ゴミ屋敷に捨てられた不都合

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 近所からゴミ屋敷と呼ばれている家があった。
 この家の住人はゴミ捨て場からゴミを持ち帰る事を日課としており、大量のゴミが家の中に運び込まれていたようだ。
 そのため、まるで見えない壁があるのではないかと錯覚してしまうほど、異様なニオイが漂っており、それが原因で近隣住民と度々トラブルを起こしていたようである。
 それに加えて、家の住民が体調を崩して入院した後は、悪意を持った者達によって、大量のゴミが捨てられるようになった。
 その場所に引き寄せられるようにして、小型の蜘蛛型ダモクレスが現れた。
 小型の蜘蛛型ダモクレスはカサカサと音を立てながら、遊園地のアトランションで遊ぶような感覚でゴミの山を乗り越え、その中に埋まっていた充電式電池に機械的なヒールを掛けた。
「ジュウデンシキィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化した充電式電池が、耳障りな機械音を響かせ、ゴミ屋敷から飛び出した。

●セリカからの依頼
「七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)さんが危惧していた通り、都内某所にあるゴミ屋敷で、ダモクレスの発生が確認されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、都内某所にあるゴミ屋敷。
 この場所に捨てられていた充電式電池が、ダモクレスと化してしまったようである。
 この充電式電池は発火しやすく、爆発する恐れもあったため、色々と問題視されていたらしい。
「ダモクレスと化したのは、充電式電池です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスと化した充電式電池は、機械で出来た蜘蛛のような姿をしており、ゴミの山を弾き飛ばしながら、ケルベロス達に襲い掛かってくるようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)
六星・蛍火(武装研究者・e36015)
柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)
天月・悠姫(導きの月夜・e67360)
静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)

■リプレイ

●都内某所
「昨日に引き続き今日も今日とてダモクレスの相手だが、液晶の次は充電式電池ってやつか。敵も違えば味方も違う。だが、多少の違いはあるかもしれんが、結果は同じだ。一般人に被害を出す前に『お帰り(還り)、(息を)お引き取り』願うか」
 柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)はヘリオンから降下し、隠密気流を活かしつつ辺りの様子を窺った。
 問題の充電式電池があるのは、ゴミ屋敷の中。
 一体、どのような経緯で、この場所に持ち込まれたのか分からないため、どこにあるのか特定する事は出来ないものの、遅かれ早かれゴミ屋敷の中から飛び出してくる事は間違いなかった。
「まさか、こんな場所にダモクレスが現れるとは……。ですが、存在を知ってしまった以上、見て見ぬフリは出来ませんね」
 七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)は複雑な気持ちになりながら、ダモクレスの存在が確認されたゴミ屋敷を見上げた。
 その場所は、屋敷と言うより、ゴミの山。
 辛うじて、平屋の屋根が見えている程度で、大半がゴミに埋もれていた。
 そのため、近寄り難い雰囲気が漂っており、まるで見えない壁に行く手を阻まれているような錯覚を覚えた。
 そのおかげで、辺りに人気は無かったものの、何かが腐ったニオイが漂っているため、ケルベロスであっても、近づく事が困難な状況であった。
「ううっ……、あまり近づきたくないわね。でも、私達が動かないと、ダモクレスによる被害が出てしまう。だったら、答えはひとつ……よね」
 リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)が、自分自身に言い聞かせた。
 それでも、本音を言えば……、帰りたい。
 おそらく、ダモクレスが現れる事が無ければ、近づく事さえなかったはず。
 しかし、ダモクレスの存在が確認された以上、ここから背を向ける訳にはいかなかった。
「ちょっと近寄りがたいけど、被害が出る前に、わたし達で倒してしまいましょう」
 天月・悠姫(導きの月夜・e67360)が仲間達に声を掛けながら、警戒した様子で辺りを見回した。
 既に、小型のダモクレスが、現れた事は間違いない。
 最悪、ダモクレスが不意打ちを仕掛けてくるため、ここで気を抜く訳にはいかなかった。
「……と言うか、こんな都内にゴミ屋敷がある時点で、本当に迷惑な話ね。色々と理由があるようだけど、だからと言って許される事ではないわ」
 六星・蛍火(武装研究者・e36015)が、深い溜息を漏らした。
 ゴミを集める事になったキッカケは、些細な事。
 きちんと分別をせず、ゴミを捨てた事を注意され、持ち帰るように指示をされたため、ヤケになってゴミを集め始めたようである。
 そこにどのような意図があるのか分からないが、だいぶ偏った考え方をしていた事は間違いない。
「だから、みんな迷惑していたようね。何度か、話し合おうとしたようだけど、家主が頑なに拒否していたようだし……」
 静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)が、何処か遠くを見つめた。
 どうやら、最初は嫌がらせで、ゴミを集めていたようである。
 それが何時の頃からか、何かに取り憑かれた様子で、ゴミを集めるようになったらしい。
「私は自宅警備員ですが、部屋にゴミが溜まる事はあっても、流石にここまでゴミ屋敷みたいにはならないですよ。一体、何年かけて溜め込んだのか分かりませんが、これだけは真似したくないですね」
 兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)が、ゲンナリとした表情を浮かべた。
 既に、ニオイからして、殺人レベル。
 何か毒ガスでも噴霧されているのではないかと錯覚してしまうほどだった。
「そもそも、ゴミ捨て場からゴミを持ち帰っちゃいけないよね。常に、身辺は綺麗にしておかないと……」
 そんな中、四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)がキープアウトテープを貼って、念のため人払いをした。
「ジュウデンシキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化した充電式電池が耳障りな機械音を響かせ、まわりにあったゴミを弾き飛ばし、ケルベロス達の前に現れた。
 ダモクレスは機械で出来た蜘蛛のような姿をしており、本能的にケルベロス達が敵であると認識し、バチバチと火花を飛び散らせながら、超強力なビームを放ってきた。
「雷の属性よ、その力による盾を形成し、仲間を護りなさい!」
 すぐさま、リサがエナジープロテクションを発動させ、雷属性でダモクレスの放った超強力のビームを防いだ。
 その途端、リサを威嚇するようにして、身体を包み込むようにして、バチバチと火花が飛び散った。
「そんな線香花火で、俺達が怯むと思っていたのか? せめて驚かせるんだったら、このくらい派手にしてもらわねえと!」
 それに対抗するようにして、鬼太郎がブレイブマインで、リサの背後にカラフルな爆発を発生させた。
「デンチィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その挑発に乗るようにして、ダモクレスが再びバチバチと火花を散らし、超強力なビームを放つため、エネルギーをチャージし始めた。
「さぁ、行くわよ月影。頼りにしているからね」
 即座に、蛍火がボクスドラゴンの月影に声を掛け、一気に間合いを詰めていった。
 その間もダモクレスはエネルギーをチャージしており、いつ放ってもおかしくないような状況であった。
「まずはビームの発射を防いだ方が良さそうね!」
 その事に危機感を覚えた依鈴がスターゲイザーを仕掛け、ダモクレスを蹴り飛ばした。
「いくら地味な攻撃だからって、そう何度もビームを放たれても困るからね。だから、その動きを封じてあげるよ」
 それに合わせて、司もスターゲイザーを放ち、ダモクレスを蹴り飛ばした。
「ジュウデンシキィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 続け様に攻撃を喰らったダモクレスがフラつき、倒れ込むようにしてブロック塀に突っ込んだ。
「このまま痺れてしまいなさい!」
 そこに追い打ちをかけるようにして、綴が旋刃脚を繰り出し、ダモクレスの身体をブロック塀にめり込ませた。
「この呪いで、貴方を動けなくしてあげますよ!」
 その隙をつくようにして、紅葉が美貌の呪いでダモクレスの動きを封じ込めた。
「霊弾よ、敵の動きを止めてしまいなさい!」
 それと同時に、悠姫がプラズムキャノンを放ち、ダモクレスにブチ当てた。
「バチバチバチィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 そのため、ダモクレスは全く動く事が出来ず、恨み言を吐くようにして、耳障りな機械音を響かせた。
「どうやら、予定が狂ってしまったようね」
 次の瞬間、蛍火が達人の一撃を繰り出し、ダモクレスの装甲を剥ぎ取った。
「ジュ、ジュウデンシキィィィィィィィィィィ!」
 それでも、ダモクレスは動く事が出来ず、怒り狂った様子でバチバチと火花を飛び散らせた。
「だからと言って、手加減はしませんよ!」
 綴が一気に間合いを詰めて、大器晩成撃を放ち、ダモクレスの身体を凍りつかせた。
「さぁ、これで……吹き飛んでしまいなさい!」
 それに合わせて、紅葉がサイコフォースを仕掛け、精神を極限まで集中させる事で、ダモクレスを爆破した。
「デンチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その途端、ダモクレスが真っ黒な煙を上げて、大量の部品を飛ばしながら、鋭く尖ったアームで襲い掛かってきた。
「……俺に任せろ!」
 すぐさま、鬼太郎がダモクレスの攻撃を防ぎ、仲間達の身を護った。
 一方、ウイングキャットの虎は、清浄の翼で鬼太郎の傷を癒した。
「大地に眠る霊達よ、皆を癒す力を分け与えてね」
 リサもゴーストヒールを発動させ、大地に眠る霊達の力を借り、鬼太郎の傷を癒した。
「この薔薇の剣舞に、見惚れてしまえ」
 その間に、司がダモクレスに薔薇の剣戟を仕掛け、幻の薔薇が舞う華麗な剣戟で幻惑した。
「バチバチバチバチィィィィィィィィ!」
 その影響でダモクレスが混乱し、ゴミの山めがけて、鋭く尖ったアームを突き刺し、耳障りな機械音を響かせた。
「そのまま石になってしまうといいわ!」
 その隙をつくようにして、悠姫がガジェットガンを発動させ、魔導石化弾を撃ち込み、ダモクレスの背中を石化した。
「水晶の炎よ、敵をその輝きで切り刻んでしまいなさい!」
 続いて、依鈴がクリスタルファイアを仕掛け、熱を持たない水晶の炎でダモクレスを切り刻んだ。
「ジュ、ジュ、ジュウデンシキィィィィィィィィィィィィ!」
 それと同時に、ダモクレスが充電式電池型ミサイルを発射し、雨の如く降らせてまわりにあったゴミを吹き飛ばした。
「弱点を見抜いたわ、この一撃で吹き飛んでしまいなさい!」
 次の瞬間、蛍火がダモクレスの背後に回り込み、破鎧衝で構造的弱点を見抜き、痛烈な一撃を放って装甲を破壊した。
 その拍子に、ダモクレスの中にあったコア部分がわずかに見え、それが不気味に赤く輝いた。
「……もう少し広げた方が良さそうね」
 その事に気づいた依鈴が絶空斬を仕掛け、ダモクレスの装甲を破壊し、コア部分があらわにした。
「デンチィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスが自らの身を護るため、再びミサイルを放とうとした。
「もうミサイルを撃つ事なんて出来ませんよ!」
 それを邪魔するようにして、紅葉が達人の一撃を放ち、ミサイルの発射口を凍りつかせた。
「ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 そのため、ダモクレスはミサイルを発射する事が出来ず、歯軋りにも似た機械音を響かせ、ケルベロス達と距離を取ろうとした。
「逃がすかっ!」
 そこに追い打ちをかけるようにして、鬼太郎がオウガナックルを叩き込み、ダモクレスのコア部分を破壊した。
「デンシキィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 それと同時に、ダモクレスが断末魔にも似た機械音を響かせ、まわりのゴミを巻き込むようにして爆散した。
「何とか倒す事が出来たようだね。正直、汚れるような仕事は苦手だったんだけど……」
 そんな中、司が疲れた様子で、深い溜息をついた。
 ダモクレスと戦っている間は、まったく気にならなかったが、ゴミの近くで戦っていたため、ニオイが移ってしまったようである。
「確かに、酷い臭いね。早くクリーニングをお願いするわ」
 リサもゲンナリとした様子で、近くにいた綴に声を掛けた。
 よく見れば、みんなゴミだらけ。
 おそらく、ダモクレスが爆発した影響で、大量のゴミを浴びてしまったせいだろう。
「……そうですね。すぐにクリーニングしておきましょう」
 即座に、綴がクリーニングを使い、仲間達と服と身体を綺麗にしていった。
「それじゃ、後はヒールをして帰りましょうか」
 そう言って悠姫が仲間達と手分けをしてヒールを使い、辺りを修復するのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年4月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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