わたしも☆あなたも☆魔法少女

作者:星垣えん

●夜の海にて
 青々とすら見える夜空。
 その静謐な美しさを見上げながら、シフカ・ヴェルランド(鎖縛の銀狐・e11532)は白い砂浜の上を歩いていた。むろん全裸である。
「暑くなってきましたが、夜はちょうどいい具合ですね」
 海辺の涼しさを味わいながら、髪をかきあげて笑うシフカ。
 ともすれば通報されて一発レッドをくらいかねない状態のくせに無駄に爽やかである。
 だが、静かな散歩を満喫していられたのも長くはなかった。
「見つけたわよ! この変質者ーっ!」
「え、誰ですか!?」
 唐突に響いた高い声に、びくりと振り返るシフカ。
 あらかじめ人の気配がないのは確認していたはず――と不思議がった彼女だったが、しかし声の主の姿を見た瞬間、合点がいった。
 己を変質者と謗ってきたその相手は、シフカとまったく同じ顔をしていたのだ!
「デウスエクスですか……」
「社会の秩序を乱す人は許さない! 愛と良識の魔法少女――シフカがあなたを成敗よ!」
 随所にフリルをあしらった純白の衣装を着る女は、ステッキを振りかざしながら『シフカ』を名乗る。顔が瓜二つなのでまるでシフカ本人がコスプレしているかのようだ。
 そんなもんだからね、シフカさんもちょっと顔が赤くなってましたよ。
「すみません。その顔でその衣装はやめてほしいんですが……」
「それはこっちの台詞! あなたこそそんな格好はやめてっ!」
 控えめに物申してきたシフカを、魔法少女シフカが――偽シフカが一刀両断する。
 そう、シフカは全裸なのである。
 全裸と魔法少女コスプレ。常識的にどちらがマシかなど考えるまでもなかった。
「そんな痴態は見過ごせないわ! さぁ今すぐこの服に!」
「断る!」
「即答!?」
 今日イチの語気でつっぱねてきたシフカに圧される偽シフカ。
 だが彼女も愛と良識を重んじる魔法少女(自称)として、簡単には引き下がらない。フリフリ控えめの漆黒衣装(ニコイチ感)をシフカにぐいっと押し付けた。
「さあこれを着て! 変質者なんて卒業して、あなたも魔法少女に!」
「嫌です! せっかくの全裸チャンスなのに服を着てどうするんですか!」
「それじゃあ魔法少女チャンスはどうなってしまうの!?」
「知りません!」
 魔法少女衣装を押し付け合い、無意味な問答を繰り返す二人。
 それを3分間ぐらい続けて肩で息をするぐらい疲れたところで、偽シフカは諦めた顔で衣装を取り下げた。そして代わりに魔法のステッキを握りこむ。
「こうなったら力ずくで、あなたを魔法少女にしてあげるわ……!」
「話がわかりやすくていいですね。ですが言っておきますよ……私は絶対に服を着ません」
 得物たる鎖を腕に巻きつけながら、にやりと笑うシフカ。

 静かなる夜の海辺にて、全裸女と魔法少女の闘いが始まろうとしていた。

●どうやって緊迫しろって言うんだ
 ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)の説明は、淡泊だった。
「シフカがまた海で脱いでいる」
 以上である。
 それ以外の情報を口にすることはなかった。
 デウスエクスの襲撃を予知したとか。
 それなのに当人と連絡がつかないとか。
 一刻の猶予もないから急いでほしいとか。
 全部ない。
 なるほどそういうのも省きたくなるぐらい簡単な仕事なのだろう。猟犬たちはそう思うことにした。だって王子が仕事を放棄するはずないですよ、うん。
「敵はシフカの偽物、と言っていいだろう」
 ヘリオンへてくてくしながら、襲撃者の情報を語る王子。
 砂浜へ現れるその偽物は魔法少女の格好をしており、魔法っぽいグラビティも使ってくるらしい。面倒なので全部『魔法』って言っとく。
「中でも特筆すべきは着せ替え魔法だ。ステッキから放つそれを当てるだけで、相手に魔法少女衣装を着せることができる。ほかにも炎を出したり色々な技が使えるらしい」
 王子の話を聞く限りは、幾分かまともな敵に思えてくる。炎とか強そう。
 ただしやはり注目すべきは『魔法少女衣装を着せられる』という点だ。
 これは……全裸主義であるシフカにとっては天敵なのではないだろうか?
「そう、シフカにとっては天敵かもしれんな」
 ヘリオンの操縦席に乗りながら、王子が呟いた。
「シフカがこのまま全裸道を突き進むのか、はたまた服を着るという人間らしい文化を獲得できるのか……それはおまえたちにかかっているぞ」
 猟犬たちを荷室へ乗せたヘリオンが、回転翼を回して空へ浮上してゆく。
 ……って王子よォ! なんだか倒しにくくなっちまったじゃねえかァァァァァ!!!


参加者
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
シフカ・ヴェルランド(鎖縛の銀狐・e11532)
エヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)
夢見星・璃音(輝光構え天災屠る魔法少女・e45228)
リリエッタ・スノウ(未来へ踏み出す小さな一歩・e63102)
大森・桔梗(カンパネラ・e86036)

■リプレイ

●NO緊迫
「そんな裸で恥ずかしいと思わないの!」
「私だって着るべきときは着ますよ……でもね、その服だけはぜっっっったいに嫌よ」
 砂上を駆け、言葉と技とで応酬を繰り広げる二人。
 その片翼たるシフカ・ヴェルランド(鎖縛の銀狐・e11532)はまだ裸のままだ。
「必ず着替えさせてあげるんだから!」
「そう……でも、もうそうも言ってられないみたいよ?」
「……!?」
 シフカの笑みに不穏を感じた偽シフカが空を見上げる――が、その視線とすれ違うように小さな人影が砂浜に落下した。
「シフカさん助けに来たっすよ!」
「シルフィリアスさん!」
 舞い上がる砂煙の内に現れたのはシルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)。
 勇ましい声とともに顔を上げた『魔法少女』は、まっすぐな瞳をシフカに向けた。
 うん、本物のほうに向けた。
「なぜこっちを見るんです?」
「本物のシフカさんは全裸の変質者じゃないっすよ!」
 ぶんっ、とロッドを振るシルフィリアス。
 全裸女と魔法少女だからね。比べるべくもなかったよね。
「こんなに敵を倒しづらいことはなかなかないですよ……色んな意味で」
「世界にはそっくりさんが3人はいるらしいから、その一人なのかな?」
「気にするところはそこじゃないですよリリちゃん……」
 溜息混じりに眺めていたミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)が、隣で呑気に首かしげてるリリエッタ・スノウ(未来へ踏み出す小さな一歩・e63102)に対してかぶりを振る。
「そんなことよりどこまでが少女なのかってほうが大事だよね」
「それも違うでしょう璃音さん……」
 どうでもいいことを言ってくる夢見星・璃音(輝光構え天災屠る魔法少女・e45228)にも首をふりふりするミリム。
「私も21だし『少女』は怪しい頃合いなのかな……ね、ミリっち?」
「気にするならその服はやめるべきでは?」
「え、なんで? 可愛いじゃん!」
 クルッとターンする璃音。ふわふわのスカートの裾がふわり。
「私はちっとも恥ずかしいとかは感じないよ!」
「あ、そうなんですね……」
「わかるー」
 堂々としてる璃音に言葉もねえミリム。そこへエヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)がニッコリ笑顔で歩いてきた。
 小脇に愛らしい服を抱えて。
「可愛いは正義。とゆーことでこういう服は興味ない? 私が専属モデルしてるブランドなんだけど……」
「へー」
 ここがいいんだー、とか語りだすエヴァリーナ。
 饒舌に喋るその裏には恐ろしい企みがあった。
(「……チャンスは逃せない! ここでお金をがっぽり稼がないと!」)
 めらめら、と燃えているエヴァリーナ。
 仲間や敵に服を着てもらい、それを宣材としてSNSで広める――とゆー手法で彼女は宣伝報酬を稼いでいたらしい。昨今の情勢のおかげで機会に恵まれず懐は寒くなっていた。なぜ自分で着て拡散しないのか。
 と、そんな感じでやってる横では。
「胸の小さいシフカは服を着ろと言い、胸の大きいシフカは脱いでいる……羞恥心というものは胸のサイズに反比例するのかもしれないな」
「海の夜景に白い魔法少女……良い景観ですね」
 日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)と大森・桔梗(カンパネラ・e86036)が、何か思案でもしているような顔で突っ立っている。ベクトルは完全に別だが。
 そんな二人の背後に、リリエッタが忍び寄る。
「念のために二人とも目隠しだよ」
「あーっ!」
「前が見えないー」
 ぐるぐる、と蒼眞と桔梗の目元に黒布を巻き付けるリリエッタ。
 いちおうね、裸の女性がいますからね。

●魔法少女になっちゃえ
「いくら言っても無駄っすよ」
「いえ、よく思い出してください」
 砂の上で膝を突き合わせるシルフィリアス&シフカ。全裸だから偽物と譲らないので緊急面談の真っ最中であり、シフカは言葉を尽くして潔白を訴えていた。
 で。
「そういえば変態だったっす」
「わかってくれましたか」
 あっさり成功した。
 なんせシフカである。過去を思い返せば脱いでるシーンばかりだった。
「この際まとめて倒したほうがいい気がしてきたっす」
「シルフィさん、我慢だよ」
 投げやりになってきたシルフィリアスの背をぽんぽんする璃音。
 と、そこへ!
「いつまで裸なんですかシフカさん!」
「な、なんですか!」
 猛然と突っこんでくるはミリム!
 その手には園児服!
 秒で察したシフカは咄嗟に身構えた。
 身構えたのだが。
「こっち向いて下さい!」
「あああぁぁぁぁぁ…………」
 秒で負けていた。レベル差だろうか。
 立派な園児となった女は顔を覆って砂上をごろごろ。そのさまをミリムに撮られまくっていた。死にたかった。
 しかし忘れてはいけない。すぐ近くには敵がいるのだ。
「アヤしいコスプレは許さない!!」
「いやぁぁぁぁーー!?」
「ああっ! 全裸道に走らないようにしているそばから!」
 すかさず放たれた偽シフカの着せ替え魔法。
「あぁぁ…………」
 魔法少女(24)となったシフカは虚ろな目で横たわり、今にも死に絶えんとしていた。
 これはいけない――エヴァリーナは慌てて走り出す。
「シフカちゃん、新しいお洋服だよ!」
 正座スライディングで滑りこみ、伏してる女の横で服の物色を始めるエヴァリーナ。
 そう、宣伝チャンス!
「待ってて、すぐ着替えさせてあげる!」
 シフカを万歳させ、手早く脱がせるエヴァリーナ。
 そうして清楚なワンピースを装備させると、シフカはけろっとした顔で起立。
「助かりました」
「どういたしまし――」
「そんな服よりこっちのほうが似合うわ!」
「ああーーっ!」
「お金ーーっ!」
 二人の会話が終わる間もなく白光再臨。魔法少女化したシフカは再び崩れ落ち、エヴァリーナはスマホを胸のあたりで構えてフリーズした。まだ撮ってなかった。
「シフカさん、お気をしっかり」
「リリたちもお洋服持ってきたよ」
 第二陣として現れたのは桔梗とリリエッタ。目隠し状態で器用にシフカの背をポンポンする桔梗を尻目に、リリエッタはごそごそとブツを取り出す。
「リリが用意したのは海でも問題ない恰好、つまり水着だよ!」
「水着は構いませんが、なぜスクール水着なんです?」
「生地がしっかりしてるから良いかなって」
「なるほど……」
 真顔で言ってのけるリリエッタと納得するシフカ。
 二人のエルフが通じ合った結果――。
「なかなかいいですね」
「気に入ってもらえて何よりだよ」
 砂浜で仁王立ちするスク水の女性(24)が爆誕した。
 事案である。だが当人もそれは自覚しているようで。
「さすがに少し恥ずかしいですね」
「でしたらこちらを着ますか?」
 謎の恥じらいを見せるシフカに、衣服一式を差し出す桔梗。
 裾のレース飾りがエレガントな紺色のワンピース。その上に七分袖のカーディガンを羽織り、脚は花柄のレギンスとショートソックスでぴしっと締める。そこにサンダルを合わせて腕時計とトートバッグとチョーカーで飾れば――。
「むぅ、シフカがオシャレさんになったよ」
「今のところ一番まともですね」
「女性のファッションには疎いのですが……頑張りました」
 普通にイイ感じになったシフカにぱちぱちと拍手するリリエッタ。男である桔梗に勧められた服が一番まともだった。
 遠目に観賞していた璃音は、ふむと顎に手を添える。
「シフカさんが常識人に見える……服装って大事なんだなー」
「男の俺としては、美人が全裸で歩いていても何も困らないんだがな……」
 目を細め、しみじみ語る蒼眞。
 その右手には何やらでっけえ着ぐるみが。
「……シルフィさんの着ぐるみ?」
「ああ。シフカに着せてやろうと思ってな……もう要らないかもしれないが、ついでだから渡しておくか」
 一歩を踏み出す蒼眞。
 そこへ偽シフカの魔法が飛んできたのは、偶然としか言いようがなかった。
「あっ」
「…………」
 ステッキをかざして固まる偽シフカの視線の先には、瞑目する蒼眞の姿。
 全身がフリフリ魔法少女服に包まれた、悲哀の男の姿があった。
 THE誤射。
「……確かに昨今では男の魔法少女も珍しくもないけど、どう考えても女性陣に着せた方が良いだろう……」
「あの、あなたを狙ったわけじゃ……」
「誰得なんだよ……俺が魔法少女は社会秩序的にもどうなんだ……?」
「ごめんなさい……」
 腕組みスタイルでの説教を開始する蒼眞氏。
 ミニスカの下から太ももを晒す男の背中は、それは虚しいものだった。

●貴方も私も!
 で、その説教の後。
「シフカに魔法は当てさせないよ」
「くっ、私の邪魔をするなんて!」
 普通にバトル展開が始まっていた。
 偽シフカの着せ替え魔法が荒ぶり、砂浜の砂がもうもうと舞い上がる中でリリエッタがシフカのことを庇っている――というそれなりにマジな立ち回り。
 が、安心してほしい。もちろん見かけだけである。
「シフカのお胸はリリが守るよ!」
「助かりま――胸??」
 任せてとばかりに胸を叩くリリエッタにシフカが首を傾げる。
 彼女は知る由もなかった。
 リリエッタが道中のヘリオンで、
『魔法少女はお胸が小さいものなの?』とか言っていたことを。
『だからシフカは着替えるの嫌がってるのかな』とか勝手に納得していたことを。
「リリはお胸は大きくないから、代わりに魔法少女になるね」
「よくわかりませんが……ありがとうございます!」
 盾となってくれているエルフっ娘に心の底から感謝するシフカ。いま目の前で揺れているリリエッタの純白きらきら衣装を自分が着せられていたら、と考えるだけで生きた心地がしなかった。マジ助かってた。
 が、一方で窮地に陥っている者もいた。
「シフカちゃんの服が変わらない……お着替えさせるチャンスがないよ!」
 エヴァリーナである。持ってきた服を両手いっぱいに抱えてワナワナしてる女は、服を着せる口実がなかなか生まれない状況に焦燥を感じていた。
「何しに来たんですかあなたは……」
「それはもちろん食費……愛と友情と正義と努力のためだよ!」
「本音が出てましたよ! 完全に!」
 横でがっつり見張ってたミリムにくわっとやるエヴァリーナ。モロバレの建前を口にした彼女が『偽物に着てもらえばいいんだ!』と稲妻の閃きを得たのは3分後である。
「まったくもー……今は戦いの最中なんですよ?」
 仕事そっちのけ態勢の人に呆れつつミリムが敵のほうへと顔を向ける。
 そうしたら、目に入ってきたのは閃光。
「えっ」
 反応する間もなく光にさらされるミリム。
 結果。
「魔法少女☆マジカルミリにゃん参上☆」
 高らかに名乗りを上げる、ケモ耳魔法少女が爆誕していた。
「……ってなんでやねん!」
 そして数秒で歴史の1ページにされていた。
 偽シフカの着せ替え魔法をくらってから、ミリムがその衣装を脱いで地面に叩きつけるまでわずか3秒のイベントであった。
「なりませんよ私は! 魔法少女にはなりませんよ!」
「ノリノリの変身ポーズだったけれど……」
「断じて違います!」
 ぽつっとツッコんできた偽シフカに首を振るミリム。
「とてもお似合いに見えましたが……」
「やめて下さい桔梗さん! ……というか何してるんですか!」
 余計なフォロー(?)をしてくる桔梗を一蹴したミリムが、彼の姿を見てハッとなる。
 長身ながら中性的な整った顔立ちをしているタイタニアは――。
「なんで平然と魔法少女なんですか!?」
「あぁ、これですか」
 人知れず、ふわふわフリルの魔法少女(緑)になっていた。
 しかも落ち着き払った態度である。スカートが風に踊っても眉一つ動きやがらねえ。
「奏でるは胡蝶の旋律、魔法少年☆カムパネルラ見参……やはり変ですね」
「やる前に気づいて下さい……!」
「翅も良い感じに映えるかと思ったのですが」
「パタパタしない!」
 背中の翅を動かしてアピールする桔梗をびしっと制するミリム。ツッコミ負担が凄い。
 傍から見ている偽シフカは、にやりと笑ってステッキを握る。
「っふふ、この調子で魔法少女を増やして――」
「ねえねえ。そのステッキで誰でも魔法少女にできるんだよね?」
「!?」
 突然に話しかけられ、びくりとする偽シフカ。
 振り向けば、いかにも興味津々といった璃音の顔が20cmの距離。
「ぜひやってみて。ちょっと私にやってみて」
「ちょっ、何なのあなた!」
「あ。あなたの服も可愛い……ちょっと着させてもらえない?」
「もーっ! 離れてー!」
「そういえば魔法少女といえば変身シーンだけどあなたにはそういうのってある? 私は一応あるよ?」
「ああーっ!?」
 偽シフカの突き出した手をひらりとかわし、唐突に変身を始める璃音。
 眩しいほどの光が弾けると、そこには――。
「煌めく生命の輝き、魔法少女ラピスラズリオン! ここに参上!」
 青の魔法少女になった璃音が、ばっちり立ちポーズをキメていた。
「……って、急に恥ずかしくなってきた。人前でやるの初めてなんだよこれ、もー!」
 そして独りでにジタバタし始めた。
「自分でやっておいて何なの……」
「気にしないでいいっすよ」
 璃音さんの勢いに当惑しきりの偽シフカをシルフィリアスが肩ポン。
 それから、スマホの画面を向けてきた。
「い、いったい何……?」
「シフカさんもいつも全裸というわけじゃなくこんなものもあるんすよ」
 画面を覗きこむ偽シフカ。
 すると、そこには絢爛な魔法少女に扮しているシフカの動画が映っていた。掛け声とポーズをキメているのを見るにどうやら変身シーンの真っ最中らしい。
「露出狂というわけじゃないんで許してあげてほしいっす」
「ふむふむ。まあ酌量の余地はありそうね」
「いや何ですかそれ。いつ撮ったんですかそれ」
 ひそひそ話で司法取引(?)をしているシルフィリアス&偽シフカの間に、ずいっと入ってくるシフカ。
 だって黒歴史だもの。
「消して下さい今すぐぅぅぅーー!!!」
「いいっすよ。元データは別にあるっす」
「そっちも消してぇぇぇーーー!!!」
 恐ろしいことを言ってくるシルフィリアスの脚に縋りつくシフカ。果たしてデータは消してもらえたのか。よくわからんけど後の交渉次第だと思う。
 と、やってる背後で怪しく動いている偽シフカ。
「隙だらけね。今のうちに魔法少女にしてあげるわ……」
 偽シフカの手に力が入る。
 それと同時に、目の前に斬霊刀がゆらり。
「……えっ?」
「おまえに一つ、魔法少女が何たるかを教えてやろう」
 視線で刀身を伝っていけば――そこにはクール顔で立っている蒼眞の姿。
 バチッ、と刀から雷光が弾けた。
「魔法少女は、服が破れるのがお約束だぜ!!」
「イヤァァァァーーッ!!?」
 颯爽と振り下ろされる斬霊刀が、偽シフカの衣装を千々に切り裂く。

 ――なおセクハラの精神的ダメージが凄かったのか、その後の偽シフカは精彩を欠き、猟犬たちの総攻撃により華々しくニチアサのように散ったそうです。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年8月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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