男も女もブルマニア!

作者:雷紋寺音弥

●ブルマニアの集い
 春の日差しが降り注ぐ昼下がりの公園にて。
 今日も今日でビルシャナが、懲りずに意味不明な教義を広めていた。
「諸君、世間は新学期を迎えている。新学期といえば、制服や体操服を新調する者もいるだろう」
 そう言ってビルシャナが取り出したのは、今では絶滅危惧種となったブルマである。どうせまた、こいつを盗むとか被るとか、しょーもない教義を語り出すのかと思われたが……ビルシャナの思想は、それらの更に斜め上を行くものだった。
「体操服として、ブルマほど機能性に優れたものはない! 否、体操服どころか、スポーツウェアとしてもブルマこそ至高! 故に、私は宣言する! これからは老若男女、全ての者が、あらゆるスポーツでブルマを着用するべきだと!」
 ここに来て、まさかの全人類ブルマ化宣言であった。正直、その辺の変態よりも、よっぽど性質が悪い気がする。
「そうだ! 俺は体操服どころか、日常生活でもブルマを穿いてるぜ!」
「いっそのこと、ズボンもスカートも廃止して、パンツの上に穿いていいのはブルマだけにするべきなんだ!」
 ビルシャナに感化された信者達も加わり、彼らは更に教義を拡大解釈し、碌でもない方向へと進めて行く。誰でもいいから、早く阻止しなければ、色々と面倒なことになりそうだった。

●誰でも皆、ブルマを穿け!?
「うぅ……リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)さんの心配していたことが、本当になってしまいました……。女の子だけでなく、男の子までブルマを穿くべきだって主張するビルシャナが……」
 その日、ケルベロス達の前に現れた笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)は、のっけからやってられない表情で、目には半分涙を浮かべていた。
 男も女も、誰であろうとブルマを穿くべき。女子だけならまだしも、男子にまで……否、果ては爺さん婆さんにまでブルマを強要するなど、もはや狂気の沙汰である。
「戦いになると、ビルシャナは……ブ、ブルマを使った拳法で攻撃して来ます!」
 具体的には、ブルマ以外の衣服をズタズタに破る、大量のブルマを撒いて敵を撹乱する、強制的にブルマだけの格好にする気弾を放ち、おまけに相手を硬直させるという代物らしい。
 なお、実際の戦いになると信者達もビルシャナのサーヴァントのような状態になって、こちらへ襲い掛かってくるのはお約束。彼らの数は10名程度と数だけは多いが、戦闘力が最弱なのも変わらないので、説得する前に倒すと即死である。
「信者にされた人達の目を覚ますには、先に説得が必要ですね。でも……ブルマ以外の服装の良さを説明しただけじゃ、話を聞いてもくれないと思います」
 ビルシャナの影響で脳みそのネジが外れた信者達は、ブルマ以外の衣服の着用を認めない。それこそ、球技であろうと格闘技であろうとブルマで行うべきだと叫び、果ては水泳でさえも裸にブルマだけで泳ぐべきだと信じているような連中だ。
 彼らの目を覚まさせるためには、いっそのこと『穿く』以外のブルマの使い方を提案するなど、より奇天烈な提案をした方が良いのかもしれない。大切なのはインパクトなので、多少無理のある説得であっても、奇抜なものの方が効果は高い。
「こ、こんな人達が増えたら……ねむも、ブルマだけでプールに入らないといけないことに!? い、いやです! そんなの、恥ずかしくて絶対に無理です!!」
「確かにね……。際どいデザインでも、せめて水着だったら、胸は隠れるから我慢できるけど……」
 そこから先は、もう何も言うまいと言葉を切る成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)。
 さすがに、年頃の少女に対して、おっぱい丸出しでブルマだけ穿いて泳げというのは酷過ぎる。その上、男にもブルマを穿かせてブルマ紳士とかブルマッチョなんかを増殖させようなど、暴挙の極み!
 このビルシャナは、絶対に退治しなければならない。人々の……おもに、ねむの心の平穏を守るためにも、早々に御退場いただこう。


参加者
ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)
若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)
ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164)

■リプレイ

●禁断の扉
 老若男女、あらゆる者にブルマだけを穿かせようとするビルシャナが現れた。
 はっきり言って、お約束の展開である。しかし、説得のためには強烈なインパクトを伴う行動が必要なため、若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)の足取りは重かった。
「説得するためとはいえ、自ら変態の扉を開かないといけないなんて……」
 新品のブルマが入った袋を眺めつつ、なんとも言えぬ表情で大きな溜息を吐く。それは他の者達も同様で、大なり小なり頭痛の種を抱えているようだった。
「本当に、こういう人達って全然減らないんだよね……」
 もしかすると、ビルシャナを退治するよりも変態のいない世界を作り出した方が平和に繋がるのではなかろうか。成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)が、ともすれば危険思想とも思われる言葉を口にするが、それはそれ。
 これまでも、幾度となく変態の相手をさせられてきた彼女からすれば、もう本当に勘弁して欲しい話なのだろう。現に、ドラゴンやエインヘリアルを始めとした強大なデウスエクス勢力はケルベロス達の力の前に敗北し、地球は確実に平和への道を歩み始めているというのに。
「……春になれば何とやらか。人々、そして理奈の心の平穏の為に参ろう」
 これ以上、変態のせいで心を病む者が出てはならないと、ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164)は改めてビルシャナを討伐する覚悟を決めた。それは同じく、今回の一件に責任を感じている、リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)もまた同じだった。
「リリが心配してたせいで、ねむが変な予知しちゃったね。責任持ってリリがやっつけてくるよ!」
 まあ、心配してもしなくても、変態もビルシャナも勝手に生えて来るところがあるので、彼女が責任を感じる必要はないのだが。
 なお、彼女達の大半は、今回の説得のためにブルマを着用済みだった。当然、リリエッタもブルマ姿なのだが、そんな彼女のことを、ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)が後ろから凝視していたのもまた様式美。
(「リリちゃんのブルマは尊いですわ。でも、ブルマが尊いのではないのです! リリちゃんが尊いのです!」)
 どうせ布教するなら、そっち系の路線で来ないものか。淡い希望を抱くルーシィドではあったが……そもそも、ビルシャナは教義内容が斜め上に吹っ飛んでいることも多いので、彼女の期待を満たしてくれる可能性は限りなく低い。
「ブルマ、か……。まあ、相手が求めるなら、そちらに合わせるのもまた一興でしょう」
「……穿いたことないけど、ネムちゃんを泣かすから犯罪よね。鳥を撃破する」
 同じく、ブルマを穿いたミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)や獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)も後に続いていたが、彼女達は既に大人の女性である。
 ブルマって、小中学生が穿くから尊いものじゃないの?
 今回のビルシャナ、ロリコンじゃないの?
 いや、男にも穿かせようとしている時点で、それはないか……。
 どうにも理解に苦しむ相手だったが……この場合は、理解した時点で狂気ゲージが振り切れて発狂しかねないので、あまり深く考えない方が良さそうだ。

●無限大の可能性
 あらゆるスポーツウェアを、それこそ水着さえもブルマにせんとするブルマニア明王。だが、そんな彼の教義は当然のことながら、ルーシィドの理解できるところではなかった。
「みなさん、ブルマを穿いて、楽しいですか? ブルマは見るべきものです 可愛い女の子が着用したブルマを見ると、幸せになれるでしょう? それを自分が穿くなんて、冒涜にもほどがありますわ」
 そもそも、何故にブルマが尊いのか。その根源的な部分から、ルーシィドは語って聞かせた。
 ブルマを愛しているのであれば、愛すべき者が着用したブルマに祈りを捧げるべきだろう。それなのに、どうして自分がブルマを穿くことにこだわるのか。それは、そちらが人を愛していない証拠であろうと。
「愛する人を作り、その方にブルマを穿いて貰えば、本当の幸せを得ることができるはず……。つまり、あなた方はブルマを快く穿いてくれる彼女さんを作るべきなのです!」
 ぶっちゃけ、ブルマが本体で女がオマケと言われた日には、女性として怒りを覚えるのも当然だ。頼むから、真の尊さに気付いてくれと願うルーシィドだったが……そこは信者達も一級の変態戦士。
「フハハハハ! 何を言い出すのかと思ったら、そんなことか?」
「彼女を作って穿いてもらうだって? そんなもの、俺達には必要ないぜ! なぜなら……俺達の恋人は、このブルマだけだって既に決まっているからなぁ!!」
 なんと、連中はブルマこそ自分の彼女であると言い張り、人間の彼女を作ることを断固拒否!
 尊いのはブルマなのだから、それを着用することで、自らブルマと真の意味で合体できるのだと、謎理論を振りかざしてくるのだから堪らない。
「うげぇ……。今回も酷い変態だと思ってはいたけど、これはかなり重症かも……」
 あくまで『ブルマそのもの』に執着する男達を前にして、理奈が早くもドン引きしていた。
 こんな連中、いったいどうやって説得すればいいのだろう。まともな方法では、今回もダメだ。こうなったら、後はブルマの変わった使い方を教えることで、着用という行為から意識を反らす他にないか。
「ブルマの変わった使い方……んっ、こんなのはどうかな?」
 そういうことならと、まずはリリエッタがブルマに包まれた箱を信者達に手渡した。いったい何だろうと、信者達がブルマの中に包まれた箱を取り出してみると、中から現れたのは可愛らしいデザインの弁当箱だった。
「んっ、お前達もこんなふうに女の子からお弁当渡されたら嬉しい?」
「な、なんだと……!? まさか、ブルマにこんな使い方があったとは……!!」
 いきなり斜め上な使い方を提案され、驚愕する信者達。もっとも、女の子から弁当をがもらえるか否かよりも、ブルマで弁当箱を包む方を重視しているような気がしないでもないが。
「なるほど……。ならば、こういうのはどうだ? 他にも、使い方は色々とあるぞ」
 間髪入れず、今度はジークリットがブルマ生地っぽい何かを取り出して見せた。一見、ブルマに見えるのだが、どうやら切断されてしまっているらしく、普通のブルマとしては使用できそうにないが。
「これはブルマの下部分を切り取った腹巻きだ。伸縮性に優れた生地を生かした、どんな体型にもジャストフィットする優れものだ」
 そんなにブルマと一体化したければ、あらゆる面でブルマを取り入れるべきだろう。腹巻だけで足りないなら、こちらはどうかと更に別の何かを取り出して見せ。
「もうひとつはこれだ。ブルマの生地で作った布マスクである」
 なんと、ブルマスクという更に突拍子もない代物まで登場だ! しかも、このブルマスク、ブルマそのものな形をしていないので、見た目的には普通のマスクにしか見えないところもポイントが高い。
「この中には、杉花粉で苦しんだ者も少なからず居るだろう。だがこれを着ければ、ブルマがお前たちを来年の花粉から護ってくれようぞ」
 ついでに、ブルマの匂いを嗅ぎたい者がいれば、その欲求も満たしてくれる。なんとも優れた一石二鳥の品であると、ジークリットは言い切った。
「おお、これは素晴らしい着眼点だ!」
「う~む……。でも、ブルマを切断っていうのはどうなんだ……?」
 明らかに興味を示す者、ブルマを壊すことに抵抗を示す者、数は半々といったところか。
 ともあれ、ブルマには無限の可能性がある。それを信者達に伝えられたことで、彼らの数は、気が付けば半数程に減っていた。

●過激に説得!?
 ブルマの持つ無限の可能性の境地、インフィニティ・ブルマ・センスへ覚醒した信者達は、ブルマニア明王の下を去って行った。
 これで残る信者は、後半分。先に去った者達は、別の意味でより高次の変態に覚醒してしまった気もするが……今は、目の前の信者とビルシャナの対処の方が先である。
 とにかく、ここは相手の体力を奪い、思考を麻痺させることから始めよう。そう考え、手始めに銀子がブルマスタイルで信者達の前に出た。
「あなた達、それでも本当にブルマを穿く資格があるとでも? ブルマはアスリート最強の証! 最強でない者は履く資格はないわ!」
「な、なんだと! では、どうすれば最強のブルマ戦士になれるんだ!?」
 案の定、信者達が食いついて来た。これ幸いとばかりに、続けて銀子が取り出したのは、ボディビルダーがウェイトトレーニングに使うような重量級の筋トレ器具。
 いったい、どこからそんなものを調達して来たのか。まあ、細かいことは気にしないでおこう。大切なのは、信者達を疲弊させ、ブルマへの執着を薄めさせることなのだから。
「ほら、どうしたの! 足を踏ん張り、腰をいれなさい!!」
「「「ひぃぃぃぃっ!」」」
 両手、両足にウェイトを付けて、過剰なまでの筋トレや、筋肉分解が起きる程の激しいランニングを強制する。途中で倒れた者は、当然のことながらブルマ戦士の資格なし! 強引にブルマを剝奪し、強制的に場外へ退場だ。
「さあ、どう? まだ、これでもブルマ戦士を名乗るつもり?」
 トレーニングが終わったところで、銀子は改めて信者達に尋ねた。この時点で、既に脱落者は三人。だが、残る二人は銀子の極悪トレーニングに、なんと耐え切ってしまっていた。
「はぁ……はぁ……。なかなかキツいトレーニングだったぜ……」
「だが、俺達のブルマ愛は、そんなもんじゃ失われねぇ……」
 そう、彼らこそは真のブルマ戦士! 全身を筋肉の鎧で固めたブルマッスルのボディビルダーだったのだ!
「トレーニングに耐えたんだから、俺達こそ真のブルマ戦士だよなぁ?」
「……ってか、そっちこそ、そんな細身で大丈夫か? 俺達が鍛え直してやるぜ!」
 調子に乗ったブルマッスル達が、力技で銀子を屈服させんと迫り来る。1対1なら、なんとか捌けるかもしれないが、相手を殺さず屈強な男二人をねじ伏せるのは、なかなかどうして難しく。
「ちょっ……! さ、さすがに二人同時は反則だって!?」
 抵抗空しく、後ろから羽交い絞めにされてしまった。が、しかし、そんな彼女を救うべく、ついに真のブルマ紳士……ブルマ淑女が降臨した!
「お待ちなさい! あなた達の悪行も、そこまでです!」
 陽光を背に、高所から飛び降りたのは、他でもないめぐみだった。しかも、彼女は顔にブルマを被っている。どう考えても変態にしか見えないが、インパクトだけなら絶大だ!
「な、なんだ、お前は! 俺達の邪魔をするのか?」
「お黙りなさい!! たかがブルマを穿いただけの平民風情が、ブルマを被りし貴族、ブルマ淑女に逆らうというのですか?」
 こういう場合、変に恥ずかしがった方が負けであることを、めぐみはよく理解していた。できることなら、こんな真似はしたくなかったが、これもビルシャナから信者達を解放するためなので、致し方なし。
「くっ……! さすがに、ブルマ淑女様に言われちゃあ、ここは退くしかないようだな……」
 振り上げた拳を納め、更に信者が一人減った。これで、残すは最後の一人。彼は未だ諦めず、ともすれば銀子のブルマを奪おうと、執拗に彼女へ襲い掛かろうとしているので、やってられない。
 こうなれば、こちらも最終兵器を出すしかないだろう。変態には変態を……というわけで、ノーパンブルマなミスラが銀子を庇うべく最後の信者の前に立ち塞がった。
「そちらの相手は、私がしましょう。さあ、来なさい」
 もっとも、相手をすると言っても、殴り合いをするわけではない。なにやら、意味深な微笑みを浮かべると……ミスラは自らブルマを脱ぎ捨て、それを使って信者にイケないことをし始めた。
「ふふ……♪ ブルマにはこんな使い方もあるんですよ。固定概念に囚われ、可能性を否定するのは損です」
「な、なんだと! ちょっ……そんなことまで……ぁぁぁぁっ!!」
 まあ、要するにお色気攻撃である。しかも、単なる色仕掛けではなく、自らの肉体を使った積極的な色仕掛け……いや、これはもう、イケないご奉仕と言っても過言ではない!
「はぁ……はぁ……。お、俺はもう、我慢できねぇぜ!」
「あん……ヌルヌルして暖かい、グチュグチュに汚されてます……」
 いや、お前達、ここが野外ってことを忘れてないか?
 あまりに過激な光景に、ついには理奈が『見せられないよ!』と書かれた巨大なボードを取り出して、二人の姿を影に隠した。
「目には目をっていうけれど……さすがに、これはやり過ぎだよぉ……」
 毒を以て毒を制すなら良いのだが、どちらかというと、ミイラ取りがミイラになっているだけな気もする。だが、それでもビルシャナの信者達は全て教義から解放されたので、とりあえず彼らが死ぬ未来だけは回避できたのが幸いか。
「お、おのれ……貴様達、さっきから黙って見ておれば、神聖なるブルマを破き、改造し、果てはそんな不埒な事柄に利用しよう等と……ゆ、許さん!!」
 全ての手駒を失ったブルマニア明王が、全身からブルマオーラを発しながらブチ切れる。後はこの鳥を倒せば、事件は無事に解決だ!

●変態キラー
 信者達を解放したことで、残すはブルマニア明王のみ。彼のブルマに対する執着は凄まじいものがあったが、こちらは強大なデウスエクスと幾度となく死闘を繰り返して来たケルベロス達だ。
「ブルマ以外を破く技? そんな程度で、私達を止められると思わないことね!」
「ぐぇっ! そ、そんな馬鹿な!」
 上半身を半裸にされても関係なく、銀子がブルマニア明王を殴り飛ばした。そう、彼女達は今までも、数多くの変態を相手にしてきたのだ。そのため、今さらブルマ姿にされた程度では何ら動じない、鋼メンタルを入手していたのである。
「ん、もう我慢できないです……私も気持ち良くして下さい……!」
「うへへへ! 言われなくても、そうしてやるぜぇ!」
 なお、ミスラは未だ壁の裏で信者とお楽しみタイムだったので、まともに戦闘に参加できていなかった。まあ、盛りのついたマッチョに乱入されても面倒なので、ここは足止めしてもらえるだけでも良しとするか。
「さて、平民鳥。あなたには大衆を扇動した罰を与えます……屠殺処分です」
 未だ頭にブルマを被ったままの姿で、めぐみが攻性植物を召喚した。それを鞭の如き形状に変形させ、ビルシャナを後ろから滅多打ち!
「おほほほほ……御仕置してあげますわ♪」
「うぎゃぁぁぁっ! や、止めろ! 俺なんかよりも、お前達の方がよっぽど変態じゃないか!!」
 もはや、色々な意味で完全に攻守交代だ。しかし、そこはブルマニア明王とて腐ってもデウスエクス。ここで何もできないまま倒されるわけにはいかないと、最後の力を振り絞り、渾身の気弾を発射する。
「こうなれば、一人でも多く、ブルマだけの姿にしてくれる!」
「えぇっ! ちょっと、なんでそこでボクを狙うの!?」
 案の定、この状況で狙われたのは理奈だった。咄嗟に、他の者達が彼女を庇わんとするも、こういう時に限って援護防御が発動しないのはお約束。
「ひゃぁぁぁっ! な、なにこれぇっ!?」
 哀れ、気弾の直撃を食らった理奈は、ブルマ以外の衣服が全て消滅してしまった。慌てて両手で胸元隠そうとするが、全身が硬直してしまい、それもできない。完全に公開処刑である。
「大丈夫ですか? 直ぐに、元通りにしてさしあげますわね」
 見兼ねたルーシィドが理奈の身体に衣服と同じ絵を描いたことで、ヒール効果が発動し、彼女の服も元に戻った。
 これ以上、このビルシャナに好き勝手させてはならない。時間をかけるのは得策ではないと、ジークリットが剣を片手に斬り込んで行く。
「目には目を、歯には歯を。暴挙には暴挙をだ。風よ……邪教を流布せし凶鳥を打ち倒せ! 烈風!!」
「どわぁぁぁっ! 私の大切なブルマがぁぁぁっ!!」
 自分のブルマをズタズタに引き裂かれ、絶叫するブルマニア明王。命よりブルマが大事とか、やっぱりコイツ、ただのアホだ。
「これで終わりだね。この弾丸は――お前を滅ぼすまで追いかけるよ! ホロゥ・バレット!」
 最後は、リリエッタの放った弾丸が、丸腰になったビルシャナの眉間を貫き昇天させる。これにて、今回の事件は解決となったのだが……改めて考えると、色々な意味で恥ずかしすぎる任務だった。
「お、終わったの……? うぅ……なんか、今回はこっちも、かなり酷いことさせられた気が……」
 ふと、理奈が自分の置いたボードの方を見れば、そこからは未だにミスラの艶っぽい声が聞こえていた。その一方で、ブルマを被らざるを得なかっためぐみもまた、どんよりとした表情で溜息を吐いていた。
「仕方がなかったんです……これしかなかったんです」
 相棒のらぶりんが慰めてくれたのが、せめてもの救い。そんな彼女に賛同する形で、銀子もまた軽く背中を押し。
「この依頼のことはとっとと忘れたいね」
 冷静になって考えると、メチャクチャ恥ずかしい事件だった。とりあえず、憂さ晴らしも兼ねてボードの裏でミスラを襲っている変態を、逮捕しておこうと決める銀子だった。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年4月27日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。