おでん屋は屋台の店しか認めない!

作者:秋津透

 その居酒屋は、手作りおでんが名物だった。コンビニなどでおでんを売らなくなる時期でも、冷やしおでんと熱々おでん、両方を客の好みに応じて提供していた。
 ところが、ある時、その店の正面に車が止まり、中から鳥人間ビルシャナと、四人の信者たちが降りてきた。どやどやと店に乗り込んできたビルシャナたちを見やって、店の主人が恐怖の叫びをあげる。
「き、来た! いつか来るかと恐れていたビルシャナが、『夏におでんを出す店絶対に許さん明王』がついに来た!」
「違う! 我は『夏におでんを出す店絶対に許さん明王』などではない! 我こそは『おでん屋は屋台の店しか認めない明王』である!」
 高らかにビルシャナが宣言し、うわあ、予想以上にタチの悪いのが来やがった、と、店の主人が頭を抱える。そしてビルシャナは、そのままの勢いで演説を始める。
「そもそも人は、何を以て『おでん屋』という存在を知るのか? それはもちろん、マンガに出てくる、人が引く屋台のおでん屋に決まっておる! 屋台のおでん屋で子供が小銭を出して買う、三角と丸と四角の三点を串に刺したもの、それがおでんだ! それ以外のおでんやおでん屋は、我は認めん! まして、居酒屋でおでんを売るなど、絶対に許さん! 夏だろうが冬だろうが春だろうが秋だろうが、許さん! 天誅に値する!」
 そして、演説の間に主人や店員、居合わせた客が逃げ出して無人になった店に、ビルシャナは孔雀型の火炎を発して叩きつける。あっという間に、店内は炎に包まれた。

「おでんにこだわりを持つビルシャナが出るような気がしたんだけど、まさか、ここまでこじれまくってるとは思わなかったわ」
 天月・悠姫(導きの月夜・e67360)が溜息混じりに告げ、ヘリオライダーの高御倉・康も溜息混じりに言葉を続ける。
「はい、悠姫さんの予想通り、というか、予想を越えてこじれたビルシャナ『おでん屋は屋台の店しか認めない明王』が、神奈川県海老名市の居酒屋を襲って焼き討ちをする、という予知が得られました。ビルシャナは長々と演説をしてから火を放ったので、店にいた人々は早々に逃げ出し犠牲者は出ないようですが、だからといって放置はできません」
 そう言うと、康はプロジェクターに画像を出す。
「現場はここです。今から急行すれば、ビルシャナたちが襲ってくる時刻より三十分ほど前に到着できます。事情を話して、店の人やお客さんには事前に避難してもらうのが良いと思いますが、店を閉めてしまうとビルシャナたちがよそへ行ってしまうので、必ず開けた状態にしておいてください。店が開いてさえいれば、他の状況がどんなに不自然でも、ビルシャナたちは突入してくるでしょう」
 そう言って、康は画像を切り替える。
「ビルシャナのポジションは不明。グラビティは孔雀炎を使いますが、他はわかりません。周囲を見ないで激しく主張するタイプのようで、あまり戦闘慣れしているようには見えませんが、油断はできません。信者は背広姿の男性四人、ビルシャナに従ってはいますが、演説に賛同するわけでも、焼き討ちに加わるわけでもないようです。おそらく車を調達するために、通りがかった不運な人たちに催眠をかけたのではないかと思います。経験則として、説得・離脱させられないうちに戦闘になったら、ディフェンダーとして盾に使われてしまうでしょう」
 そして康は、一同を見回す。
「いったい何がどうなって、こんな変な教義を奉じるに至ったのかわかりませんが、ビルシャナになってしまった人は倒すしかありません。『ヘリオンデバイス』での支援も可能な限り行いますので、できるだけ他に被害や悪影響を与えないうちに、撃破していただければと思います」
 ケルベロスに勝利を、と、ヘリオンデバイスのコマンドワードを口にして、康は頭を下げた。


参加者
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)
パトリシア・バラン(ヴァンプ不撓・e03793)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣精・e11231)
香月・渚(群青聖女・e35380)
天月・悠姫(導きの月夜・e67360)
リリス・アスティ(機械人形の音楽家・e85781)
ニケ・ブレジニィ(マリーゴールド略してマリ子・e87256)

■リプレイ

●事前打ち合わせ
「降下したらすぐに、リヤカーとカセットコンロを急いで調達してこようと思います。店主さんたちの避難は、お願いできますか?」
 現場に向かうヘリオンの中で、ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)が真顔で告げ、他のメンバーたちは一瞬顔を見合わせる。
「リヤカーとカセットコンロって……ああ、屋台を再現するのか。それでビルシャナを引き付けよう、ってことだな?」
 反問する日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)に、ミリムは真顔のままうなずく。
「ええ。まともな屋台にならないのは計算のうちで、詳しく知っているのならその辺ご指導含め教えてくれません? と言ってビルシャナの気を引こうと思います」
「それナイスです! 鳥もおだてりゃ信者を忘れる、と言いますもんね! 私は鳥の主張をベタ褒めして、おでん屋台コミュニティの情報に誘導しようと企んでいたんですが、屋台を用意しちゃえば早いですね!」
 ニケ・ブレジニィ(マリーゴールド略してマリ子・e87256)が熱烈賛同し、パトリシア・バラン(ヴァンプ不撓・e03793)もうなずく。
「ナルホドネ。ワタシは、ドコに屋台のオデン屋あるのか教えてヨ、と挑発するツモリだったケド、店の前に来てマス! とナレバ、鳥ハ間違いなく引っ掛かるネ」
「それで、ビルシャナを店の外に追い出して、うまく信者が取り残されれば説得は簡単だろう。もしくっついて出て行ったとしても、あらためて外で説得すればいい。いずれにしても、店への放火は防げそうだな」
 ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣精・e11231)が考え深げに呟き、天月・悠姫(導きの月夜・e67360)が冷静な口調で訊ねる。
「いい作戦だと思うけど、タイミングが難しくないかしら? そもそも三十分で、カセットコンロはともかく、リアカーを調達できる?」
「そこは、なんとかするつもりです。市役所に連絡して、公的な備品のリアカーがあれば出してもらいますし、なければリサイクル業者とかを紹介してもらえば」
 ミリムが答え、更にニケが告げる。
「マインドウィスパー・デバイスを使えば、両方の状況を連絡して調整できますから。タイミングは合わせられると思います」
「そうだね。多少調達が遅れても、その間はビルシャナにしゃべらせとけばいいんだから、問題ないと思うな」
 香月・渚(群青聖女・e35380)が告げ、リリス・アスティ(機械人形の音楽家・e85781)がうなずく。
「私もパトリシアさんと同様、今の時代に屋台販売は困難では、と言おうと思っていました。でも、ビルシャナのことですから、困難だからこそ敢えてこだわるのだ、とか言いそうかな、とも思っていたのです。そこへ本物の屋台が現れれば、きっとビルシャナは飛びつきますね」
(「……リヤカーとガスコンロで、本物の屋台になるのか?」)
 蒼眞は内心突っ込んだが、ミリム自身はまともな屋台にならないのを計算のうち、と見ているのだから問題ない。
「じゃあ、ウィアテストはそっちの作戦に専念してくれ。俺たちは事情を話して、店主や客、それに近隣住民の方々を避難させよう」
「よろしくお願いします」
 そう言って、ミリムは軽く礼をした。

●作戦開始!
「ウィアテストさんと日柳さん以外、全員現場に戻ったわ。避難完了、準備完了よ」
 ニケからマインドウィスパー・デバイスを通じて連絡が入り、店員の格好をして居酒屋の前に立っている蒼眞は小さくうなずいた。
「こちらも近づいてくる人も車もなし。エーヴィヒカイトの殺界が効いてるな」
「半径300メートル人払いだもんね。隣近所全部に事情話して避難してもらって正解だわ」
 苦笑混じりに、ニケが応じる。今回の現場は商店街と住宅地の中間ぐらいの場所にあり、殺界を使うと近所の店や家に影響してしまう。火災の可能性もあるので、手分けして周囲の店舗や住宅を回り、全員町内会館へ一時避難してもらうことにした。
「ウィアテストはこっちに向かってるのか?」
「ええ、市役所のトラックにリヤカー乗せて移動中よ。緊急車両ってわけじゃないから、混雑や赤信号に引っかかったりして、到着までも少しかかるかな?」
 ニケがそう言った時、ヘリオライダーの予知通り、一台のワゴン車が乱暴な運転で店の前へ走りこみ、急停車した。
「来たぜ」
 思念だけで店内に告げる蒼眞には見向きもせず、車から降りてきたビルシャナと四人の信者が、どやどやと居酒屋へ走りこむ。蒼眞は苦笑し、店の扉に「臨時休業」と書いた紙を貼り付け、店内に入って扉を閉める。
 そしてビルシャナは、店内で待ち構えている六人のケルベロスに対し、まさに知らぬが仏で高らかに宣言する。
「我こそは『おでん屋は屋台の店しか認めない明王』である! そもそも人は、何を以て『おでん屋』という存在を知るのか? それはもちろん、マンガに出てくる、人が引く屋台のおでん屋に決まっておる! 屋台のおでん屋で子供が小銭を出して買う、三角と丸と四角の三点を串に刺したもの、それがおでんだ! それ以外のおでんやおでん屋は、我は認めん!」
 と、ビルシャナがそこまで言ったところで、パトリシアが的確にタイミングを計って告げる。
「屋台のおでんネー。ワタシ地球の反対側の出身だから見たコトナイノ。どこで食べられるのか教えてヨ!」
 予定では挑発のセリフだったが、そこはビルシャナをおだてて信者を忘れさせる作戦。パトリシアはいかにも無邪気で好奇心旺盛な異邦人を演じ、明るく訊ねる。するとビルシャナは、得たりとばかりに応じる。
「屋台のおでん屋を見たことがないのか! それは残念なことだ! 我が子供の頃は、あちこちで普通に見られたのだが、今は滅多なことでは見られない! この悲しむべき現状を憂い、怒り、そして変革するために、我、『おでん屋は屋台の店しか認めない明王』は断固として立ち上がったのだ!」
(「ソンナの、立ち上がらんでエーワ!」)
 思わず容赦なく突っ込みそうになり、パトリシアは危うく口をつぐむ。
 そして悠姫が、冷静な口調で告げる。
「屋台の店は確かに浪漫があるけど、屋台は毎日いちいち場所を用意したり、店を移動させたりする手間が必要よ。その点、建物なら一度用意しておけば後は大した手間を取る事無く、毎日店を経営する事ができないかしら?」
 更に渚が、悠姫に同調するように続ける。
「屋台のおでん屋だと雨の日とか大変だし、夏の暑さや冬の寒さを凌げないよ。お店なら、暖房や冷房を利かせ放題で快適だよ。厳しい外気の場所で店をやっていくのは、おでん屋さんにとっても、お客さんにとってもかなり難しいんじゃないかな?」
「合理的には、その通りだろう。だから、効率の悪い屋台は減っていく。だが、すべてが合理的、効率的に流れていけば、屋台は滅び、浪漫は滅びる。我には、それは耐えられん」
 一転して哀愁を帯びた口調になり、ビルシャナは詠嘆する。そこへリリスが、ニケの方をちらちら見ながら告げる。
「確かに、おでん屋さんに限らず、近年は屋台が減少している気がしますね。調べてみたら屋台を営むには道路交通法や食品衛生法といったルールを守ったり、資格も必要になるみたいですね」
「その通りだ。ルールを守れという側の言い分もわからんではない。不注意な輩が適当に屋台を引きまわって、交通事故を起こしたり、食中毒を起こしたら話にならん。そして、それでも屋台でおでんを売るという強い意志を持つ者は少ない」
 妙に良識的に慨嘆するビルシャナに、リリスは言い回しに注意しながら提案する。
「本当におでん屋さんの屋台を広めたいのであれば……自分達で屋台を開いたり、屋台の魅力を広めるような同好会を作ってみてはどうでしょうか。もちろん、平和的な方法で」
「試みなかったわけではない。だが、天命を受ける前の我はあまりに軟弱で、屋台を出す資格も資金もなかった。同志もいなかった。絶望し、すべてを諦めようとした時に天命が下ったのだ。人知を超えた力を以て、安易に妥協することなく、己の意志を断固として貫き通せと!」
 だーっと目の幅で涙を流すビルシャナを見やって、リリスは溜息をつく。
(「それでビルシャナに取り憑かれ、デウスエクスになってしまったのですか。ああ、なんてお気の毒な」)
 そしてニケが、ぱちぱちと拍手する。
「確かに、屋台のおでん屋さんには、ロマンがありますよね。こだわりがある人って、素敵ですよね♪」
 笑顔で言い放つと、ニケは不意に傍らに用意したおでん鍋を持つ。
「そして何と! 屋台のおでん屋さんが、この店の前に現れました! これはもう、行くしかないですね!」
「な、なんだってーっ!?」
 驚愕するビルシャナを尻目に、ニケは一目散に店から出る。おでん鍋を持って両手が塞がっているので、店の扉は蒼眞が開ける。そしてビルシャナも、ニケを追って店から飛び出す。……四人の信者たちを置き去りにして。
(「想定通りだ」)
 呟いて、ハルは信者たちに訊ねる。
「どうする、お前たち。デウスエクスは出て行ったようだが、後を追うのか?」
「デ……デウスエクス?」
 白昼夢から覚めきっていないような曖昧な表情で、信者たちは茫然と顔を見合わせる。
「デウスエクスが……ここにいたんですか?」
「そうだ。お前たちは、デウスエクスに従って、この店に押し入ってきたのだ。どうやら、たぶらかされていたようだな」
 淡々と告げるハルに代わり、リリスが説明する。
「あなた方は、デウスエクスの催眠にかかって操られていたのです。でも、幸い催眠は解けたようですね」
「そ、そうなんですか……」
 不得要領な信者たちを見やり、リリスはハルに告げる。
「この方たちを、避難場所まで送っていきたいと思うのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ、頼む」
 うなずいて、ハルは独言のように続ける。
「貴女が戻ってくるまでには、終わっているだろう」

●ビルシャナ、屋台(?)と共に死す
「これだ! これこそが、我が夢にまで見たおでん屋の屋台! 夢にまで見たおでんだ!」
 店の外へ飛び出したビルシャナは、ミリムが用意したリアカーと、その上に乗ったカセットコンロ、そしてニケがコンロの上に乗せたおでん鍋を見るや、感極まった声で叫ぶ。
(「あのー、このおでん、あんたが焼き討ちしようとした店のおでんなんですけど?」)
 そりゃまあ、店主さんに頼んで、三角コンニャクとガンモドキとナルト、三角ハンペンと大根とちくわ、という二パターンの「三角、丸、四角の串おでん」にはしてもらいましたけどね、と、ニケは苦笑する。
「それで、そのご高説垂れる屋台のおでんってどんな感じ……って、全然聞いてませんね」
 ミリムは少々憮然として、滂沱と涙を流しながら「三角、丸、四角の串おでん」にむしゃぶりつくビルシャナを見やる。
「それで、信者さんたちは店の中ですか?」
「はい。ええと、離れただけで催眠解けて、念のためアスティさんが避難所の町内会館に連れて行ったようです」
 マインドウィスパー・デバイスで状況を確認したニケが告げると同時に、リリス以外の五人のケルベロスたちと、ずっと身を隠していた渚のサーヴァント、ボクスドラゴンの『ドラちゃん』が店から出てくる。
「催眠が解けた信者を、リリスが連れ出してくれた。もはや遠慮はいらん」
 ハルが告げ、ミリムはうなずいてビルシャナを睨み据える。
「全く共感も賛同もしてもいない無関係な一般人を巻き込んでんじゃないよ! この塵!」
「シ、シェーッ!」
 ドラゴニックハンマー『終末竜咆鎚』を変形させての砲撃をまともに腹へ喰らい、ビルシャナは串おでんを嘴に咥えたまま奇声をあげ、変なポーズを取る。
(「やっぱり、あの六つ子の漫画だったか……」)
 内心溜息をつきながら、蒼眞は寸毫の容赦もなくオリジナルグラビティ『終焉破壊者招来(サモン・エンドブレイカー!)』を放つ。
「ランディの意志と力を今ここに!……全てを斬れ……雷光烈斬牙…!」
 雷撃を帯びた強烈な斬撃が、ビルシャナの身体を真っ二つに裂く。しかしビルシャナは、まるでギャグマンガの登場人物のように、斬られた身体をぴたんと合わせる。
「相変わらず、でたらめな……」
 まあ、いつものように潰れるまで叩くだけだけど、と冷静に呟き、悠姫はオリジナルグラビティ『エレメンタル・ガジェット』を発動させる。
「わたしの狙撃からは、逃れられないわよ!」
「シェーッ!」
 麻痺をもたらす弾丸を撃ち込まれ、ビルシャナは再び変なポーズを取る。身体が揺らぎ、カセットコンロをひっくり返してリアカーに火が付くが、ぶちまけられそうになった残りの串おでんは、すべてビルシャナが超絶的な身のこなしで拾い、自分の口に押し込む。
「まぐ、もぐ、むぐ……ケケッ!」
「イヤハヤ、ナンつー執念!」
 呆れたとも驚いたともつかない声を出しながらも、パトリシアは全力で降魔の一撃を叩きつけ、ビルシャナを吹っ飛ばす。ビルシャナは火の付いたリアカーに勢いよく倒れこみ、ばきばきと半壊させる。
「あれ、いいのか? 借り物じゃないのか?」
 訊ねるハルに、ミリムが応じる。
「廃棄処分予定の品だそうですので。ヒールの必要もないでしょう」
「そうか」
 ならばよし、と、ハルはオリジナルグラビティ『絶刀・煉獄桜花(レンゴクオウカ)』を放つ。
「家で食するおでんの良さを語るつもりだったが、機会がなかったか……斬り伏せろ、祓魔の徒花。絶刀・煉獄桜花(ぜっとう・れんごくおうか)!」
 なんかすごいギャップのある気合とともに、ハルはビルシャナを寸断する。しかし、いったん散ったビルシャナは、再び集まって幽鬼のように揺らぎ立つ……嘴には串おでんを咥えたまま。
「さぁ、行くよドラちゃん」
 渚がサーヴァントに声をかけ、絶望に負けた幽鬼ビルシャナを吹っ飛ばすべく、絶望しない魂を歌い上げる。合わせてボクスドラゴンがブレスを吐くが、ビルシャナはゆらゆらと揺れるばかりで消えはしない。
「凍らせたら手ごたえ出るかしら?」
 疑わしげに言いながらも、ニケが氷結輪から魔法の霜を展開させる。ビルシャナの揺らぎが少し減じたようにも見えるが、潰れはしない。とはいえ、ビルシャナの方も麻痺しているのか、攻撃も回復もしない。
 そしてミリムが、オリジナルグラビティ『紋章「女王騎士の五本槍」(クイーンランサー)』を発動させる。
「風槍よ! 穿て!」
 鋭い気合とともに、紋章から女王騎士の風槍が次々と放たれ、ビルシャナを穿つ。四本目が命中した瞬間、幽鬼のようなビルシャナが粉々に砕け散り、後には燃える屋台……いや、リアカーだけが残された。

作者:秋津透 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年5月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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