季節外れのクリスマス!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 クリスマスツリーが、ゴミ捨て場に捨てられたのは、仕方のない事だった。
 大きくて、無駄に場所を取り、処分にも困るシロモノ。
 それがクリスマスツリーであった。
 そもそもクリスマスは、終わっている。
 故に、クリスマスツリーの出番はない。
 だからと言って、何処かにしまえるほどのスペースはない。
 その結果、ゴミとして捨てられることになったようである。
 しかし、クリスマスツリーは諦めていなかった。
 再び輝ける日を夢見て、必死に煌めこうとした。
 その気持ちに反して、煌めく事は出来ず、動く事さえ出来なかった。
 それでも、クリスマスツリーの思いが潰える事はなかった。
 その気持ちが残留思念となって辺りに漂い、小型の蜘蛛型ダモクレスを呼び寄せた。
 小型のダモクレスはゴミの山の中からクリスマスツリーが突き出している事に気づくと、機械的なヒールを掛けた。
「メリィィィィィィィィィィィィィィィィィクリスマスゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化したクリスマスツリーが、陽気なクリスマスソングを響かせながら、街に繰り出すのであった。

●セリカからの依頼
「サイレン・ミラージュ(静かなる竜・e37421)さんが危惧していた通り、都内某所にあるゴミ捨て場で、ダモクレスの発生が確認されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、都内某所にあるゴミ捨て場。
 この場所に捨てられていたクリスマスツリーが、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、クリスマスツリーです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスと化したクリスマスツリーは身体が機械化しており、色取り取りの電飾を輝かせ、クリスマスソングを流しながら、街に繰り出そうとしているようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
六星・蛍火(武装研究者・e36015)
サイレン・ミラージュ(静かなる竜・e37421)
静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)
シルフィア・フレイ(黒き閃光・e85488)

■リプレイ

●都内某所
「……こんな季節にクリスマスですか。もう少し早ければ、歓迎されていたかも知れませんね。……とはいえ、少し時期が遅過ぎました。これでは歓迎されるどころか、冷ややかな目で見られるでしょうね」
 サイレン・ミラージュ(静かなる竜・e37421)は、セリカから貰った資料を参考にして、仲間達と共にダモクレスの存在が確認されたゴミ捨て場にやってきた。
 その場所は、ハエの楽園と化した危険な場所。
 異様なニオイが、まわりのモノに纏わりつき、そのまま取り込みそうな勢いで、辺りに漂っていた。
 ……そこはハエ達の領域。
 迂闊に近づけば、ハエの大群に大歓迎されるほど、衛生面に問題があった。
 おそらく、壊れた家電だけでなく、生ゴミ等も捨てられているのだろう。
 ほんのりと風に乗って、漂ってくるニオイを嗅いだだけで、気分が悪くなってきた。
「確かに、四か月……遅かったわね。でも、ダモクレスになる期間を考えると、速い方なのかも知れないわ。だからと言って、何か変わる訳では無いのだけど……」
 静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)が、複雑な気持ちになった。
 問題のクリスマスツリーは、アップダウンの激しい扱いを受けていたのだろう。
 幸せの絶頂から転落までが一瞬だったため、余計にショックが大きかったのかも知れない。
 それが残留思念となって、小型の蜘蛛型ダモクレスを引き寄せたのだから、実に皮肉な話であった。
「まあ、何であれ今更出てきた感があるわね。おそらく、街に出たら、もっと辛い思いをするでしょうね。そう考えると、ここで対処しておかないと大変な事になるわ。自分の扱いに納得する事が出来ず、大暴れするかも知れないし……」
 シルフィア・フレイ(黒き閃光・e85488)が色々な意味で危機感を覚え、警戒した様子で辺りを見回した。
 問題のクリスマスツリーが何処にあるのか分からないが、かなり大きなモノなので見つけ出す事は、それほど難しい事ではないはずである。
 そうしているうちに、蜘蛛っぽい何かがゴミの山に潜り込んでいった。
 それが何だったのかハッキリとは分からなかったものの、あまりにも一瞬だったため、それが小型の蜘蛛型ダモクレスなのか、それともまったくの別物なのか、特定する事が出来なかった。
「……そうね。このまま放っておいたとしても、今年のクリスマスに再利用される事も無いのだから、ここで倒してしまいましょうか」
 六星・蛍火(武装研究者・e36015)が仲間達に声を掛けながら、少しずつ距離を縮めていった。
 それを威嚇するようにして、大量のハエがブンブンと音を立て、ケルベロス達に体当たりを仕掛けてきた。
「メリィィィィィィィィィィィィイイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィクリスマスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化したクリスマスツリーが、耳障りな機械音を響かせ、ゴミの山から飛び出してきた。
 それと同時に、大量のハエが危機感を覚え、ブンブンと羽音を響かせ、一斉に飛び立った。
「メリ、メリ、メリィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 この時点で、ダモクレスはハイテンション!
 いまから楽しいクリスマスパーティが始まりそうな勢いで、ノリノリだった。
 その上、何処からかクリスマスソングまで流れてきたため、季節感が何処かに行ってしまったような錯覚を覚えた。
 だが、今は春ッ!
 クリスマスをやるには、あまりにも遅過ぎた。
「メリィ、メリィ、メリィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その間も、ダモクレスは、ノリノリ。
 一見すると無害そうではあるものの、おそらく気のせい。
 何も考えていないように見えても、ケルベロス達の動きを窺っているようだった。
「メ、メ、メリ、メリ、クリス、マ、マ、マァァァァァァァァァァァス♪」
 それを感じさせないほど、ダモクレスは能天気ッ!
 クリスマスソングが響かせながら、楽しそうに身体を揺らし、超強力なビームを放ってきた。
 そのビームの先端にはソリに乗ったサンタがおり、とてもイイ笑顔を浮かべたまま、ケルベロス達に迫ってきた。
「これは、また……賑やかね。でも、今はクリスマスじゃないわ……!」
 すぐさま、依鈴がエナジープロテクションを発動させ、大自然の力を借りて盾を形成し、ダモクレスが放ったビームを防いだ。
 だが、ダモクレスの放ったビームは、強力。
 盾によってビーム自体は防ぐ事が出来たものの、ソリに乗ったサンタが鬼のような形相を浮かべており、今にも胸倉を掴みかかっていきそうな勢いで迫って消えた。
 幸い、それはダモクレスが作り出した幻影。
 何か特別な力がある訳では無いため、ケルベロス達を傷つける事は出来なかった。
「それじゃ、行くわよ、月影。私に付いてきなさい!」
 その間に、蛍火がボクスドラゴンの月影に声を掛け、一気に間合いを詰めていった。
 それに合わせて、月影が蛍火と連携を取りつつ、ダモクレスの注意を引いた。
「メリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その事に気づいたダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、再びビームを放ってきた。
 今度は怒り狂った筋骨隆々のサンタの幻影がビームと共に放たれ、魔獣と化したトナカイ達と一緒に襲い掛かってきた。
「……!」
 それでも蛍火は臆する事なく、達人の一撃を繰り出し、ビームの発射口を凍りつかせた。
 一方、ダモクレスが作り出したサンタ達の幻影は、蛍火を傷つける事なくビームと共に消滅した。
「これで自慢のビームを放つ事が出来なくなりましたね。今のうちに行きますよ、アンセム!」
 その隙をつくようにして、サイレンがウイングキャットのアンセムに声を掛け、ダモクレスに雷刃突を炸裂させた。
「メ、メ、メリリィィィィィィィィィィクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウ!」
 その事に腹を立てたダモクレスが、ビームを放とうとしたものの、発射口が凍りついているせいで暴発し、真っ黒な煙を上げて崩れ落ちた。
 それはダモクレスにとって、予想外の出来事。
 自分が思い描いた未来とは違った結末であったため、何が起こったのか理解する事が出来ず、動揺しているようだった。
「パズルの中に眠るドラゴンよ、その力を解放せよ」
 そこに追い打ちをかけるようにして、シルフィアがドラゴンサンダーを発動させ、パズルから竜を象った稲妻を解き放ち、ダモクレスを痺れさせた。
「リスマァァァァァァァァァァァァァァァァァス!」
 その影響でダモクレスの身体が痺れ、反撃を仕掛ける事が出来なくなった。
 それでも、何とかして身体を動かそうとしていたが、枝状のアームすら動かす事が出来ないほど、身体がビリビリと痺れていた。
「倒すのなら、今のうちね。オーラの弾丸よ、敵に喰らい付きなさい」
 続いて、蛍火が仲間達と連携を取りつつ、ダモクレスを囲むようにしながら、気咬弾を放ってオーラの弾丸を食らいつかせた。
 ダモクレスに食らいついたオーラは装甲を削り、無防備なコア部分まで迫る勢いだった。
「静霊の鋼よ、私に力を分け与えて下さい!」
 それに合わせて、サイレンが戦術超鋼拳を仕掛け、全身を覆うオウガメタルを鋼の鬼と化し、ダモクレスを殴り飛ばして、ボロボロになっていた装甲を砕いた。
「ク・リ・ス・マ・スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」
 その途端、ダレクレスが烈火の如く怒り狂い、枝状のアームを振り回し、ケルベロス達に斬り掛かってきた。
「……!」
 すぐさま、アンセムが清浄の翼を使い、羽ばたきで邪気を祓って、ケルベロスを援護した。
 そのおかげでケルベロス達は大怪我をする事なく、すぐに反撃の準備を整える事が出来た。
「セントールの蹴りは……、強力だよ!」
 それと入れ替わるようにして、シルフィアがダモクレスを蹴り飛ばした。
「ツリィィィィィィィィィィィィィ!」
 その一撃を喰らったダモクレスが、ゴミの山に突っ込み、耳障りな機械音を響かせた。
 しかし、戦意はまったく衰えておらず、耳障りな機械音を響かせ、LED電球型ミサイルを発射した。
 LED電球型ミサイルはアスファルトの地面に落下すると、キラキラと輝きながら、大爆発を起こして、大量の破片を飛ばしてきた。
 その破片が鋭い刃となって、ケルベロス達に襲い掛かり、その体を切り裂き、飛び散った血でアスファルトの地面を赤く染めた。
「……待ってて。すぐに回復するわね」
 即座に、依鈴がゴーストヒールを発動させ、大地に塗り込められた惨劇の記憶から魔力を抽出し、仲間達を癒やした。
「ク、ク、ク、クリスマスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その事に気づいたダモクレスが、依鈴の邪魔をするようにして、再びミサイルを放とうとした。
「もう二度とミサイルは撃たせません、絶対に……。どんな事があっても! さぁ、敵を食らいつきなさい!」
 次の瞬間、サイレンが攻性捕食で捕食形態に変形し、ダモクレスに食らいついて毒を注入した。
「ツ、ツ、ツ、ツリィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その途端、ダモノクレスが苦しみ始め、ビクビクと身体を震わせ、あちこちからオイルを撒き散らして崩れ落ちた。
「これで終わったのでしょうか? 何となく、まだ動きそうな気もするのですが……」
 依鈴が警戒した様子で、ダモクレスに視線を落とした。
 それと同時に、ダモクレスがボンと音を立て、真っ黒な煙を上げて、ガラクタの山と化した。
「……ふぅ、服が汚れちゃったわね。クリーニングしたい方は、お気軽に言ってね」
 蛍火がゲンナリとした様子で、クリーニングを使い、身体と服を綺麗にした。
「やっぱり、ゴミ捨て場での戦いは慣れないわね。それじゃ、クリーニングをお願いして良いかな?」
 シルフィアが苦笑いを浮かべて、蛍火にクリーニングを御願いした。
 そして、ケルベロス達はクリーニングで、身も心も綺麗にした後、その場を後にする手のあった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年4月14日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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