滝と桜と褌と!

作者:星垣えん

●フンドシの集い
 春の陽気に包まれた密林。
 鬱蒼とした風景の中、一箇所だけ木々を刈り取ったみたいにぽっかり開けた空間があり、そこには何本かの桜の大樹が生えている。風に揺られる桃白色の花弁と辺りの深緑にコントラストは実に美しかった。
 で、その美観の下に鳥さんはいた。
「良い場所だなぁ」
「ですねー」
「水量も申し分ないし、気持ちよさそうですねー」
 立ち並んで何かを見上げる鳥と男たち。
 彼らの視線の向く先には――大きな滝があった。
 ずどどどど、と爆音を鳴らし、白い飛沫を何メートルという高さまで散らす瀑布はまさに勇壮の一言に尽きる。
 そしてそれをフンドシ姿で見上げる鳥たちも勇壮である。
 うん、清らかな真っ白いフンドシだよ。足幅ががっつり開いた仁王立ちスタイルだよ。
 なんかもうこの時点でわかりましたよね。
「諸君、滝行はいいぞぉ! なんせ滝の下にいるだけで自分が良くなってく気がする!」
「めっちゃ楽っすね!」
「これから暑くなってきますし、普通に気持ちよさそう!」
 滝行を推す鳥さんの言葉に、死ぬほど軽いノリで賛同する信者たち。
 大丈夫ですかねコレ。
 いけるっしょ的なムーブで滝に突っ込んだ結果、首とかやったりしませんかね。
 そう言いたくなる光景だったが、彼らを止める者はこの場にはいない。ただひらひらりと桜の花弁が舞うだけで、なんならそれを見て信者たちのテンションは高まるばかり。
「滝と桜……高まるぜぇぇぇぇ!!!」
「リーダー! 早く、早く入っちゃいましょうよぉ!!」
「よぉし行くぞぉ! 覚悟ができてる奴は俺に続けぇぇぇ!!!」
『うおおおおおおおおおおおおお!!!!!』
 スタートダッシュを決めた鳥さんの背中を追って、フンドシマンたちも走り出す。
 彼らの身体が無事であることを、祈るばかりである。

●助けてやろう! な!
「滝ってすごい衝撃がかかるんだったよな、確か……」
「そうなんです! だから信者の人たちの首が大ピンチなんです!!」
 話を聞いていた栗山・理弥(見た目は子供気分は大人・e35298)が呆れた顔で言うと、笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)は両手をバタバタさせて現場のヤバみを表現した。
 なるほどこいつは緊迫した状況のようだ、と己を洗脳する猟犬たち。
 そんな一同の顔を見て、ねむちゃんは「こんな危険なビルシャナを放ってはおけないですよね!」とやんわり圧をかけてくる。
「まあ、全国に滝行が流行っても困るし、行くしかないよな」
「そうです! だからみんなで滝までレッツゴーです!」
 ハァと溜息をつく理弥に頷き、ゴーの声に合わせてグーを突き上げるねむちゃん。
 もうかなり断れない空気なので猟犬たちはおとなしく仕事を受け入れることにした。
 なので信者たちの様子をねむに尋ねた。鳥さんを殺るときに彼らを敵に回さぬためにも、どんぐらい滝行推しに毒されてるかは把握せねばならない。
「信者の人たちは森の空気とか桜が咲いてるとかでテンションがすごいです! おまけに『滝に打たれたら無条件でレベルアップ!』って考えになっていて……ちょっとやそっとでは滝行をやめてくれそうにありません!」
「なんか典型的って感じだな……」
 しっかり洗脳されてるっぽいと聞き、億劫そうに目を細める理弥。
「でもいわゆる自分磨きみたいなところに魅力を感じてるなら、『これは滝行より効くぞ!』とか言って別のものを推してやればいいかもな」
「ですね! あと滝行を否定することも効果的だと思います! 死んじゃうとか!」
 ストレートすぎる発言でねむが理弥に乗っかる。
 しかしどうやら現場でやるべきことは決まったようだ、と一同は納得した。要は信者たちが滝行に惹かれなくなればいいのだ。ならば方法はいくらでもあろう。
「信者の人たちが正気に戻ればビルシャナを倒すのは簡単です!
 だからもしやりたいんだったら滝に打たれてもいいかと思います!
 もしくは風景を楽しむとか……滝と桜なんてなかなか一緒には見れないですからね!」
「そういうとこを見つけ出すあいつらの嗅覚というか勘というか、そこは本当にすごいよな……」
 秘境探索を果たした鳥さんに感心してしまう理弥。
 かくして、猟犬たちはナンカイイ景観とかを楽しむために出発するのだった。


参加者
シフカ・ヴェルランド(鎖縛の銀狐・e11532)
栗山・理弥(見た目は子供気分は大人・e35298)
柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)
アーシャ・シン(オウガの自称名軍師・e58486)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)

■リプレイ


「うおおおおお!」
 貧相な肉体を躍動させ、滝壺へ疾走する男たち。
 彼らの前垂れを眺めながら、アーシャ・シン(オウガの自称名軍師・e58486)はひどく静かな声で呟いた。
「絶景のはずが……絶望したくなる光景になってるわね。略して絶景」
「数分もしたら水面に浮いてるんじゃないか、あいつら……」
 呆れた面持ちの栗山・理弥(見た目は子供気分は大人・e35298)。
「このところシリアスな感じが続いてたからな……久しぶりにこういうの見ると何か脱力するぜ……」
「まあ、きのこ狩りには早いし目を覚まさせてやらないとね」
「……脱力するぜ」
 真剣な顔でアホ言ってるアーシャさんに、脱力が止まらない理弥くん。
 そんな二人の横では、ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)とリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)がぴったり隣り合っている。
「リリちゃんが来てくれて心強いですわー」
「んっ、褌のHENTAIの説得だね。リリに任せておいてだよ」
 うふふと笑うルーシィドに、とんと自分の胸を叩いてみせるリリエッタ。
 が、彼女にはひとつ気になることがあった。
「ルーはそんなのも持ってたんだね」
「えぇ、入用になることもあるかと思いまして!」
 リリエッタの不思議そうな眼差しに、ルーシィドがドヤッと胸を張る。
 彼女の隣には――クソデカ旧式カノン砲が浮いていた。
 正確に言うと、レスキュードローン・デバイスを総動員して浮かせていた。
 それが入用になる事態って何だ。
「これで信者の方々を正気に戻してみせますわ!」
「何をするのかわからないけど、成功する気がするよ」
 旧式カノン砲の冷たいボディをぺちぺちして、すでに勝利を確信する二人。
 そしてそれを後ろから見ているシフカ・ヴェルランド(鎖縛の銀狐・e11532)。
「不穏な予感がしますね」
「そうだな。怪我人が出なければいいが」
 スッと隣に歩いてきた偉丈夫――柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)が、銀縁の丸眼鏡を中指でくいっと上げなおす。
 銀縁の丸眼鏡である。
 虎髭わっさぁの筋肉男が丸眼鏡を着け、真っ白いシャツにグレーのベストを着て、細めのスラックスでビジカジをキメているのである。傍らにいる虎(ウイングキャット)もそら足元でおろおろするのである。
「何なんです? その格好は」
「知的に見せたほうが説得も上手く運ぶだろうと思ってな!」
 シフカにそう笑う鬼太郎は分厚い書を何冊も抱えている。知的アイテムをこれでもかと装備した彼には一分の隙もなかった。そしてインテリが持っていられる重量ではなかった。
「さて、それじゃあ奴らを助けてやるとするか」
「……そうですね」
 遠く滝壺へ目をやる鬼太郎につられる形で、シフカも信者たちに目線を移す。
 爆音の坩堝へ身を投じた男たちは――。
「冷たい! 寒い!」
「我慢だ! 水に打たれるだけで己を磨けるんだぞ! 頑張れ!」
『は、はいっ!』
 鳥さんに叱咤され、頭上からの猛烈な水圧に耐えていた。
 それは見る分には壮絶な光景だ。
 ――が、シフカはひとつ思うのだった。
「自分磨きの方法も色々でしょうが……楽に磨こうとしている辺りに何とも言い難い駄目さがにじみ出ていますね」
 真理だった。


「今時苦行だらけの滝行なんて古い! 時代はソロキャンだ!」
「なっ、誰だぁ!?」
「俺たちの滝行をディスるとはぁ!」
 突然に聞こえた声に反応し、周囲を見回す男たち。
「あ、あれは!」
「テントが立てられている!?」
 信者たちが見つけたのは、小ぶりな一人用のテント。
 自然の風景によく馴染む深緑の天幕が、知らぬ間に設営されていた。
 そしてその傍らで、理弥がアウトドアチェアに悠然と腰掛けていた!
「ふー……大自然の中で飲むコーヒーは格別だな……よかったら飲むか?」
「あの小僧、なんてリラックスした顔だ!」
「いつの間にか焚火まで!」
 褌男たちが理弥のソロキャン風景に戦慄する。なにせ自分たちが水に打たれている横で向こうは熱いコーヒーを味わってやがるのだ。
「テント設営から火おこし、食事の支度まで全部一人でやんねーといけないからソロキャンは鍛えられるんだよな」
「鍛えられる……!」
「いざって時のサバイバル技術まで身に付くし、これぞ男の強さって感じじゃね?」
「さばいばる……!」
「今、世間は空前のアウトドアブーム! 乗るしかねえ、このビッグウェーブに!」
「滝行は古い……!?」
「ば、馬鹿! そんなことないって!」
 理弥くんのソロキャン推しに、さっそく惹かれてしまう信者たち。水浸しの鳥さんが横でなんか叫んでるけど恐らくあまり耳には入っていまい。
 それと、惹かれたのは信者だけではなかった。
「むぅ、こんなに小さいテントもあるんだね。これならリリでも立てられるかな?」
「いいですわね! 今度、寮の皆さまと一緒にキャンプしましょう、リリちゃん!」
「俺はソロキャンを勧めてるだが……まぁいいか」
 興味深そうにテントを覗いてくるリリエッタとルーシィドに、ツッコみつつも強くは言わない理弥。ソロとはいかずともキャンプに関心を示してくれたのは実は少し嬉しい。
「滝行以外にも方法があるのか……」
 心の迷いを口にする一人の信者。
 彼はふと、遠くの岩べりに目がいった。
 その岩べりは、信者たちがいる滝とは別の筋で通っている渓流に面している。
 そしてそこには一人の女が立っていた。
「自分磨きなら釣りよね! 釣糸一本で自然と繋がる手軽さ、そして集中すれば自然と一体になれるかもしれない!」
 アーシャだった。
 使いこんでる釣り具セットで楽しくスローライフしてるオウガは、釣り糸に集中しながらも腰に括りつけている酒瓶に手を添える。
「それに釣った魚で呑む一杯の最高さは異常よね! ここまで上流に来てるなら……渓流釣りでヤマメやイワナ狙えるかも」
「普通に渓流釣りを楽しんでる……」
「よかったら串とか用意しておきます?」
「あ、お願ーい」
「普通にキャンプを楽しんでる……!」
 理弥の焚火に耐火鍋を下ろしているシフカに、背を向けたまま手を振るアーシャ。そのさまはどこからどう見ても単なるキャンプ。楽しげなキャンプ。なんならほんのりカレーの匂いとかしてくる。
「くっ、俺もキャンプしたくなってきた……!」
 そわそわ、と身じろぎを始める信者。
 そこへ、アーシャはぽつりと、言ってやった。
「こういう川で釣れた魚って美味しいでしょうねー。早く釣らないと冬眠から醒めたクマと取り合いになるかもー。むしろ、クマが近くまで来てるかもクマー」
「クマ!!」
「えっ、クマ!?」
「どこどこどこ!?」
 ハッとなった信者の声に、おとなしく滝行してた男たちまでビクッと震える。
 熊。
 妙に生々しい危険ワードに、褌男たちは一様に不安げな表情に変わってゆく。
 ――それを見るなり動いたのは、鬼太郎だ。
「滝行が危険だと理解してもらえたかな?」
「だ、誰だおまえは!?」
 急に出てきた教授然とした身なりの人に、つい陳腐な質問をしてしまう信者。
 彼らにフッと微笑んで、鬼太郎は持参した書物を見せた。
「こんなナリだが俺は研究者だ。何冊か本も書かせてもらっている」
「本を……」
 大嘘をぶっこく鬼太郎に信者たちが敬意の目を向け――ない。
「本を滝壺に持ってくるんじゃねえ!」
「飛沫が凄いでしょうが! 湿気とか紙の天敵でしょうが!」
「えっ」
 告げられた衝撃の事実に、素で驚いてしまう鬼太郎先生だった。


 一発でボロが出てしまった鬼太郎。
 が、彼はそんなことは意に介さないぐらい豪快な男である。
「この景観に鳥は不要ではないか。景観条例に違反しているのではないか。これが今回の疑問に繋がった」
「なんか語りだした!?」
「精神が強い!」
 鳥さんを見ながら何事かを語らいだす鬼太郎に、信者がビビる。
「そもそも滝行とは本来しなくても良い苦行である。故にやり方を間違えれば命に係わる。それを外から来た鳥指導の下に行う意味とはなんであろう?」
「は、はぁ……」
「定命化した種族ならいざ知らず、彼らは不死のデウスエクスなのである。彼らの基準できついことを人間が実施すれば死に至るのは必定である」
「な、なるほどぉ……」
 鬼太郎の説明に相槌を打ちつつも、しっくりとはいかない様子の信者。
「ふむ、いまいち実感できないか」
「まあ……」
「ならばあれを見るといい」
「?」
 鬼太郎が滝行中の鳥さんを指したので、そちらを見る信者たち。
 その瞬間。
「修行なら、水だけじゃないほうがいいよね」
「ぐああああああああああああああああああああああっっっ!!!?」
『リ、リーーダァーーーー!!?』
 上空からジェットパック・デバイスで降下してきたリリエッタが、どでけぇ丸太を鳥さんの脳天に放りこんだァァ! 直上からの一撃に、完全に油断していた鳥さんの首がずもっと胴体に沈みこむゥゥ!
 が、そこは腐ってもデウスエクス。
 首が短くなったまま鳥さんはぷんすかと怒り出した。
「誰だぁ! 滝に丸太を流した奴はぁ!」
「生きてる……」
「よかった……」
 ほっと胸をなでおろす信者たち。
 そんな彼らの前を、リリエッタは新たな丸太を抱えて横切った。
「みんなも滝行するなら丸太があったほうがいいよね。今あがるから待ってね」
「いやいやいいですぅ!!」
「丸太とかいいです!!」
「? でもみんなはあの鳥みたいになりたいから滝行するんだよね? ならあれぐらいできないとダメだよ」
「あれ……?」
 きょとんとするリリエッタが鳥を指差し、それを追って目線を流す信者たち。
 すると衝撃の光景が彼らを待っていた。
「この滝行は、熾烈な修行により肉体を鋼とする訓練の一環ですよね! これを修めている方がいるとは驚きですわ!」
「そんな褒められるほどでは……」
「でしたら、もちろんこの滝行の上の段階の訓練も習得済みですよね! さぁどうぞこの旧式カノン砲の砲弾を受け止めてみせてください!」
「えーっ。しょうがないなぁ」
『リーーダァァーーーー!!!?』
 旧式カノン砲を横に置いたルーシィドの褒め殺しに遭い、鳥さんが照れながらその身を砲口の前に晒そうとしていた。そんなん慌てて止めるしかない信者たちだった。
 しかし、遠い!
「信者の方々も、あれを見れば滝行訓練の効果を確信して自然と付いて来る筈ですわ!」
「よぉしそれなら頑張っちゃ――」
「発射!」
「ぐぶふっっっっっ!!?」
 ずどぉぉぉん!!!!
 大地と空気を震わせる爆音が響き、重々しい砲弾が鳥さんの腹に命中する!
 けれどそこはやっぱり腐ってもデウスエクス。ずずーっと後ろに数m押されるぐらいでビルシャナさんは見事に漫画じみたワンシーンをやってみせた。
「びっくりした……!」
「すごいです! みなさんも滝行の次はこれを頑張ってくださいね!」
『いやいやいや!!?』
「まずは丸太からだよね」
『いやいやいや!!?』
 ニッコリ笑って矛先を向けてきたルーシィドに、さりげなく滝の上に行こうとするリリエッタに、ぶんぶん両手を振る信者。
 紛れもない命の危機。
 それに直面して震える彼らの肩へ、鬼太郎は大きな手を置いた。
「賢明なる信者諸君は既にお気づきであろう。あれほどハチャメチャな者の指導下ではまともな滝行など期待できないと」
「た、確かに……」
「それに、精神を鍛え、ストレスを解消するだけならば数分程度のランニングで十分効果があることが証明されているのはご存じのとおりである」
「そんな手軽に!」
「加えて、己を磨くのは運動ばかりとも限らない」
 思わぬ朗報に振り向いた信者らへ、鬼太郎は顎をしゃくって遠くを示した。
 信者たちの目に入ってきたのは、焚火を囲んで食事を楽しんでいる理弥とアーシャ。
「うまっ! この野菜カレーうまいな!」
「魚の塩焼きもサイコー!」
「喜んで頂けて何よりです」
 野菜ごろごろのカレーをかっこむ理弥、焼き魚にかぶりついて酒をあおるアーシャを見て満足げにしているのはシフカだ。耐火鍋の中身は普通にカレーだった模様。
「美味そうに食っとる……」
「あなた方も、料理をしてみては?」
 指をくわえる信者たちへ、流し目で囁くシフカ。
 スーツにエプロンというなかなか攻めた格好をした、意外と料理上手な女は、持ちこんだ大量の食材(野菜多め)を彼らに見せる。
「滝行よりも有意義で、且つ自分にも他人にも役立つ磨き方。それがずばり料理です」
「料理が自分磨きに……!?」
「各種食材や栄養バランスへの知識力、食べる人を思いやる精神、アレルギーへの理解力等、調理技術以外も多くの事を磨く事ができます。それに料理が出来る男は女性との話題が増えて会話しやすい……つまりモテるんです」
『モテる!!?』
 最後の部分にすごい勢いで食いつく褌男たち。
「まずはレシピ通りに作る事を学びましょう。飯盒で米を炊いて、カレーライスなんてどうです? 皆で協力して作るカレーは格別ですよ?」
「キャンプカレー……」
「しかもモテるとあっちゃ……作るしかねえ!!」
 玉ねぎやズッキーニを持って誘うシフカに、信者たちが一人また一人と応じてゆく。
 丸太と砲弾責めにあってる鳥さんがその様子に気づくはずもなく、彼が気づいた頃には信者たちは和気藹々とキャンプ料理に勤しんでいたのだった。


 20分後。
「まだまだカレーはありますから、どんどん食べて下さい」
「うむ! こいつは美味いな!」
 シフカに振る舞われるまま、カレーをがつがつ食っている鬼太郎。
 鳥さんを章の間で葬った猟犬たちは、普通に事後の憩いを楽しんでいた。なにせ焚火とカレーがあるのだ。さっさと帰るにはあまりに惜しかった。
「野菜の食い甲斐があるな。できれば肉も食いたいところだが……」
「肉よりも野菜です。野菜を食べましょう野菜を」
「魚ならあるわよ。燻製はお酒がすすむわー」
 シフカに野菜でガン詰めされる鬼太郎に、横でたらふく酒を飲んでるアーシャが酒瓶をぶんぶんと振りまくる。ところで気絶した熊をクッションみたいに敷いてるんですけどそれはどうしたんですかね。

 一方。
「……うわっ、つべてっ!? さっむ!!」
「ん、お水がすごいね」
「ファイトですわリリちゃん! 栗山さんも男らしい感じですわ!」
 理弥とリリエッタとルーシィドは、滝壺でわいわいしていた。
 理弥は行衣に、リリエッタは白スク(名札付き)に着替えて滝に身をさらし、それをルーシィドは外からパシャパシャ撮影する。超エンジョイ。
「警察学校ってかなり厳しいらしいし、今からメンタル鍛えておかないとな!」
「こうしてお水に打たれて修行してたら泳げるようになるかな?」
「ええ、きっと太平洋も横断できますわ!」
 ずどどどどと降る水量の中、声を張ってあれこれと話す三人。
 楽しい滝行体験はそれから数分ぐらいは続き、ヘトヘトになった体を焚火で温める頃には何だか少し充実感を味わえたらしいです。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年4月30日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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