●都内某所
どんな草でもサッと刈れる電動草刈り機があった。
その切れ味は、抜群ッ!
草を撫でるようにするだけで、面白いほど刈れていたらしい。
そのため、入荷と同時に完売するほど人気のシロモノであった。
だが、その栄光も、長くは続かなかった。
電動草刈り機が売れるたび、増えていく怪我人。
あまりにも鋭い切れ味がアダとなり、指を切ったり、足を切ったりする怪我人が後を絶たなくなった。
それが原因で返品が相次ぎ、在庫の山で倉庫が埋まってしまったらしい。
この事がキッカケで、電動草刈り機が保管されている倉庫は、黒歴史扱いされ、誰も近づかなくなったようである。
それでも、電動草刈り機は、刈りたかった。
刈るモノは何でもイイ。
刈る事さえ出来れば、それでイイ。
例え、それが何だったとしても……!
その思いに応えるようにして、倉庫に現れたのは、小型の蜘蛛型ダモクレスであった。
小型の蜘蛛型ダモクレスは、電動草刈り機が入ったダンボールを見上げ、機械的なヒールをかけた。
「クサカリキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイ!」
次の瞬間、ダモクレスと化した電動草刈り機が、耳障りな機械音を響かせ、倉庫の壁を突き破るのであった。
●セリカからの依頼
「タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)さんが危惧していた通り、都内某所にある倉庫で、ダモクレスの発生が確認されました」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある倉庫。
この場所に保管されていた電動草刈り機が、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、電動草刈り機です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスと化した電動草刈り機は、まわりにあった電動草刈り機を取り込み、ロボットのような姿になっています。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641) |
六星・蛍火(武装研究者・e36015) |
青凪・六花(暖かい氷の心・e83746) |
静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384) |
シルフィア・フレイ(黒き閃光・e85488) |
霧矢・朱音(医療機兵・e86105) |
●都内某所
「まさか私の危惧していたダモクレスが本当に現れるとは……。これも何かの縁でしょうし、私が直接手を下す必要がありそうですね」
タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)は仲間達と共に、ダモクレスの存在が確認された倉庫にやって来た。
その場所は工場の裏手にあり、まるでそこだけ時間が泊まっているのではないかと錯覚してしまうほど、まったく人気が無かった。
おそらく、この場所は何か特別な理由でもない限り、近づく事がないのだろう。
何処か別の場所に通じている道も無いため、倉庫に用が無い限りは近づく事が無いようなところであった。
そのためか、倉庫からは不気味な雰囲気が漂っており、いかにも『何か』出そうな感じであった。
「刈るモノは何でもイイからって、人の命まで刈る事は無いでしょうに……。それだけ刈るモノに飢えていたとしても、決して許される事ではないし……」
青凪・六花(暖かい氷の心・e83746)が、呆れた様子で頭を抱えた。
どうやら問題の電動草刈り機は、何かを刈りたくて仕方がないらしく、刈る事が出来るのであれば、人の命であっても構わないほど、飢えているようである。
そんな歪んだ思いを抱いたまま、小型の蜘蛛型ダモクレスを呼び寄せてしまったのだから、余計にタチが悪い。
それこそ、街に出るような事があれば、沢山の犠牲者を出す事になってしまうだろう。
「草刈り機も必要以上に切れ味が良いと、もはや凶器よね。危ないから、破棄されたのも当然だと思うわ」
六星・蛍火(武装研究者・e36015)が、納得した様子で答えを返した。
その分、切れ味は保証付きだったようだが、扱う者を選ぶため、安全性の高い道具とは言えなかった。
それでも、決して悪いモノでもなく、使い方さえ間違わなければ、最も作業に適したシロモノだったようである。
「確かに、それが原因で怪我人が出たのだったら、返品されて正解だったかもね」
静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)が、事前に配られた資料に目を通した。
資料を読む限り、怪我人が出る頻度は、他の電動草刈り機と比べて高く、たびたび安全性が問題視されていたようらしい。
そのため、メーカー側でも何度か対策を講じたものの、望むような結果にはならなかったようである。
その結果、電動草刈り機を倉庫にしまい込んだまま、半ば黒歴史扱いして近づく事が無かったようだ。
「やはり、何事にもほどほどが一番なんだと思うわ」
霧矢・朱音(医療機兵・e86105)がキープアウトテープを貼りつつ、何やら察した様子で答えを返した。
実際に、売れていたのは、切れ味も、性能も、そこそこの電動草刈り機で、安全性が高い分、無難な作りだったようである。
それでも、怪我をしづらいという事で信頼性が高く、初心者でも扱いやすかったため、問題になった電動草刈り機と比べて、評価も非常に高かった。
それはメーカー側にとっても、納得の行かない結果であったものの、切れ味だけを特化させた事が原因だった事は間違いない。
「ただでさえ危ないのに、それがダモクレスになるんだから、放っておく訳にはいかないわね」
シルフィア・フレイ(黒き閃光・e85488)が、警戒した様子で間合いを取った。
「デ・ン・ド・ウ・ク・サ・カ・リ・キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスと化した電動草刈り機が、耳障りな機械音を響かせながら、倉庫の壁を突き破ってケルベロス達の前に現れた。
ダモクレスは、まわりにあった電動草刈り機を取り込み、ロボットのようになっており、全身凶器という言葉がシックリ来るほど禍々しかった。
しかも、ケルベロス達を敵として認識しているらしく、鋭い殺気を放ちつつ、今にも襲ってきそうな雰囲気であった。
「さぁ、行くわよ月影。頼りにしているからね」
すぐさま、蛍火がウイングキャットの月影に声を掛け、ダモクレスめがけて達人の一撃を繰り出した。
「ク・サ・カ・リィィィィィィィィィィィィィィィ!」
それと同時に、ダモクレスの胸部が凍りつき、悲鳴にも似た機械音が響き渡った。
それはダモクレスとなって、初めて感じた痛み。
そして、恐怖でもあった。
そのため、ほんの一瞬ではあるが、動けなくなった。
だが、ケルベロス達には、それだけの時間があれば、十分だった。
「この状況で、私の蹴りを避けられますか?」
その隙をつくようにして、タキオンがスターゲイザーを仕掛け、ダモクレスの胸部装甲を砕いた。
「デ・ン・ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
その事に危機感を覚えたダモクレスが、胸元を守るようにしながら、替え刃型のビームを飛ばしてきた。
そのビームはクルクルと回転しつつ、まわりのモノを切り裂き、ケルベロス達に迫ってきた。
おそらく、相手がケルベロスでなければ、あっと言う間に、肉の塊。
例え、ケルベロスであっても、無傷では済まないほど、強力な攻撃であった。
「雪の属性よ、皆を護る力を分け与えてね」
即座に、依鈴がエナジープロテクションを発動させ、雪属性の盾を形成すると、ダモクレスの放ったビームを防いだ。
それでも、後退してしまうほどの破壊力。
おそらく、ケルベロスでなければ、その反動で吹き飛ばされていたほどの威力。
しかし、耐えた。
ギリギリのところで踏み止まった。
「ク・サ・カ・リィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
そこに追い打ちをかけるようにして、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、再びビームを放ってきた。
「私達が、ただ時を過ぎるのを待っていたと思っているんですか? だとしたら、残念でしたね。……私は、ここです」
その間に、六花が死角に回り込み、氷の吐息を吐きかけた。
「キィィィィィィィィィィィィィ!」
その影響でダモクレスの身体が凍り付いたものの、ビームは既に発射された後だった。
「パズルの中に眠る竜の力よ、その力を解放せよ!」
即座に、シルフィアがドラゴンサンダーを仕掛け、ダモクレスの放ったビームを破壊した。
しかし、破壊する事が出来たのは、ごく一部。
それ以外のビームはケルベロス達に迫ってきたものの、同じように破壊していったため、一発も当たる事はなかった。
「ク・サ・カ・リィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
それを目の当たりにしたダモクレスが、電動草刈り機型のアームを振り回し、ケルベロス達に迫ってきた。
「なかなか凄い武器を持っているようですが、このドリルに勝つ事が出来ますか?」
すぐさま、タキオンがスパイラルアームを発動させ、肘から先を内蔵モーターでドリルのように回転させ、電動草刈り機型のアームを弾いた。
「デ・ン・ド・ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
それでも、ダモクレスが諦める事無く、電動草刈り機型のアームを振り回し、バチバチと火花を散らしていった。
だが、タキオンはまったく怯んでおらず、臆する事なくダモクレスに迫っていった。
「ここで邪魔をするのは野暮かも知れないけど……状況が状況だから、覚悟してもらうわよ!」
その隙をつくようにして、朱音がルーンディバイドを仕掛け、光り輝く呪力と共に斧を振り下ろし、電動草刈り機型のアームを斬り落とした。
「デ、デ、デ・ン・ド・ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
その事に危機感を覚えたダモクレスが、耳障りな機械音と共に、替え刃型のミサイルを次々と発射した。
それが雨の如く降り注ぎ、アスファルトの地面に落下したのと同時に、爆音を響かせながら弾け飛んだ。
その上、それが回避困難なほど、小さな無数の刃物となって散らばり、ケルベロス達の皮膚を切り裂き、辺りを一瞬にして真っ赤に染めた。
「この地に眠る霊達よ、皆を癒してあげてね」
即座に、依鈴がゴーストヒールで大地に塗り込められた惨劇の記憶から魔力を抽出し、仲間達の傷を癒していった。
だが、それだけでは安心する事が出来なかった。
「デ、デ、デ、デ……デェェェェェェェェェェェェェン!」
ダモクレスが再びミサイルを発射するため、エネルギーをチャージし始めた。
「そう何度もミサイルを撃つ事が出来ると思ったら、大間違いよ!」
それを邪魔するようにして、シルフィアがスターゲイザーを繰り出し、ダモクレスを蹴り飛ばした。
「デ・ン・ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」
その影響でダモクレスは、ミサイルを発射する事が出来ず、バランスを崩して膝をついた。
その拍子に、ミサイルの発射装置に支障が出てらしく、チャージする事さえ出来なくなった。
「弱点を見抜いたわ、この痛撃を受けなさい!」
それに合わせて、蛍火が破鎧衝を仕掛け、高速演算で構造的弱点を見抜き、痛烈な一撃をダモクレスに放った。
「我が声に従い、現れよ! 三つの属性の水晶体よ、敵を取り囲み、魔法を放て!」
次の瞬間、六花がトライアングル・マジックを発動させ、火属性、氷属性、雷属性の三つの水晶体を召喚すると、ダモクレスを取り囲むように動かし、水晶体から同時に三属性の魔法を放って攻撃した。
「デ、デ、デ、デ・デ・デ……デン・デ・デ……ド・ド・ドッ!」
続けざまに攻撃を喰らった事で、ダモクレスが逃げ腰になり、ゲルベロス達に背を向けた。
「このまま逃げられると思っているのだったら、甘いわね。これで、終わりよ。覚悟しなさい! ……虚無球体よ、敵を飲み込み、その身を消滅させてしまいなさい!」
それと同時に、朱音がディスインテグレートを発動させ、触れたもの全てを消滅させる、不可視の虚無球体を放った。
「デ、デ、デェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!」
その一撃を喰らったダモクレスが、悲鳴にも似た機械音を響かせ、虚無球体に飲み込まれて跡形もなく消滅した。
そして、ケルベロス達は次の戦いに備えるため、その場を後にするのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年4月19日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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