燃え上がる情熱！

■リプレイ

●都内某所
「……まさか本当に存在していたとはね。ずっと、嫌な予感がしていたから、常に警戒を怠らないようにしていたのだけれど……。それでも、まだ被害が出ていなかったのが幸いね。とにかく、怪我人が出る前に、何とかしておきましょう」
　リサ・フローディア（メリュジーヌのブラックウィザード・e86488）は仲間達と共に、ダモクレスの存在が確認されたゴミ捨て場にやってきた。
　そこには大量のゴミが山のように積まれており、思わず見上げてしまうほどの高さがあった。
　そのため、問題の電気ストーブが、何処にあるのか分からなかった。
　それでも、問題の電気ストーブが、ダモクレスと化すのは、時間の問題。
　既に、カウントダウンが、始まっていた。
「それにしても、またダモクレスですか。最近、やけに多いですね。これが何かの前触れでなければいいのですが……」
　青沢・屏（守夜人・e64449）が、深い溜息を漏らした。
　それだけ残留思念が漂いやすい時期なのだろう。
　おそらく、小型の蜘蛛型ダモクレスも、休み返上で頑張っているはずである。
　そもそも、小型の蜘蛛型ダモクレスに休みが存在しているのか怪しいところだが、毎日のように何処かでダモクレスが発生している事だけは、間違いのない事だった。
「まあ、家電製品である以上、何時かは故障してしまうものだろうけど、諦めない気持ちは敵ながら大したものだね」
　四季城・司（怜悧なる微笑み・e85764）が、感心した様子で口を開いた。
　その思いが小型の蜘蛛型ダモクレスを呼び寄せる結果を招いてしまったものの、それは電気ストーブが意図したモノではない。
　だが、小型の蜘蛛型ダモクレスの誘惑を退ける事が出来なかったため、ダモクレスと化してしまうのだから、実に皮肉な話であった。
「確かに、壊れても尚、人々を暖めてあげたいという心意気は大したものだとは思うわね。だけど、それがダモクレスとなったからには、人々に被害が出る前に倒すしかないわ」
　霧矢・朱音（医療機兵・e86105）がキープアウトテープを貼りながら、キッパリと言い放った。
　ある意味、電気ストーブも被害を受けた側なのかも知れないが、何の罪もない人々を傷つけようとしている時点で、同情の余地はなかった。
　それ以上に、ここでダモクレスを倒さなければ、取り返しのつかない事態になってしまう事だけは、間違いなかった。
「本当は人々の役に立ちたかったのかも知れないけど……。だったら、なおさら人々に危害を加えさせる訳には行かないよ！」
　シルフィア・フレイ（黒き閃光・e85488）が、ダモクレスの奇襲に備えて、警戒した様子で間合いを取った。
　その途端、ゴミの山からゴトッと音が響き、廃棄家電がゴロゴロと転がり落ちて、ドスンと土煙を上げた。
「デ・ン・キ・ス・トォォォォォォォォォォォォォォォォブ！」
　次の瞬間、ダモクレスと化した電気ストーブが、まわりにあったゴミを弾き飛ばし、ケルベロス達を威嚇するようにして、耳触りな機械音を響かせた。
　ダモクレスは、まわりにあった家電ゴミを取り込み、ロボットのような姿になっており、ケルベロス達を敵として認識しているようだった。
「随分と醜い姿になっちまったモノだな。そんな姿……望んでいた訳じゃないだろ？　まあ、いまさら何を言ったところで手遅れか。自分で考える事も出来なくなっているようだしな」
　柴田・鬼太郎（オウガの猪武者・e50471）が複雑な気持ちになりながら、ダモクレスを見上げた。
　ダモクレスは怒りの感情に支配されており、電気ストーブだった時の記憶を、ほとんど失っているようだった。
「デ・ン・キィィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　そのため、ダモクレスはゴミの山の王者の如く勢いで、耳障りな機械音を響かせながら、ケルベロス達を狙って、勢いよく炎を発射した。
　それは誰かを暖めるためではなく、消し炭に変えるため。
　その時点で当初の目的を忘れているようだったが、ダモクレスにとっては些細な問題であった。
　その炎がまわりにあったゴミを燃やしながら、まっすぐケルベロス達に迫ってきた。
「雷鳴の蒼螺子よ、仲間を護る盾を作りなさい！」
　すぐさま、リサがエナジープロテクションを発動させ、ダモクレスが放った炎を防いだ。
　その影響で炎が弾け飛び、まわりにあったモノを燃やしていった。
　幸いケルベロス達に怪我はなく、ダモクレスが動くよりも速く、反撃を仕掛ける事が出来た。
「これ以上、好きにはさせません」
　それに合わせて、屏が達人の一撃を繰り出し、ダモクレスの身体を凍りつかせた。
「ス・トゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥブ！」
　その事に腹を立てたダモクレスが、耳障りな機械音を響かせながら、勢いよく火炎を放射した。
　それと同時に、凍っていた部分が溶け、ダモクレスが再び動き出した。
「まだ動かれると困るのよ。だから、この飛び蹴りで、大人しくしてもらうわよ！」
　その事に気づいた朱音がスターゲイザーを繰り出し、ダモクレスを蹴り飛ばした。
「デ・ン・キィィィィィィィィィィィィィィ！」
　その一撃を喰らったダモクレスがバランスを崩し、近くにあったブロック塀に突っ込んだ。
　それでも、ダモクレスの戦意は衰えておらず、むしろヤル気になっているようだった。
「ス・トゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥブ！」
　そのため、ケモノの叫び声にも似た機械音を響かせ、ムックリと起き上がると、今にも燃え上がりそうな勢いで、超強力なパンチを繰り出してきた。
　そのパンチがまわりにあったモノを燃やし、焦げたニオイが辺りに広がった。
「おいおい、まさかその程度の炎で俺達を消し炭にするつもりでいるのか？　だっったら、拍子抜けだな」
　そんな中、鬼太郎がダモクレスを挑発しながら、怪力無双で足元に落ちていた家電を投げつつ、水如（ミズノゴトシ）を発動させ、その場の地形を利用するようにして距離を縮めていった。
「デ・ン・キィィィィィィィィィィィィ！」
　それを迎え撃つようにして、ダモクレスが超強力なパンチを繰り出したものの、殺気が剥き出しになっているせいか、一発も当たらない。
　その事でダモクレスが焦ったのか、再び炎を発射した。
　だが、その炎も当たらない。
　近くにあったゴミを幾つか消し炭に変えて、それでお終い。
　ケルベロス達にとって、それは望まぬ結果であった。
「確かに、こんな炎で僕らを倒せる訳がないね。嘘だと思うんだったら、今から証拠を見せてあげるよ。どうせ言っても分からないだろうしね」
　すぐさま、司が螺旋氷縛波で氷結の螺旋を放ち、炎の発射口を凍りつかせた。
「デ、デ、デ、デ・ン・キィィィィィィィィィィ！」
　それでも、ダモクレスが炎を発射しようとしたものの、氷を溶かす事が出来ずに暴発し、発射口が完全に壊れて真っ黒な煙を上げた。
「今のうちに回復しておくわね」
　その間に、リサが仲間達に声を掛け、鎮めの風を発動させた。
「スト、スト、ストーブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　しかし、ダモクレスはまったく諦めておらず、苛立ちを隠せない様子で、再びケルベロス達を狙ってパンチを繰り出した。
「どうやら言っても分からないようね」
　シルフィアが深い溜息を漏らしながら、ドラゴンサンダーを発動させ、パズルの中に眠る竜の力を解放し、竜を象った稲妻をダモクレスに解き放った。
「ス、スト、ススス……スゥゥゥゥゥゥゥゥ……」
　その一撃を喰らったダモクレスが、悲鳴にも似た機械音を響かせ、ビリビリと身体が痺れて動けなくなった。
「本当に、しつこいわね。そもそも、誰かを暖めたかったんじゃないの？　それとも、こんな未来を望んでいたの？」
　朱音がダモクレスに問いかけながら、ファミリアシュートでファミリアロッドをリスの姿に戻し、それに魔力を込めて射出した。
　次の瞬間、弾丸と化したリスが、ダモクレスの身体を容赦なく貫いた。
「ス・トォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ！」
　その途端、ダモクレスが悲鳴にも似た機械音を響かせ、あちこちから真っ黒な煙とオイルを垂れ流しながら、半ばヤケになりつつ、電気ストーブ型のミサイルを発射した。
　電気ストーブ型のミサイルは、ドスンドスンと音を響かせ、次々とアスファルトの地面に落下して爆発した。
　その破片が鋭い刃物となって、ケルベロス達を襲い、容赦なく皮膚を切り裂いた。
「……本当に諦めの悪い奴だな。まあ、今は治療に専念するか」
　鬼太郎がダモクレスを横目でチラリと見た後、ウイングキャットの虎と手分けして、仲間達の治療を優先させた。
　それに合わせて、虎が癒しの翼を使い、傷ついた仲間を治療した。
「デ・ン・キィィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　その邪魔をするようにして、ダモクレスが再び　ストーブ型のミサイルを発射した。
　それがアスファルトの地面に落下し、次々と爆発すると、辺りを炎に海に包んだ。
「火力なら、僕の方も負けてはいないよ」
　その炎に対抗するようにして、司がグラインドファイアを仕掛け、ダモクレスの身体を炎に包んだ。
　それが先程、リスに貫かれた穴から入り込み、ダモクレスを内側から燃やし、絶望のどん底に突き落とした。
「さぁ、突撃だよー！　粉砕してあげるからね！」
　そこに追い打ちをかけるようにして、シルフィアがセントールチャージを仕掛け、回避を許さぬ超高速の突撃で、ダモクレスを粉砕した。
「ス……トォ……ブ……」
　そのため、ダモクレスは何が起こったのか分からず、ぎこちない機械音を響かせながら、成す術もなく爆発四散し、物言わぬガラクタの山と化した。
「……これで二度と復活する事もありませんね」
　その事を確認した後、屏がホッとした様子で溜息を漏らした。
　そして、屏は旅団の仲間に御土産を買うため、共に戦った仲間達に別れを告げ、その場を後にするのであった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2021年4月18日 難度：普通 参加：6人 結果：成功！
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