ストリート・トレジャーハンティング~なつみの誕生日

作者:絲上ゆいこ

●4月15日、昼下がり
 幾つもの壁掛け時計が時を刻む前に、積み上げられた古い本。
 棚にパズルのようにみっしりと並べられた、何に使うのかもわからない電子パーツ達。
 洋服の仕立て屋に、ぴかぴか瞬く宝石屋。
 本屋の端で似顔絵を描く青年の前を、すり抜けて。
「ふっふっふっ、なかなか壮観でしょう?」
 お気に入りの街なのよ、と。
 横を歩む天目・なつみ(ドラゴニアンのガジェッティア・en0271)は、どこか悪戯げに言った。
 雑貨や古道具、美術品。
 果ては玩具やパソコンショップまで。
 まるでおもちゃ箱をひっくり返したように街を彩る、古道具たちの並ぶ店。
 ここは骨董品街とも呼ばれる、商店街。
 ぐるりと街並みを見渡してからケルベロスと視線を交わしたなつみが、ぎゅっと拳を突き上げると、おーっと声を上げて。
「それじゃ、トレジャーハントのはじまりねっ!」
 はにかんだ彼女は、竜の尾を揺らした。


■リプレイ


 商店街の大通りから、一本入った細い道。
 石畳の敷かれた路地と言っても差し支えの無さそうな細い道の左右には、お行儀よく幾つもの店の入り口が並んでいる。
 古びてはいるけれどよく手入れされていそうな硝子窓の奥には、鈍色をした秤のような物や同じ色をしたカップが重ねられ。
 使い方すらも一見しただけでは解らぬ古道具達は、不思議な魔法の道具にだって見えるだろうか。
 ――そんなお店の窓に映り込んだ、アンラとロコの姿。
 窓の奥へと注がれたロコの興味深げな視線は、すぐに向こう側のお店の窓へと移されて。
 アンラに付いて歩みながらのウィンドウショッピング。
 今日、ロコには目当てらしい目当ての物が在る訳でも無いけれど。
 店を眺める視線の奥は、好奇心がたっぷり宿っている。
 この街の店はロコからすると珍しくて不思議な物ばかり。
 それはきっとこの街の日常の姿が、ロコの日常からは少し離れた場所にあるからだろう。
「アイビー」
 ふと足を止めたアンラに掛けられた声に、ロコが顔を上げると――。
 どっさりと古い本やファイルの並んだ本棚が並び、種類別にファイリングされ肥えたファイルには、ヴィンテージチケットや、ラベル、手紙、切手等がみっしりと詰まっているようだ。
「なるほど……、アンラの目当てはこの店か」
「嗚呼、その通りだ」
「君らしいね」
 ――この店に並ぶ商品は、古紙や古書。特に使用済みの観賞用の物。
 どの商品も、想い出と歴史を持った商品ばかり。
 アンラは一つ一つ丁寧に想い出ごと精査するように、紙を捲り、文字を追う。
 うん、矢張りか、なんて。
 ほろりと言葉を零したアンラが選んだのは、古い手紙に、切手。
 届いた手紙も、届かなかった手紙も。読めるものも、読めないものも。
 紅茶で染めたような褪せた色は似ていても、背負う歴史は皆違う形をしている。
「良いものは見つかった?」
「……嗚呼、悪くは無いよ」
 店主に会計を頼むとアンラの瞳を見上げて尋ねるロコに、蜂蜜の色をした瞳を細めたアンラは小さく頷き。
「折角訪れたのだ、アイビーは何か欲しい物は見つかったかね」
 そうして、店外に歩みだしながら逆にロコへと問いを返した。
「どうしようかな。……確かに折角来たし、何か記念に買っても良いとは思ってるよ」
 褐色の指先を顎に寄せたロコは今まで来た道と、まだ続く店達をぐるりと見やって。
「……あ」
 ふと目に付いた店へと、つま先を向けた。
 空の青、海の青、虹に星色。孔雀色から、深い夜の色。
 アクセサリーに加工されたものから、器に欠片まで。
 そこには人工的には作ることの出来ないという銀化ガラス――微かな銀まじりの光を返す、ローマングラス達が沢山並んでいる。
「銀貨ガラスか、これだけあるのも珍しいな」
「ああ、そうだろう。こんなに揃えているのも、この辺りじゃあウチくらいだろうからな」
 ロコの背を追って来たアンラの言葉に、ひょろりとした店主は何処か自慢げに商品を紹介する。
「アクセサリーに加工する職人の腕が良いものでね、そちらも人気だけれど。小さな欠片を土産に買っていくお客さんも多いよ」
「確かに、綺麗」
 薦められるがままに一欠片つまんで、光に翳したロコは銀色に瞳を細め。
「それはお前の炎によく似ているな」
 虹の強いものも良いな、とロコの手にした欠片を、アンラも眺める。
「……そうだね、じゃあ幾つか包んで貰おう」
 ロコが幾つかの虹色の強い破片を選び会計を頼むと、アンラはロコの瞳を見やって。
「人も物も一期一会、良いものは選べたかね?」
「あぁ、悪く無い」
 なぞるような答えに少し眦を和らげたアンラは、再び道を歩み出した。
「では、もう少し回ろうか」
「うん」
 この綺麗な破片を何に使おう、特に決めずに買う事だって楽しいもの。
 二人は並んで、漫ろ歩き。


 重たそうなチェスト、色あせた古い古い世界地図。
 鈍い金色をした星廻る羅針盤に、夜の色を宿した美しい旅行鞄。
 ぴかぴかに磨かれたガラスのケーキスタンドに――。
 アンティークという言葉がぴったりな店内に、これまた同じ形容詞がぴったりの商品が並んでいる。
 どれも古道具と言うからには、きっと物語を持っているのであろう。
 ラウルは心が惹かれるがままに、古道具達を眺めながら店内を歩み――そんな彼と一緒に居た筈のシズネが、随分と一箇所に長い間立ち止まっている事に気づいた。
「……むむむ」
 ぎゅっと眉根を寄せるシズネが眺めているものは、置き時計だ。
 美しく凝った装飾の時計だと言うのに、何故か強い違和感を感じるもので。
 シズネが熱心に眺めている事に気づいたラウルも、後ろから覗き込み――。
「あれ、この時計……、針が逆さに回っているね」
「あーっ、それだ! 逆に回ってるんだな!」
 シズネの言葉にぱちぱちと瞳を瞬かせたラウルは、小首を傾ぐ。
「……気づかないでじっと見ていたの?」
「気づこうとじっと見てたの!」
「そっか」
 なんとも彼らしい返答に緩く笑みを深めたラウルに、シズネは時計の文字盤を指差して。
「なあ、これさあ。時間が巻き戻ってるみたいじゃねえか?」
 シズネの満月色をした瞳には、好奇心とわくわくが宿っているよう。
「もしこの時計みたいに時間が巻き戻ったら、おめぇは何がしたい?」
 そんなシズネの瞳の色に、眦を暖めたラウルは小さく肩を竦めて。
「そうだなぁ……」
 暫しの思案を挟み、言葉を紡ぐ。
「んー……、子供の頃の君に会いに行きたいかも。絶対に可愛いし、一緒に沢山遊びたいし、沢山甘やかしたいかな?」
「そりゃあいいな! あまりのオレのきゅーとさに、きっとおめぇビックリするぞ?」
 甘やかされまくるぞ! と。
 ラウルの返事にはシズネは両腕を上げて、ぱあっと顔いっぱいに笑みを浮かべて。
「良いなあ、本当にそんなことが起こったら、目一杯たのしむのになあ」
「シズネも子供の頃の俺にあってみたいの?」
 ラウルの質問にシズネは、空色の双眸をぱちぱち。
 否定にふるふると首を横に振ったシズネが、腕を組んでぐっと胸を張った。
「んんー、と。俺はそこまでじゃなくても、おめぇがオレよりも背が低かった頃でいいかな。そうしたらふんぞり返ってやる!」
「……それって、俺と出逢った頃? 確かあの頃は、君の方が俺より背が――」
 もう一度空色の双眸を瞬かせたラウルが言葉を紡ぎきる、前に。
「このっ、すくすく伸びやがって!」
 腕をばっと伸ばしたシズネは、ラウルの頭に伸ばして――。
 くしゃくしゃくしゃっ。
「わ、わっ、ちょっとシズネ!?」
 髪をくしゃくしゃにされて慌てるラウルに、シズネはスッキリした様子でにいっと悪戯げに笑い。
「よしっ、このくらいで許しておいておいてやるっ!」
「うん、許されておこうかな」
 つられたように、くっしゃくしゃのふっわふわになったラウルも笑みを零す。
「そういえば、ラウル! この時計も面白れぇけどな、向こうの絵もすごかったんだ! もう見たか?」
「え、そうなんだ。まだ見てないかも、何処かな?」
「おお、こっちだ!」
 こっくり頷いたシズネは、店の奥へとラウルを引いてゆこうとするが。
「待って、髪の毛だけ直していい?」
「……んー、仕方ねぇなあ!」
 ――決してあの時計のように、時間が過去に戻る事なんて無いけれど。
 『今』という時間を、君と過ごせる事は、とても楽しい事。
 『今』ここにある幸せは、君と共に歩んで来た時間の証拠。
 髪を手ぐしで整えるラウルを見ながら、シズネはまたにいっと笑う。
「行こうか、ラウル」
「うん。行こう、シズネ」


 落ち着いた色の調度品。
 静かなピアノ曲が流れる純喫茶の店内は、客の姿も少ない。
 豊かな髭を蓄えた店員に促され、ボックス席に腰掛けためびるは、キョトキョトと周りを見渡して。
「ね、雰囲気があって素敵だね」
「そうだなあ、最近じゃあんまり見ない感じだな」
 メニューを覗き込んだ敬重が、彼女の言葉に同意を重ねる。
 古い道具が集まる街で、丁寧に年を重ねた喫茶店。
 こんな雰囲気、こんな雰囲気……デート向きだよねっ!
 ぐっと机の下で拳を握りしめためびるは、いつもどおり彼と対峙する時の恋する乙女の瞳。
「めびるは何にする?」
「あっ、めびるは……」
 そうしてテーブルに届いたのは、ブラックのホットブレンドコーヒーと、冷たいしゅわしゅわのラムネ。
 いただきますなんてストローを手にしためびるに、敬重は眼鏡の奥の眦を少し和らげて。
「そういえば、めびるは将来どうするつもりなのかね」
「あっ、めびるもその話を今日はしたかったの!」
 確かに情勢的に気になる事は沢山ある、敵の言い残した言葉だって不穏な物も多い。
 しかし、ケルベロス達はたしかに宇宙より来訪する強敵たちを下し続け――世界は概ね平和に向かって突き進んでいる、と言って差し支えは無いだろう。
 否。
 めびるはきっと、みんなと一緒に世界を平和に出来ると、思っている。
 世界は平和に変わっていくと、思っている。
 そのためにみんな戦っているのだから。だからこそ、将来の事だって考えてみたい。
「ん、最近はケルベロス稼業にも積極的だしね」
 何も入れない黒いコーヒーを啜った敬重は、小さく頷いて。
 超会議のあの日、明日も一緒にいる約束をした。
 それからもうすぐ3年、二人はまだ一緒にいる。
「えっと、めびるは今まで……、力がないって言い訳をして避けてきてたけれど、今はケルベロスとして出来る事をしようと思ってるの」
「今は……ってことは、いつかは故郷の神社に戻りたい、とか?」
 くるくるとグラスを回すめびるの手元から、彼女の顔へ視線を移した敬重が穏やかに尋ねると、めびるはふるふると左右に首を振った。
「じいじの病が治ってたらお宮に……、ううん……帰るってことは、ないかな」
「そっか」
「あのね、敬重くん。めびるね、今の生活のままじゃダメって自分でわかってるよ。……だから、だから」
「……」
 視線を机に落として言い淀むめびるの言葉を待つように、敬重は口を噤み。
「……全部終わったら、街を出ようと思ってるの」
「そうかそうか。じゃ、めびるが出てくっていうなら、俺も行こうかな」
 できるだけ軽い口調で応じた敬重が、カップを一度机に置いた。
「めびるが出てくなら、俺も特段残る理由ないし。……と、いうか、めびるの側で幸せにしたいって思うし」
 グラスを回すのを止めて視線を上げためびるは、まっすぐ敬重を射抜くように見つめる。
「わたしはこの街から連れ出してほしいって思ってるよ、敬重くん」
「――連れ出してあげる、とは言ってあげられないが」
 その薄紅色の奥に宿る言葉の重みを確かめるように、交わした視線を逸すこと無く敬重は言葉を紡ぐ。
「行く時は一緒に行こう、めびる」
「うん、……ありがとう、敬重くん」
 ほうっと吐息を吐いためびるは、やっとの事でラムネを一口飲んで。
「わ、美味しい!」
「ん。コーヒーも美味いし、何か他にも頼む?」
「はわ、何にしようかな……?」
「ケーキなんかも期待できるかもなあ」
「じゃあ、これにしよ!」
 まだ世界の平和という未来は、全貌が見えた訳では無いけれど。
 今日も二人は一緒にいる。
 明日もきっと一緒にいるだろう。
 ――そうやって未来だって一緒にいると、約束をしたのだから。
「ね、ね、次はめびるが鳴らしていい?」
「はいはい、どうぞ」
 へにゃっと笑っためびるは、文字通りの呼び鈴をちりりと鳴らした。


 敢えてもう一度言おう。
 騎士典範不文律ひとつ。騎士たらん者は、美女のお願いを断ってはならない。
「ランスルー、次は向こうに行きたいのだけれど……」
「勿論!」
 行きたいと言われて応えない訳には行かない。
 なんたってランスルーは、騎士なのだから。
 荷物を両手いっぱいに抱えたランスルーは、古道具の並ぶ骨董品街をなつみと一緒に歩み行く。
「しかし、なつみのお気に入りなだけあって、賑やかで楽しい街だな」
「ええ、トレジャーハントのしがいも在るってものよね。……今更だけどそんなに大丈夫?」
 少し位荷物を持つわよと言うなつみに、ランスルーは左右に首を振って。
「いいや、大丈夫。今日の服はそのために誂えた物だからね」
「ああ! だから今日は少しカジュアルな服だったのね」
 それは怪力無双の力を持った、童話から着想を得たという作業着。
 よく似合ってるじゃない、なんて笑うなつみにランスルーはふっと笑みを深めて。
 実はこの持っている荷物だって一番小さく収まるように、立体パズルの如く組み上げられている事をなつみは知らない。
 それはランスルーの努力――スマホゲーで鍛えたパズル力の結晶ではあるが、騎士は無闇矢鱈に技術を誇示したりしないものだ。
「ね。次に行く店はね、小さなアクセサリーや小物が沢山ある店よっ」
「成程、それじゃ次の店じゃ、俺も自分のトレジャーを探してみようか」
「ふっふっふっ、付き合ってもらったもの。アタシに任せて!」
 ぴったりの宝物を見つけるわ、と笑ったなつみは尻尾を揺らして。
「それに、去年は一緒に飲めなかったでしょう?」
「うっ、覚えて……?」
「忘れられない思い出よねえ」
 にんまり悪戯げに笑ったなつみは、ランスルーの前へと飛び出して振り返り。
「だから、ね。今日は飲みましょう!」
 そして踵を返すと、前を歩みだし。
「了解、お姫様」
 騎士も笑って、歩みだす。

 街角でトレジャーハンターと言えばと問えば、一番に名を上げられる男と言えば?
 そう、それはサイガ・クロガネ。
 老若男女誰に聞いたってそう答えるだろう、その名。
 トレジャーハンターは、いつだってお宝を探し求めている。
 お宝といえばきらきらぴかぴか輝くものと相場は決まっているものだが――、今日のサイガはなんと、玩具屋に姿を見せていた。
 おはじきや、シャボン玉。
 付属のストローで膨らせると虹色のバルーンが作れるチューブ。
 トレーディングカードや、ボードゲーム。
 宝石も美術品も無いが、古い玩具が中心に新しい玩具まで取り揃えられているこの店で、サイガはどの様なお宝を見つけると言うのだろうか――!?
 ドーモ。
 そういう訳でここまでのナレーションは、サイガ・クロガネその人がお送りしました。
 おはじきやビー玉ととにらめっこしながら店内を歩くサイガは、肩を竦めて。
 ――確かにコイツらはキラキラしている。嫌いじゃあない。
 この辺りに並ぶ玩具達は、レトロといえばレトロだが、珍しいというよりはありふれたもの。
 そこへ――。
「なあ、サイガ。これは?」
 ぴるる、と長い耳を揺らしたティアンが、指差した先。
 それは円錐形の形をした、如何にも鋳鉄剥き出しのバッジ程の薄さの物や、六角形をしたもの。綺麗な塗装や、装飾の施されたものまで。
 大きさや高さ、形まで本当に様々なモノが一つのケースに収められていた。
「……? 何だ、それ?」
「べーごま、と書いてあるぞ」
「ベーゴマ……?」
 ティアンに促されるままに、鈍い金色の六角形をしたベーゴマを一つ手にとって見つめるサイガ。
 その横に紐が置いて在ること、ベーゴマという名前からコマである事は推測できる。
 しかし、その扱い方は何処にも書いていない。
「コマってーんだ、紐をこうやって……」
「ああ、なるほど。そうやって遊ぶのか、巻きつけて……」
 とりあえず二人は、紐を試行錯誤の末に巻きつけ終え。
 勢いよく紐を引くサイガに合わせて、ティアンも紐を引くと――!
「……???」「????」
 ころんとただ、床に落ちた2つのベーゴマ。
 回らない。
 何?
 困惑しすぎて耳を下げるティアンの横で、サイガのトレジャーハンターとしての血がふつふつと沸き上がる。
 これはお宝だ、と、胸裡が告げている。
「おい、……コイツだ。コイツを買うぞ」
「そうか、わかった」
 サイガが買うというのならば、ティアンとしても止めるつもりは無い。
 色んな形に、色んな装飾。
 多めに購入したベーゴマは、まさに宝石のようにぴかぴかと輝いているように見える。
 物理的にはキラキラしていない気がするが、まあ些細なことだ。
「……で、ティアン、それは何よ?」
「ぽぴん」
 ぽっぺん、ぽっぺん。
 ティアンがびいどろガラスの首の細いフラスコのような口を吹くと、愉快な音が鳴る。
 再びふつふつと沸き上がる、トレジャーハンターとしてのサイガの血。
「待て。俺もソレを買ってくる」
「解った、待っている……あ、なつみ」
 はたと。なつみとランスルーが歩いて行く姿に気がついたティアンは、大きく手を振って。
「なつみ、お前もそこでちょっと待ってろー!」
 再び玩具屋の中に戻ろうとしていたサイガも、腕を上げた。
「えっ良いけど、どうしたの?」
「ベーゴマバトルだ!」
 なつみに尋ねられれば、笑みを深めたサイガはびしっと指を立てて応じ。
「勝負と聞いちゃ、黙っては居られないな」
「ベーゴマって何?」
 ランスルーが格好をつける横で、更になつみは首を傾ぐ。
「こういうヤツだ」
 ぽっぺんぽっぺん、ぽぴんを吹きながらティアンがベーゴマを見せてお答えすると。
「それも何!?」
「ぽぴん」
 新たな疑問が増えたなつみが、更に目を丸くした。
 ――サイガがぽぴんを買って帰って来た後には、皆でベーゴマ大会が始まるのであろう。

 知らない日常の流れる、古い物の集まる街。
 知らぬ場所で過ごす時間は、皆の日常となって行く。

作者:絲上ゆいこ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年4月30日
難度:易しい
参加:9人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 2
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