爆炎の中で

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 町外れの倉庫に積まれていたのは、大量のダンボールであった。
 そのダンボールの中には、返品されたドライヤーが入っていた。
 このドライヤーは長時間使用すると、爆発する事があったらしく、その事が問題視されて回収する事になったようである。
 故障の原因は、チェック作業を省いたため。
 その上、返品されたモノの中から、使えそうな部品を取り出し、再利用していた事も災いして、大きなトラブルを招いてしまったようである。
 だが、返品されたドライヤーすべてが、欠陥品だった訳ではない。
 問題があったのは、ごく一部。
 それでも、すべてが欠陥品として扱われ、返品されてしまったらしい。
 しかし、それをドライヤー達が納得した訳では無い。
 むしろ、逆。
 なんで自分達が、こんな目に……。
 たった数台のせいで、活躍の機会を奪われるなんてありえない……!
 そんな気持ちに引き寄せられるようにして現れたのは、小型の蜘蛛型ダモクレスであった。
 小型の蜘蛛型ダモクレスは、ドライヤー達を憐れむようにして、機械的なヒールを掛けた。
「ドライヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化したドライヤーが、耳障りな機械音を響かせ、倉庫の壁を突き破って、街に繰り出すのであった。

●セリカからの依頼
「カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)さんが危惧していた通り、都内某所にある倉庫で、ダモクレスの発生が確認されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある倉庫。
 この倉庫に保管されていたドライヤーが、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、ドライヤーです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスと化したドライヤーは、他のドライヤーを取り込み、まるでロボットのような姿になっているようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)
ミルフィーユ・タルト(甘いもの好き・e46588)
海原・リオ(鬼銃士・e61652)
氷狩・シアン(躊躇い無き剣・e64816)
天月・悠姫(導きの月夜・e67360)
紺野・雅雪(緋桜の吹雪・e76839)
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)

■リプレイ

●都内某所
「まさか、俺の予感が当たるとはね。まぁ、人々に被害が出る前に倒してしまえば問題ないか」
 カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)はセリカから貰った資料に目を通した後、添付されていた地図を頼りにして、仲間達と共にダモクレスの存在が確認された町外れの倉庫にやって来た。
 そこは、まるで別世界。
 辺りは不気味なほど静まり返っており、人の気配がまったくしなかった。
 そのおかげで人払いをする必要もなかったが、その代わりネットリとして空気が纏わりつき、気持ちが悪くなってきた。
「それにしても、随分と危ない家電製品もあった物だな。俺も家電を買うときは、不良品じゃないか気を付けて買わないとな」
 そんな中、紺野・雅雪(緋桜の吹雪・e76839)が、不気味な雰囲気漂う倉庫に足を踏み入れた。
 倉庫の中は妙にホコリっぽく、ほんのりとカビのニオイが混ざっていた。
 その視線の先にあったのは、山積みされたドライヤーの箱だった。
「不良品はごく一部のみでも、やはり全部回収せざるを得ない……。理不尽だが、企業の信用問題も関わっているだろうから、仕方ないのかもな」
 海原・リオ(鬼銃士・e61652)が、何やら察した様子で口を開いた。
 実際に、この一件で企業の信用はガタ落ち、売り上げも半分以下にまで下がってしまったらしい。
 そのため、企業側も強気に出る事が出来ず、赤字になる事が分かっていながら、ドライヤーの自主回収をしたようだ。
「……と言うか、爆発しちゃうような欠陥品って、相当危ない物だと思うのだけど。下手したら裁判沙汰になっちゃうし……」
 ミルフィーユ・タルト(甘いもの好き・e46588)が、気まずい様子で汗を流した。
 おそらく、きちんとチェックをしていれば、発見する事が出来た欠陥品。
 だが、コスト削減のため、様々なチェックを簡略化していたため、誰も異常に気づく事なく、欠陥品が作り続けていたようである。
 その事が原因で多くのドライヤーが、返品される事になったようだ。
「確かにドライヤーが爆発したら、危険ですね。下手したら死人が出てしまう所でしょうし……」
 氷狩・シアン(躊躇い無き剣・e64816)が、最悪の結末を脳裏に浮かべた。
 どうやら、ドライヤーが発火、爆発した事によって、大怪我を負ったケースも少なくなく、その中にはいまだに裁判が続いているモノもあるようである。
「そんな危ないドライヤーは回収されて当然ですけど、他のまともなドライヤーまで巻き添えにされては不憫ですよね」
 兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)が、複雑な気持ちになった。
 しかし、マトモかどうかは、回収してみないと分からない。
 例え、その時は大丈夫だったとしても、いつ不都合が出るか分からないほど、チェックを怠っていたのだから……。
 実際に、回収したモノの中には、幾つも欠陥品が混ざっていたため、放っておけば、大惨事だったようである。
「その所為で破棄されたドライヤーは可哀そうだけど、人々に危害を加えるなら放ってはおけないわね」
 リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)が気持ちを切り替え、真剣な表情を浮かべた。
 次の瞬間、倉庫の奥の方から、ゴトッと物音がした。
「それに、万が一爆発でもしたら、怪我どころでは済まされないわ。製作側の杜撰さが招いた悲劇だけど、ダモクレス溶かした以上、放っておく訳にはいかないわね」
 その事に気づいた天月・悠姫(導きの月夜・e67360)が、警戒した様子で身構えた。
「ドライヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!」
 次の瞬間、ダモクレスと化したドライヤーが、ケモノの咆哮にも似た機械音を響かせた。
 ダモクレスはまわりにあったドライヤーを取り込み、ロボットのような姿になっており、ケルベロス達の命を奪うため、熱風と共に超強力なビームを発射した。
「雷の属性よ、その力を解放し、盾を形成しなさい!」
 すぐさま、リサがエナジープロテクションを発動させ、雷属性で盾を形成すると、ダモクレスの放ったビームを防いだ。
 その反動でリサの身体が宙を舞ったものの、後ろにあったダンボールがクッションとなり、何とか大怪我をしないで済んだ。
「怪我をしたのか? 必要なら殴り飛ばしてやるぞ!」
 それに合わせて、リオが癒しの拳を放つ気満々で、ブンブンと拳を振り回した。
「忌まわしき血の力ですけど、今はこの力を借りますね」
 一方、紅葉は咎人の血で傷口から溢れる血液を操り飛ばし、仲間に浴びせる事で治療をした。
「ドライヤァァァァァァァァァァァ!」
 それと同時に、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、再び超強力なビームを放ってきた。
 ダモクレスから放たれたビームは床を削り取りながら、ケルベロス達に迫ってきた。
「ひょっとして、ビームを撃っている間は、動けないのかい?」
 その間に、カシスが死角からスターゲイザーを放ち、ダモクレスを蹴り飛ばした。
「ドライヤァァァァァァァァァァァァァァア」
 その拍子に、ダモクレスがバランスを崩し、近くにあったダンボールに激突した。
「……霊弾よ、敵の動きを止めてしまいなさい!」
 その隙をつくようにして、悠姫がプラズムキャノンを放ち、ダモクレスの動きを封じ込めた。
「我が剣技、刮目するが良い。土蛇!」
 続いて、シアンが秘剣・土蛇(ヒケンツチヘビ)を発動させ、蒼氷の太刀を足元に突き刺し、オーラを流し込む事で、地滑りをダモクレスの足元に送り込み、絡め捕る事で動きを封じ込めた。
「この呪詛で、その身を汚染してあげるわよ!」
 その間に、ミルフィーユが凶太刀でダモクレスの身体を刺し貫き、刃から伝わる呪詛で魂を汚染した。
「俺の怒りも爆発しそうだ、これでも食らいな!」
 それと同時に、雅雪が怒號雷撃で怒りを激しい雷に変えて、ダモクレスめがけて解き放った。
「ド、ド、ド、ド、ドォォォォォォォォォォォォォォォオ!」
 その一撃を喰らったダモクレスが、ビリビリと身体を痺れさせながら、半ばヤケになりつつ、ケルベロス達を狙って怒りの鉄拳パンチを繰り出した。
 そのパンチは熱風を纏っており、傍にいるだけで大火傷をしそうな勢いだった。
「この弾丸で、しばらく大人しくしてもらうわよ!」
 すぐさま、悠姫がガジャットガンを発動させ、魔導石化弾をダモクレスに撃ち込んだ。
 それと同時に弾丸が命中した部分が石化し、ダモクレスの動きが一時的に止まった。
「薬液の雨よ、皆を浄化せよ!」
 その隙をつくようにして、リオがメディカルレインを発動させ、薬液の雨を降らせる事で傷を癒した。
「ドライィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、まわりにあるモノを弾き飛ばしながら、ケルベロス達に殴りかかってきた。
「……残念だったわね。そこから先には進めないわよ」
 その行く手を阻むようにして、ミルフィーユが捕食の蔦(ホショクノツタ)で地面から植物の蔦を急成長させ、ダモクレスの足を絡め取った。
「ド、ド、ド……!」
 その影響でダモクレスは身動きが取れなくなり、半ばヤケになりながら、ブンブンと拳を振り回した。
 だが、届かない。
 届きそうで……届かない!
「この一撃で、その硬い頭を叩き割ってあげます!」
 その間に、シアンがスカルブレイカーを仕掛け、勢いをつけて高々と跳び上がり、ルーンアックスでダモクレスの頭を叩き割った。
「ド、ドライヤァァァァァァァァァァァ」
 これにはダモクレスがヨロめき、頭から大量のオイルを垂れ流した。
「相手が悪かったようですね。いまさら後悔したところで手遅れですが……」
 そこに追い打ちをかけるようにして、紅葉が月光斬を繰り出し、ダモクレスを斬りつけた。
「ドライヤァァァァァァァァァァァァ!」
 それでも、ダモクレスは諦める事なく、自らの殺意を拳に籠め、ケルベロス達に殴りかかってきた。
「随分と諦めが悪いようだね。だったら、そのドライヤーよりも、より高熱を食らわせてあげるよ」
 それを迎え撃つようにして、カシスがグラインドファイアを仕掛け、ダモクレスの身体を炎に包んだ。
「炎よ、高く昇るがいい!」
 そこに追い打ちをかけるようにして、雅雪もグラインドファイアを放ち、ダモクレスの身体を燃え上がらせた。
「ドドドドドドォォォォォォォォォォォ!」
 その事に危機感を覚えたダモクレスが、紅蓮の炎に包まれながら、悲鳴にも似た機械音を響かせ、ドライヤー型のミサイルを発射した。
 ダモクレスから放たれたミサイルは、クルクルと回転しながら、倉庫の壁や天井、床に当たり、大爆発を起こして熱風と共に、大量の破片を飛ばしてきた。
「大丈夫よ、私を信じて落ち着いてくれれば、安全だから」
 そんな中、リサが仲間達に声を掛け、鎮めの風で傷を癒した。
「よくもやってくれたわね。でも、次はないわ」
 すぐさま、ミルフィーユがサイコフォースを発動させ、遠隔爆破でダモクレスを吹き飛ばした。
「一気に攻めて行くぞ!」
 その隙をつくようにして、リオがガジェットガンを発動させ、ミサイルの発射口を石化させた。
「この呪いで、貴方を動けなくしてあげますよ」
 それに合わせて、紅葉が尋常ならざる美貌の呪いを放ち、ダモクレスの動きを封じ込めた。
「さぁ、断罪の時間だよ。無数の刃の嵐を受けよ!」
 続いてカシスが断罪の千剣(ダンザイノセンケン)を発動させ、罪を浄化する為のエナジー状の光の剣を無数に創造し、ダモクレスの身体を切り裂いた。
「もっと傷口を抉ってやるぜ!」
 そこに追い打ちをかけるようにして、雅雪が絶空斬を繰り出し、ダモクレスの装甲を剥ぎ取るようにして斬り広げた。
「ルーンの力よ、敵を真っ二つにする力を分け与えなさい」
 それと同時に、シアンがルーンディバイドでルーンを発動させ、光り輝く呪力と共に斧を振り下ろした。
「ド、ドライヤ……」
 それでも、ダモクレスは諦めておらず、最後の力を振り絞って拳を振り上げた。
「このまま真っ二つにしてあげるわ!」
 次の瞬間、悠姫がスカルブレイカーを仕掛け、高々と跳び上がってルーンアックスを振り下ろし、ダモクレスの身体を両断した。
「ド、ド、ド……」
 そのため、ダモクレスが成す術もなく崩れ落ち、大爆発を起こしてガラクタの山と化した。
「何とか無事の終わったようね。後は辺りをヒールで修復しておきましょうか」
 そう言ってリサがホッとした様子で溜息を漏らしつつ、ヒールで辺りを修復するのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年4月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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