カレーが美味しいスイーツバイキングがあるらしい

作者:星垣えん

●おまえの居場所ではない
「んー。このムースケーキ最高!」
「ふわふわのスフレチーズケーキも絶品ぞよ……」
「ティラミスこそ正義なんだよなぁ」
「お母さーん。ぼくプリン食べたい!」
 がやがやと耳を打つのは、活況な人々の声。
 都内にあるスイーツバイキングは大勢の客たちで賑わっていた。
 所狭しと並ぶショーケースやディスプレイスタンドを巡っては、並んでいるスイーツを物色する。そして「せっかくのバイキングだしね」とカロリー度外視で好きなものをピックアップして、ぱくりぱくりと食べてゆく。
 そんなんもうね、最高でないわけがなかったよね。
「これもう何個目のショートケーキだろぉ……」
「だってアイスクリームが沢山あるんだもん……食べないわけには……!」
「ゼリーもスッキリしてて良き……」
 等しく蕩けた表情を浮かべながら、無心にスイーツを頂く女性たち。どれだけ食べても料金は同じとあれば止まる理由などあろうだろうか。そう言わんばかりに暴食です。
 だがしかし。
 そんな活気あるスイーツバイキングは、普通の店とは一味違ったりした。
「ここのカレーがまた美味いのよねー」
「ほんとほんと。主役のはずのスイーツを喰っちゃってるレベル……」
「このスパイシーカレーが食べ放題とか!」
 一脚のテーブルを囲む御婦人たちが食しているのは――カレーだ。
 そう、この店ではカレーも提供していた。というかカレーだけじゃなくてパスタや中華、ハンバーガーやフライドチキンといったジャンクフードまで取り放題だった。
 で、その中の一番人気がカレーだった。
 程よい辛さのスパイシーカレーが甘くなった舌に丁度よかったんですわ。
「カレーサイッキョ」
「このために来てると言っても過言じゃないわ!」
「おかわりしちゃおっかな……」
 どこのグループを見ても一人はカレーを食っている。半ばカレーバイキング。
 そんな状況を、見過ごしておけなかったのだろう。
「スイーツバイキングにどうしてカレーがあるんだァァァァァァ!!!!」
『きゃああああーーーー!!?』
 入口から憤怒のオーラで転がりこんできたのは、言うまでもなく鳥だった。

●謀略じゃないですか
「カレーが美味しいスイーツバイキング……なんてものがあるんだね」
「炒飯が人気のラーメン屋さんみたいでござるなぁ」
「何とも言えない感じっすね……」
「カレーが食べたいなら、カレー屋さんに行けばいい気もするけど……」
「食べ放題って点がでかいんすかね?」
「懐の心配をせずに済むのはいいことでござる」
 タブレットで店のウェブサイトを眺めながら、小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)とガルディオン・ドライデン(グランドロンの光輪拳士・en0314)と黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)が真面目に話しこんでいる。
 猟犬たちがヘリポートに着いてから1分も経ってるのに、である。
 ああそーゆー感じですね、とリラックスする一同だったよね。
「あ! すいませんっす皆さん! すぐに色々説明するっすね!」
 やっと気づいたダンテくんからもたらされる簡単な状況説明。
 それによれば『スイーツバイキングでカレー出てくるの絶許!』とか言ってる鳥さんが都内のスイーツバイキングを強襲するらしい。ちょうどお昼時でたくさんの女性客がいるのでかなりヤバい感じであるとのこと。
「だから皆さんにはすぐに現場に向かってもらって、スイーツバイキングのカレーの美味しさってやつを確かめてきてもらいたいっす!」
 うん、おかしいね。
 話の流れがおかしいよねダンテくん。カレー画像が映ったタブレットの画面をこっちに見せてきてるけど、それまでの説明との方向転換がすごいよね。
「此度の仕事、一筋縄ではいかぬでござろう。なのでそれがしも同行するでござる」
 何がどう一筋縄ではいかないのかな、ガルディオンくん。
「そこのお店は、カレー以外にもいっぱいあるみたいなの……。
 パスタとかチキンとか……あ、もちろんスイーツも……」
 涼香さんはすっかりバイキングのほうに意識が持ってかれてるね。
「――」
 ねーさん(ウイングキャット)も心なしか普段より高ぶってる感があるね。ぱたぱたしてる翼がちょっぴり速くなってるような気がするね。
 しかしまあ、何にせよ、せっかく訪れるならば食べてくるのも悪くないだろう。
 パパッと鳥を処してから楽しんでくるよ的なことを、猟犬たちはダンテに告げた。
 するとダンテは「皆さんありがとうございますっす!」とニパッと笑い、一同を自身のヘリオンの中へと導いた。
 そして全員が乗りこんだところで、操縦席から振り返った。
「ちなみにもちろん、バイキング代は自腹でお願いするっすね!」
 …………ちくしょう!! 謀られたぁぁっ!!!


参加者
伏見・勇名(鯨鯢の滓・e00099)
ヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020)
霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)
七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)
霧鷹・ユーリ(鬼天竺鼠のウィッチドクター・e30284)
小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)
カロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629)
リリス・アスティ(機械人形の音楽家・e85781)

■リプレイ

●飲み物ではない
 危機迫るスイーツバイキング。
 その店内には、すでに猟犬たちの姿が見えていた。
「皆さん、落ち着いて順番に移動してー」
「はいはーい、もうすぐフライドチキンの怨霊が来ますからねー」
 客を店外へ促しているのはヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020)と霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)。
 彼らの手で人々は出口へと導かれ、そこでは小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)も皆を手招いてる。
「大丈夫だよ、バイキングは時間との闘いだからね」
「は、はぁ……」
「間が開いちゃったら満腹感が出て来て、沢山食べられなくなるもの」
 怪訝そうな目を向けてくる人たちに、任せてとばかりに首肯する涼香。
 鳥に先んじて店に着いた猟犬たちは、着々と安全な迎撃態勢を築いていた。むろん後で美味しいスイーツやらを食べまくるためである。
「スイーツ……食べまくるぞー!」
「こういう店って、心が浮わつきますよねぇ」
 動いてゆく人の列の横でヴィルフレッドが万歳と手をあげると、裁一はくすりと笑った。
 ちなみにノーサバトである。スムーズに避難してもらうために。
 が、その精神は紛れもなくリア充を妬むサバト戦士。
「女性受けしそうですし、きっと大勢の野郎どもが女性とのデートに利用していることでしょう……もうこれは爆破すべきでは!!!」
「ガルディオンさん! 確保ーっ!」
「承知でござる!」
「な、何をするだーーッ!!」
 無性に腹が立ってサバト棒を取り出すものの、ヴィルフレッドに気づかれて御用になる裁一。ガルディオン・ドライデン(グランドロンの光輪拳士・en0314)にバックハグもとい羽交い絞めされる悲しい状態に。
 とゆー店内のどうでもいい騒ぎをよそに、店外では伏見・勇名(鯨鯢の滓・e00099)とリリス・アスティ(機械人形の音楽家・e85781)が鳥の来店に備えている。
「あまいものはじゃすてぃすー。あまいのとしょっぱいののいったりきたりもまたじゃすてぃすー」
「楽しみですねえ、勇名様。私もスイーツは好きなんですよ」
「すいーつはじゃすてぃすー」
 間延びした歌のように繰り言を唱えている勇名が、にこりと笑っているリリスにこくんと頷いてみせる。
 そして思い出したように尋ねた。
「……ところで、あまいもののためにはハラキリーしないといけないときいた」
「もしかして『自腹を切る』という言葉のことを言ってるのでしたら、切腹のことではないですよ」
「あ、ちがう? そか。よかった」
 少し後ろで聞いていた七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)に訂正され、ホッとする勇名。
 果たして、本当にやるつもりだったんだろーか。
「自腹は痛いですが、世の中そんなに甘くもないということですわ」
「なるほどー」
「皆さん! ビルシャナが来ましたよ!」
 諭すようなリリスの言葉に勇名が頷いたところで、霧鷹・ユーリ(鬼天竺鼠のウィッチドクター・e30284)が敵の到来を告げる。
「うぉおおおお! カレー許すまじ!」
 魂の咆哮をあげながら爆走する鳥類。
 店前にドリフト停車をキメた彼は、猟犬たちを睨みつけた。
「何だ貴様ら……カレー擁護派か!!」
「どちらかと訊かれれば、そうですね!」
 怒れる鳥の前にででんっと出るユーリ。
「スイーツバイキングにカレーがあっていい道理がどこにある!」
「逆に考えてみましょう! カレーに合うスイーツがここには隠されていると!」
 翻ったユーリがてくてくと店内へ入ってゆく。
 それを追って鳥さんも鼻息荒く足を踏み入れると、ユーリは彼と一緒にスイーツラインナップを見て回った。
「甘い口当たりにマンゴーソースでフレッシュ感をアップしたパンナコッタ!
 フルーツと生クリームを乗せた抹茶プリン!
 キウイやイチゴでほんのり酸味が効いたフルーツゼリー!
 どうですカレーに合いそうでしょう? ビルシャナさんも見つけました?」
「見つからねぇよォォォーー!!」
 笑いかけてきたユーリに吠え散らかす鳥さん。
「だいたい合う合わないの問題じゃないから! カレーが場違いって話だから!」
「カレーもスイーツも似たようなものだと思うが……え? 結構違う?」
「おまえはもう生まれ変わってきなさい! 手遅れだから!」
 横のほうで真剣に首を傾げるカロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629)をビシッと叱りつける鳥さん。カレーとスイーツが似てるとか何を言ってるんだこの兎は。
「うん、カレーは確かにスイーツじゃない」
 ひょっこり顔を見せたのは、涼香。
「そうだろう。話のわかる人がいて助か――」
「飲み物なんだ」
「…………んん?」
 鳥さんが首を45度傾けるが、涼香は構わず続けた。
「スイーツに飲み物を添えるのは常識。甘くなりがちな口を引き締めてくれて、次の一口を美味しくさせてくれるもの……それが飲み物。つまりカレー」
「ごめん何言ってるかガチで」
「カレー。でしょう??」
「近い近い近い!!」
 ぐいぐい圧をかけてくる涼香の肩を掴み、距離をキープする鳥さん。
 その闘いは痺れを切らした綴が、
「電光石火の蹴りを、受けてみなさい!」
 と鳥さんの後頭部に旋刃脚をお見舞いするまで続いたそうです。

●仕事を済ませた後で
 ずらり、と並ぶのは煌びやかな洋菓子の数々。
 そんな思いつく限りの『おいしいもの』に囲まれて、勇名は幸福を満喫していた。
「うごいたあとは、あまいものだな」
「ええ。この絶妙な甘み、最高ですね」
「んー、さいこう」
 隣で頷く綴に、パフェのカップからクリームを掬いながら返事する勇名。
 鳥を処すなりバイキングに突入した彼女の現在の装備は万全だ。
 右手にはスプーン、左手にはこんもりクリームを詰めこんだ苺パフェ、さらにテーブルのスペースには冷蔵ショーケースから攫ってきた無数のケーキが並んでいる。
「こんなわがままがゆるされてしまうとは、おもわなかった。だいじょうぶだろうか。おこられたりしない?」
「怒られませんから安心して下さい。スイーツバイキングですから」
 無垢な目を向けてくるレプリカントにそう言って、ティラミスをひと掬いする綴。まろやか濃厚なクリームと、ほんのりビターなココアパウダーが舌の上で混ざり合い、頬が綻ぶような美味に襲われる。
「こんなティラミスが好きなだけ食べられるとは。こちらのショートケーキも期待大です」
「あ、ぼくもしょーとけーきとってきた。けーきはいーもの」
「では味わうとしましょうか」
 期せずして同じケーキを選んだ二人が、ぱくっと同時に口に運ぶ。
 それをちらりと横目に見ながら、カロンもチーズケーキをぱくっと頬張った。
「うん、少し焦げてる感じが香ばしくて美味しいです」
「ねー。量も質も良いだなんてすごい店だよ。ビルシャナより手ごわい……」
 しみじみとカロンに言葉を投げてきたのは、ヴィルフレッドだ。
 正確に言うと、スフレチーズケーキで口を膨らませてハムスターみてーになってるヴィルフレッドくんだ。とても柔らかそうなほっぺたです。
「スイーツを選ぶのも一苦労だね」
「そうですね……」
 ヴィルフレッドの嬉しい苦悩に共感し、店内を見渡すカロン。
 四方八方。どこを見ようとも華やかなスイーツに溢れている。
「ケーキにパスタ、アイスにフルーツ……これは確かに一筋縄では行かないと言わざるを得ませんね……」
「うむ。それがしの言う通りでござった」
 苦笑いするカロンに、向かいのガルディオンが頷く。
 彼の皿には――未だ何のスイーツもなかった。
「どれから食べるか決めかねてしまうでござるよぉ」
「ガルディオンさん……意外と決められない性格?」
 縮こまってるグランドロンに不思議そうな顔を向けるカロン。その横からヴィルフレッドはずいっと身を乗り出してくる。
「食べながら好きなものを見つければいいんだよ。と言いつつ僕はパンナコッタをおすすめする!」
「パンナコッタでござるか」
「こっちのアイスクリームも美味しかったですよ」
「ではその二つを食べてみるでござる!」
 二人の助言を受けて駆け出す巨体。
 一方、その重たい足音をバックに、リリスや涼香は美味しいケーキパーティーを遂行していた。
「最初のチーズケーキも素晴らしかったですが……このモンブランもとても良いですわ」
「苺タルトもすごく美味しい。ついつい2個目にいっちゃいそう」
 しっとりとした栗色のそれを味わってリリスが微笑を零せば、涼香はぎっしりと苺の敷き詰められたタルトを頬張って嬉しそうにしている。表情ゆるんゆるん。
「でも、ムースケーキも食べないと」
「わたくしもチョコレートケーキを。あぁでもあちらにドーナツもあったのですわ。目移りしてしまって困りますわね」
「うん。困る困る」
 あむっ、あむっ、とケーキを口に運びつつ女子トークしとる涼香&リリス。それをねーさん(ウイングキャット)はずっと眺めていたのだけど、涼香がその視線に気づいたのはあらかたケーキを食べきってからだった。
「ねーさんも何か食べる? そういえばあっちに中華コーナーがあったね?」
 ねーさんを胸の前で抱えて、小走りで向かう涼香。
「花巻、花巻があるよ! これにしようか!」
「――!」
 ほかほか出来立ての花巻(中華まんの生地みたいなもの)を見つけ、盛り上がる涼香とねーさん。それを遠目に眺めて笑いながらリリスは新たに持ってきたケーキに視線を下ろし、携帯端末をかざす。
「せっかく綺麗ですから、写真も撮っておきましょうか」

 ――と、仲間たちの多くが甘味を楽しんでいる中。
「これが名物のカレーですか~。美味いですね~」
「ほんのり汗が滲むような……これがスパイスの力!?」
 裁一(サバト服に着替えた)とユーリは、一足早くスパイシーカレーを食っていた。程よくとろみのついたルゥは、辛さと美味さがが丁度良い塩梅で、皿の上の白飯はもう二割ぐらいしか残っていない。
 で、なぜ先にカレー食ってるかとゆーと。
「俺、スイーツは食後派なんですよね~」
「私も先に辛いものを食べておこうと思いまして!」
 てな感じらしかった。
「やはりチキンカレーが至高ですよ。チキンの食べ応えがカレーにはよく合うのです……あとフライドチキンが美味い」
「ダブルでチキンを味わうなんて……やりますね!」
 フライドチキンを片手にカレーをばくばく食い進めるサバトに感心する鬼天竺鼠。
 が、そこでふと彼女の頭に疑問が浮かんだ。
「そういえば裁一さん、こんな店は爆破すると言っていたのでは?」
「リア充に罪あれど、味に罪なし!」
「な、なるほど!」
 キュピーン、とマスク越しに眼光を光らせる裁一に納得するしかないユーリ。
 そこで深く突っこんで店を爆破されてもアレだったし、正しい判断だったよね。

●次への活力
 バイキングが始まって30分!
 猟犬たちは、気になるカレーに着手していた!
「これは……スパイスがよく効いていますわ」
「とってもスパイシーな味わい、噂に違わず至高の仕上がりだと思いますね」
 熱々のカレーを頬張り、ピリッと気持ちのよい辛さに舌鼓を打つリリスと綴。
 炊き立ての米に絡まったそれは、バイキングの品とは思えぬ完成度だ。一口食べるだけで複雑なスパイスの香りが感じられて、気づけば二口三口とスプーンが動いている。
「これは一番人気となるのも頷けますね。とても美味しいです」
「辛い物好きの私としても、このカレーは素晴らしいです。お客の皆さんがスイーツを忘れて食べてしまうのも不思議ではありませんね」
 手放しで称賛し、ぱくぱくと食べ続けるリリス&綴。
「そしてこの後にスイーツを頂くんですね」
「確かにこれは無限ループに陥るかもしれません」
「甘いものを食べ続けたところにこれは、抗えないですよね」
 店の策略(?)に感心する二人に同調したのは、カロンだ。
 スパイシーなルゥをスプーン一杯飲んでみた獣人は、じっくりその香りを味わうと、微笑とともに頷いた。
「カレーをメニューに加えたのはもしかしたら、甘いものや冷たいものばかりだと食べ飽きてしまうから、という店側の配慮なのかもしれませんね」
「まんまと乗せられてしまいそうですわ」
「私ももうアイスとかが食べたくなってます」
「よく考えられています。この店を守ることができて本当によかった」
 ふふ、と満足げに笑うカロン。
 ――の横でヴィルフレッドはせっせかとカレーを爆食している。
「ちょっと辛くて、後のスイーツ食べる時の活力になるからいいよね! でも、スイーツも食べたいからほどほど加減が難しいなぁ!」
(「ほどほどは超えている気がしますけど……」)
 むぐむぐ頬を動かす小動物に、カロンの心の声が飛ぶ。
 うん、3皿目だったからね。ヴィルフレッドくんもう3皿食ってるから。
「大人が飲み会のあとラーメン食べたいっていうの、こういう感じなのかな。確かに口休め的なのは必要だよね」
 とか言いながら休むどころじゃない量を食ってるから。
「うおおお! 待ってて後のスイーツ!!」
「カレー食べた後のスイーツはいいですよぉ」
「やっぱり、柔らかい甘さはカレーの後に良い感じですね! パンナコッタ!」
 爆食するヴィルフレッドを応援するのは、すでにカレー工程を終えている裁一とユーリである。サバトはウマウマとストロベリーアイスにかぶりつき、ユーリはマンゴーパンナコッタと抹茶プリンの二刀流で小躍りしている。
「抹茶の香りと生クリームの甘さが優しく溶け合って、抜群のおいしさです!」
「そちらも美味そうですね~。このレアチーズケーキを完食したら私も食べてみましょう」
「ぼくも、もぐもぐしよーかな」
 カレーを横目にスイーツを堪能しとる二人に熱い視線を注ぐのは、勇名だ。
 勇名は甘いものは大好きだが辛いものは苦手だった。故にスパイシーカレーには手を出さず、無心でスイーツを食べ続けている。もうテーブルとショーケースを二桁は往復したんじゃないだろうか。
「まだまだたべられるー。つぎはなにたべよー」
「私はフルーツゼリーにいってみます!」
「俺はまた別のアイスでも食べてみますか~」
 ぱたぱたぱた、とスイーツのもとへ旅立つ勇名&ユーリ&裁一。
 そんな一行を尻目に、涼香はスパイシーカレーに真面目な顔で対峙中。
「インドと中華の融合、すばらしいなあ……」
 と、うっとり頬張ったのは、カレーを絡めた花巻。
 傍らをパタパタ飛ぶねーさんと一緒に、涼香はもっちりした花巻の味わいを楽しむのだった。
 そしてもちろん、カレーを食べきったら間髪入れずスイーツに向かうのだった。

●またいつか
「ユーリ殿は変わった姿になれるのでござるなぁ」
『えへへ……』
 思うままスイーツを食べて満足したガルディオンが、膝の上でだらーんと溶けてる鬼天竺鼠をなでなでする。ちなみにユーリである。
 色々食ってたら、美味しさと幸せのあまり動物変身していたらしい。
『――♪』
「まだ撫でるでござるか? いいでござる」
 膝上でごろごろするユーリをゴツい手で撫でるガルディオン。彼の静電気でユーリがびっくりするまで続いたそれを横目に、涼香はプリンをもぐもぐしている。
「今日はたくさん楽しめたね、ねーさん」
「――♪」
 プリンに乗ったさくらんぼをつつきながら、お腹を撫でてるねーさんに笑う涼香。寿司一人前をたいらげたねーさんは満たされきって脱力していた。
 同じく寿司を味わったリリスは、食後のお茶をことりと置く。
「まさかお寿司まであるとは思いませんでしたわ。ご馳走様でした」
「ほんとに、ね」
「カレーも美味しいし、お寿司もある。変わったバイキングもあるものなのですね」
 リリスに頷く涼香。その横で綴はデザートのゼリーを食べながら本日の感想を口にする。
 洋食のみならず寿司までカバーするとは手広いにも程がありますよね。
「んうー。またきたいなー。おいしかったー」
「今度、プライベートで来ようかなぁ……」
 濃厚なカスタードプリンを食べる勇名が、すっきりしたフルーツゼリーを味わうヴィルフレッドが、終わりゆく宴を惜しむ。まだ目線がスイーツに飛んでるし名残惜しそう感がパない。
 裁一は、ダンッとテーブルを叩いた。
「こんなリア充どもが来そうな店を利用してはいけませんよ~。ここが繁盛するということはリア充が勢いづくということ! それだけは許されません!」
「と言いつつ堪能してますよね、この店を」
「それはそれ! これはこれ!」
 ツッコんできた綴を一喝し、カレーとプリンを交互に食べる裁一。完全に術中やないか。
「まあ、今日は良い一日だったということで」
 騒がしい仲間たちに苦笑いしながら、そっと席を立つカロン。みんなまだまだ楽しそうだしひとまず勘定は自分が済ませておこうというちょっとした配慮だった。代金は後で割ればいい。
 それに、店の人に伝えたいこともあった。
「とても美味しかったです! ごちそうさまでした!」
「ありがとうございます。またおいで下さい」
 感謝を口にして、店員さんと笑顔を交わすカロン。
 と、そこへユーリ(変身は解けてる)が横から一人分の代金を追加した。
「ユーリさん?」
「お代はもう頂きましたが……」
「いえ! ビルシャナさんも、一緒に食べましたから!」
 怪訝そうな視線を向けてくるカロンと店員に、にっこりと笑うユーリ。
 そういえば、いちおう鳥さんも入店はしてましたしね。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年5月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 0
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