろうことは誰が見ても理解できた。
「何かしらアレ……なんて賢い芙蓉さんは考えないわ! どう見てもデウスエクス! あの花粉を吸いこんだら大変なことになるに違いないわ……!」
「――♪」
じりじり近づいてくる、笑顔のお花さん。
よくわからんけど何か大変なことになりそうな戦いが、始まろうとしていた!
●行ってもらおうじゃありませんか
「芙蓉ちゃんが攻性植物の残党に襲われちゃうみたいです!!」
ヘリポートに到着した猟犬たちにぱたぱたと駆け寄ってきたのは、慌てた様子の笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)だ。
襲撃の予知。
にも拘わらず当の芙蓉と連絡がつかないことを告げると、ねむは「一刻も早く救援に向かってください!」と一同に依頼した。
「芙蓉ちゃんを襲う攻性植物はとても可愛らしい見た目をしていますが、その実おそろしい能力を持っています……なんと花粉を吸った人の精神をふわふわの女児にしちゃうんです!」
どどーん、とねむの顔に集中線が被る。
いやどういうことなの? ふわふわの女児にするって何?
「『がんばぇー』とか『ふあふあー』とか言っちゃう幼稚園生ぐらいになっちゃう感じですね! そのぐらい幼くして無防備になったところをパクッと食べるやり口です!」
なるほど聞けば随分と悪辣な手口である。精神が女児になってしまえば確かに逃げることも抵抗することも難しいだろう。
だがそれは一般人の話だ。
「精神が女の子になっちゃっても、みんなの持ってる力は変わりませんからね。だいたい何とかなると思います!!」
大事なところでやたら適当になるねむちゃん。
しかしまあ、そうなのだろう。そのぐらいの敵なのだろう。弱そうな顔してる。
「それじゃあ急いで出発ですよ! 早くしないと芙蓉ちゃんもふあふあ女児になっちゃうかもしれません! そうなったらただでさえ忙しない芙蓉ちゃんがどうなっちゃうかわかりません……事は一刻を争います!!」
謎の危機感を煽りつつ、ねむがてけてけとヘリオンへ走ってゆく。
かくして、猟犬たちは北海道の高原で女児化することになるのだった。
参加者 | |
---|---|
エイン・メア(ライトメア・e01402) |
片白・芙蓉(兎晴らし・e02798) |
ルリナ・ルーファ(あったかいきもち・e04208) |
円谷・円(デッドリバイバル・e07301) |
鷹野・慶(蝙蝠・e08354) |
スズナ・スエヒロ(涼銀狐嘯・e09079) |
八上・真介(夜光・e09128) |
羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339) |
●かいえん!
波打つ草原で対峙する両者の間に、一陣の風が抜ける。
「くっ、ナイス休日を過ごすつもりがなんてこと……!」
『――♪』
片白・芙蓉(兎晴らし・e02798)の額に一筋の汗が伝う。依然として上下に弾んでる『ワンダー系ぷらんつジョジジジジィーヒ』(以下ぷらんつ)には迫力とか皆無なのだが、芙蓉さんは大変に緊迫してました。
「きっとみんなが救援に来てくれるはず……だけど私にもケルベロスとしての誇りがあるの! みんなが来る前にできる限り弱らせてみせるわ!」
決然と瞳を輝かせ、得物を構える芙蓉。
敵の見た目とそぐわぬシリアスな戦闘の匂いが――と思われた時である。
「芙蓉さん! 大丈夫ー!?」
「ふーちゃん、助けに参りましたよーぉ!」
遠くからてってこ走って現れたのは、ルリナ・ルーファ(あったかいきもち・e04208)とエイン・メア(ライトメア・e01402)の二人。
手を振る二人を見るなり、芙蓉は顔をパッと明るませた。
で、顔が緩んだ弾みで思いっきり花粉を吸いこんだ。
「みんなきてくれ――がんばえぇーーー!!」
「ああっ、芙蓉さんが舌足らずな女の子にー!」
「ふーちゃぁーーん!」
「がんばえぇーー! けうべおす、がんばえぇええーーーっ!!!!」
文字通りの一瞬で芙蓉がふわふわ女児へと変貌する。懸命に叫んでぴょんぴょんしてる彼女にルリナもエインも慌てて駆け寄ろうとした。
その結果。
「わーいポカポカで風さんそよそよー!」
「んみゅんみゅーぅわーぁみんないましゅーぅ、ぴくにっくあーぁい!」
「がんばえぇぇーーーーーーっ!!!!!」
ぽあぽあの女児が三人になった。念のため言っとくとバンザイ姿勢でくるくるしてるのがルリナで、しゃがみこんで草をぺしぺししてるのがエインで、うるさいのが芙蓉。
その惨状に、円谷・円(デッドリバイバル・e07301)は押さえた頭をふりふり。
「これは……芙蓉ちゃん、なんかまた変な敵を――ケフッ! 何この花粉!?」
不意に吸いこんだそれで咳きこんだ円が、ふらりと片膝をつく。
そして。
「あーっ! でっかいおはなさんだー!!」
『――♪』
また一人の女児が誕生する。無警戒でぷらんつに触りに行くさまは完全に園児。
恐るべきは『ワンダー系ぷらんつジョジジジジィーヒ』である。瞬く間に半数のケルベロスを術中にハメたという事実に羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)の動かぬ表情も僅かに揺るぐ。
「こうして警戒心を解き、何だかんだでパックンするというわけですね」
「んー!」
「わー、けうべおす、おはなしゃんとたたかうの?」
緊迫顔してる紺の両隣で、鷹野・慶(蝙蝠・e08354)と八上・真介(夜光・e09128)がリアクションらしきものを返してくる。
すでに吸ってる。慶は小ぶりな竹を口に咥えて準備万端だし、真介ももふもふなうさぐるみをギュッと抱きしめて気合が入っている。
不安しかなかった。
「恐ろしい相手です……気を付けないと」
「…………」
男たちのご覧の有様に口を引き結ぶ紺を、慶の頭上を飛んでたユキ(ウイングキャット)が無言で見つめる。
紺が両手に持ってる、シャボン液のボトルとストローを見つめる。
万全なのは紺さんも一緒だった。
そんな光景を後方から眺めるスズナ・スエヒロ(涼銀狐嘯・e09079)は、申し訳なさそうに目を伏せている。
「見るまでは半信半疑でした、ねむさんごめんなさい」
円と戯れてるぷらんつを見て、心中ぺこりと頭を下げるスズナ。
が、次第にその肩は揺れ始めて――。
「ふっふっふ……これまでずーーーっと妹分でしたが、この瞬間だけ精神年齢最年長のお姉さんです!」
幼稚園と化している草原を見渡したスズナがほくそ笑む。
そう、このために。
一瞬の優越感を得るこの時のために、スズナは仲間たちの最後方にポジショニングしていたのだ!
「私の天下です!!!」
ふははは、と高笑いするスズナ。
そこへ死角から漂ってくる花粉。
この後どうなったかは、言うまでもないですよね。
●おままごと!
さわさわ涼しい原っぱを、元気に駆ける人影ひとり。
「かけっこー!」
スズナである。
短い草の上をきゃっきゃと駆け回り、スズナは最高に女児していた。
「わーい! たのし――あっ!?」
「すずなちゃん、だいじょーぶ?」
てこてこ走っていた脚がもつれ、すてんと転ぶスズナ。その豪快な転びように傍で独り遊びしていた真介が心配そうに歩いてくるが、スズナは即座に起き上がって顔やお腹の草をぽんぽん払い落とした。
「えへへ、だいじょぶ!」
「よかったねー」
「ねー。しんちゃんはなにしてたの?」
「しんしゅけはねー、おともだちとあそんでたのー」
えへへ、と無邪気に笑いあうスズナ&真介。野花で飾ったうさぐるみを嬉しそうに抱き上げる真介は最早すっかり3歳の女の子(177cm)だったし、目をキラキラさせてうさぐるみを見つめるスズナも同じく3歳(JK)である。
目も当てられない状況とは、こういうことなんだろう。
って思うしかなかったよね。
「ほかのみんなはなにしてるんだろー?」
「みんなもいっぱい、あそんでるよー」
うさぐるみをむにむにしてるスズナに、真介が数m先を指差す。
そこでは――。
「びーーーーーむ!!」
『――!?!?』
慶がめっさ楽しそうに、ぷらんつにビーム(という名の轟竜砲)を撃ちまくっていた。
「けーはまほーしょーじょになたの! つよい! ふふん!」
顔を穿たれてジタバタしとるぷらんつを尻目に、魔法少女である慶ちゃんはマジカルステッキ(という名の戦鎚)をくるりと回して胸を張る。満面の笑みである。
「えへ……へ…………」
笑いが乾いてゆくのである。
「………………」
いよいよ無言になり、虚無の表情を浮かべる慶ちゃんである。少しばかり花粉の効果が薄れた瞬間なのかもしれない。すぐ横でパタパタ飛んでるユキの翼の音が悲しい。
『――! ――!』
一方、攻撃されて興奮気味のぷらんつ。
ちょっぴり眉を吊り上げて怒りを表現している花は猟犬たちをパックンするべく、しゅるしゅると蔦やら何やらを展開した。
――が。
「おままごとーぉ! わたし『500億階のタワマンに住んでる社長』やりゅーぅ!」
「ふよちゃもーっ! あ、おはなしゃんもあしょびたいって!」
「じゃあ、おはぁなさんペットね! くびわしないとッ!」
『――!?』
ちょうどすぐ後ろで『おままごと』を始めたエイン&芙蓉に捕まるぷらんつ。無邪気に笑うエインに光の首輪(グラビティ)をかまされると……。
「これぇでさんぽできるねーぇッ!」
「わぁああおうましゃんだ! のっちゃお~!」
『――! ――!?』
何かの刑罰みてーにエインの手でずるずる連行され、芙蓉にジャンプからのダイレクト馬乗りをお見舞いされたぷらんつ。子供is残酷。
「みんなー。おちゃいれたよー」
「やったーぁ!」
「ありがとぉぉーー! みんなでのもぉぉーー!」
『――!!?』
挙句、茶飲みを持ってきた(仕草をする)紺も加わり、三人でぷらんつに乗っかる芙蓉たち。ぼいんぼいん暴れる椅子をアトラクションのように楽しみながら三人は何かきゃいきゃいしてた。
と、そこへ。
「こんにちはー! おじゃましまーす!」
「はーい、おいしゃさんがきたよー!」
「あ、いらっしゃぁぁーーい!!」
「るーりゃーん、まどっちーぃ」
ルリナと円もノリノリで参戦してきた。ドアチャイムを鳴らしてきた(仕草をした)二人は当然のようにぷらんつにずむっと乗っかってくる。
『――!!』
「これ、つまらないものですが!」
「わぁぁ! おだんごぉぉーー!」
「おいしそー」
「ふたりのおちゃももってくるね」
「ありがとー! じゃーそのあいだに、みんなは『けんこーしんだん』ね!」
ルリナが泥団子のノリで差し出した光球(ルナティックヒール)に沸き立つ芙蓉とエイン。同時に、お茶くみに席を立った紺にぶんぶん手を振った円は自分の隣をぽんぽんして皆に来るように促す。
「んー。ふよーちゃんはだいじょうぶ!」
「やったぁー!」
「せんせーぇ、おねがいしましゅーぅ」
「ボクもー!」
「うん、ならんでならんでー」
わーわー言いながら円の診断待ちしてるエイン&ルリナ。そんな二人の頭上で翼をばさばささせている蓬莱(ウイングキャット)はさりげなくBS耐性とか与えてるので偉い。
果たしておままごとの下敷き(現在進行形)になってる敵相手にそこまでする必要があるのかわからないけど、とても偉かったです。
●ふりーだむ!
ぷかぷかと、空中に浮かぶシャボン玉。
その不規則な軌道を辿ってみると――。
「わぁー! こんちゃじょうずー!」
「ほんとだー!」
「ありがとー」
芙蓉とルリナと紺が、ぷくぷくとシャボン玉を飛ばしていた。小ぶりなシャボン玉を爆散させる芙蓉とルリナに対して紺のシャボン玉はどれも立派。さすがに液からストローから全部用意してきただけはあります。
「みんなのしゃぼんだまきれいー。きらきらでほうせきみたーい」
「しゃぼんだま! けーもしゃぼんだますゆの!」
好奇心のままに駆け寄ってきたのは慶と真介だ。慶は咥えてた竹とユキがどっか行ってるし、真介は抱いてるうさぐるみが花だらけのファンシー状態だし、今までずっと楽しんで女児してたんだろう感がすごい。
「ねー! けーもすゆ!」
「しんしゅけもやっていい?」
「いーよぉ! みんなでシャボンだましズッ」
「いっぱいあるから、みんなでやろー」
落ち着きがなさすぎる余りシャボン液を吸って死んだ芙蓉(盛大にむせてる)に代わり、二人に道具一式をあげる紺ちゃん。
「しゃぼんだま、おっきいのつくゆー!」
「わたしもまけなーい」
「ふー……ふー……」
元気よくシャボン玉を飛ばす慶と、その横で淡々と大玉を生み続ける紺。夢中になってストロー吹いてる真介はもう言葉もなくなっている。
「んーと、ボクはひつじさんをつくろうかな……あっ?」
ちょんちょんとストローを液につけながら考えていたルリナが、つと視界の端で何やら作業しているエインと円とスズナに気づく。
「ねーぇ、はなうらないしよーぉ! ふたりのことうらなったげりゅーぅ!」
「はい! はい! わたしうらなってー!」
「んと、まってー。いまおはなさんでかんむりつくってるから……」
『…………』
向かい合って座ってる三人はどうやら花遊びに興じているようだ。摘まんだ花をくるくるさせてるエインにスズナが嬉しそうに寄っていき、待ってと言った円は真剣な顔で花々を編んでいる。そしてそんな三人の横でぐったり萎れてるのはぷらんつ。
気づけば、ルリナの足はそっちへ向いていた。
「ボクもまぜてー!」
「いいよーぅ、おいでるーりゃん!」
「みんなであそぼーっ!」
「おはな……おはながたりない……」
ひゃっほーう、とばかりに飛びこんだルリナを受け止めるエイン&スズナ。それをよそに超集中してる円は手持ちの花の数が心許ないと気づいて――。
「このジョ……なんとかっておはなさんもいれるのだ」
『――!!?』
ぶちぃっ、とぷらんつ(寝てた)の花を茎ごと毟り取ったァァーー!!
「……きのこもいれちゃお! おしゃれ!」
『――!?!?』
花以外に生えてたなんかよくわからないやつも毟り取ったァァーー!!
「みんなのぶんで12こ、つくらなきゃだからね!」
「まどっちありがとーぉ!」
「まどちゃん! まどちゃーん!」
「がんばぇー! ……んゅ?」
俄然はりきって作業する円を横で応援するエイン&ルリナ。そのノリにスズナも乗っかろうとするが、ふと自分の頭に触れた拍子にあることに気づいた。
いつも身に着けてる花飾りが、ない。
「あれぇ……ない……どこ?」
「おじょー? どーしたのーぉ?」
「なにかなくなっちゃったの……?」
見るからに落ちこんでるスズナに寄り添う、エインとルリナ。どこかに落としたのかなーと一緒に探しはじめるさまは何だかとっても心が温かくなりました。
で、それを遠目に見てた芙蓉。
「みんななんかしてゆ! ふよちゃもてつだおーかなぁ!?」
「ふよーちゃん、みてみて」
「わあぁぁしゅごおおぉぉぉーーーい!?」
ふらっとスズナたちのほうに向いた足が、シャボン玉をリボルバー銃で撃ちはじめた紺の芸当を見てギュンッと元の場所に戻る。さすが女児。
「ほかのひとのしゃぼんだまをおとしたら、まけっていうゲーム」
「ふよちゃもやりゅぅぅぅぅーー!!」
「けーも! けーも!」
「しんしゅけもするー」
「みんなでしゃげきたいかいだね」
紺の持つリボルバー銃に我先にと群がる芙蓉、慶、真介。
なお、四人によるシャボン玉落とし大会はめちゃくちゃ盛り上がったそうです。
●おひるね!
のどかな風音だけが聞こえる草原に、ピクニックシートがひろがる。
「わ~! スズちゃのおべんとーおいちいね~!」
「んー、おいしーぃ!」
「えへへ。いっぱいもってきたから、いっぱいたべて!」
物凄い勢いでサンドイッチやら何やら食ってる芙蓉&エインの姿に、頭をさわさわして嬉しそうにしてるスズナ。
ぷらんつは、倒されていた。
あっさり行間で消えていた。テンション上がりまくった慶とルリナがいきなり歌い始めて大量の牛さんと羊さんを召喚したあたりまではいたのだが、その後は判然としない。でもきっとその大群に轢かれて死んだのだろう。そうに違いない。
で、平和になったので猟犬たちは楽しいお昼ご飯タイムしていたというわけだ。
「わたし、にんじんやだー! たまごやきもあまくなきゃやだー!」
「めんたいこ。もちろんおにぎりはめんたいこ」
わがままを連発しながら弁当を物色しているのは円だ。隣で静かに明太子おにぎりを頬張っている紺との対比がすごい。子供舌がすごい。
……なんでまだ女児化してるのかは謎だけど、きっとすぐ元に戻るでしょう!
ぽかぽか陽気の空を見上げて、一つあくびをするルリナと真介。
「んゅー。ボクねむくなってきちゃった……」
「しんしゅけも……あそんでたら、なんだかねむく……ふあ……」
「ねちゃおーかな……」
「……ごろーん……」
ぽて、とシートの上に横向きになるルリナと真介。
それを皮切りに、お腹いっぱいになった猟犬たちはごろごろと昼寝を始めた。眠気に誘われるまま夢に落ちてゆく皆の顔は、どこを見ても満面の笑み。
芙蓉の表情は、くすっと綻んだ。
「よくわかんないけど楽しかったわね……!」
いつの間にか正気に戻っている芙蓉さん。いい加減、ぷらんつの花粉の影響も消えてきているようである。眠った皆も目覚める頃には正常化していることだろう。
ほら、シートの端でうつぶせになってる慶も――。
「……俺もうヤダぁ!!!」
「――」
失意の眼差しで頭を抱えている慶の肩に、ぽふっとユキの翼が触れる。
……うん、とりあえず昼寝して、全部忘れちゃえばいいと思うよ!
作者:星垣えん |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年8月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 6
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