充電式カイロは、爆発寸前ッ!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 『卵型の爆弾』と揶揄され、回収騒ぎになった充電式カイロがあった。
 その充電式カイロは、とてもオシャレな卵型で、一時期は予約が殺到するほど、売れていたらしい。
 だが、長時間の使用で発火し、爆発する事もあったようである。
 その原因は、リミッターが外れていたため。
 一番大事な最終チェックを怠っていた事が招いたモノだった。
 そして、充電式カイロは、捨てられた。
 まるで川に小石を投げるような勢いで……。
 しかし、充電式カイロは、納得していなかった。
 他の充電式カイロは爆発したかも知れないが、ボクは違う、絶対に違う。
 そんな何の根拠もない自信が残留思念となって辺りに漂い、小型の蜘蛛型ダモクレスを呼び寄せた。
 小型の蜘蛛型は充電式カイロの思いを何となく受け止め、機械的なヒールをかけた。
「ジュウデンシキィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化した充電式カイロが、耳障りな機械音を響かせ、街に繰り出すのであった。

●セリカからの依頼
「九竜・紅風(血桜散華・e45405)さんが危惧していた通り、都内某所にある空き地で、ダモクレスの発生が確認されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある空き地。
 この場所に捨てられていた充電式カイロが、ダモクレスと化すようである。
「ダモクレスと化すのは、充電式カイロです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていった。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスと化した充電式カイロは、ロボットのような姿をしており、邪魔をする相手に対して容赦がないようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)
六星・蛍火(武装研究者・e36015)
九竜・紅風(血桜散華・e45405)
静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)
 

■リプレイ

●都内某所
「どうやら、俺の危惧していたダモクレスが本当に現れてしまったようだな。ならば、人々に被害が出る前に、何とかして倒してしまわねば……」
 九竜・紅風(血桜散華・e45405)はセリカから渡された資料に目を通した後、ダモクレスの出現が予知された空き地に向かった。
 そこには立ち入り禁止のロープが張られていたものの、簡単に乗り越える事が出来るため、子供達が勝手に入り込んで、遊び場代わりにしていた。
 この様子では、問題の充電式カイロも、子供達が持ち込んだモノなのだろう。
 もしかすると、遊びに夢中で充電式カイロを落とした事に気づかぬまま、家に帰ったのかも知れない。
 だからと言って、いまさら持ち主を探したところで、ダモクレスになる事を防ぐ事が出来ないため、その場で遊んでいる子供達に事情を説明して、しばらく空き地には近づかないように警告しておいた。
「それにしても、カイロが爆発するなんて、本当に危ない代物もあった物ね。ともあれ、ダモクレスとなったからには、被害が出る前に倒す事になるのだけど……」
 そんな中、六星・蛍火(武装研究者・e36015)が、キープアウトテープを張った。
 問題のカイロは、一言で言えば欠陥品。
 その分、安価に購入する事が出来たため、すぐに増産が決まって、大量生産されたモノらしい。
 おそらく、予想以上に充電式カイロが売れてしまったため、色々なチェックを怠って、出荷を急いでしまったのだろう。
 その事が災いしてしまい、大量の欠陥品を生み出す結果に繋がってしまったのかも知れない。
「まあ、実際に爆破したのは、他の充電式カイロかも知れないけど……。ダモクレスとなったからには、どの道危険だから倒さなきゃね」
 四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)が、納得した様子で答えを返した。
 事前に配られた資料には、そこまで詳しい事が書かれていなかったため、問題の充電式カイロが欠陥品だったのか、それともまったく欠陥がなかったモノなのか分からなかった。
 それでも、小型の蜘蛛型ダモクレスを呼び寄せるだけの残留思念を漂わせていたのだから、何か訴えたい事があったのだろう。
 しかし、ダモクレスと化したところで、その問題が解決する訳では無い。
 むしろ、状況が悪化するだけなので、方法としては最悪な選択肢を選んでしまった事は間違いなかった。
「それに、卵型の爆弾って聞くだけでも危なそうな感じがいるし、大事になる前に倒してしまった方が良さそうね」
 静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)が蛍火の作業を手伝いながら、色々な意味で危機感を覚えた。
「ジュウ・デン・シキィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化した充電式カイロが、耳障りな機械音を響かせながら、茂みの中から姿を現した。
 ダモクレスはロボットのような姿をしており、ケルベロス達に対して、鋭い殺気を放っていた。
 それは小型の蜘蛛型ダモクレスによって、植え付けられた偽りの記憶。
 すべての元凶がケルベロス達にあると思い込まされているため、今にも爆発しそうな勢いで膨らむ怒りを抑える事が出来なくなっていた。
「……待っていたぜ! それじゃ、始めるとするか」
 すぐさま、相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)が、ダモクレスに攻撃を仕掛けていった。
「カ・イ・ロォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオ!」
 それを迎え撃つようにして、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせながら、熱を帯びたビームを放ってきた。
 そのビームは辺りのモノを炎に包み、次々と消し炭に変えていったが、泰地の身体を炎に包む事は出来なかった。
 それを上回るスピードで泰地がビームを避け、一気に距離を縮めてきたため、ダモクレスは身を守る事が出来ず、殴り飛ばされた。
「ジュウデンシキィィィィィィィィィィィィィ」
 その一撃を食らったダモクレスが、バランスを崩してヨロめいた。
「これは挨拶代わりだ。頭に来たんだったら、本気で来いよ」
 その間に、泰地がメタリックバーストを発動させ、全身の装甲から光輝くオウガ粒子を放出し、依鈴の超感覚を覚醒させつつ、ダモクレスを挑発した。
「カ、カ、カ、カ、カ・イ・ロォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
 その挑発に乗ったダモクレスが、再びビームを放ってきた。
 そのビームは先程と比べて高温で、アスファルトの地面を溶かしながら、ケルベロス達に迫ってきた。
「氷の属性よ、その力を雪へと変え、仲間を護る盾となりなさい!」
 すぐさま、依鈴がエナジープロテクションを発動させ、ダモクレスの放ったビームを防いだ。
 その途端、依鈴の身体を覆いつくすほどの勢いで、力を失ったビームが熱気となって飛び散った。
「さて、息を合わせて行くわよ、月影!」
 その隙をつくようにして、蛍火がボクスドラゴンの月影に声をかけ、攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
 その指示に従って、月影が勢いよく飛び上がり、蛍火を援護するための準備を整えた。
「さぁ、行くぞ、疾風丸。サポートは任せたからな!」
 それに合わせて、紅風がテレビウムの疾風丸に声をかけ、ダモクレスに攻撃を仕掛けていった。
 その気持ちに応えるようにして、疾風丸が紅風と連携を取りつつ、凶器攻撃でダモクレスを殴りつけた。
「ジュ、ジュ、ジュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その事に腹を立てたダモクレスが、再びビームを放ってきた。
 だが、先程とは違って咄嗟にビームを放ったため、威力は弱め。
 ある意味、適温のビームになっていた。
「一体、どこを狙っているんだい?」
 その間に、司が死角に回り込み、スターゲイザーを放って、ダモクレスを蹴り飛ばした。
 その拍子にダモクレスがバランスを崩し、ブロック塀にぶつかって崩れ落ちた。
 その上、ダモクレスが放ったビームは、見当違いのところに飛んでいき、ケルベロス達ではなく、ブロック塀に風穴を開けた。
「デンシキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その事に苛立ちを覚えたダモクレスが、ケモノのような機械音を響かせ、傷つく事も恐れず突っ込んできた。
 おそらく、思うようにいかなかったため、理性の留め金が外れてしまったのだろう。
 そのため、後先考えず、捨て身の特攻に近い感じで、熱を帯びたパンチを繰り出してきた。
「……ここは任せろ! オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
 それを迎え撃つようにして、泰地が牽制怒涛蹴り(ケンセイドトウゲリ)を仕掛け、無数の蹴りでダモクレスの右拳を破壊した。
「ジュ、ジュ、ジュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その途端、ダモクレスが右拳を庇うようにして後ずさり、悔しそうにギチギチと機械音を響かせた。
「光の蝶よ、かの者に超感覚を研ぎ澄まさせなさい!」
 即座に、依鈴がヒーリングパピヨンでパズルから光の蝶を出現させ、泰地の第六感を呼び覚ました。
「デェェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
 それを目の当たりにしたダモクレスが、半ばヤケになりながら、再びビームを放ってきた。
 そのビームはダモクレスの怒りが具現化したようなモノで、ケルベロス達を飲み込む勢いで迫ってきた。
「熱の強さなら、僕も負けていないよ」
 すぐさま、司がグラインドファイアを仕掛け、ローラーダッシュの摩擦を利用し、炎を纏った激しい蹴りで、ダモクレスのビームを蹴り裂いた。
「オーラの弾丸よ、敵に喰らい付きなさい!」
 そこに追い打ちをかけるようにして、蛍火が気咬弾を放ち、ダモクレスにブチ当てた。
「シキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その途端、ダモクレスが悲鳴にも似た機械音を響かせ、逃げるようにしてジリジリと後ろに下がっていった。
「まさか、この状況で逃げる気か? ならば、その身体を真っ二つに叩き割ってやろう!」
 続いて、紅風が疾風丸と連携を取り、ダモクレスの逃げ道を塞いだ。
 それに合わせて、疾風丸がテレビフラッシュを仕掛け、紅風がスカルブレーカーを繰り出した。
「カ、カ、カ、カ、カイロォォォォォォ……」
 その一撃を食らったダモクレスがフラつき、無防備なコア部分をあらわにしながら、最後の力を振り絞るようにして、卵型のミサイルを発射した。
 そのミサイルは地面に落下すると、コロコロと転がっていき、ケルベロス達の近くで次々と弾け飛び、大量の破片を飛ばしてきた。
「忌まわしき血の力だが、今はその力を貸してくれ!」
 即座に、紅風が咎人の血で傷口から溢れる血液を操り飛ばし、味方に浴びせて癒やしていった。
「螺旋の力よ、敵を氷漬けにしてしまうが良い!」
 その間に、司が螺旋氷縛波で氷結の螺旋を放ち、ダモクレスの身体を凍らせた。
「ジュ、ジュ、ジュ、ジュゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その途端、ダモクレスが危機感を覚え、無理やり動こうとしたものの、凍りついた身体が動く事はなかった。
「……弱点を見抜いたわ。この一撃を受けてみなさい!」
 それと同時に、蛍火が破鎧衝でダモクレスの弱点を見抜き、痛烈な一撃を繰り出し、コア部分にヒビを入れた。
「デン・シキィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 そのため、ダモクレスがパニックに陥り、再びミサイルを発射しようとした。
 しかし、その気持ちに反してミサイルは発射されず、完全に無防備な状態になった。
「……残念だったな。これで……終わりだ!」
 次の瞬間、泰地が一気に間合いを詰め、戦術超鋼拳で全身を覆うオウガメタルを鋼の鬼と化すと、ダモクレスを殴りつけてコア部分を破壊した。
「カ、カ、カ、カ・イ・ロォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
 その一撃を食らったダモクレスが、断末魔のような機械音を響かせ、ビクビクと身体を震わせた後に崩れ落ち、物言わぬガラクタと化した。
「……終わったわね。それじゃ、ヒールで修復した後、帰りましょうか」
 そう言って依鈴がヒールを使い、辺りを修復し始めた。
 気がつくと、辺りは夕暮れ。
 カラス達の鳴き声が響く中、ケルベロス達が辺りの修復を終え、その場を後にするのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年5月4日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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