バレなければ、イカサマじゃない

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 廃墟と化した雀荘に、全自動麻雀卓があった。
 この全自動麻雀卓は、洗牌の精度の低く、簡単にイカサマが出来るシロモノであった。
 そのため、トラブルが多く、殴り合いの喧嘩に発展する事も、度々あったようである。
 それが災いしたのか、廃業に追い込まれてしまったらしい。
 だが、全自動麻雀卓は、納得していなかった。
 まだまだ、やれる。
 ……頑張れる!
 だから俺を……!
 ここから連れ出してくれ!
 その思いに応えるようにして、小型の蜘蛛型ダモクレスが現れた。
 小型の蜘蛛型ダモクレスは、全自動麻雀卓を見上げ、機械的なヒールを掛けた。
「ゼンジドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化した全自動麻雀卓が、耳障りな機械音を響かせながら、雀荘の壁を突き破って街に繰り出すのであった。

●セリカからの依頼
「リゼア・ライナ(雪の音色・e64875)さんが危惧していた通り、都内某所にある雀荘で、ダモクレスの発生が確認されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある雀荘。
 この雀荘にある全自動麻雀卓が、ダモクレスと化してしまうようである。
「ダモクレスと化すのは、全自動麻雀卓です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていった。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスと化した全自動麻雀卓は、ロボットのような姿をしているようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205)
カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)
雪城・バニラ(氷絶華・e33425)
エマ・ブラン(ガジェットで吹き飛ばせ・e40314)
リゼア・ライナ(雪の音色・e64875)
天月・悠姫(導きの月夜・e67360)
九田葉・礼(心の律動・e87556)
 

■リプレイ

●都内某所
「まさか、僕が予想していたダモクレスが本当に出て来るとは……。こんな事もあるんだね。何はともあれ、これも何かの因縁でしょう。なので、僕が直々に倒します」
 リゼア・ライナ(雪の音色・e64875)は覚悟を決めた様子で、ダモクレスの存在が確認された雀荘の前にやってきた。
 その場所は繁華街の裏路地を通ったところにあり、特に用事がなければ、近づく事が無いような場所であった。
 そのためか、何やら近寄り難い雰囲気が漂っており、空気が重く、ネットリと絡みついてくるような錯覚を覚えた。
「それにしても……、随分と奥まった場所にありますね」
 ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205)が、警戒した様子で辺りを見回した。
 一言で言えば、素人さんお断りと言った建物ばかりが立ち並んでいるため、ここにいる事が場違いである事は間違いない。
 だからと言って、踵を返して、家に帰る訳にもいかなかった。
「……雀荘か、廃墟とはいえ未成年のわたしが雀荘に来てしまって良いのかしら? まぁ、これもダモクレスによる被害を抑えるためだから……!」
 天月・悠姫(導きの月夜・e67360)が心の中に生じた迷いを振り払うようにして、雀荘に足を踏み入れた。
 雀荘の中はカビのニオイが充満しており、換気をしなければ咳き込んでしまう程、空気が淀んでいた。
「……俺は、あまり賭け事は好きじゃないんだけど、何も賭けずに遊ぶだけなら、麻雀も好きだな」
 カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)が、ゆっくりと辺りを見回した。
 だが、事前に配られた資料を見る限り、ここで行われていたのは、賭け麻雀。
 しかも、かなり高額なレートで、やり取りされていたようである。
「麻雀は悪くないのだけど、流石にイカサマしちゃったら良くないわね。イカサマが出来る仕様の全自動麻雀卓は、欠陥品だったのかしら?」
 雪城・バニラ(氷絶華・e33425)が、殺界形成を発動させた。
 資料を見る限り、イカサマをしたのは、店側の方針。
 そうする事で、勝率を操作し、売り上げを伸ばしていたようだ。
「ゼンジドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 次の瞬間、部屋の隅にあった全自動麻雀卓が激しく揺れ、みるみるうちに姿を変えた。
 それは、まるでロボットのようであったが、自分の意志を持っており、ケルベロス達を敵として認識しているようだった。
 その事を理解しているためか、ピリピリとした殺気が、辺りに漂っていた。
「……もしかして、みんなで麻雀打つと倒せたりしない? それはさすがに……無理か」
 エマ・ブラン(ガジェットで吹き飛ばせ・e40314)が、気まずい様子で汗を流した。
 一応、麻雀のルールに乗っ取り、サイコロを振ったりしているようだが、何やらパチモノ感が満載だった。
 おそらく、ダモクレスと化した事で、色々と大切なモノを失ってしまったのだろう。
「マキナクロスの接近にダモクレスとの決戦を前に、相変わらず家電を尖兵に変えてるのね……」
 九田葉・礼(心の律動・e87556)が、呆れた様子で溜息を洩らした。
 それよりも心配なのは、麻雀のルールを知らない事。
「マージャンタクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その不安を吹き飛ばすような勢いで、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、麻雀の役(国土無双)をビーム状にして放ってきた。
 それが何を意味しているのか分からないが、役によってビームの威力が異なっているのかも知れない。
 その事を証明するようにして、極太のビームがケルベロス達に襲いかかった。
「……!」
 間一髪で、そのビームを避けたものの、それでも軽く火傷を負ってしまう程の破壊力を秘めていた。
 その上、ダモクレスが放ったビームで、壁に大きな穴が開き、向こう側にあるマンションの壁にまで達していた。
「大丈夫!? すぐに回復するからね!」
 すくさま、リゼアが気力溜めでオーラを溜め、状態異常を消し去った。
「何とか避ける事は出来ましたが……」
 礼がボディヒーリングを発動させ、エクトプラズムで疑似肉体を作り、傷ついた仲間の外傷を塞いだ。
 外なら、まだしも、雀荘の中では、狭過ぎる。
 しかも、他の全自動麻雀卓が邪魔をして、移動する事さえ困難だった。
「さすがに、何度も撃たせるのは、危険ですね」
 その間に、ジュリアスがダモクレスの死角に回り込み、瘡霊弾(ソウレイダン)を放った。
 霊気で作った玉は床に落下すると、染み込むようにして広がっていき、ケタケタと不気味な笑い声を響かせた。
「マ、マ、マ、マァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 その事に苛立ちを覚えたダモクレスが、狂ったように床を狙ってビームを放った。
 だが、笑い声は消えるどころか、さらに大きくなっていた。
「ジャジャジャアアアアア!」
 そのため、ダモクレスの怒りが膨らみ続け、その玉を放ったジュリアスに怒りの矛先が向けられた。
「……随分と気が短いようだね。まあ、その方がこちらとしては、都合がいいんだけど……」
 即座に、エマが牌を投げ捨て、ツモ切りをした。
「ゼ、ゼ、ゼ……」
 その動きに反応したのか、ダモクレスに一瞬だけ隙が出来た。
 エマは、その隙を逃す事なく、ダモクレスに稲妻突きをお見舞いした。
「やっぱり、欠陥品ね。……弱点を見抜いたわ、この一撃を食らいなさい!」
 そこに追い打ちをかけるようにして、バニラが破鎧衝を仕掛け、ダモクレスの装甲を破壊した。
「ド、ド、ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 そこから大量の麻雀牌が零れ落ち、ダモクレスの悲鳴にも似た機械音が辺りに響いた。
「……もう少し黙っていてもらうわよ」
 それに合わせて、悠姫がプラズムキャノンを放ち、ダモクレスの動きを封じ込めた。
「デ、デ、デ、デ、デ……」
 それでも、ダモクレスが怒りをあらわにしていたが、その気持ちに反して身体はまったく動かなかった。
「……残念だったね。でも、これも運命だよ」
 それと同時に、カシスがスターゲイザーを放ち、ダモクレスの装甲を、さらに剥ぎ取った。
 そのため、麻雀牌の流出が止まらなくなり、ダモクレスの悲鳴が絶叫の機械音に変わっていた。
「ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その事でダモクレスの殺気が爆発し、カッター状の麻雀牌を飛ばしてきた。
 それは麻雀牌と呼ぶには、鋭利で、そもそも形からして違っていた。
 これを麻雀牌と呼んでいいのか、微妙なところではあるものの、その事を話し合っている暇はなかった。
「なかなか切れ味が鋭い上に……速いですね」
 その攻撃を食らったジュリアスが、傷口を庇うようにして、カウンターに身を隠した。
 ダモクレスが放った麻雀牌は、動きを予想する事が難しく、まわりにあるモノすべてをターゲットにしているようだった。
 その上、攻撃をするたび、ケルベロス達に対する憎しみが強まっているのか、カッターの威力も次第に増しているようだった。
「それだけ私達の事が憎いのかも知れませんね。だからと言って、ここで倒されるつもりはありませんが……」
 すぐさま、礼がエナジープロテクションを発動させ、ダモクレスが放った麻雀牌を弾いた。
 その麻雀牌がダモクレスに当たり、頭の一部が削り取られた。
「花びらのオーラよ、皆を癒してあげて」
 その間に、リゼアがフローレスフラワーズを発動させ、仲間達の傷を癒していった。
「マァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 だが、ダモクレスの方は、完全にブチ切れてしまったらしく、大小様々な麻雀牌を飛ばして、ケルベロス達に襲いかかった。
 それは、一言で言えば、八つ当たり。
 恥ずかしい気持ちを誤魔化すための攻撃であったが、天井が崩れ、壁に無数の切り傷が出来る程の被害が出た。
「さすがに、この状況はマズくない? 既に麻雀とか関係なくなっているし……。すっごく怒っているみたいだよ?」
 エマがドン引きした様子で間合いを取りつつ、ダモクレスにグラインドファイアを放った。
「ジャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 それでも、ダモクレスの勢いは止まらず、鋭利な麻雀牌が次々と飛んできた。
「どうやら頭に血が上って、まわりが見えなくなっているようだね。それとも、頭に食らった一撃で、大切な何かまで失ってしまったのかな?」
 カシスが何やら察した様子で、ダモクレスにグラインドファイアを仕掛けた。
「タァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 しかし、ダモクレスはまったく怯んでおらず、全身が炎に包まれた状態で、狂ったように麻雀牌を飛ばしていた。
「だったら、少し大人しくしてもらうだけよ」
 それと同時に、悠姫がガジェッドガンを仕掛け、麻雀牌の発射口を石化させた。
「クゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その事実を受け入れる事が出来ぬまま、ダモクレスが麻雀牌を飛ばそうとした。
 だが、発射口が石化されている影響で、飛ばすどころか、動かす事も出来なくなっていた。
「このまま漆黒の闇に染まるが良いわ」
 その隙をつくようにして、バニラが黒影弾を撃ち込み、影の弾丸の力で、ダモクレスの身体を侵食させた。
「ゼ、ゼ、ゼェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
 その事に危機感を覚えたダモクレスが、ケモノの咆哮にも似た機械音を響かせ、麻雀牌型のミサイルを発射した。
 それが爆発と共に、天井を破壊し、壁を崩し、床に無数の穴を開けた。
「本当に、後先考えずに、攻撃を仕掛けてきますね。ある意味、勝負師……なのでしょうか」
 すぐま、礼が壊れた棚の後ろに隠れつつ、攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
 どうやら、ダモクレスは自分の身を守る事よりも、攻撃をする事を優先しており、傷つく事も恐れていないようだった。
 そのため、迂闊に近づく事が出来ず、疲れだけが溜まっていった。
「……冷気よ、敵を凍てつかせてしまいなさい!」
 その攻撃を少しでも遅らせるため、バニラがクリスタライズシュートを放ち、ミサイルの発射口を凍らせた。
「ジィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その事にダモクレスが苛立ちを覚えたものの、ミサイルを発射する事は出来なかった。
「……金色の光よ。此処に集まり、皆の力になってあげて下さい!」
 その間に、リゼアが奇跡の陽炎(キセキノカゲロウ)を使い、魔力により光の屈折を起こし、金色の光を仲間に掛ける事で、潜在能力を引き出した。
「その硬い身体を、真っ二つに叩き割ってあげる」
 それに合わせて、悠姫がスカルブレーカーを放ち、ダモクレスの装甲を叩き潰した。
「さぁ、断罪の時間だよ。無数の刃の嵐を受けよ!」
 次の瞬間、カシスが断罪の千剣(ダンザイノセンケン)を発動させ、罪を浄化する為のエナジー状の光の剣を無数に創造し、ダモクレスを幾度も切り刻み傷口を広げた。
「ギギギギギィィィィィィィィィィィィィ!」
 その途端、ダモクレスのコア部分があらわになり、不気味に赤く輝いた。
「メンタンピンドラドラァァァァァァァァァァァ!」
 それと同時に、エマがダモクレスの懐に潜り込み、百烈槍地獄を仕掛け、2本のグレイブを駆使して、無数の突きを繰り出し、ダモクレスのコア部分を破壊した。
「マージャンタクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その一撃を食らったダモクレスが、断末魔に似た機械音を響かせ、完全に機能を停止されて崩れ落ちた。
「……何とか倒す事が出来たようですね」
 そう言ってジュリアスが、ホッとした様子で溜息を洩らした。
 だが、ダモクレスとの戦いは、まだ終わらない。
 それでも、戦いの終わりが近づきつつある事を、ジュリアスは肌で感じていた。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年6月2日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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