●都内某所
廃墟と化したスーパーに、製氷機が置かれていた。
この製氷機は、氷を作るのに時間が掛かり、出来た氷の大きさもバラバラで、モーター音も煩く、消費電力もハンパなかったが、それでも大切にされてきたようである。
しかし、スーパーが廃業したのと同時に放置され、氷を作る事も無くなった。
それでも、製氷機は納得していなかった。
突然、電力を断たれ、氷を作る事が出来なくなったため混乱し、訳が分からなくなっていた。
思い起こせば、電力を断たれる前、随分と慌ただしかった気もするが、その理由までは分からない。
それに加えて、誰も近づく事が無くなったため、疑問だけが増えていったようである。
その結果、様々な疑問が残留思念となって辺りに漂い、小型の蜘蛛型ダモクレスを呼び寄せた。
小型の蜘蛛型ダモクレスは、カサカサと音を立てながら製氷機に近づき、機械的なヒールを掛けた。
「セイヒョウキィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスと化した製氷機が、耳障りな機械音を響かせ、スーパーの壁を突き破って、街に繰り出すのであった。
●セリカからの依頼
「九竜・紅風(血桜散華・e45405)さんが危惧していた通り、都内某所にあるスーパーで、ダモクレスの発生が確認されました」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが確認されたのは、都内某所にあるスーパー。
この場所に放置されていた製氷機が、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、製氷機です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスと化した製氷機は、まわりにあるモノを取り込み、ロボットのような姿になっているようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
六星・蛍火(武装研究者・e36015) |
九竜・紅風(血桜散華・e45405) |
柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471) |
海原・リオ(鬼銃士・e61652) |
静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384) |
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764) |
●都内某所
「ずっと嫌な予感はしていたが、まさか本当に存在しているとはな。まあ、これも何かの縁だ。被害が出る前に、解決してしまおうか」
九竜・紅風(血桜散華・e45405)は仲間達と共に、ダモクレスの存在が確認されたスーパーにやってきた。
このスーパーは数年ほど前に閉店しており、それから誰も買い手がつかぬまま、廃墟になっていたようである。
そのためか、いつの頃からか不良達の溜まり場になっていたらしく、壁には自分達の存在を示すようにして、様々な落書きがされていた。
それが原因で、何やら近寄り難い雰囲気が漂っているものの、不良達の姿はそこになかった。
おそらく、何処かに出かけているのだろう。
いつ帰ってくるのか分からないが、いまのところは大丈夫そうであった。
「……何だか勿体ない気がするね。食料を保存するのにも効果的だし、もうすぐ暑い季節になるから、冷たい物を用意するのにも丁度いいと思うんだけど……」
海原・リオ(鬼銃士・e61652)が、残念そうに溜息を漏らした。
だが、問題の製氷機は、難あり商品。
そのため、不都合ばかりが目立っていたらしい。
それでも、スーパーの従業員達にとっては、マスコット的な存在だったらしく、大事にされていたようである。
「それに、もう少ししたら夏に入る頃だから、氷菓子などを作るのに役立ったろうから、破棄されるなんて勿体ないね」
そんな中、四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)が、キープアウトテープを貼った。
最悪の場合、不良達がオラオラスタイルで、スーパーに集まってくる可能性があるため、念のため。
不良達の溜まり場になっている分、外から一般人達が迷い込んでくる可能性は低いものの、念には念を入れてのようである。
そのおかげで、誰かが近づいてくる事が無くなったため、まわりを気にせず戦いに集中する事が出来そうだ。
「まぁ、製氷機からすれば、何ともやるせない気持ちだけど……」
六星・蛍火(武装研究者・e36015)が、何処か遠くを見つめた。
しかし、製氷機自体はスーパーなどの企業にとって、必要不可欠なモノ。
そう言った意味で、他のスーパーと比べて、悪い扱いを受けていなかったようである。
その分、捨てられてしまったという現実を受け入れる事が出来ず、小型の蜘蛛型ダモクレスを招く結果になってしまったのかも知れない。
「確かに、そうね。製氷機にとっては悲しい事に変わりはないのだから……。それでも、人に危害を加えて良い理由にならないわ」
静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)が、キッパリと断言をした。
だが、製氷機にとっては、復讐に近い気持ちを抱いているのだろう。
自分が不要とされ、捨てられた。
そう思い込んでしまった事が、そもそもの原因かも知れない。
例え、それが間違った考えであったとしても、誰も正す者はいなかったため、今回の結果を招いてしまった可能性が高かった。
「セ・イ・ヒョ・ウ・キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスと化した製氷機が、耳障りな機械音を響かせ、スーパーの壁を突き破って、ケルベロス達の前に現れた。
ダモクレスは、まわりにあるモノを取り込み、ロボットのような姿になっており、薄っすらと漂う冷気を鎧の如く身に纏っていた。
「こっから先は行き止まりだぜ、この先には平和な町と、そこで暮らす一般人がいるんでな。ダモクレスが製氷機を選んだ理由は知らねえが、悪手だったな。俺の炎で全部溶かしてやらあ」
すぐさま、柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)が火斬(カザン)を仕掛け、力任せに高速で刀を振り回す事で炎を纏わせ、ダモクレスを攻撃した。
「セ・イ・ヒョ・ウ・キィィィィィィィィィィィィ!」
その途端、ダモクレスの身体が炎に包まれたものの、氷状のビームを発した事で消し飛ばした。
「まずは、動きを封じた方が良さそうだね」
その間に、司が一気に距離を縮め、スターゲイザーを繰り出し、ダモクレスを蹴り飛ばした。
「セェェェェェェェェェェェェェェェェェイ」
その一撃を喰らったダモクレスがバランスを崩し、ブロック塀に突っ込んで倒れ込んだ。
「ヒョ、ヒョ、ヒョゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
それでも、ダモクレスの心は折れていなかった。
自分を捨てた者達に復讐するため……。
何も言わず去っていった者達に絶望を与えるため……。
ここで屈する訳にはいかなかった。
「キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その思いを具現化するようにして、ダモクレスが氷状のビームを発射した。
それと同時に、まわりのモノが凍り付き、辺り一面を銀世界に変貌させた。
「……雪よ、その大自然の奇跡よ、仲間を護る盾となりなさい!」
即座に、依鈴がエナジープロテクションを発動させ、ダモクレスが放ったビームを防いだ。
その拍子に、飛び散ったビームが依鈴の身体を包み込むようにして広がって弾け、キラキラと輝きながら地面に落ちた。
「さぁ、行くぞ疾風丸。頼りにしているからな」
次の瞬間、紅風がテレビウムの疾風丸と連携を取りつつ、ランスインパクトを繰り出し、高速の突撃でダモクレスを圧倒した。
「セイヒョウキィィィィィィィィィィィィィィィ!」
だが、ダモクレスの戦意は衰えておらず、殺気立った様子で再び氷状のビームを放ってきた。
そのビームは、まわりのモノを凍らせながら、物凄い勢いでケルベロス達に迫ってきた。
「月影、私に付いてきなさい。一緒に頑張ろうね!」
その事に気づいた蛍火が、ボクスドラゴンの月影に声を掛け、ギリギリのところでビームを避けた。
それに合わせて、月影がダモクレスの死角に移動し、いつでも援護する事が出来るように準備を整えた。
「それじゃ、ここから気合を入れて行くぞ!」
一方、鬼太郎はメタリックバーストを発動させ、全身の装甲から光輝くオウガ粒子を放出し、味方の超感覚を覚醒させた。
「セ、セ・イ・ヒョ・ウ……」
その事にダモクレスが危機感を覚え、凍てつく冷気を身に纏い、警戒心をあらわにしながら、ツララ状のアームを振り回して、ケルベロス達に襲い掛かってきた。
「なかなか立派な腕を持っているようだが、俺達の前では単なる飾り同然。そんなモノは、一瞬で氷の様にかち割ってやろう!」
それを迎え撃つようにして、紅風がダモクレスの攻撃を避け、スカルブレイカーを繰り出し、右アームを破壊した。
「キィィィィィィィィィィィィィィィィィイ」
その途端、ダモクレスが悲鳴にも似た機械音を響かせ、逃げるようにして距離を取った。
「さあ、これで……もう片方の腕を石に変えてやろう」
その隙をつくようにして、リオがガジェッドガンで魔導石化弾を発射した。
「セ・イ・ヒョ・ウ・キィィィィィィィィィィィィィ!」
その事に気づいたダモクレスが、左腕でガードしたものの、その場所から石化していき、まったく動かなくなった。
「お前のトラウマを、想起させてやるよ」
それと同時に、リオが惨劇の鏡像を発動させ、ナイフの刀身にダモクレスのトラウマを映し出し、それを具現化させた。
それはダモクレスの元となった製氷機を捨てたスーパーの従業員達。
その中には、自分を一番大切にしてくれた店長の姿もあった。
だが、その口から漏れたのは、冷たい言葉。
ダモクレスが、もっとも口にしてほしくない言葉の数々だった。
それが鋭い刃物となって、ダモクレスの心を、ザクザクと傷付け、絶望のどん底に叩き落とした。
「セ、セ、セ、セェェェェェェェェェェェェェェェェ!」
そのトラウマを消し去るため、ダモクレスが半ばヤケになりながら、大小様々な氷型のミサイルを次々と発射した。
ダモクレスから放たれたミサイルは、滅茶苦茶に飛んでいきながら、あちこちにぶつかって爆発し、大量の破片を飛ばしてきた。
「ドローンの群れよ、仲間を警護しなさい!」
即座に蛍火がヒールドローンを発動させ、小型治療無人機(ドローン)の群れを操って、まわりにいた仲間達を警護させた。
そのおかげで、仲間達がミサイルや、その破片に当たる事はなかった。
「セ、セ、セ、セ、セィィィィィィィィィィ!」
その邪魔をするようにして、ダモクレスが再びミサイルを発射した。
それが雨の如く降り注ぎ、ケルベロス達の身体を傷つけた。
「すぐに治療するから、みんなここに集まって」
依鈴がゴーストヒールを発動させ、大地に塗り込められた惨劇の記憶から魔力を抽出し、仲間達の傷を癒やしていった。
「ヒョオオオオオオオオオオオオオオオオウ!」
その事に腹を立てたダモクレスが、再びミサイルを発射しようとした。
「随分と焦っているようだな。さっきは防ぐ事が出来たようだが、今度はどうだ?」
そんな中、鬼太郎が全身血まみれになりながら、ケモノの如く吠え、再び火斬を繰り出した。
次の瞬間、刀の切っ先から炎を飛び、ミサイルの発射口を破壊し、ダモクレスの身体を炎に包んだ。
「セ、セ、セイ・ヒョウ・キィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その事にショックを受けたダモクレスが、悲鳴にも似た機械音を響かせた。
だが、ダモクレスの心に芽生えた恐怖と、絶望は消える事はない。
もう二度とミサイルを撃つ事が出来なくなってしまったため、戸惑いと焦りで考えが纏まらなくなった。
「さぁ、この一撃で真っ二つに叩き割ってあげるよ」
それと同時に、司がルーンディバイドでルーンを発動させ、光り輝く呪力と共に斧を振り下ろした。
「セ・イ・ヒョ・ウ・キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
それでも、諦める事無く突っ込み、その勢いに任せて弾き飛ばそうとしたものの、斧の一撃を防ぐ事が出来ず、真っ二つに叩き割られた。
「セ、セ、セ、セ、セ!」
その途端、ダモクレスが激しく痙攣し、大爆発を起こして、ガラクタの山と化した。
そして、ケルベロス達は次の戦いに備えるため、その場を後にするのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年4月17日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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