枕を投げたい夜

作者:星垣えん

●大戦争の予感
 夜半。
 片田舎のとある邸宅に、歩く鳥類と一般の方々が集結していた。
「夜は過ごしやすいなぁ」
「最近、蒸し暑くなってきてますもんね」
「窓を開けとくと涼しい空気が入ってきて……あー気持ちいい」
 広縁の窓から夜空を眺め、まったりする鳥と信者たち。
 広い土地にぽつんと建つその邸宅は実に大きかった。鳥たちがいる和室は30畳はあるだろうか、旅館の大部屋にも似た雰囲気だ。
 しかもそこに11組もの布団が並んでいる。
 完全に、修学旅行の空気感だった。
「それじゃあ、そろそろかな」
「そうですねー」
「お風呂も入ったし、ご飯も食べたし、頃合いっすかね」
 至高のスペースもとい広縁から引き上げて、畳の上の布団へと潜りこむ鳥たち。
 そして適当にもぞもぞして寝入る――かと思われた次の瞬間!
「寝るわけがねぇだろうがァァァァァ!!!」
『ヒャッハーーーーー!!!』
 がばっと起き上がった鳥! 呼応して信者たちも掛け布団を蹴飛ばした!
「旅館の大部屋に泊まるならば『枕投げ』を行うのはもはや礼儀! おとなしく寝るなどという無礼を働いてはいけない! せめて3時間は死合わねば!」
「まぁここ旅館じゃなくて個人宅ですけどね!」
「大部屋っぽい感じにしてあるだけですけどね!」
「それはそうだけど気にするな! 何事もリハーサルは必要だ!」
『押忍!!!』
 枕を引っ掴んで吠える鳥さんに応じるように、信者たちもそれぞれ枕を構える。

 テンションが爆上がりするだけでそれ以外の意味がまったくない例の戦争が、始まろうとしていた。

●勝て! そして潰せ!
「――という感じだ」
 予知状況を淡々と伝えたザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)が、読み上げた資料をぱさっと閉じる。
「ビルシャナは『旅館では枕投げをするべき』と主張し、自宅の豪邸で信者とともに枕投げの練習をしている。おまえたちにはそこに乗りこんでもらいたい」
「なるほど。枕投げすればいいっすか?」
「ああ、それで構わん」
 挙手したシルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)の質問に、真面目な顔で頷く王子。何がなるほどなのかわからないし何が構わないのかもわからない。
「枕は持ちこむ形っすかね?」
「現地にあるだろう。旅館のように仕立ててある家らしいからな。布団も何十組と用意されているはずだ」
「良い布団があったら持ち帰りたいっすねー」
 ぴこぴこ、とシルフィリアスのアホ毛が揺れる。そろそろ異形化させなくても髪がひとりでに動くようになってきたのだろうか。怖い。
 しかし、冷静に考えて、枕投げをしてくればいいなどという仕事が存在するのか。
 そこらへんが気になったので猟犬たちはザイフリート王子に質問した。
「簡単なことだ。信者たちがビルシャナの教えに従って枕投げをするのは、枕投げが楽しいものだと思っているからだろう。ならばその考えを改めさせればいい」
 ブンッ、と強く腕を振るう王子。
 なるほどつまり『信者たちを枕投げで完膚なきまでに叩き潰せば、二度と枕を投げようとか思わないんじゃね?』という発想らしい。確かに道理かもしれん。
「言うまでもないと思うがグラビティは使うんじゃないぞ」
「めんどくさいっすねー」
「信者たちは一般人だし、ビルシャナも枕投げにグラビティは使ってこない。ケルベロスならば負ける道理はないはずだ」
 億劫そうな顔をするシルフィリアスに釘を刺す王子。信用がまったくない。
「準備ができ次第、出発だ。連中が二度と枕を握れぬよう、悪夢を見せてやるのだ!」
 くわっ、と言い捨ててからヘリオンへてくてく歩いてく王子。
 かくして、猟犬たちは旅館風豪邸で枕投げ大戦争に興じることになるのだった。


参加者
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)
リーズグリース・モラトリアス(義務であろうと働きたくない・e00926)
羽丘・結衣菜(マジシャンズセレクト・e04954)
新条・カエデ(まいっちんぐカエデ先生・e07248)
イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)
栗山・理弥(ケルベロス浜松大使・e35298)
八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004)

■リプレイ

●開戦!
 夜闇に包まれた豪邸。
 ――の上階の騒音を聞きながら、八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004)とイリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)は1階を歩いていた。
「旅館だと思ったら旅館ではなかったのです……!」
「あくまで旅館風、なんですね」
 内観を見物しながら、感想を交わす二人。
 しかしその表情は明暗で分かれていた。
「良かった、営業に支障が出る可能性のある旅館はなかったのです!」
「旅館といえば美味しいお料理! と思ったのですが。ちょっと残念です……」
 安堵して笑うあこに対して、イリスはしょんぼり感が否めない。
 そう、彼女は『旅館のお仕事!』とバッチリ勘違いしていたのだ。それが来てみれば単なる旅館『風』邸宅。板前さんの技を感じられようはずもない。
「まぁ、仕方ありません。このガッカリは枕投げで発散しましょう!」
「きっと枕投げは楽しいのです!」
 イリスの背をぽむぽむしながら、階段を上がるあこ。
 すると鳥&信者たちの声が大きくなり、大部屋の襖前だともううるせえ。
 リーズグリース・モラトリアス(義務であろうと働きたくない・e00926)の首が、ゆっくりと傾く。ちなみにすでに泊まる気満々の浴衣である。
「ん~、枕投げバトル、そこまでしたいものなのか、な……」
「まあ楽しいもんなんじゃないか? 俺は小中高と修学旅行はホテルだったから経験ないけどな……」
「小……中高?」
「大学生だからな。一応言っとくけど」
 首を傾げたまま見下ろしてくるリーズグリースにきっぱり言っといたのは栗山・理弥(ケルベロス浜松大使・e35298)である。こちらもなぜか浴衣。
 その横には、真剣な顔してる日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)の姿も。
「修学旅行と言えば、夜に女子が部屋に来るっていうドキドキイベントこそ重要だろうに……色気の欠片も無いな」
「そうっすねー」
 適当な返事はシルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)。
 きっと蒼眞の話に興味はないのだろう。なにせその目線は羽丘・結衣菜(マジシャンズセレクト・e04954)に向いている。
「ビルシャナ……枕投げの恐ろしさを知らないみたいね」
 とほくそ笑んでる結衣菜に。
「燃えてるっすねー結衣菜さん」
「一応言っとくけど、枕以外の物は投げるなよ……?」
 シルフィリアスが呑気そうな一方、一抹の不安がよぎる理弥。
 と、そのとき。
「はーい、良い子のみんな見えてますか?」
 唐突に明るい声が響いた。
 何だろう、と理弥が振り向いてみると。
「リスナーのみんな、こんばんわー。今日はカエデの配信にきてくれてあっりがとぉー☆」
 新条・カエデ(まいっちんぐカエデ先生・e07248)が、ノートPCに繋いだカメラに向かってにこやかに手を振っていました。当然のように浴衣です。
(「配信してる!?」)
「今日はこれから、ケルベロスとビルシャナの枕投げ生放送を行いたいと思います」
(「しかもずっと回す気!?」)
 カエデのやる気満々ぶりに慌てる理弥。実家の家族の目に触れる万一を危惧する彼はわたわたと懐を探り、ちょうどええ感じの狐の面を装着した。なぜ持ってるのか。

「くらえ俺の必殺枕!」
「遅い、遅いぞ!」
「お前らが束になってかかろうとも……俺は負けん!」
 わーわー、と枕が行きかう大部屋。
 恥ずかしい台詞を吐きまくる鳥や信者たちは戦いを最高に満喫していた。
 だが、それも!
 襖が勢いよく開け放たれるまでだった!
「先生が……じゃなくて、ケルベロスが来ましたよ!」
「なっ、ケルベロス!?」
 すぱぁんと襖を開けた先生もといイリスに注目する戦士たち。
 ――その隙だらけの横顔に、シルフィリアス(襖が開くと同時に滑りこんでた)は思いきり枕を投げつけた。
「ぶへっ!?」
「枕投げなら、あちしが相手になるっすよ!」
「き、貴様ァ!!」
 突然の乱入に対抗心を燃やす男たち。
 戦端は、開かれた!

●戦場!
「俺の豪速球をくらえぇ!!」
「すみません、本当は楽しい枕投げですが、状況が状況なので……」
 ヒャッハーと枕を振りかぶる信者。彼に謝罪の言葉を告げながら、イリス(いつの間にかジャージ姿)は困ったような顔で枕を拾い上げる。
 で。
「……『全力で』行かせて頂きますね」
「ぐぼっふ!?」
 電光石火の速さで信者の顔面に投げつけたァ! 男のヒャッハー顔が白い枕に埋まり、彫像のように固まった姿勢で仰向けにダウン!
「次はどなたが受けますか?」
「こいつは手ごわいぞ! 囲め囲め――」
 イリスから圧を放たれた信者が、仲間へ目配せする。
 が、仲間も仲間でそれどころではなかった。
「ちくしょう! こいつ執拗に膝を!」
「この卑怯者ォ!」
「受け止めにくい個所を狙うのは当然だろう」
 蒼眞の膝攻めに苦しめられていたからだ。膝の絶妙に受けづらいところに枕をぶつけられまくっている。リアルに嫌な攻撃。
「だが集中すれば取れぬことも――」
「と思い始めたところで顔!」
『ふぼぉ!?』
 下を意識させたところで、蒼眞の枕が顔面を捉える。完全に虚を突かれた信者たちは背中から布団の上へぶっ倒れた。
「なんという手練……!」
「こいつら素人ではグハァ!?」
 猟犬たちのプレイにビビりだした信者の顔を、飛んできた枕が襲う。
 飛来したほうを見れば、手首をくいくい動かしてる理弥の姿。
「おーよく飛ぶ! これはたしかに楽しいかも……よしどんどん投げるぜ!」
「ちょっ、ちょっ!?」
 矢継ぎ早に投擲される枕に背を向けるしかねえ信者。対して、ネットで調べた枕投法を駆使する理弥は普通に楽しんでいる。
「枕を投げるテクが違う……!」
「いや、枕だけじゃないぞ!」
 力量差に慄く信者Aの肩を叩き、信者Bが別方向を指す。
 そこには、走る布団がいた。
「おふとんガードなのです!!!」
「くっ、くおおおお!?」
 疾走する布団――もとい布団を盾にしてるあこに押しこまれる信者C。
 耐えきれず敷布団に倒された彼がハッと目を開いたときには、すでに枕を構えたあこが自分を見下ろしていた。
「至近距離からぶっぱなせば外れないのです!」
「ぶべっ!?」
 投げつけられる柔らか枕。あこの一撃をくらった信者Cの腕がぱたりと落ちる。
「この調子でどんどん倒すのです!」
「敵は……化け物か!?」
「飲まれたら負けるぞ! 恐れる暇があれば枕を投げろ!」
「……は、はい!」
 猟犬たちの戦いぶりに気圧されていた信者たち。だがそこへ鳥さんの鼓舞が飛び、戦意を取り戻した彼らは再び枕を投げ始める。
 そして、それをぼんやり眺めてるリーズグリース。
「盛り上がってる、ね……」
 ひとつ枕を掴んだまま、ぼっ立ちである。枕が右へ左へと忙しくて何をどうしていいやらって顔になってる。
 だから、
「……あっ」
「一人当てたどーー!」
 信者に投げられた枕も避けきれない。見事に顔にぼふっ。
 しかしただ受けただけで終わらないのがリーズグリースだ。
「はわわっ!?」
「浴衣って動きにくい、ね……」
 間抜けな声で瞠目する信者。枕がイイ感じにリーズグリースの浴衣をはだけさせ、Fカップの谷間が外界にばばーんしていたのだ!
「これはっ!」
「見逃すわけにはいかんな!!」
「サービスシーンはしっかり提供しなくちゃですよね♪」
 思わぬ展開に色めき立つ信者&蒼眞&カエデ。中でもカエデはすかさずリーズグリースの足元に滑りこみ、ニコッと笑って配信カメラを向けた。
「リーズさんセクシーポーズを良かったらよろしくでーす」
「んぅ? こうか、な?」
「あーいいですねー。別のポーズもできます?」
「やってみる、ね」
 カエデに乗せられるままポージングするリーズグリース。カメラの前でも物怖じしないというか、気にしないのはさすがサキュバスと言うべきか。BANだけが怖い。
 と、カエデが配信の撮れ高を着々と蓄えてる一方。
「喰らえ、トランプ投げで鍛えた私の一投を!」
「ぶはあっ!?」
「こ、こいつも強いぞ!!」
 結衣菜は信者たちに無双していた。トランプ投げで果たして鍛えられるのかわからないが、とにかく鋭い投擲で男たちを薙ぎ倒しまくっていた。
「それそれ!」
「ぐあーーっ!?」
「ピンポイントに顔にーっ!」
 続々と倒れる信者。勢いに乗る結衣菜。
 だが、そのとき!
「回転をくわえることで攻撃力は三倍っす!」
「きゃーーーっ!?」
 後頭部に強烈な衝撃くらい、敷布団にずでーんする結衣菜。
 台詞でお察しのとおり犯人はヤスならぬシルフィリアス。ハンマー投げよろしくブン回した枕を的確に結衣菜の後頭部にぶつけたのだ。そして悪びれていない。
「シルフィ! 何するのよ!?」
「戦場に誤射はつきものっす。後頭部にドロップキックが誤射されることだってあるんすから枕が飛んでくるくらい普通のことっす」
「そんなのが許されるわけないでしょー!」
 弾丸のように飛び出す結衣菜!
 すたこら逃走を始めるシルフィリアス!
 そして!
「はーい、いいですよー笑顔よろしくですよー」
 カメラ片手に二人を追いかけるカエデ!
 ……うん、楽しそうで何よりですよ。

●消灯!
 ところで肝心の枕投げ戦争の状況だが。
「お、俺たちの投げた枕を枕で撃ち落とすだと……!?」
「さらに落とした枕を投げ返します!」
「ぎゃあー!?」
 もちろん差は開く一方でした。イリスを的にした男たちは、投げた枕を枕で相殺され、さらに落ちた枕で倍返しをくらうという憐憫を誘う状況になってます。
「貴様! 猫を盾にしやがるとは!」
「盾ではないのです! あこたちは二人で一人なのです!」
「――」
 文句を言ってくる信者を一蹴してるのはあこだ。ちなみにその足元ではベル(ウイングキャット)が枕の下敷きになっている。あこに囮に使われたばかりである。
「ベルの仇はあこがとるのです!」
「ぎにゃあーー!?」
 布団戦車となり信者に迫るあこ。
 とゆー感じでいよいよ凄惨(?)になってきた戦場。
 その真ん中で、カエデは鳥さんと1対1だった。
「勝負も折り返しというところですが、勝算はありますか?」
「相手チームは仕上がっている。非常に難しいだろう」
 インタビューしていた。
「明王さんも大変ですねー」
「うむ。だが我々はベストを尽くすのみ!」
 めっちゃ普通に話してるカエデ&鳥。インタビューも終始平和だった。
 ――が、そんなに丸く収まるわけがない!
「ぐああーーー!?」
「ぐああーーーっすーー!?」
 脈絡もなく飛んできたシルフィリアスの頭が、鳥さんの頭とどーん!
 いやもう枕でなく人体が飛んでるやん……と呆れながら振り返ればそこには紛うことなきドヤ顔をしている結衣菜さんが。
「シルフィ……貧乳にだって人権があるということを思い知らせてあげるわ!」
 と仰ってる結衣菜さんの眼に光はない。ついでにお供のまんごうちゃん(シャーマンズゴースト)の姿もない。絶対に主にビビっている。
 だがシルフィリアスとて、枕にされて黙っている女ではない。
 すぐさま立ち上がると、
「いきなりなにするっすか! 結衣菜さん!」
「シルフィ? そっち壁よ?」
 壁に向かって猛抗議をし、結衣菜にきっちりツッコまれていた。説明するまでもないと思うがこれは『壁』と『絶壁級の胸』を同一視する高度な煽りであり、やれば一撃で怒りの鉄槌が――。
「結衣菜ちゃんの可愛らしい胸が撮れてますー」
「新条さん? そっち背中よ?」
 言ってるそばからカエデが結衣菜の背中にカメラを向けていたー!
 その結果。
「枕となったシルフィの一撃、とくと喰らいなさい!」
『あああぁーーっ!?』
 シルフィリアスを投擲されて仲良くお仕置きされました。
「ん~、枕投げは枕を投げるのであって人を投げるものじゃない、よ?」
 じっと部屋の片隅に座り、傍観してたリーズグリース。気づけばその体は少しガクブルしていた。人が弾扱いされてるからね、しょうがないよね。
 で、ここで気になることがあると思う。
 シルフィリアスをぶつけられた鳥さんがどうしてるか、だ。
 けど安心して下さい。彼は――。
「そーら高級な羽毛枕だぞ」
「アバババババババ!!?」
「隊長ぉぉーーー!?」
 蒼眞の手により、美しくジャイアントスイングされていました。
 足首をホールドしてぐるんぐるん。すっぽ抜けそうな速度に達したところで、蒼眞は遠慮なく鳥さんという枕を放った。
「ぐげえっ!?」
「うごごっ!?」
 鳥枕と激突し、呻き声を上げて倒れる信者たち。
「人まで投げるとは……」
「違い過ぎる……次元が……」
 戦意を喪失したのだろう。信者たちはぴくりとも動かなくなった。
 そしてその代わりに、枕状態から復帰した鳥さんがゆらりと起立。
「おのれ無茶苦茶しおってぇ! 怒るよワシも!」
「ダメージはないはずだが、やはりダメか……」
「マナーの問題でしょ!」
 謝る素振りもねえ蒼眞さんに、激おこの意を表する鳥さん。
 どんぐらい怒ってるかとゆーと、背後にゆらゆらオーラ的なもんが見えるぐらい激高している。これは正座説教2時間コースかもしれない。
 しかし、その危機を救ったのが理弥だった。
「おいみんな! 先生が来たぞーー!!」
「な、何ぃ!?」
 理弥の一声で、鳥が慌てて布団に身を隠す。先生に見つかればタダでは済まない。そんな枕投げの大原則の前では鳥さんも学生の小僧に過ぎなかったのだ。
「まあ来る先生なんていないわけだがな」
「ちなみにこれ、全国大会でも使われてるれっきとしたルールらしいぜ」
 布団に隠れる鳥を見下ろす蒼眞に、ぽつりと雑学を披露する理弥。

 その後、正気に戻った信者たちをそっと大部屋から送り出すと、猟犬たちは粛々と寝込みの鳥さんを撃滅したのだった。

●就寝!
 30分後。
「こらシルフィ! おとなしく投げられなさい!」
「何回投げる気っすか! 同じ手は食わないっす!」
 結衣菜とシルフィリアスはまだやりあっていた。見たところ、髪の毛を巻きつかせてくるシルフィリアスを結衣菜が投げあぐねてる感じである。対策が進んでいる。
 そんな二人をスルーして、リーズグリースは布団にもぞもぞ入ってく。
「疲れたからお先に落ちさせてもらう、よ」
「俺はしばらく見物させてもらうぜ。酒の肴にな」
 缶チューハイ片手に観戦モードを整えてるのは蒼眞だ。こんなの持ってきてる辺り彼もまた泊まってく気満々である。だらだら飲んで寝落ちする気満々である。
「では私たちも!」
「疲れちゃったので今日は一泊するのです!」
「良さそうな布団だし、ぐっすり眠れそうだなー」
 イリス&あこ&理弥の三人も、ばさっと掛け布団を己に被せる。喧嘩に巻きこまれないよう布団の位置は結衣菜たちから対角線上。万全だ。万全のスヤァ態勢だ。
 一部を除き静かになってゆく大部屋。
 その片隅で、カエデは潜めた声で、言った。
「配信を見てくれてありがとう。高評価、チャンネル登録をよろしくぅ♪」
 ……結局最後まで配信しとったんかい!

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年5月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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