デスバレス電撃戦~抛つ娘

作者:なちゅい


 万能戦艦ケルベロスブレイド。
 そこに自身のヘリオンごと乗艦させたリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が依頼説明を聞きに訪れたケルベロス達へと一礼して。
「皆、お疲れ様。死神との戦いも佳境に入っているね」
 挨拶もそこそこに、リーゼリットは説明を開始する。
 《甦生氷城》ヒューム・ヴィダベレブングの制圧に向かったケルベロス達も、無事に帰還する事ができているようだ。
 ケルベロスブレイドを襲った巨大死神も撃破できて、まずは一安心といったところ。
「でも、まだ戦いが終わったわけではないよ。《甦生氷城》の制圧に成功した事で、デスバレスへの突入口を開く事ができたのだから」
 《甦生氷城》で戦っていたケルベロス達から、聖王女エロヒムの声を聴いたという報告があったが、同じものを『グラビティ・チェインレーダー』で確認し、解析を行っている。
 この解析情報を元に、強化された予知能力により、突入口の向こう側、デスバレスの情報及び、死神の防衛作戦について情報を得る事ができた。
「まさに、千載一遇のチャンスだね」
 万能戦艦ケルベロスブレイドはデスバレス回廊を突破し、冥府の海潜航能力を使って、聖王女エロヒムが囚われていると思われる『デスバレス深海層』を目指すことになる。
 危険な任務になるが、死神との決着をつける為にも皆の力を貸してほしいとリーゼリットは続けた。

 さて、今回のチームは、敵軍主力である『ヴェロニカ軍団』の幹部の1人、抛つ(なげうつ)スクルドをケルベロスブレイドに近づけさせぬように動いてほしい。
「ヴェロニカ軍団……撃破された軍団をサルヴェージして戦い続ける不死の軍団で、死神の最精鋭軍だね。それが防衛に当たっているよ」
 更に、「七大審問官」を従える「イルカルラ・カラミティ」の力により、その不死性が強化され、撃破された軍勢がすぐに蘇生して再出撃してくるという、恐ろしい能力を発揮する。
 主戦力である奈落の兵団……ヴァルキュリア“アビス”が、撃破されるたびに、ヴェロニカ軍の幹部の元で蘇生されて再出撃してくるのだ。
 これだけでも厄介だが、抛つスクルドを含む7体のヴェロニカ軍の幹部は『撃破されたその場で蘇生されて再出撃』する為、一度、ケルベロスブレイドに取りつかれれば、甚大な被害を被ってしまう。
「だから、これを防ぐ為に敵幹部をケルベロスブレイドへと近づけさせないよう迎撃しなければならないよ」
 無限に蘇生して再出撃する敵を足止めする厳しい戦いになるが、なんとしてもやり遂げて欲しい。

 この迎撃と同時に、イルカルラ・カラミティを撃破する為のチームが編成されている。
「彼らは強化型ケルベロス大砲を利用して、ヴェロニカ軍団を飛び越えて、イルカルラ・カラミティの儀式場に突入する手はずになっている……と聞いているよ」
 彼らがイルカルラ・カラミティを撃破するか、あるいは儀式を破壊できれば、敵の組成と再出撃が止まるはずだ。そこまで、なんとしても耐えきってから反撃に繋げたい。

 ここで、リーゼリットは一度カフェオレで喉を潤して。
「ヴェロニカ軍団は、デスバレスでも有数の軍勢のようだね」
 この軍勢を突破すれば、ケルベロスブレイドを阻止できる軍団の再編成はできず、死神をより追い込めるはず。そうなれば、聖王女エロヒムのいる、デスバレス深海層に大きく近づくことができるだろう。
「ただ、デスバレスの海の途上でケルベロスブレイドが破壊されれば、逆に私達の命が危機にさらされて追い込まれてしまうよ」
 のるかそるかの大勝負。絶対に勝利しようと、リーゼリットはケルベロスに檄を飛ばし、説明を締めくくったのだった。


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
アリア・ハーティレイヴ(武と術を学ぶ竜人・e01659)
神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)
神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)
小柳・玲央(剣扇・e26293)
雑賀・真也(英雄を演じる無銘の偽者・e36613)
狼炎・ジグ(恨み貪る者・e83604)

■リプレイ


 デスバレスへと侵攻する万能戦艦ケルベロスブレイドを護るように布陣する多数のケルベロスのチームの1つ。
 周囲を見回し、小柳・玲央(剣扇・e26293)は予知情報で得られている地図情報と合わせ、把握できる移動経路などを更新していく。
 これからの戦いで、玲央はヘリオンデバイスを使うことも想定していたのだ。
「一先ず死なずの方のー、お相手ですわねぇー」
 そう告げるおっとりお姉さん、フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)は、デスバレスを魔女の大釜と形容していた。
「のるかそるかの大勝負……か。博打はあまり好きではないがね」
 だが、今の状況ではそうも言ってられない。雑賀・真也(英雄を演じる無銘の偽者・e36613)がやれやれと肩を竦める。
 その侵攻と合わせ、ケルベロス達は戦艦の防衛にも当たることとなる。
「撃破されても無限に蘇生してくる軍団……厄介なこと、この上ねぇな」
 神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)が言っているのは、これからメンバー達が戦う相手……ヴェロニカ軍団。
 その主戦力である奈落の兵団は無限に蘇生して再出撃してくるのだ。
「倒しても倒しても蘇生してゾンビアタックは面倒だなぁ」
 アリア・ハーティレイヴ(武と術を学ぶ竜人・e01659)がうんざりとするのも致し方ないことだろう。
「腐った死体共が。何度死んでも足りないらしいな」
 狼炎・ジグ(恨み貪る者・e83604)も似たような言葉を呟く。
 地獄化したジグの声帯は彼の闘志と共に強く燃え上がっていた。
 とはいえ、まずは他チームがイルカルラ・カラミティを討伐するまでは耐える戦いをせねばならない。
 アリアは死神がしぶとい相手だと把握しながらも、倒せない相手なくはないと思いたいと本音を吐露して。
「長期戦覚悟だし、盾役として頑張らないとね」
「そう簡単に倒れるんじゃねぇぞ、アリア。つーか、倒れるような奴に姉ちゃんはやれねぇな」
 そんなアリアへと神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)が発破をかけると、実姉である神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)が顔を赤くして。
「ちょ、レンちゃん!? それ、こんな時に言うことかな!?」
「あん? 気づいてねぇとでも思ってたのかよ姉ちゃん」
 そんな微笑ましい姉弟の言い争いも、敵の出現によって止めざるを得なくなってしまう。
「どうやら、貴方がたが我々の相手のようですね」
 丁寧な口調で語りかけてきたのは、騎士風の死神。
 先程の話にもあったヴァルキュリア“アビス”を引き連れてきたのは、ヴェロニカ軍団の幹部、抛つスクルドだ。
「きたっすね、これ以上先にはいかせないっすよ」
 敵の進路を阻害するように魔法少女衣装姿のシルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)が勢いで立ちはだかり、紫のウェーブヘアを異形化させて威嚇する。
「回れ右して帰ってくんねぇか?」
 同じく前に出たジグが問いかけるが、スクルドは剣をすらりと抜いて。
「生憎と私の一存では決めかねます」
 前に斧を持つアビス達を、後ろに杖を持つアビス達を並べて布陣する。
(「アビスの杖がメディックだとすれば、ブレイク対策にも……」)
 そう考えつつ、鈴は箱竜のリューちゃんことリュガと共にメディックとして後方に位置取る。
「儀式の阻止までは皆を護るよ」
 そして、アリアが敵を前にして改めて身構えると、煉もまた事前情報を元に用意した防具で身を固めて。
「ジャマー役してくれる奴ら、頼むぜ」
 それに応じ、真也は特殊な弓矢を召喚し、スクルドへと矢を向ける。
「おっと、迂闊に動くと射抜くぜ。何せ俺は弓兵(アーチャー)だからな」
 玲央もまたジャマーとして敵を注視していて。
(「アビスが戦線に復活する流れは把握しておきたいね」)
 アビスが復活するまでの早さ、行動パターンの変化……玲央は戦いの中で活用できればと情報収集にも余念がない。
「総員、眼前のケルベロスを突破せよ!」
 スクルドの号令を受け、動き出すアビス達。
 ゆっくりとその前に出たフラッタリーは前頭葉の地獄が活性化する。サークレットが展開して金色瞳が開眼すると、その表情が狂笑に歪む。
「さア、始MeまショU……」
 額から地獄を迸らせ、フラッタリーはアビスへと嗤いかけるのである。


「「おおっ……!」」
 ヴァルキュリア“アビス”達が一気にグラビティを使って向かい来る。
 杖持つアビスが闇の魔法を解き放つ間に、前線の斧持つ敵が重い刃を振り上げ、大きく薙いで来る。
 この場を突破しようとするアビスらに対し、ケルベロスは3人が盾役となって布陣して。
「炎よ 全てを遮る盾となれ!」
 地獄の右腕から大きく蒼き焔を燃え上がらせた煉は、それを壁としてしばし敵の進軍を食い止めようとする。
 金の瞳でそれらを見つめるフラッタリーが薄暗い嗤いを浮かべ、縛霊手の掌から巨大光弾を迸らせて。
「地獄ノ番兵ヲ嘯kU輩、汝ラモ又囚ワレ也ヤ? 死ナ不ノ種諸共二火ニ焚ベ候」
 まるで獣の如き動きでフラッタリーが狙うは、幹部抛つスクルド。併せて、斧使いの一部もその光弾に灼かれるが、さほど意に介する様子も見せず。
「どんな業火だろうと、私達を燃やし尽くせはしません」
 剣から眩い光を放ってくるスクルド。それは前線に立つケルベロスに浴びせかけられ、その守りを徐々に打ち崩さんとする。
「それじゃいくっすよ」
 回復役となるシルフィリアスだが、初手は敵陣を見て手前の斧使いと瞬時に判断する。
「あちしの一撃をくらえっすー、グリューエンシュトラール!」
 シルフィリアスはマジカルロッドに魔力を籠め、可愛らしいポーズをとってから光るエネルギーの塊を放射する。
 多少は相手に痺れを走らせることができただろうが、それだけではアビスの侵攻は止まらない。
 ならばと、敵の刃や魔法を受け止めるアリアが雷のエネルギーを纏わせた腕で地面を叩き付けた。
 アリアの武闘魔法ヴォルトアローはさらにアビスの痺れを強め、攻勢を削ぐ。
 耐える戦いを余儀なくされる為、長期戦は必至。
「無限蘇生の儀式が中断されるまでは倒しても倒しても意味がありません。なら……」
 ジャマーとなる仲間達が効率よく敵の動きを止められるよう、鈴は魔力に満ちた九尾扇で空を煽ぐ。
 鈴が纏わせた幻影によってジャマー能力を高めた玲央は、リズムに乗って立ち回る。
 玲央はケルベロスチェインを鳴らして操作し、前線の仲間達を異常から守る為の魔方陣を展開していた。
 ほぼ同じタイミング、真也が敵陣へと無数の刀剣を解き放つ。
 降り注ぐ刃をアビス達が切り払おうとするが、前線メンバーの獲物は斧。そいつらは全ての刀剣を排除することができず、刃に斬られ、貫かれることとなる。
「良いだろう。望み通り何億回だろうと殺してやらぁ」
 真也の刀剣によって動きを止めた敵がいれば、ジグが颯爽と攻め入って。
「三途の川までふっ飛んできな!」
 ジグは大きくしならせた竜の尻尾をアビス達へと叩き付けると、敵は斧でその衝撃を受け止めながらも、さらに厚く重い刃を振りかぶるのだった。


 ケルベロスとヴェロニカ軍団幹部スクルドの小隊との交戦は続く。
「おおっ!」
「はああっ」
 銘々に掛け声を上げて攻め来るヴァルキュリア“アビス”。
 一見すれば、ケルベロスの排除を目論むようにも見える抛つスクルドの小隊だが……。
「すでに動くなと警告済みのはずだ」
 瞬時に弓矢を召喚し直した真也が剣から光放つスクルド目掛け、今度は本当に牽制として矢を射放つ。
 優に音速を超える真也の一矢。スクルドが気づいて避けるも遅く、左肩を掠めてしまう。
 雷光の如き矢はかすかでも受けてしまえば、筋肉、神経を麻痺させる効果があるのだが、持ち前の力でその影響を最低限に食い止めたスクルドは小さく笑って。
「今です」
 その時、フリーになっていた後方の杖使いがふわりと浮かび、急加速して突破しようとしてきたのだ。
 盾役メンバーがそれを食い止めようとするが、斧使いが襲い掛かってそれを阻止しようとする。
「チッ……」
 チェーンソー剣を唸らせていたジグは、盾役メンバーをすり抜ける1体へと電光石火の蹴りを叩き込んでその侵攻を妨げていた。
 また、煉も重力を宿す飛び蹴りを叩き込んで斧使い1体を倒し、杖持ちの抑えへと回る。
 フラッタリーもまた素早く身を翻し、再び巨大光弾を放って向かい来る杖持ちの体を包み込んでいく。
 1体がフラッタリーの一撃に体を硬直させていたが、もう1体は傷を負ってなお直進し、ケルベロスの後方へ行ってしまう。
 玲央はその追跡を考えるが、直後のスクルドの周囲で起こる状況を注視してしまう。
 なぜなら、倒れた斧使いがスクルドの傍で蘇生し、再出撃してきたのだ。
「手数は消費しないんだね。後は行動パターン……」
 新手はどうやら、抜けた部下の穴を埋めるように同じ行動をとる様子。
 ともあれ、最優先はスクルドの足止めだと考え、玲央は全身からミサイルポッドを出現させて敵全体にミサイルを射出していくのだった。

 その後、戦況はやや膠着することとなる。
 チームの盾となる3人が戦線を維持し、後方から回復役が彼らを支えて。
「エレキブースト、いくっすよー!」
 グラビティを使うごとに、キュートなポーズをとるシルフィリアスは、的確に仲間の体力を回復に努める。
 一方、前線の斧持ちヴァルキュリア“アビス”が幾度か倒れるが、その度にスクルドの傍に蘇生してしまう。
「そろそろ無駄だと悟りましたか?」
「ライトニングウォールっす!」
 得意顔になって、スクルドは激しい光を瞬かせてくれば、シルフィリアスはまたもステップを踏んでポージングし、雷の壁を展開していた。
「こっちが相手だよ、僕はまだ戦えるからね!」
 アビスを抑え続けるアリアは、仕切り直しと考えて改めて敵の気を引く。
 皆を守る役割を担う彼は、大切な友人である神白姉弟……特に好きな鈴をしっかりと守れるように敵の侵攻を止め、敵を鎖で締め上げる。
 箱竜リューちゃんに鈴は属性付与を願い、ジャマーとなるスクルドの攻撃にさらされる仲間の異常を振り払ってもらう。
 そして、鈴自身も翼を広げてオーロラの光を発し、気力を撃ち出して仲間達が万全に戦える状態の維持に努める。
 弟の煉はアリアや鈴を気にかけながらも、前方の敵へと降魔の拳で殴りつけ、喰らった魂を己に憑依させて力を高める。
「食っても食っても、キリがねぇな」
 多少、辟易としていた煉が降魔の拳で斧持ちのアビスを殴り倒す。
 そこで、得意げな顔をしていたスクルドが再び部下を復活させようとしたのだが。
「……アビスが、起き上がらない!?」
 斧使いのアビスが全く起き上がる様子を見せなかったことに、スクルドが神妙な表情をし始めたのだった。


 戦いの間、無制限に復活していたはずのヴェロニカ軍団。
 抛つスクルドがその不死の力が働かなくなったことに眉根を寄せて。
「カラミティ……儀式魔術が破られたのですか?」
 その言葉に、ケルベロス達も他チームの勝利を確信し、顔を見合わせる。
「もう、アンコールは求めていないよ♪」
 玲央は歌を歌いながら、敵のリズムを崩そうとする。
 戦場で調べを響かせる彼女は弱るアビスの周囲を起爆させ、確実に落としていく。
 もはや余裕はないと判断したスクルドは前のめりに突貫して。
「ならば、私の二つ名の意味をここでお見せしましょう」
 剣を投げかけるような所作で斬撃を見舞ってくるスクルド。その猛攻をアリアが身を張って食い止める。
 思った以上に傷は深く、アリアは気力を溜めたオーラでその傷を塞ぎにかかるが、全てを塞ぐことはできない。
 そんな彼に、鈴もまたオーラを使って彼の傷を治療する。
「先へはいかせない……絶対に!」
 毅然とした態度の鈴にスクルドもさらなる斬撃をと剣を煌めかせた。

 これまで以上、死に物狂いになってこの場を突破しようとしてくるヴェロニカ軍団に対し、ケルベロス達もまた全力で殲滅に当たって。
 前線の斧使いは何度も起き上がってはいるが、その体力はまちまち。
「ライトニングボルト!」
 シルフィリアスは体力の少ない敵から雷撃を飛ばし、二度と起き上がらぬよう撃ち抜いていく。
 残る敵も注意を払うケルベロス達だが、とりわけヴェロニカ軍団の幹部である抛つスクルドは総力を上げて撃破をとグラビティを行使する。
「確実niこノ場で……ス」
 言語すら歪んで飛び掛かるフラッタリーが精神集中でスクルドの足元を起爆する。
 体勢を崩したスクルドに、煉が詰め寄って。
「てめぇの魂、食いつくしてやるよ。おらぁっ!!」
 一度殴りつけて体力を奪ったスクルドを、彼は強く蹴りつけてより動きを鈍らせていく。
「くっ……」
 スクルドは現状、体力を回復する術はない。
 先程までなら、復活することで態勢を整え直せただろうが、その手段がなくなったことで全身傷だらけになりながらも、剣閃を繰り出し続ける。
「悪いな。確かにお前は美人だが、俺の敵なのが運の尽きだ」
 荒く息をする幹部スクルドにとどめをと、真也が両手の夫婦双剣を大きく切り上げる。
「ああああぁぁ……っ!」
 スクルドは剣を地面について踏みとどまるが、間髪入れずにバトルガントレットを強く握りしめたジグが迫る。
「おらぁ、死ねぇ! とっとと死んで地獄でも見て来やがれ!」
 拳が相手の体へと触れたその瞬間、ジグは己の中にある怨みを流し込み、相手の活動全てを停止させる。
 それは、相手のデウスエクスとしての生を終わらせることを意味して。
「力及ばず、です、か……」
 それまで苛烈に攻めてきていた死神だったが、その最後は実に儚く、その姿をかき消していったのだった。


 程なくして、ケルベロス達は残るヴァルキュリア“アビス”も掃討してしまう。
「ふぅ……、何とか賭けには勝ったか」
 大きく息つく真也。全体の戦況がどうなったか確認するのはこれからだが、戦況が悪くなっていることはないだろうと皆確信する。
「周囲の被害状況を確認しようかな」
 アリアの言葉を受け、玲央が主軸となって周囲の状況をチェックする。
 スクルドの抑えに注力していたケルベロス達は、2体のアビスにこの場から突破されたが、ケルベロスブレイドに備わる雷神砲や近接迎撃骨針といった防衛機構にかかり、それらは撃退されたようだった。
 その確認作業の間、鈴はケルベロスブレイドのある場所とは逆方向を向いて。
「……この先に聖王女様が……、わたしたちケルベロスの真実が……」
 デスバレス深海層にいるはずの聖王女エロヒムは、ケルベロスに何を語ってくれるのだろうかと、皆推論を語り合うのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年4月19日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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